M-1グランプリ2020の感想
5081組のお笑い芸人が優勝を目指し競った2020年のM-1グランプリが終了しました。
結果をまとめて振り返ってみたいと思います。
M-1グランプリ2020 出場10組
アキナ
マヂカルラブリー
見取り図
錦鯉
ニューヨーク
おいでやすこが
オズワルド
東京ホテイソン
ウエストランド
10組のファーストラウンドのネタを振り返る
ファーストラウンドをネタ順に審査員の点数を添えて振り返ってみたいと思います。
審査員の点数が表示される前に自己採点したものも添えて振り返りたいと思います。
審査員は以下の7名でした。
オール巨人
上沼恵美子
立川志らく
富澤たけし(サンドウィッチマン)
中川家・礼二
塙宣之(ナイツ)
松本人志(ダウンタウン)
インディアンス(敗者復活)
オール巨人 | 89 |
富澤たけし | 89 |
塙宣之 | 85 |
立川志らく | 89 |
中川家・礼二 | 90 |
松本人志 | 90 |
上沼恵美子 | 93 |
合計 | 625 |
1組目が敗者復活組と言う初めての展開でしたが、逆に最初から勢いがついた展開だったと言えるかも知れません。
今田さんも話していましたが、一度負けているので開き直った勢いでネタを披露できた感じがしました。
緊張感もあまり感じる事なくネタに集中する事ができました。
昨年はかなりネタが飛んでしまったらしいですが、その様な事もなく、しっかり普段通りの漫才を披露できていた様に感じました。
しかし、会場の空気は一組目だったという感じでしょうか。
自己採点:87
東京ホテイソン
オール巨人 | 86 |
富澤たけし | 91 |
塙宣之 | 85 |
立川志らく | 89 |
中川家・礼二 | 88 |
松本人志 | 86 |
上沼恵美子 | 92 |
合計 | 617 |
二組目は東京ホテイソン。
個人的にはツッコミがとても好きなんですが、正直、一発目のツッコミがピークと言う印象が強いです。
普通のネタ番組であれば十分楽しめるレベルなんですが、M1としては徐々にネタの後半に向けて尻すぼみな感じが強いという気がして、その辺りも採点に現れていたかなと思います。
今回のファイナリストの中では一番若手と言う事で今後の伸びしろに期待と言う感じです。
自己採点:88
ニューヨーク
オール巨人 | 88 |
富澤たけし | 93 |
塙宣之 | 93 |
立川志らく | 91 |
中川家・礼二 | 91 |
松本人志 | 92 |
上沼恵美子 | 94 |
合計 | 642 |
昨年に続きファイナリスト入りしたニューヨーク。
昨年はトップバッターで最下位と言う結果に加えて、松本人志さんから手痛い指摘を受けてしまいましたが、今年のネタはしっかり受けていた印象があります。
キングオブコントでは準優勝だったり、確実に力をつけ場数もこなしてきた事が、この決勝の舞台でも活きていたと感じます。
個人採点があまり高くなかったのは、期待感が高かったところもあるかもしれません。
自己採点:86
見取り図
オール巨人 | 91 |
富澤たけし | 92 |
塙宣之 | 93 |
立川志らく | 93 |
中川家・礼二 | 93 |
松本人志 | 91 |
上沼恵美子 | 95 |
合計 | 648 |
3年連続のファイナリストであり、2020年は優勝候補の一角でもあった見取り図ですが、見事審査員全員から90点以上を獲得し、ファーストラウンドを通過する高得点を獲得。
昨年少し盛山さんが噛んでしまった場面がありましたが、しっかり自己ツッコミを入れて切り抜けていたのが印象的でした。
果たして今年は大丈夫かと思ったら、ボケのリリーさんが今年は途中噛んでしまっていました。
しかし、これがきっかけで吹っ切れた勢いが付いたという感じの印象を受けました。
割とこの様な点はM-1グランプリにおいて厳しい目で審査されそうなんですが、昨年同様、あまり採点に影響を及ぼしていなかったのはやはり力量なのでしょう。
ネタの中の伏線の仕込み方も実にうまい、安定感のある漫才でした。
自己採点:90
おいでやすこが
オール巨人 | 92 |
富澤たけし | 93 |
