「原神」開発チームの稲妻制作話
2021年7月9日の原神Ver2,0の公式配信内で、開発チームの数人に「原神」の開発にまつわる話を聞くコーナーがありましたので、そのインタビュー部分を抜粋して紹介します。
原神がどのようなこだわりを持って製作されているかの分かるインタビューとなっており、世界設定などの考察の糧になりそうな興味深い話が含まれていました。
配信の方では開発者の一人一人の名前が公開されていましたが、こちらの記事では聞き手の方を「Q」。
開発チーム側を「A」とさせていただきました。
バトルデザイナー
Q
「それでは今まで一度も話したことのなかった話題からいきましょうか。
数百人のメンバーが在籍している「原神」開発チームが、面白い内容を提供するためにしていることについて。」
A
「では、デザイナー視点からお話したいと思います。
チームといえばほとんどの人は学校で部活に参加したり、課題をチームでこなしたりがあると思います。
ゲーム制作の流れはだいたい皆さんのご想像の通りです。
企画担当がながーい企画書を作って、それをもらったプログラマーやデザイナーが、企画書の中身をひとつひとつ実装していきます。
最後はクライアントに入れてリリースします。
ただ、こういった生産ラインの方式は革新には向いていません。
旅人さんを驚かす内容を作り続けるためには、チーム全体、デザイナーだけでなく全部門が『いかに面白い内容を作るか』を第一に考えないといけません。
原神チームではひとりひとりがアイディアの源泉です。そのひとつひとつのアイディアの実現には、メンバー間の相互理解と協力が必要です。
チームでの仕事は、必然的に上流と下流があります。
でも何かを作るにあたり、設計初期に制作に関わるメンバーを全員集めて話し合いをします。
これをきちんと実行するにはハードルが高かったのですが、それを越えるのに、私たちには二つの強みがあります。
一つはチームメンバーのコミュニケーションの頻度と効率が高いこと。
これはチームワークにとってとても大事な要素です。
私たちの物理的な強みは、直接開発に関わるグラフィックデザイナー、プログラマー、シナリオチーム企画担当から、ユーザー側の業務を担当する運営 マーケティングまで、全員同じ勤務地で働いていることにあります。
他者への発注、遠隔での監修など、意見の発生からフィードバックまでタイムラグが発生するようなことはありません。
原神チームでは何か思いついたら、すぐに担当者に伝えることができます。
複数人のディスカッションが必要な時も集まりやすいです。
面と向かって討論して、結論が出たら即時取り掛かります。
メンバー間の交流は、意見ははっきり言う 理屈で納得させる。
というルールのもとで行われます。
チームには色んな領域のすごい人がいるのですが、ディスカッションではみんな親しく、堅実に話し合います。
効率よくコミュニケーションが取れる一方、メンバー全員が有言実行を掲げ、常に自分の限界を越えようとしています
例えばVer1,1で「公子」タルタリヤを作る際、様々な大胆な試みがあり、結果そのほとんどが実現できました。
モデリング担当が事前考案で弓術、近接格闘、ロシア伝統の剣を使ったコサック武術などを融合した戦闘スタイルにしたかったり、エフェクト担当が水の質感のある剣閃や、流動的なマントの破れるエフェクトを新しいマテリアルやシェーダーで試したかったり、デザイナーが武器を切り替えさせたかったりと色々ありました。
それらのために、時間をかけてタルタリヤ専用のスキルスクリプトと、状態管理ロジックを作って、基盤となるデスティネーションも彼のために数多く再構築しました。
当時は『うわあああ、何でマント破けたままなんだ』
『うわあああ、剣が手にくっついてる』
とかかなり頭を悩ませました。
実はこれが『原神』チームでやっていく中で安心感を感じる理由なのです。
信頼できる仲間がいて、みんなが全力を尽くして絵空事を現実にしていきます。
それから、チームメンバーはみんなゲーマーです。
自ら制作に携わった「原神」にも思い入れが深く、冒険ランクは56とか57以上で、深境螺旋の星を12-3まで全部取っている人も少なくないです。
皆さんと同じテイワットで戦う仲間と言えます。
