『愛戦士ニコル』は、1987年4月24日にコナミから発売されたファミリーコンピュータ ディスクシステム用のアクションゲームです。
古い紹介記事では「知る人ぞ知る迷作」「ほとんど宣伝されなかったゲーム」と語られることもありますが、そこまで単純ではありません。当時の販促チラシやキャラクターカード企画は確認できますし、2023年にはKONAMI公式のファミコン音楽CD-BOXにも本作の楽曲が収録されています。
では、『愛戦士ニコル』は実際にはどんなゲームだったのか。発売時期、ゲーム内容、当時のディスクシステム事情、現在まで残っている資料を分けて見直します。
『愛戦士ニコル』の基本情報
| タイトル | 愛戦士ニコル |
|---|---|
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ ディスクシステム |
| 発売日 | 1987年4月24日 |
| メーカー | コナミ |
| ジャンル | 見下ろし型の探索アクション |
発売日は1987年4月24日。ファミ通の発売スケジュールにも同日の作品として記録されています。
ディスクシステムそのものが発売されたのは1986年2月21日です。したがって、本作は「ディスクシステム末期の作品」というより、発売から約1年2か月後に登場したタイトルと見る方が正確です。
ニコルはヒロインではなく主人公
タイトルだけを見ると「ニコル」が女性キャラクターの名前にも見えますが、主人公はニコルという少年科学者です。
物語では、ニコルが作った異次元空間移動装置に関わる事件が起こり、恋人のステラが連れ去られます。ニコルは装置を完成させ、ステラを取り戻すために冒険へ向かいます。
旧記事には「ヒロイン・ニコルを救出する」と読める記述がありましたが、これは人物関係が逆でした。ニコルが主人公、ステラが救出対象です。
ゲームは「横スクロール」ではなく見下ろし型の探索アクション
『愛戦士ニコル』の画面は、基本的にトップビューです。上下左右の画面端へ移動すると次のエリアへ切り替わり、一部ではスクロールする区画もあります。
全7ステージで構成され、各ステージでは3つの「クリスタルダイヤモンド」を探して集めることが大きな目的になります。敵を倒しながらマップを歩き、道を探し、必要なアイテムを回収して先へ進む作りです。
現在のジャンル名へ無理に置き換えるなら探索アクションに近いものの、「メトロイドヴァニアの原型」とまで言い切る必要はありません。横方向に一本道を進むゲームでもなく、広いマップを探索して目的物を集める、1980年代らしい見下ろし型アクションとして見る方が分かりやすいでしょう。
『ゼルダの伝説』と似て見えるが、遊びの重心は違う
見下ろし視点、画面切り替え型のマップ、探索しながら目的物を探す構造から、初代『ゼルダの伝説』を連想しやすい作品です。
ただし、ダンジョン攻略と謎解きを中心にした『ゼルダ』とまったく同じではありません。『愛戦士ニコル』は敵との接触やショットを使った戦闘など、アクションの比重が高く、ステージごとに必要なものを探していく構造になっています。
「ゼルダに似ている」で終えるより、見下ろし型探索ゲームがまだ一つの定型へ固まり切っていなかった時代に、コナミが別方向から組み立てた一本と見る方が、本作の立ち位置を捉えやすくなります。
「ほとんど宣伝されなかった」は言い切れない
本作について、「広告も販促もほぼなかったため埋もれた」と説明されることがあります。しかし、少なくとも確認できる当時資料だけでも、その断定はできません。
現存する販促チラシには『愛戦士ニコル』が掲載されており、パッケージにはニコル、ステラ、未来メカなどを描いたオリジナルのキャラクターカードを封入する企画も案内されていました。
したがって、「販促が存在しなかった」というより、当時どの程度の規模で宣伝され、どれだけ届いたのかを現在の資料だけでは数値化できないとするのが妥当です。
雑誌への掲載量、テレビCMの放映状況、販売本数なども、確認できる一次資料なしに「少なかった」と断定しません。
1987年は「ディスクシステム後期」ではない
もう一つ修正しておきたいのが発売時期です。
ディスクシステムは1986年2月21日に発売され、その同日に『ゼルダの伝説』も登場しました。『愛戦士ニコル』は1987年4月発売なので、ハード登場からまだ約14か月です。
1987年には『リンクの冒険』をはじめ、ディスクシステム向けタイトルが継続して発売されています。本作を「ディスクシステム後期のひっそりした作品」と説明すると、時代位置を必要以上に後ろへずらしてしまいます。
コナミの1987年前後は、ディスクシステムでもかなり多彩だった
当時のコナミは、ファミコン/ディスクシステムで『悪魔城ドラキュラ』『エスパードリーム』『グリーンベレー』『迷宮寺院ダババ』『月風魔伝』など、ジャンルの異なる作品を次々に展開していました。
『愛戦士ニコル』も、その中の一つです。「コナミらしくないから主流から外された」と推測するより、当時のコナミがディスクシステム上でさまざまな形式のゲームを試していた流れの中に置く方が自然です。
実際、KONAMIが2023年に発売した13枚組CD-BOX「ミュージック フロム コナミアンティークス ~ファミリーコンピュータ~」では、『愛戦士ニコル』も収録44タイトルの一つに選ばれています。
音楽は現在も公式アーカイブに残っている
『愛戦士ニコル』を語るうえで、BGMは無視できません。
プロジェクトEGG系の音楽商品「コナミ・ファミコン・クロニクル Vol.1 ディスクシステム編」では、『愛戦士ニコル』から8曲が収録されています。
さらに前述のKONAMI公式CD-BOXにも作品名が並んでいます。ゲームそのものの現行機向け復刻とは別ですが、少なくとも音楽史の面では「完全に忘れられた作品」と言うことはできません。
いま見ると何が面白いのか
『愛戦士ニコル』を今から見る価値は、「実は隠れた大名作だった」と持ち上げることではありません。
面白いのは、1987年という時期に、見下ろし型の広いマップ、アクション戦闘、目的物の探索、SF的な設定を一つにまとめようとしていた点です。
初代『ゼルダの伝説』の大成功後、探索型ゲームの作り方がまだ固定していなかった時代に、コナミがどのような回答を出したのか。その一例として見ると、作品の位置がかなり分かりやすくなります。
一方で、現代のゲームのように目的地や次にやることが細かく表示されるわけではありません。マップを覚え、自分で道を探すことそのものが遊びになっているため、現在の感覚では不親切に感じる部分もあります。
そこを「味」と見るか「遊びにくさ」と見るかで評価が分かれるタイプの作品です。
「幻の迷作」ではなく、資料の残る1987年のコナミ作品として見る
『愛戦士ニコル』を「幻の迷作」と呼ぶと、いかにも宣伝されず、誰にも知られないまま消えた失敗作だったように見えます。
しかし実際には、当時の販促資料が残り、攻略・ゲーム情報も確認でき、後年には音楽が商品化されています。現在の知名度が『グラディウス』や『悪魔城ドラキュラ』ほど高くないことと、「記録に残らなかったゲーム」であることは別です。
評価を盛る必要も、無理に「忘れられた理由」を作る必要もありません。1987年のディスクシステムで、コナミが作った一風変わった探索アクション。それだけでも、ゲーム史の中で十分に面白い一本です。
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