原神 第456話 佳祐
花火の材料調達を終え
船を見に行った一行
果たして朔次郎を稲妻から脱出させることはできるのか…
登場人物
ルイ
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パイモン
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宵宮
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朔次郎
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今谷三郎【初】
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今谷香里【初】
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聡【初】
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朔次郎と佳祐
長野原花火屋へ
そういえば、耕一が商会の友達を紹介してくれる度に、子供の頃のうちと遊んだって言うんやけど
小さい頃のことやし、それに人数が多すぎてよう覚えてなくてな
ほんである日、耕一がまた見たことない友達を連れて来た時、ついこう言うてもうたんや――
「せや!昔遊んでくれて、抱っこしてくれたやろ」って
――ほなら耕一に笑われてな
そいつは大工をやってる友達で、老けて見えるけど、うちとそんな歳が変わらんかったんや
気まずいし、恥ずかしいしで顔真っ赤になってもうて
うち、ずっと謝っとったわ
こうして長野原花火屋に到着
船は用意できたで
場所は地図に印付けといたから確認しといてや
それと食糧と水を用意しときぃ、備えあれば憂いなしって言うやろ
うん…
でもせっかく帰ってきたんだ、もう逃げたくない
それに小船ひとつで雷雨に挑むのは…無謀すぎる
せやけど、天領奉行に捕まっても結末は同じや…
遅かれ早かれ、ここにも天領奉行は来る
悠長にしてられへんで
天領奉行が来たら早々に逃げると言う朔次郎さん
謝らんといてや、万が一の状況になってもうちがどうにかしたる
ほんまに天領奉行に追い詰められた時は、迷わず船へ逃げるんやで
うん、絶対に捕まらないようにするさ…
はぁ…でもこのままじゃ、稲妻に帰って来たのはとんだ無駄足だ
昔の僕は稲妻が嫌いでこの国を離れたんだ
でも、それは責任から逃れるためだった
そのことに気づいてから、ずっと心がもやもやしててね
稲妻に置いてきたものを思うと…
いや…もう手遅れなんだ
心残りを埋めようとした結果が、この有様ってわけさ
そっか…
鎖国がなければ良いと思った宵宮さん
大丈夫や、急かしたりせえへんから
あんたが決心するまで、もうちょい時間を稼いだる
天領奉行…天領奉行が邪魔せえへんかったら、どうにかなるのに…
常連さんの中に老夫婦がおったな、確かそこの息子さんが天領奉行のお偉いさんやった気が…
とりあえず会いに行ってみるか、どうにかなるかもしれへん!
でも、通報される可能性もないか?
心配あらへん、めっちゃええ人やから大丈夫や
あんたは部屋に隠れとき、うちらがパパっと行ってくるさかい
さっ、急ぐで
時間があらへん
まだ花火と花火の材料と注文がぎょうさん残ってることを思い出した宵宮さん
はぁ…まあええか
父ちゃん、うちが短冊を書いたるから、花火は任せたで!
そして宵宮の案内で老夫婦の所へ向かう
今のあいつに必要なもんは答えやなく、時間やさかい
紺田村
あら、宵宮ちゃん、いらっしゃい
どうぞ上がっていって
お隣の方はお友達?
そや、遠いとこからきた旅人や
他の国から今の稲妻に来るなんて大したやつやろ
そうだったの、今は大変な時代だもんね
稲妻人として恥をかかないよう、しっかりおもてなししてあげないと
せやな
それと、二人の花火持ってきたで
おお、ありがとう
毎年世話になるね、昔はお父さんに、今は宵宮ちゃんに
生きているうちに「長野原花火屋」の次期当主を見たい今谷三郎さん
大丈夫やて、まだまだ元気やんか、縁起の悪いこと言わんといて
ふふ、でももう昔ほど元気ってわけじゃないのよ
昔は田植えをしたり、水を運んだりしても大丈夫だったのに、今は少し働いただけで腰が痛くなるの
昨日も雑草を抜こうとしたら、腰を痛めちゃってね
草刈りしたる宵宮さん
はは、大丈夫だよ
せっかく宵宮ちゃんが来たんだ、働かせるわけにはいかない
お茶と菓子を持ってくるから、ゆっくり話そう
気にせんといてよ、昔もよくお手伝いしとったやろ
最近は花火大会で忙しいけど、落ち着いたらまた来るさかい
まあ、本当にいい子たちね、うちの子とは大違い
いい歳して結婚もせず、家にも帰って来ないのよ
お使いを頼まれる
分かった、ほな行ってくるわ
確認宵宮さん
草刈り
完璧やな、これで十分やろ
聡おじちゃんは村の向こうに住んどる、行こか
聡おじちゃんの所へ
聡おじちゃん、最近調子はどうや?