ゲーム制作チームの一員としてどの部分の仕事を担当しても、ゲームを愛し、自らゲームをするからこそプレイヤーに寄り添って等身大の視点でより良いゲーム内容をお届けできるのだと思います。」
Q
「ではそろそろお待ちかねの稲妻の話に戻りましょうか。
実装済みの二つのエリアと制作において何か違いはありましたか」
A
「稲妻はモンド 璃月に続いて三つ目の大型エリアになります。
稲妻の制作において二つの課題がありました。
一つはリリース後の開発スピードです。
実装済みのモンドと璃月を充実させつつ、新しい内容を作り続けるには時間がかかります。
稲妻の開発に入ってから大きな課題ができました。
継続してアップデートを行って、面白い内容を提供するとともに、稲妻開放時にもっと大規模で高い品質のゲーム内容をお届けしなければなりません。
非常に大きなプレッシャーがありチームの誰もが経験したことのないチャレンジでした。
もう一つはゲーム内容全体の整合性についてもっと踏み込んだ設計が必要になります。
モンドの「自由」と璃月の「契約」に続いて、雷元素をメインとする稲妻のテーマは「永遠」です。
このテーマを元にプレイスタイルの面から設計思想を強化して、一貫性のある表現をします。
稲妻の制作とその前段階の背景設定。
プレイスタイル設計の開始は非常に早かったです。
一部のメンバーは既に長期間稲妻バージョンの開発をしています。
同じく新しい探索区域が開放されたVer1,2の雪山と、Ver1,6の群島に比べて、稲妻はもっと規模が大きく内容の密度が高いもの。
相応に開発も根気が必要でした。
内容の整合性のために、稲妻エリアで表現したい内容をキーワードにしました。
例えば『永遠』『雷元素』『エネルギー』など。
これらのキーワードの延長線上でフィールドやプレイスタイルをデザインし、最終的に収束してその概念に包括されます。
エネルギーといえば、元素エネルギーから可能性を発掘して、より多くの秘境やバトルシステムを作って、新しい戦術体系を生み出しました。
雷元素については、感電、超電導といった雷元素反応以外に、稲妻特有のギミックや生態から、雷元素の遊び方を拡張しました。
同時に今までのエリアでの経験を踏まえて、一部の特定のキャラクターや元素を使うギミックを廃止して、外部要素を必要としない、旅人さんが考えて解ける形式に変更しました。
その上で遊び方を通じて、旅人さんの探索体験を大幅に変更しています。
これらの努力が、皆さんの稲妻エリアでの新たな楽しさに繋がると嬉しいです。」
Q
「早く稲妻に行きたくてうずうずしてきました」
A
「稲妻でお待ちしています。
バトルデザイナーとしてこれからもより面白く、高品質なゲーム体験を提供できるように頑張っていきます。
後ほど他のメンバーから稲妻の内容についてご紹介します。」
シナリオチームリーダー
A
「旅人の皆さんこんばんは。
シナリオチームです。
お会いできて光栄です。
シナリオチームのリーダーとして、この場をお借りし新エリア稲妻の面白い設定などをお話できればと思います。」
Q
「そういえば「原神」の世界観設定をかなり研究してくれている旅人さんがたくさんいますよね」
A「はい
私も皆さんのテイワット大陸についての考察を見るのが好きです。
制作途中で生まれたたくさんの構想をゲームの至る所に隠しました。
皆さんがそれを探して読み解いてくれるのは、いわば時間と空間を越え、私たち制作者と交流してくれているということです。
とても嬉しく思います。」
Q「そうですね。
旅人の皆さんの情熱はいつも私たち開発チームに力をくれます。
原神を愛してくださりありがとうございます。
より良いものを作ることが私たちのできるお返しだと思っています。
それでは次は皆さんが一番聞きたい話にいきましょう。」
A
「はい、稲妻を紹介するなら、まず私たちが今いるこの茶室の話からしましょうか。
稲妻城下にも似たような茶室があります。
雅で静かなところで名前は「木漏茶室」といいます。
木漏は葉の隙間を通過するという意味です。
私たちのいるここと違って「木漏茶室」は隠れた場所にあり、完全予約制となっています。
茶室の店長は「太郎丸」というかわいい名前の頭巾を巻いた柴犬です。」
Q
「柴犬の店長?面白いですね。
茶室の店長が人じゃなく柴犬。
これは交流が大変になりそうです。
客として訪れた旅人はお茶を頂いたら、自分でモラを箱に入れたりするのでしょうか。」
