
【第1回】スーパーマリオブラザーズ(FC/1985)
― 誰もが知る“ゲームの原点”、その完成度は今なお語り継がれる
1985年9月13日、任天堂から発売された『スーパーマリオブラザーズ』は、ファミコンというハードを国民的存在へと押し上げた伝説的タイトルです。アクションゲームとしての基本要素をすべて備えながら、今なお色あせない完成度を誇るこの作品は、「レトロゲーム」ではなく「今なお遊べる名作」として語るべき1本です。
プレイヤーは、主人公マリオを操作して、さらわれたピーチ姫を救うためにクッパの支配するキノコ王国を進んでいきます。全32ステージにわたり、横スクロール型のステージを走り抜け、敵を踏み、ブロックを叩き、アイテムを取って成長しながらゴールを目指すこのスタイルは、以降のアクションゲームのひな形を築きました。
特徴的なのは、操作性の滑らかさと物理挙動の自然さ。マリオのジャンプには慣性があり、加速と減速の感覚、踏んだ時の手応えまでがきちんと設計されています。当時のアクションゲームにはなかった「気持ちよさ」が、多くのプレイヤーを虜にしました。
加えて、地下、空中、水中とバリエーション豊かなコース設計、ワープゾーンや隠し1UP、クリボーから始まる“チュートリアル的な構成”など、ゲームデザインの教科書とされる要素がふんだんに詰め込まれています。
この作品のヒットにより、ファミコンは一気に家庭用ゲーム機市場を席巻し、世界1億本以上売れた「マリオ」ブランドの基盤が築かれました。単なる“最初のマリオ”ではなく、“世界中にゲームを広めた作品”として、今なお語られ続ける理由がここにあります。
🧠 ゲームデザイン的評価と“学び”

『スーパーマリオブラザーズ』が今なお「ゲームデザインの教科書」と呼ばれる理由のひとつが、その緻密に構成されたレベルデザインにあります。特に最初のステージ「1-1」は、プレイヤーに操作方法やルールを“自然に学ばせる”ように作られています。
ゲーム開始直後、右に進むと最初に出会う敵は「クリボー」。画面内に敵が1体だけ出現し、何も知らずにぶつかれば即ミスになります。しかし、すぐそばにあるジャンプで叩けるブロックや、スーパーマリオに変身するキノコなどを通じて、敵の避け方やパワーアップの仕組みを体験的に理解できるようになっています。説明書がなくても、プレイするだけでゲームの基本ルールを覚えられる設計になっているのです。
この“チュートリアルをチュートリアルと感じさせない”導線は、以降の任天堂作品や多くのアクションゲームに影響を与えました。ステージ構造やアイテム配置によってプレイヤーに考えさせずに“気づかせる”技術は、ゲームデザインという分野が確立される以前から、すでに本作の中で実践されていたのです。まさにゲーム黎明期における革新的な設計と言えるでしょう。
🎵 音楽と効果音の革新性
『スーパーマリオブラザーズ』が今なお「ゲームデザインの教科書」と呼ばれる理由のひとつが、その緻密に構成されたレベルデザインにあります。特に最初のステージ「1-1」は、プレイヤーに操作方法やルールを“自然に学ばせる”ように作られています。
ゲーム開始直後、右に進むと最初に出会う敵は「クリボー」。画面内に敵が1体だけ出現し、何も知らずにぶつかれば即ミスになります。しかし、すぐそばにあるジャンプで叩けるブロックや、スーパーマリオに変身するキノコなどを通じて、敵の避け方やパワーアップの仕組みを体験的に理解できるようになっています。説明書がなくても、プレイするだけでゲームの基本ルールを覚えられる設計になっているのです。
この“チュートリアルをチュートリアルと感じさせない”導線は、以降の任天堂作品や多くのアクションゲームに影響を与えました。ステージ構造やアイテム配置によってプレイヤーに考えさせずに“気づかせる”技術は、ゲームデザインという分野が確立される以前から、すでに本作の中で実践されていたのです。まさにゲーム黎明期における革新的な設計と言えるでしょう。
📈 売上・社会現象としての影響