塙宣之 | 93 |
立川志らく | 96 |
中川家・礼二 | 95 |
松本人志 | 95 |
上沼恵美子 | 94 |
合計 | 658 |
R-1グランプリの常連2人がコンビを組んで登場。
初見のインパクトが絶大なネタと言う印象で、ファーストラウンドトップの点数を獲得。
個人的にも一番期待していたおいでやすこがでしたが、一つ思った事は、決勝のネタのテンポが惜しい気がしました。
予選までと決勝戦のネタ時間が違う為に、そう言う調整だったのかも知れませんが、やや勢いがなかった感じがしてしまいました。
あくまで個人の主観で、初見で見る人にとっては適切なテンポだったと言えるのかも知れません。
しかしそう言った細かいネタの内容云々を全て吹き飛ばす、シンプルなツッコミのパワーがこの得点をたたき出したと言えるのでしょう。
自己採点:93
マヂカルラブリー
オール巨人 | 88 |
富澤たけし | 94 |
塙宣之 | 94 |
立川志らく | 90 |
中川家・礼二 | 96 |
松本人志 | 93 |
上沼恵美子 | 94 |
合計 | 649 |
2017年は最下位だったことに加えて、上沼さんから徹底的にやっつけられてしまったマヂカルラブリー。
今でもあの時の野田さんの表情は忘れられませんが、今年は見事ファーストラウンド通過、名誉挽回となりました。
ネタは見たことはあるものでしたが、それでも会場の空気をしっかりつかみ、最初のボケで数十秒拍手の続く爆笑を取っていました。
審査員からは最初の爆発がピークだったと言う指摘もありましたが、その大爆発がその後も余韻として十分の笑いを持続させていたと感じます。
こういうネタは人によっては全く笑えないという事もあるのだと思いますが、マヂカルラブリーが世間に認知され、野田さんのキャラも定着した今だからこその結果と言えるかもしれません。
自己採点:91
オズワルド
オール巨人 | 88 |
富澤たけし | 91 |
塙宣之 | 95 |
立川志らく | 93 |
中川家・礼二 | 95 |
松本人志 | 88 |
上沼恵美子 | 92 |
合計 | 642 |
昨年に続き2年連続ファイナリストとなったオズワルド。
昨年はミルクボーイの次だった事もあり、かなり印象が薄くなってしまったかも知れませんが、落ち着いた漫才で個人的に評価が高いコンビでした。
そして今年はかなりスタイルを変えて来た印象でした。
ツッコミがかなり強めのものになっていて、テンポもアップしてかなりボケの数を多めにして、M-1にかける熱意を感じさせるものを感じさせました。
しかし審査員からは、ずっと叫んだりテンション高い漫才が続いたから、オズワルドには落ち着いたものを期待してしてしまった。と言う指摘があり、採点もそれが反映されたものとなった感じがします。
そうは言っても、昨年より点数はアップしていますし、そのスタイルを大幅に変える姿勢を高く評価している人もいました。
自己採点:91
アキナ
オール巨人 | 89 |
富澤たけし | 88 |
塙宣之 | 87 |
立川志らく | 90 |
中川家・礼二 | 91 |
松本人志 | 85 |
上沼恵美子 | 92 |
合計 | 622 |
2016年以来2度目のファイナリストとなったアキナ。
個人的に漫才師としての実力は今大会のファイナリストの中でもトップクラスと思って期待していました。
しかし、結果は今一つとなってしまいました。
やはり漫才は技術を感じさせる面が多々ありましたが、それが笑いの数には結びつかなかった印象です。
期待値の高さ、アキナの漫才師としての認知度もあったかも知れませんが、厳しい審査結果となりました。
自己採点:88
錦鯉
オール巨人 | 87 |
富澤たけし | 92 |
塙宣之 | 95 |
立川志らく | 95 |
中川家・礼二 | 92 |
松本人志 | 89 |
上沼恵美子 | 93 |
合計 | 643 |
M-1ファイナリストとして最年長であり、ベテランの登場と言う事で話題となった錦鯉です。
ネタは好みの別れそうなパチスロというものですが、それを実に分かりやすく落とし込んで、誰が見ても笑える内容として作り上げる事ができるのは、キャリア故の力でしょうか。