A
「そうですね。
それに茶室の店員は全員店長の太郎丸と「誰にも話してはいけないある契約」を結んでいて、ずっと茶室で働くことになっています」
Q
「ちょっと想像したものと違いましたね。
柴犬の店長はかなりやり手のようです。
稲妻って不思議な所だなと思ってしまいますね。
そういう意味では、稲妻は確かに旅人のよく知る二つのエリアとは違いますね。」
A
「『木漏茶室』は稲妻のほんの小さな一角に過ぎません。
他にも広大で壮大な場所があって、区画ごとに独自の設計と配置があります。
冒険の旅を通じて探索し、そこに隠されている物語をぜひ探してみてください。
稲妻はテイワットの三つ目のエリアになります。
開発初期の頃より、稲妻を「海洋群島」とすることに決めていました。
七国の中で唯一完全に海に囲まれ、六つの島を持つ国として、「稲妻」と呼ばれる地域の一貫性を保ちつつ、それぞれの島で異なる地形を表現したいと思いました。」
Q
「異なる風景は作ればなんとかなりそうですが、一貫性をどう保ったのかについて」
A
「はい、一貫性については稲妻の基本の設定から説明しないとなりませんね。
稲妻は雷神が統治する国です。
皆さんも馴染みがあるかと思いますが、雷元素を象徴するものの一つが「いかずち」です。
「いかずち」は一瞬で消えます。
しかし雷神が求めるものは「永遠」。
では雷神の理念を一瞬から永遠に変えたものは何でしょう。
理念を変えた真意は何でしょう。
これらの矛盾と衝突こそ、これからのストーリーで伝えていきたい要素となります。
こういった核心に関する考察が、プレイヤーを考えさせ、そして良い体験に繋がれば良いなと思っています。
大枠を確立したら、次は細部に着手します。
矛盾点をゲーム内のストーリーや設定として具現化させます。
ここまで聞いて、ストーリーが好きな方は雷神について一歩踏み込んで考えているかもしれません。
例えば雷神が永遠を求めるきっかけは何だったのか、その理念は実現可能なものなのだろうか。
今どの段階まで進んだのか、進めたことでどんな結果をもたらしたのか。
神の理想と人の望みの間で矛盾はないのか、などなど。
実際の制作では、こういう考えが細部を描く要素になると、稲妻文化を育む土壌としても機能します。
各島の設定を作った際、こういったポイントを意識して、神や神の眷属、人々が残した痕跡を配置しました。
細部の描写から逆に「雷神は永遠を求める」という全体的な内容を表現しています。
島それぞれで異なるものを表現していますが、全体を見ると、矛盾も全体に広がっていて、結果一貫性のある仕上がりになりました」
Q
「稲妻全体の概念が血管のようにすべての区域に張り巡らされていて、でも細部では稲妻の個々の勢力の動向や動機は違っている。
ということですね。」
A
「そうですね。
これが基本的な概念の構築です。
具体的なところは主に「歴史」「文化」「地理」から手を入れました。
歴史、つまり稲妻エリアで過去に何があったのか。
皆さんご存じのこととは思いますが、テイワット大陸では非常に長い間、魔神戦争が行われていました。
その間にカーンルイアも滅亡しました。
戦争で何かを失って失った悲しみから執着が生まれる。
神の理念と人格も多少なりともこれら歴史の転換点に影響されました。
制作中、色々なものを参考にしました。
例えば「奉公」制度。
稲妻では「奉公」は特定の領域の事務を管理する重要な立ち位置です。
そしてもっとも偉い奉公が三つあります。
九条家の天領奉行は治安を司り、目狩り令を実行しています。
柊家の勘定奉行は財政や入出国を管理しています。
そして神里家の社奉行は、神社や祭祀、文化活動を取りまとめています」
Q
「おや?聞いたことのある名前が出て来たような…笑
話が逸れましたね。
では地理のほうはどのようにされたのですか。」
A
「地理についてはまずデザイン部門と調整して元素対応色の案を採用し、雷元素のイメージカラーである紫色を確定しました。
それから稲妻特有の設定があり、生態環境には多くの雷元素が含まれています。
雷元素が潤沢な環境では他とは色も明度も違う草木が育ち、環境に順応するよう生えている特産品も存在します。
モンドの風車アスターと蒲公英、璃月の霓裳花と琉璃百合のように、稲妻にも特産品である鳴草と緋櫻毬があります。