『スーパーマリオブラザーズ』は単なるゲーム作品にとどまらず、社会現象と呼べるほどの影響を日本と世界にもたらしました。1985年9月にファミコン用ソフトとして発売されるや否や、口コミと雑誌広告を通じて子どもたちの間で急速に広まり、年末には“どこのおもちゃ屋にも本体がない”という“ファミコン品薄”時代の象徴的存在に。1983年に発売されたファミリーコンピュータが一気に家庭用ゲーム機市場の中心に躍り出た背景には、このソフトの成功が不可欠でした。
国内では累計約681万本(同梱版含む)を売り上げ、単体販売としても当時のファミコンソフトとしては異例の大ヒット。さらに北米では、任天堂がNES(Nintendo Entertainment System)を現地市場に導入する際、『スーパーマリオブラザーズ』を標準パッケージとしてバンドル。これが1980年代前半に崩壊していた北米ゲーム市場を再生させたとまで言われています。海外累計では4,000万本以上が販売され、後に『Wii Sports』などに抜かれるまでは“世界で最も売れたゲーム”という記録を長く保持していました。
また、ゲーム内のキャラクターたち──マリオ、ルイージ、クッパ、ピーチ姫、クリボーなど──は、その後さまざまなメディア展開にも進出。テレビアニメ化、グッズ化、漫画化、そして世界的なキャラクターとして定着していきます。現在では「マリオ」はミッキーマウスに並ぶ世界的キャラクターとされ、ゲーム業界のアイコン的存在となっています。
つまり『スーパーマリオブラザーズ』の成功は、任天堂という企業の躍進だけでなく、ゲームという文化が“子どもの遊び”から“世界的な産業”へと成長するきっかけとなった歴史的ターニングポイントだったのです。
🎮 裏技・豆知識

『スーパーマリオブラザーズ』は、発売当時から数多くの裏技や小ネタがプレイヤーたちの間で語り継がれてきたタイトルでもあります。その中でも代表的なのが、「ワープゾーン」の存在です。これはゲーム内で特定のエリアを通ることで、ステージを大きくスキップできる仕組みで、たとえば1-2の地下ステージでは、ステージ後半の天井を登るルートを通ることで「4-1」など先のワールドに一気に飛ぶことができます。開発側も意図して仕込んだこのギミックは、攻略性と自由度を高め、スピードラン文化の先駆けともいえる要素でした。
一方で、「無限1UP」のようなテクニックは、明らかにプレイヤーたちが自力で発見した“想定外の仕様”に近いものです。とくに有名なのが3-1で階段状に配置されたコース終盤のカメ(ノコノコ)を、特定の位置から連続して踏むことで、マリオの得点が上昇し、やがて1UPが連続発生するというもの。これにより、1ミスごとに0からやり直しになる本作において、実質“コンティニュー代わり”として重宝されました。ただし、連続で踏むタイミングや角度がシビアで、慣れていないと逆に失敗してミスになるリスクもあり、技術的な裏技として知られています。
さらに、「スタートボタンを押しながらAボタンを押してタイトル画面に戻ると、最後に到達したワールドの最初から再開できる」という隠しコンティニュー機能も存在。説明書などには明記されておらず、口コミや雑誌によって広まったこの情報は、当時の子どもたちの“ゲーム知識共有文化”を象徴するものでした。
そのほかにも、「ファイアマリオのまま小さい見た目になる」「ハンマーを持ったままクリアすると表示が乱れる」といった“見た目バグ”系の小ネタも多数存在し、本作のプログラムの緻密さと同時に、意図しない挙動の面白さも語り草となっています。こうした裏技や豆知識の豊富さも、本作が今なお語られ続ける理由の一つと言えるでしょう。
🧩豆知識|知っておきたい『スーパーマリオブラザーズ』の小ネタ3選
🔹 世界最高額のゲームソフトに
2021年、未開封・極美品の『スーパーマリオブラザーズ』(初期ロット)が、アメリカのオークションで約6600万円(当時の為替で約55万ドル)という驚異的な価格で落札されました。レトロゲームが単なる懐かしさを超え、コレクションや投資の対象として注目を集めた出来事でした。
🔹 ファイアマリオなのに小さい!?
特定のタイミングでパワーアップやダメージを受けると、“小さい見た目でファイアを撃てる”状態になることがあります。この「小さなファイアマリオ」は見た目と性能が一致しないため、通称“ちびファイアマリオ”として裏技好きに人気の現象でした。
あまりに印象的だったため、ギャグ漫画『ボボボーボ・ボーボボ』でもネタとして登場し、ツッコミの対象になりました。ゲームを越えてネタ文化にも浸透した例として、今でも語り草となっています。
🔹 海外版ではジャンプ力が違う?
同じ『スーパーマリオブラザーズ』でも、日本版と北米版(NES)では若干操作感が異なり、「ジャンプの高さや滑りやすさ」が微妙に調整されているという解析報告があります。これはハードの仕様差や、チューニングの違いによるものとされており、マニアの間では比較検証の対象にもなっています。
🌍 海外展開・NESでの評価