結果はファーストラウンド4位と健闘。
今大会はファーストラウンドの後半のコンビの多くが、息切れして行く空気の中で、ネタ順にも左右されていない印象を受けました。
4位でありながら、個人的に何度も繰り返しみたくなる魅力を感じさせるギャグや内容で、来年もチャンスがあるなら是非挑戦して欲しいと強く思いました。
鮮度すら関係ない強さを見せてくれそうな予感がしています。
オール巨人さんからは、後1年で漫才適齢期が終わると言われてしまっていましたが…。
自己採点:90
ウエストランド
オール巨人 | 88 |
富澤たけし | 91 |
塙宣之 | 85 |
立川志らく | 86 |
中川家・礼二 | 90 |
松本人志 | 90 |
上沼恵美子 | 92 |
合計 | 622 |
いいともレギュラーであったり、若手としては早く売れそうになっていた彼らですが、今一つ跳ねないままずるずる来てしまったウエストランド。
M1ファイナリストに名を連ねた時は、一体どんなネタをするのかと期待したものです。
ある意味で今大会一番読めないコンビでした。
しかし、結果は8位と振るわない結果となりました。
ボケの井口さんは静かに淡々とボケ続けて、それをパワフルなツッコミでもってガンガン展開していくスタイルの漫才ですが、ボケの井口さんが普通に噛みまくっていたのは気になりました。
恐らく彼のそう言った緩い姿勢というのは持ち味でもあるのかも知れませんが、さすがにこれまでM-1決勝の舞台で2度噛んでしまう人は初めて見たのである意味で印象に残ったコンビとなりました。
自己採点:86
ファーストラウンド結果
1 | おいでやすこが | 658 |
2 | マヂカルラブリー | 649 |
3 | 見取り図 | 648 |
4 | 錦鯉 | 643 |
5 | ニューヨーク | 642 |
5 | オズワルド | 642 |
7 | インディアンス | 625 |
8 | アキナ | 622 |
8 | ウエストランド | 622 |
10 | 東京ホテイソン | 617 |
ファーストラウンドの結果を見ると、おいでやすこがが頭一つ出ている他は、5組が640点台と言う僅差でベスト3を争っていた事が分かります。
今大会は良い意味で誰が勝っても不思議はない、面白い大会であった事が結果を見ても分かります。
最終決戦
ネタ順はファーストラウンドの3位から順番と言う事で、
1、見取り図
2、マヂカルラブリー
3、おいでやすこが
と言う順番となりました。
見取り図は正統派漫才。
マヂカルラブリーは電車のつり革につかまりたく無いネタ。
おいでやすこがはファーストラウンドと同様歌ネタ。
そして最終決戦の審査結果は以下の通り。
オール巨人 | 見取り図 |
富澤たけし | マヂカルラブリー |
塙宣之 | 見取り図 |
立川志らく | マヂカルラブリー |
中川家・礼二 | マヂカルラブリー |
松本人志 | おいでやすこが |
上沼恵美子 | おいでやすこが |
M-1グランプリ2020、優勝はマヂカルラブリーと言う結果でした。
M-1グランプリ2020を振り返っての感想
漫才の傾向の偏りが強かった2020年
ファーストラウンドの結果を見ても、最終決戦の票の割れ方を見ても、今年は誰が勝ってもおかしくない大会だったのだと思います。
もう一つは、これは審査員の方たちなどからも指摘があった通り、とにかくテンション高く激しいツッコミの叫ぶ系の漫才が多かったなと思います。
個人的な意見ですが、後半に行くにつれて、見ていて疲れを感じる所がありました。
結果的に、アキナやウエストランドが不発に終わったのは、そう言った傾向の漫才に、客席側が飽きてしまった部分があるのではないかと思います。
いつものM1グランプリで言うと、ファーストラウンドの後半に行くにつれて熱が高まり、最終決戦に残る組も多い傾向が強いと思います。
事実昨年のM1グランプリ2019では、最後のぺこぱが和牛を落として最終決戦に進出するという驚きのドラマがありました。
かつて敗者復活組がM-1の決勝をかき回すとされていたのも、ファーストラウンドのラストでネタ見せという、順番が大いに関係していた気がします。