これらの設計はフィールドと合わせて、雷元素をテーマとした収集やギミックを取り入れています。
雷元素は稲妻の地理の設計の基本です。
そのうえで稲妻の主な歴史上の事件と合わせて、もっと明確なルールをもとに地形や文化的景観を構築しました。
(天狗伝説のある)影向山
(御神木を奉る)鳴神大社
(伝統的な刀鍛冶に関わる)たたら砂
(雷神が断ち割った)無想刃狭間などの場所の設定はここで生まれました。
地形と景観も原神のストーリーを表現する重要な要素です。
環境と結合することで、神と人の物語をより鮮明に伝えることができます。
フィールドや秘境、その他いろいろな方面のテキストで、多次元で立体的なゲーム体験をお届けする予定です。」
Q
「具体的に聞いていいですか。
例えば鳴神大社にある、あの巨大な神櫻の木がすごく気になります」
A
「神櫻の木の設定は神籬(ひもろぎ)
神木信仰から作りました。
雷神が稲妻全域を守護している象徴です。
神櫻の木と稲妻各地の雷櫻の木は繋がっています。
これはパンドという木の生態を参考にしました。
森に見えるけど地下の根は繋がっていて、厳密に言えば同じ木なんです。
面白いですよね。
自然界に存在している特殊な生態をゲームに応用すると特別だけど現実感のある表現になります。
また神櫻の木と鳴神大社の話をするなら、雷電将軍と八重神子の二人は外せないですね。
二人は稲妻のとても重要なキャラクターで、ある程度、稲妻の文化設定の中心とも言えます。」
Q「期待しちゃいますね。
いつ実装するのでしょうか。
これ他に雷電将軍とかかわりが深い場所はありますか」
A
「将軍の住まう天守閣を除けばとても珍しい地形があってそこを「無想刃狭間」と言います。
誕生から雷電将軍と関係の深い非常に代表的な場所です。
雷電将軍はそこで海衹島から襲ってきた大蛇と対峙しました。
大蛇を倒すために将軍は万雷のような勢いで刀を振り下ろし、そのあまりの威力で大蛇どころか、島をも真っ二つにしました。
今でもヤシオリ島に行けば大蛇の骨が見られ、島もきれいに南北に切り分けられています。
この珍しい地形がその戦いでできたものなのです。
大蛇は敗れましたが、その恨みは残り、「祟り神」を生みました。
そして稲妻地域では祟り神を鎮めたり、それに関連した現象が発生したりし、そこから文化や歴史が生まれました。
例えば晶化骨髄の採掘、たたら砂の刀鍛冶など、設定上大蛇の祟り神とたたら砂を同じところに配置したのも、神話の中の大蛇が古の鍛冶と関係がある説を意識しました。」
Q
「稲妻の設定って考察し甲斐がありそうですね」
A
「ぜひ皆さんには稲妻へ赴いて、探索しながら稲妻の文化や人情に触れて、テイワット大陸について、さらなる真実を見つけてほしいです」
Q
「地域の設計についてはこんなところでしょうか。
では稲妻という新しい土地では、どんな新キャラクターと出会えるのでしょうか」
Q
「そういえば、とある稲妻のキャラクターがβテストの頃から人気があって、みんながまだかまだかと待ちわび、その現象に面白い呼び名が付いていましたね
原神長編ドラマ「神里を待つ」って」
A
「ついに『神里を待つ』の完結編がはじまりますね(笑)」
Q
「待ちきれないですね。
少し紹介していただけますか」
A
「はい、先ほど言及しましたが、稲妻に『三奉行』がいます。
皆さんの大好きな神里綾華は『社奉行』を務める神里家のお嬢様です。」
Q
「偉い人なんですね。」
A
「地位の面ではそうですね。でも綾華は一般的な深窓の令嬢ではありません。
彼女は頻繁に稲妻各地を行き来して、一般の人との交流も多いです。
高潔で謙虚で、分別があります。
やさしい心を持ち、困った人に手を差し伸べます。
『白鷺の姫君』と呼ばれ、みんなに愛された存在です。」
Q
「『白鷺の姫君』雅な響きですね。
やさしくて人情に厚いところが、みんなに好かれる所以でしょう。
高貴で慈悲深く神々しいですね」
A
「はい、第一印象はそんな感じです。
ストーリーを進めていくと、綾華との交流が深まり、彼女のかわいい一面も見られます。
社奉行のお嬢様として優雅に振る舞うことを求められるのですが、お年頃の少女なので、自分なりの悩みや望みもあります。
その辺りは皆さんご自身の目で確かめてみてください」
Q
「メインストーリーのシーンで何か見せられないでしょうか。」
A