ぼちぼちだよ、特に変わりはない
あんたも相変わらず元気そうで何よりだ
みんなのおかげや、それに商売も順調でな
璃月に卸した花火が大好評だったと言う宵宮さん
大変そうだな、龍之介さんと二人でやっていけるのか?
無理そうだったら俺に言ってくれよ、手伝いにいくから
平気や、花火のことなら無理なことはあらへん
そうそう、これ香里婆ちゃんからのお届けもんや、ダイコン漬け
おお、ありがとう
昔はダイコン漬けが苦手だったんだが…
香里おばさんのを食べてから、その味を忘れられなくなっちゃってね
今ではすっかり家族全員この味の虜さ
家族はみんな元気か?
ああ、みんな変わりないよ
たまに喧嘩もするが、家族ってそういうもんだろ
そばにいてくれれば喧嘩したっていい
離れ離れになるよりましさ
今谷さんの所は寂しい思いをしてるだろうと思った聡さん
見た感じ平気そうやったで、もう慣れてもうたんやろな
せやけど、おじちゃんが言うことにも一理あるな
これからはもっと遊びに行くようにするわ、話し相手がおったら寂しさも紛れるやろし
ああ、紺田村のみんなも宵宮ちゃんが来るのを楽しみにしてる
へへっ、なんや照れるな
用事も済んだことやし、そろそろ戻るか
老夫婦の所へ
若い子はすごいね、こんなに早く終わらせちゃうなんて
若者は体力があって、お年寄りは知識と経験が豊富、せやからどっちもどっちや
そういえば、今年で夫婦生活も五十年目だな
いつしか五十年も経っていたと言う今谷さん
ははは、五十年前、母さんが俺を追いかけてた頃が懐かしい…
もう何でたらめ言ってんのよ、あなたが私のことを追いかけてたんじゃない
五十年前の「長野原花火大会」で結婚を申し込んだと言う三郎さん
本当は結婚を申し込む勇気がなくて、不安な気持ちのまま長野原に花火を頼んだんだ…
花火が打ち上げられた瞬間も、どんな言葉でこの気持ちを伝えたらいいのか分からなかった
その時の情景を語る三郎さん
気付いたら自然と言葉が出ていた
そして、幸いなことに俺の申し込みを受け入れてくれた
この五十年、長いようで短かったわ、あっという間だったわね
共に歩んできたこの五十年、ちゃんとお祝いしないと
五十年の節目と分かっていたらもっと豪華な花火を用意していたと言う宵宮さん
大丈夫よ、昔のままの花火で十分
毎年、花火大会で同じものを見てきたから、逆にそれじゃないと寂しいわ
花火を見ると、あの日のことが蘇るの
こんなおばあちゃんになったけど、過去の自分の判断に一度も後悔なんてしたことない
そうだ、俺たちのことはさておき、今は花火大会で忙しい時期だろう?
何か用があったんじゃないか?
あんな、実はちょっと言いづらいんやけど…
朔次郎が…帰ってきたんだな
うちの子の…幼馴染なの
小さい頃はいつも二人で遊んでたわ
お互い隠し事なんてないくらい仲良しで、一緒に色んな所へ行ってた
だけどある日、すごい口喧嘩をしてね、それっきり…
あの頃の朔次郎は外の世界に憧れていた
稲妻はあの子にとって、平穏過ぎたんだろう
けどうちの佳祐は、小さい頃から俺たちみたいな穏やかな暮らしに憧れてた
朔次郎はたった一人でここを離れたと言う三郎さん
そうやったんか…
佳祐は何も言わないが、俺と母さんには分かる
あの子は悲しんでるんだ、それなのに本心を口に出来ず苦しんでる
佳祐は天領奉行に入り滅多に帰って来なくなったと言う三郎さん
他のことなら、私たちが佳祐に頼めば助けてくれるとは思うけど
朔次郎のことになると…難しいだろうね
こんな偶然にヤレヤレパイモンさん
そうやったんか
朔次郎に帰って来た理由を聞いても、「過ちを犯したから」としか言うてくれへんかったけど、そんな過去があったんやな
あいつの決心がつかへん理由がやっと分かった
分かった、それなら無理に頼んでも逆効果やろな
朔次郎はうちらで何とかする、だから二人は気にせんといて
この件は、朔次郎と佳祐の二人で解決せなあかんと思う
ええ、元通り仲良くなってくれるといいんだけど
もうこんなにも時間が経ってるんだ
過去の諍いもそろそろ水に流すべきだろう
はぁ、どうしたらええんやろ
ひとまず、このことを朔次郎に伝えに行こか