しかし今年は見ていて、後半の人たちが明らかに不利な空気の中でのネタ披露となってしまっていた気がします。
ネタ順の重さを例年よりも感じさせる大会だったと思います。
オズワルドの漫才スタイル変更
オズワルドに期待されていた部分は昨年の様な落ち着いた漫才と言うものでしたが、実際の2020年のオズワルドは、かなりの方向転換によって、その直前のおいでやすこがと大差ない激しいツッコミのスタイルとなっていました。
もしオズワルドが昨年と同じスタイルでのネタ見せだとしたら、どうなっていたのかなと思ったりもします。
昨年のオズワルドの獲得点数が638で今年が642でした。
もちろん昨年と今年では全く空気も違えばミルクボーイのネタの後でもないので、単純な比較はできないです。
しかし、2020年、昨年と同じスタイルで、かつ磨きがかかったネタを披露していたら、大きく違う結果になっていた可能性があるのではないかと。
そうは言っても、昨年のM1終了後、オール巨人さんがYouTube上で、「オズワルドは技術もあるし面白いけど、M1では勝てんかな」と言う事を話していて、そう言う部分を踏まえてのスタイル変更だったのかも知れません。
実際面白さは増していたと思うので、後は更にこのスタイルを突き詰めた技術力がと場数の問題と言う気もしています。
そう言った大きなスタイルチェンジを評価している審査員も事実いました。
M-1グランプリ2019を忘れられない
昨年はやっぱりすごかったんだなあと、終わってみて改めて実感させられる大会でもありました。
これを言っては身も蓋もない話ですが、誰も2019年のミルクボーイには遠く及ばない気がしてしまいました。
間違いなく2020年のM-1グランプリも面白かったんですが、去年があったから今年も盛り上がって面白かった。と言う部分はあったかなと。
そしてもう一つは、今年のファイナリストのツッコミが全体に激しかった理由としては、松本人志さんが昨年ニューヨークに82点と言う2020年では見られなかった低い点数を付けた上に「ツッコミはもっと怒ってるのが好き」と発言された事が多大に影響している事はまず間違いないでしょう。
事実それをトップバッターで言われたニューヨークは「最悪や!」と本番中に発言してその場は会場は笑いが起きていましたが、その裏側で出番を待つファイナリストは誰一人笑っておらず、緊張感がひときわ高まったという事実から言っても、本当にその影響力の高さがうかがえます。
マヂカルラブリー優勝がもたらした事
そんな中でマヂカルラブリーの優勝は、ある意味感動を与えるものもあったと思います。
2017年に惨敗してからの今回の優勝と言うのはそれだけでも大きなドラマと言えます。
かつて似たような境遇でありながら優勝を勝ち取ったのは、チュートリアルくらいでしょうか。
それ位、M1グランプリ決勝の舞台で惨敗というのは尾を引くものなのだと思います。
マヂカルラブリーの場合は、順位や点数のみならず、審査員から徹底的に叩きのめされたという意味で、そこから這い上がっての優勝はすごい事だと思います。
正直私はマヂカルラブリーのネタは好きなんですが、2017年を思うと、優勝は無理だろうなと思っていました。
しかしそんな過去を吹っ飛ばしての優勝。
本当にマヂカルラブリーおめでとう!!!
個人的にはマヂカルラブリーのネタではベランダが好きなんですが、爆発力と言う観点では、決勝の舞台においてのネタはフレンチで間違ってなかったんだなあと思いました。
そして上沼さん、全体に審査が優しかったのも印象的でしたね。
上沼さんの「私は寝るっ!」がまた聞きたかったですが…。
上沼さんもオール巨人さんも、最低得点と最高得点の差が小さい事から言って、それだけ今年のファイナリストの実力が拮抗していたという事を示しているのかも知れません。
終わりに
すでにM-1グランプリ2021に向けての戦いは始まっているのだと思います。
2020年のM-1グランプリファイナリストは、来年もまた見たいと思わせるコンビが多かったので、その辺りも大いに期待したいと思います。
ご覧いただきありがとうございました。