「神里綾華は魔神任務第二章第一幕『鳴神不動、恒常楽土』に登場します。
旅人さんは神里家で彼女に会えます。」
Q
「今までの室内の風景とかなり違いますね。
ところで、屏風しか見えないですけど綾華お嬢様は?」
A
「(笑)神里家のお嬢様だから、しきたりがあるのです。
そこが神秘的でもあります。
新鮮味を残しておきたいので、後は実際にプレイしてみてください」
Q
「わかりました。
では宵宮について聞いていきたいと思います。
彼女も三奉行ですか。」
A
「いいえ、宵宮は『長野原花火店』の店主で、すごく優秀な花火職人です。」
Q
「花火はみんな良く知っていますね。
稲妻が求める「永遠」とは程遠い物だと思いますが…」
A
「そうですね。でも宵宮からすれば、花火は儚いですけど、その裏にある期待や願い、関わった人々が託した気持ちはすごく大切なもので、花火が散った後も人々の心の中に残り続けます。
宵宮は創造力のある人間です。
職人として花火は仕事であり趣味でもあります。
いつでも全力で望まれたものを作っています。
花火も演出も宵宮自ら取り仕切っています。
彼女の独創的なアイディアと強い責任感があるからこそ、完璧な花火を打ち上げられるのです。
それから宵宮は日常生活では天真爛漫で、ガキ大将みたいによく子供たちと遊びます。
そしてとても人間味があっておしゃべり好きで、稲妻の人たちのみんなと仲が良いのです。」
Q
「明るい性格だけど気配りが上手な人。」
A
「そうですね。」
Q
「その花火職人さんもメインストーリーに登場するのですか。」
A
「はい、メインストーリーでは宵宮は旅人の非常に重要な仲間として活躍します。」
Q
「(笑)楽しみですね。
話すぎるといけないのでここまでにしましょう。
最後は早柚について聞いたみたいと思います。
忍者だと聞きましたけど…」
A
「はい、早柚は『終末番』の忍者で、奥深い様々な忍術に長けているのですが、サボるためによくそれを利用しています。」
Q
「サボるためですか。」
A
「早柚には大きな悩みがあります。
一目でわかりますが、早柚はかなり小柄です。
同年代の人たちはみんな身長が伸びたのに、自分だけ子供の頃と変わらないから、早柚は身長を伸ばすことに強い執念を持っています。
睡眠が身長を伸ばしてくれると思っているので、隙あらば手を尽くして隠れて寝ます。
繰り返しているうちに過眠になってしまい、普段から眠そうで、いくら寝ても寝たりないのです。」
Q
「私たち現代人によくあるパターンですね…
でも私たちは特別な訓練を受けないと、両手剣なんて扱えないですけど。」
A
「自分の身長より高い両手剣を持ち上げられるのも、『神の目』があるからです」
Q
「ギャップ萌えでいいですね。
ところで、稲妻のキャラクターを作る時の考え方や、インスピレーションについて聞かせて頂いてもよろしいでしょうか。」
A
「稲妻は特徴の強いエリアなので、新鮮で面白いキャラクターを作りたいと思いました。
面白さは稲妻のキャラクターデザインにおいてとても重要で、かつ根幹となっています。
その面白さと先ほど話した稲妻の文化と歴史を、私たちは『風雅』『浮世』『天光』という三つのキーワードに分解しました。
この三つのキーワードが稲妻のキャラデザインの核となっております。
実際にどのようになっているのか、旅人さん自身がゲーム内で確認していただけると嬉しいです。
すべてのデザインは基本となる世界観設定をもとに行われています。
稲妻の民俗、普段の生活や芸術的特徴から、中心となる要素を抽出して、設計ポイントとして展開して細かくしていきます。
稲妻のキャラクターの身分や職業の設定では原神の特徴を持たせます。
同時に実装済みの二つのエリアとは異なる文化を凝縮してキャラクターに反映させます。
差別化の結果が重要な要素になります。」
Q
「確かにこれまで紹介した三名のキャラクターもそれぞれ特徴的ですよね。
でもやっぱり雷電将軍が気になります。
風神や岩神と違って、稲妻の雷神は「俗世の七執政」の中で、旅人さんがはじめて出会う女性の神ですよね。」
A
「はい、魔神任務では雷神とたくさん関わります。
今回のVer2,0では、魔神任務第二章第一幕『不動鳴神、恒常楽土』と、第二幕『無念無想、泡影を滅す』が開放されます。
同時に新キャラクターである、神里綾華と宵宮の伝説任務も開放されます。