『スーパーマリオブラザーズ』は、国内にとどまらず北米ゲーム市場を再生させた立役者としても広く評価されています。1985年、任天堂は北米市場向けに「Nintendo Entertainment System(NES)」をリリースしました。当時、アメリカでは1983年のいわゆる“ビデオゲームクラッシュ”によって、ゲーム業界への信頼が地に落ちていた状況でした。そこで任天堂は、単なる“ゲーム機”ではなく“エンターテインメントロボット”としてNESをパッケージングし、同梱ソフトとして『スーパーマリオブラザーズ』を組み込む戦略を打ち出します。
この決断が功を奏し、マリオはアメリカの子どもたちの心を瞬く間に掴みました。日本では“品薄”が続く中、北米でも売上は急増し、累計販売本数は全世界で4,000万本以上を記録(バンドル含む)。一時期は「世界で最も売れたゲームソフト」としてギネスにも登録されていたほどです。また、北米ではテレビCMや雑誌広告を駆使したプロモーションが功を奏し、マリオは瞬く間に“ゲーム界のミッキーマウス”と呼ばれるほどの国民的キャラクターに成長していきました。
NES版マリオには、日本版とは微妙に異なるチューニング(ジャンプ感覚やBGMテンポの差異)があり、地域ごとのハード性能やテレビ規格(NTSC/PAL)への最適化によって生まれた違いも、マニアの間では分析対象となっています。また、欧州版(PAL地域)ではフレームレートの影響により全体の動作がやや遅く感じられる仕様となっており、同じマリオでも「国によってプレイ感覚が変わる」という珍しい現象も話題となりました。
このように『スーパーマリオブラザーズ』は、単なる名作ゲームにとどまらず、ゲーム業界を再構築した歴史的作品として、海外でも非常に高く評価されているのです。
🌍 地域によって“操作感”が変わる?マリオの隠れた仕様違い

実は『スーパーマリオブラザーズ』は、遊ぶ国によって“プレイ感覚”が微妙に異なる作品でもあります。
これは、当時のテレビ規格(NTSC:日本・北米、PAL:欧州など)の違いが影響しており、PAL版では画面の描画速度が遅いため、全体の動きや音楽のテンポもややスローに感じられます。
その結果、ジャンプの高さやランのスピードも変化し、操作の手応えに違いが生まれました。
この仕様はマニアの間でよく知られており、スピードラン大会では「どのバージョンか」が成績に大きく影響するほど。たとえ同じゲームでも、遊ぶ環境によって攻略法や感覚が変わるという、当時ならではの興味深い現象です。
📺 マリオ以降に与えた影響|“ゲームの設計図”になった伝説の作品
『スーパーマリオブラザーズ』は、単なるヒット作にとどまらず、後続のゲームに多大な影響を与えた“原点”とも言える存在です。とくに、横スクロール型アクションゲームの構造や操作感、難易度設計において、本作が作り出したフォーマットは、今なお数多くのゲームに受け継がれています。
たとえば、「ジャンプで敵を倒す」「ステージを右へ進むことでゴールを目指す」「コインやアイテムによる報酬システム」といった基本要素は、その後のアクションゲームの“お約束”となりました。加えて、1-1ステージの構成は“チュートリアルを入れずとも自然に操作方法を学べる”デザインとして、世界中のゲーム開発者に今も教材のように研究され続けています。
また、キャラクター性の強さや明快なビジュアルも、以降のゲームが“マスコットキャラ”を重視する流れを生むきっかけとなりました。ソニック(セガ)、ロックマン(カプコン)、カービィ(HAL研)なども、マリオの成功をヒントに誕生した側面があります。
3Dゲーム時代においてもその影響は色あせておらず、『スーパーマリオ64』に代表される立体アクションの基本操作、「スティックで移動、ジャンプで探索」という文法は、現在のオープンワールド系タイトルにも通じています。
つまりマリオは、ジャンルの壁を越えて「ゲームの遊び方そのもの」を定義づけた存在であり、多くの開発者が“目指す基準”として今も尊敬を寄せる、まさにゲームの礎(いしずえ)なのです。
📊 評価まとめ:当時の雑誌から今のユーザーまで

発売当時、『スーパーマリオブラザーズ』はファミコンソフトとしては異例の大ヒットを記録し、ゲーム雑誌でも高く評価されました。特に1-1のステージ構成は「説明不要で操作を学べる革命的な設計」として、業界関係者の間でも称賛されています。
ただし、現在のような点数制の「ファミ通クロスレビュー」は導入前の時期だったため、初代マリオには明確なスコアは残されていません。
一方、シリーズ作『スーパーマリオブラザーズ3』は35点(プラチナ殿堂入り)を獲得しており、シリーズ全体として高い評価を受けていたことがうかがえます。
その後も、『スーパーマリオブラザーズ』は数々のランキングで高評価を獲得。たとえばファミ通の「読者が選ぶ伝えたいゲーム」では第1位に輝き、海外メディアIGNの「歴代ゲームTOP100」でも2005年に1位に選出されました。
また、Nintendo Switch Onlineでの復刻プレイを通じて、現代のプレイヤーからも「今遊んでもまったく色あせない」と再評価されており、発売から40年近く経った今もなお、第一線で語られるレジェンド作品として愛されています。
最初のクリボーは、プログラムの都合で“踏まれるため”に生まれたって知ってた?