原神 第374話 法律家

煙緋さん、調査はもう済みましたか？

弁償額の見積もりは終わったのでしょうか

ああ、確かに調査は終わった

弁償額の見積もりも

それはよかったです

それでは、見積もりを提示してください

契約に則り…

はい…えっ！？

私が弁償を？

煙緋さん、何か間違えているのでは？

間違ってなどいない

私の調査とこれらの証拠により、シコウさんに貸した「翠珏鳳集のかんざし」は「翠含石」で作られたことが判明した

この契約には、翠珏石が偽物であった場合には、10倍のモラを支払うと書かれている

よって、シコウさんへは弁償金として10倍のモラを支払う必要がある

私は大金を支払ってあの「翠珏石」を仕入れたんです

あの髪飾りの「翠珏石」が偽物だというのなら、証拠を見せてもらいましょう！

その鉱石が偽物である証拠…

もちろん関係者たちによってその証明はされている…

旅人、私たちが集めた証拠を出してくれ

それは…あの石商ですら「翠珏石」か「翠含石」か分からなかったんですよ？

そんな人がどうやって偽物であることを証明するのですか？

それに「翠含石」は元々「翠珏石」の外層にあるものです

「翠珏石」の加工をして「翠含石」の石層が残るなんて、至極当然のことじゃないですか！

では、私の鉱石が偽物だという実証もないというわけですよね

証拠がないなら話になりません

そうですよね？

法律を語るには、証拠を…

ああ、確かにそれに相応しい証拠がある

旅人、出してくれ

ふん、その書類、私のかんざしが本物だということを証明しているじゃないですか？

それに総務司の印鑑だって押されてある

かんざしに使っている鉱石は「翠珏石」です

確かに…その言い方であれば、かんざしが本物の可能性はある…

もちろんです

本物を証明する証拠がこんなにもあるのですから

旅人、あの「決定的証拠」を出してくれないか？

「『翠珏石』は山中の玉髄に付属し、常人が触れると災いが起こる…」

「常人がそれに長時間触れると、身体に影響を及ぼす。体調不良や重病、そして性格の歪み…」

クロッサルさん

「翠珏石」の特徴は知ってただろうか？

知らなかった？

それもそうか

でも、そんな危ないものを貸し出すなんて…

どうやら、この先は私の範囲ではなく…

総務司の出番になるかな？

あぁ…しかし、もしクロッサルさんが知らなかったというのなら、総務司もそれを考慮して見逃してくれるんだろう

総務司がこの件を審議する時は、悪いが出席してもらうよ

ちょっと！

ま、待ってください！

私は知って…

おや、クロッサルさん

「翠珏石」の特徴を知った上でそれを…

えっ！？

いえ、その…そのかんざしにあるのはそういうものじゃなく…

じゃない？

「じゃない」ってもしかして

「翠珏石じゃない」ということか？

うむ、それなら、クロッサルさんはシコウさんに商品の10倍のモラを支払うことになるが

クロッサルさん、返事は？

私と私の依頼人が待っている

わ…わ…

私は…

しかし、私も運が悪かったんです！

大金を支払い「翠珏石」を仕入れて、髪飾りを作って売ろうとしたんですが…

それで「不卜廬」に行って聞いたんです

そうしたら、この石は身に着けてはいけないものだということが分かったんです

しかし、それでは大金を支払ったのがすべて無駄になるじゃないですか？

だから「翠珏石」と似ている「翠含石」を使ってこのかんざしを…

誰かに見破られるんじゃないかと怖くて、ひとまずかんざしは売らずに貸し出し品にしました…

しかし、シコウさんに貸した後、それを失くされてしまって…

わ…私だってしたくなかったんです

しかし「翠珏石」を買う時に、商売仲間に知られてしまい、私がいくら稼ぐのか今もずっと注目されていて…

もし偽物のかんざしのことがバレたら、もうこの業界には…いられません

身の上話はそこまで

そんなことに興味はない

契約に則り、シコウさんに10倍のモラを支払ってもらう

10倍…

私は…シコウさんとの契約により、その賠償金の2割をいただく

2、2割！？

あの「翠珏石」を仕入れた時以上の額じゃないですか！

あの髪飾りにあった「翠珏石」が偽物だとしても、クロッサルさんの髪飾りを失くしたことは事実ですし、弁償すべきなのは私です

でも、クロッサルさん

その「翠珏石」が必要ないのであれば、私に譲っていただけないでしょうか

それでおあいこということで

え？

それは…

はい、分かりました…

その石のせいで、散々な目に遭いましたし…

契約にはそぐわないけど…

まぁいい、これで足りる

今回は、お世話になりました

煙緋さんのお時間が空いている時に、改めてお礼をしにまいります

どういたしまして…

そうだ、シコウさん、もう一度確認するけど、もうクロッサルさんを許したということで、いいんだな？

えっ？

はい…許しました

そう、ならよかった

クロッサルさん、私の依頼人はもうこのことについて追及しないそうだ

それよりも…クロッサルさん、実はあなたと「仕事」について相談が

あなたの設計したかんざしを見て、装飾品の設計に優れている方だと気付きました

私の家は鉱石を取り扱う商売をしていて、綺麗な鉱石もあります…

もしあなたが設計する装飾品と、私の方で取り扱う鉱石を組み合わせることができれば、良い商売になると思うのですが

なるほど…

少し考えさせてください…

よし、これで解決

ばあやに頼まれてた「翠珏石」も手に入ったし、めでたしめでたし

目的が異なれば、必要な手段も当然違ってくる

私の依頼人であるシコウさんの目的は「弁償金を削減する」こと

璃月を走り回ってかんざしを探すより、そのかんざしに価値がないことを証明する方が早い

仙人…

以前の戦いにお前が参加した時、ばあやから聞いているだろう？

今の璃月港は「人間が統治する」都

仙人とかいうどうでもいい身分よりも「法律家」としての身分の方が、私にとっては大事なんだ