ぜひ彼女たちと忘れられない時間をお過ごしください。」
Q
「会えるのが楽しみですね。
そうだ、今日はサプライズがあるそうですね。
そろそろお披露目といきましょうか。」
A
「はい、せっかくなので、今後稲妻の魔神任務で出会う新キャラクターを全部お見せします。」
雷電将軍
A
「冷たくて妖艶な見た目をしたキャラクターです。
彼女は稲妻の核となる存在です。
この強くて無私無欲な神と旅人がどう関わるのかが、ストーリーの重要なポイントになります。
雷神が求めるもの、守るものは一体何なのか。
彼女は何のために戦うのか。
すべての答えが旅路の先にあります。」
トーマ
A
「少し特殊なキャラクターです。他の稲妻キャラと違って金髪。
身分も違います。
空気の読める大人な一面を持ち合わせたキャラクターで、神里家の補佐として、神里兄妹と関わりが深いです。」
九条裟羅
A
「天領奉行の大将で、九条家の養女です。天狗であるため漆黒の翼を持ち、強者揃いの三奉行の中でも目立った存在と言えます。雷電将軍に忠誠を誓っており、職務に忠実で胆力があります。」
珊瑚宮心海
A
「柔らかな見た目の少女ですが、実は珊瑚宮勢力の指導者で、策略に長けた軍師です。
いつも微笑んでいて、軽々とすべてを適切に処理していきます。」
ゴロー
A
「獣耳に目が行きますよね。見た目はまだ少年ですが、ゴローは珊瑚宮勢力の大将なのです。
戦場では一人前の頼れる存在です。」
八重神子
A
「最後は過去の放送でお見せした八重神子です。鳴神大社の宮司で、見た目は優雅で美しいですが、中身は抜け目ない知恵者で、常識では測れない女性です。
自分のルールとやり方を持つ彼女は、ストーリーで旅人と何度も顔を合わせます。
どんな展開になるかはこうご期待」
Q
「新キャラクター全員あっさり見せちゃって本当に大丈夫ですか」
A
「旅人の皆さんのフォーラムでの投稿は私たちもいつも見ています。
今回の先出し紹介も皆さんへのほんの感謝の気持ちです。
いつも原神を愛してくださってありがとうございます。
今後も初心を忘れずより良いものを作って、素敵なキャラクターやストーリーをお届けしていきたいと思います。
皆さんの稲妻での旅が忘れられないものになるように祈っています。」
開発チーム美術部門
Q
「すでに先ほどの二人から稲妻に関するデザイン案や、エリアの設定を知ることができましたね。
ではこれらの案や設定をビジュアルの表現手法を通し、皆さんが存分に探索できるシーンへとどう作り上げたのでしょうか。」
それでは開発チームに聞いてみましょう。」
A
「番組に招待されたことを本当にうれしく思っています。
本当に皆さんに稲妻という新エリアの美術設計や、コンセプトについて解説していきたいと思います。」
Q
「以前、稲妻のシーン画像をいくつか見たのですが、そのビジュアルにすごく衝撃を受けました。
まずは稲妻マップ全体の美術様式について教えてもらえませんか。」
A
「稲妻の全体マップには、多くの隠れたデザインや工夫を施しました。
簡単な言葉でまとめるのは難しいのですが、旅人の皆さんに伝えたいことは、日本の小説家である谷崎潤一郎さんの『物と物のあいだにできる影にこそ、美がある』という言葉の通りです。
想像力で美しさを引き立てる手法は、日本と西洋の空間デザインの最も異なる部分です。
西洋の空間デザインが物事の大きさ小ささに関わらず、全体を表現するものであるなら、日本は閑寂、静謐といった雰囲気を追求し表現していると言っていいでしょう。
そして稲妻のマップで体験できるものはその雰囲気を一貫して感じられ、またそれが徐々に濃くなっていくと思います。
稲妻はテイワットの七国の中で唯一、完全に海に囲まれた国となっています。
なので稲妻はモンドや璃月のように、常に空が澄み渡っているわけではありません。
稲妻は海に浮かぶ群島で、それぞれの島で目の前の景色が光と影の移動に伴い、変化していくのを感じとることができます。
少しでも目を離すと目の前の景色が、海風に吹き飛ばされてしまったような感覚になることでしょう。
私たち美術チームは光と影の相互作用による空間的、視覚的な変化で情緒を伝えられるように工夫を凝らしました。
また、稲妻は雷元素の影響を強く受けているエリアなので、視覚的な表現でも他と違う点を盛り込む必要がありました。
雷元素と島国という二つの大きな設定の中で、稲妻の景色や生態系は島国のそれをベースに作り上げています。
このマップでは旅人さんに基本となる地形から、雷元素の影響を感じてもらうために、他のエリアと違うことが認識できる特別な構造にしようと考えました。
まずは実際に自然からのインスピレーションを得て、最後に日本の屏風ヶ浦の景色をデザインの土台にしました。
この『東洋のドーバー』と称される場所は独特な地形構造となっており、水平な地層が横に伸び、中にはまるで島が横向きに海の中へ差し込まれたかのような不安定な場所もあります。
この不安定さは私たちが表現したかった、雷元素が地形に与える影響に非常に似ていました。
この場所をベースにしながら、水平の地形を再構築し、水平な模様をあらゆる岩山に刻み込み、それらをパッチワークのようにつなげて、現在ある『交差する地層』を作り上げました。」
A
「雷元素が地形に与える影響は、この様に作り上げられているのですね。
なんだかとても斬新ですね。」
Q
「そうですね。
同時に私たちは元々ある自然の状態を壊さずに、雷元素の影響を受けた奇妙な生態系を感じられる探索の余地を、どう旅人さんに与えればいいのかという課題に直面しました。
そこでふと、島全体をもっと立体的な上下構造としてとらえるのはどうだろうと考えました。
『千と千尋の神隠し』のように長いトンネルを通って、異世界にたどり着く。
『となりのトトロ』のように家の庭にある草やぶからトトロの住処に落ちるように、旅人さんが秘密の通路を通ってこれらの場所にたどり着くようにしたら、面白いのではないかと考えました。
このアイデアをもとにシナリオチームや企画の仲間たちの励ましを受けながら、秘密の通り道を作り上げる長い挑戦が始まりました。
雷元素の影響を受け変異した神櫻の根を鳥居に巻き付けたり、特徴的な形をした発光する紫色の低木で洞窟を照らしたり、組み込む予定の謎解き前後の環境の変化とマッチするようにしました。
謎を解くために旅人さんは村の枯れた井戸に飛び込んだり、海辺の岩の隙間に入り込んだり、守られた森の小さな洞窟に入り込むことで、地上とは対照的で危険な雰囲気に満ちた場所に、隠された秘宝を見つけることができます。
稲妻には他にも奇妙な色彩を纏っている場所があります。
それは神無塚・たたら砂です。
そこは人間の歴史と自然が融合する場所で、先ほどシナリオチームパートでも取り上げられたように、雷電将軍と大蛇が戦った後に残った残骸がこの島に封印されています。
残骸のエネルギーが周囲の岩を集めて、強大かつ視覚的な中心点を形成し、稲妻最大の製錬施設『御影炉心』もここにあります。
残骸のエネルギーをさらに視覚的に分かりやすくするため、周囲の木道を全て中心に収束させて炉心に繋げ、同時に内部空間を紫色で染め、飛砂や稲光の効果を加えて危険性と神秘性を、できる限り表現しました。
また、この場所は大きな世界任務、『たたら物語』とも関係があります。
関連任務をクリアする前だと、この場所は強大な電磁波の結界のようなものに覆われており、少し近づくだけで内部の強烈なエネルギーの流動を感じることができます。」
Q
「言われてみれば、シーンにある草木は確かにこれまでのエリアとは全く違いますね。」
A
「はい、稲妻の植生は元素の色に合わせ、雷元素の影響を受けている部分を紫色で表現するとシナリオチームと相談して決めました。
雷元素の影響を受けてない普通の場所は、ジブリアニメのような古典的な配色の植生を残しています。
寒色系の緑が混じりあっており、薄い青色のネモフィラと紺色のヒヤシンスが稲妻の基本的な植生を形成し、平野や干潟、峠、河岸に広がっています。
また丘陵地には葦が生い茂っています。
夏が来ると稲妻の住民は甘金島の満開の桜の下に座り、夏が来ると稲妻の住人は甘金島の満開の桜の下に座り、遠くの稲妻城と打ち上がる花火に照らし出された桜を楽しむことができます。
また、海に映った花火は人々のすべてのものの美しさを思い出させてくれます。」
Q
「語ってくれた描写から、制作チームの作品への深い愛を感じ取ることができました。
稲妻の数ある美しい景色の中で、一番印象に残っているのはどこですか。」
A
「これは難しい質問ですね。
でもこの質問を聞いた瞬間。脳裏にある場面が浮かびました。
それは漂う霧と風に吹かれた紅葉が離島の建物を隠し、もの寂しい雰囲気が港を包み込み、ぼんやりとした光の中で人々が移動する光景です。
平野にある小川のそばでは簡素な家が数軒並び建ち、振り返ると鳥居が空を覆う巨木に覆い隠されています。
草むらの中でタヌキを見つけ、それを追って階段を上り、潤いに満ちた森を抜けると、神緋櫻とアジサイに囲まれた神里綾華の家にたどり着くんです。」
Q
「とても趣のある場所ですね。」
A
「稲妻の建物でいうと、神里家の屋敷を散策するのが一番好きですね。
差し込む廊下を抜け、綾華の茶室に座ると、坪庭の緑を眺めることができます。
また、桜に囲まれた稲妻城の天守閣が遠くに見える描写や、守閣を照らす分厚い雲の隙間から差し込む陽の光。
近くにあるきれいな小部屋。
これらすべてが東洋の美に通ずるものがあり、見るたびに何度も心を打たれました。
次のバージョンでは幻想的なシーンが数多くあります。
例えば異国情緒あふれる幻想的な色彩の海衹島。
雷雨が絶え間なく降り注ぐ比類なき景色を有するセイライ島。
何年も人が足を踏み入れていない鶴観や枯れた枝や雷鳥の羽の形をした植物が至る所にあります。
さらに稲妻の海には大きな地下空間があり、より奇妙な見た目をした植物が旅人さんを待っています。
シーンの作り手として新しいエリアを訪ねてきた旅人さんに、新鮮で楽しい体験を提供できることをとても楽しみにしています。」
Q
「Ver2,0の内容について素晴らしい共有をありがとうございます。」
楽曲制作者 HOYO-MiXチーム
Q
「人を魅了してやまないのは景色だけではありません。
「原神」の楽曲も旅人の皆さんがずっと関心を寄せている部分です。
もちろん皆さんが注目しているバージョン2,0。
稲妻エリアの楽曲も現在制作が開始されています。
つづいては『原神』の楽曲制作者 HOYO-MiXチームに楽曲について紹介していただきましょう。」
A
「ありがとうございます。
こんにちは、旅人の皆さん。
皆さんと稲妻の楽曲制作についてお話できることを本当にうれしく思っています。
『原神』はオープンワールド型のアクションRPGです。
異なる様式のエリアごとにマッチする楽曲が必要で、世界中からインスピレーションを得るために取り組んできました。
私たちはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とともにモンドエリアの楽曲を制作し、上海交響楽団とともに璃月エリアの楽曲を制作しました。
今回、私たちは東京フィルハーモニー交響楽団に依頼し、日本の伝統的な楽器奏者との共演で、稲妻エリアの音楽を制作しました。
バージョン2,0の稲妻の楽曲は、モンドの楽曲とも璃月の楽曲とも異なる感覚をもたらすことでしょう。」
Q
「何か稲妻の楽曲について、現時点で皆さんと共有できる内容はありますか。」
A
「実際にゲーム内で稲妻エリアに行き、稲妻の楽曲をその身で感じるのが一番なのですが…
ここでは皆さんに実際に収録で使用した楽器について共有したいと思います。
稲妻の楽曲を制作する際にオーケストラ以外に、尺八、三味線、太鼓、琴などの日本の伝統楽器も取り入れました。
さらに日本の民謡歌手の声も使用させていただきました。
今までと違うのは、国を行き来するのが困難な状況なので、オンラインでリアルタイムのコミュニケーションを行ったことです。
およそ一ヶ月間、画面を隔てた日本の演奏家たちと、メロディーの確認や楽器の調整を細かく行い、多くの困難を乗り越え、最終的にお互いが納得する結果を得る事ができました。
皆さんがバージョン2,0稲妻の楽曲を気に入ってくれることを願っています。」
終わりに
今回はVer2,0と言う節目の発表でもあったためか、日本でも公式生配信がありました。
大型エリアであり、第3の国である「稲妻」実装など、大々的なアップデートと言う事もあり、このような貴重なインタビューを含めた内容となっていました。
Ver2,0の内容や、稲妻への期待を高めるインタビュー内容であったと思います。
もっと他にも色々聞きたいと思わせる部分がありましたが、いずれにしても「原神」が並々ならぬ熱量をもって製作されていると言う事を改めて実感させられました。
原神はこういった世界設定が緻密なのが魅力でもあります。考察の糧になりそうなこの情報を見ながら、今後の原神をより楽しんで行きたいと思います。