マンガレビュー

『ブランクスペース』1巻レビュー|なぜ「見えないもの」を描く漫画はこんなに面白いのか?

ブランクスペース1巻レビュー|透明な能力とショーコ・スイの友情を考察

透明な傘を差している人がいたら、どうやって気づくだろう。

傘そのものは見えない。でも雨が降っているのに、その人だけが濡れていない。頭上の何もない場所で雨粒が遮られている。そんな光景を見たら、そこに何かがあると考えるかもしれない。

熊倉献の『ブランクスペース』は、そんな不思議な出来事から始まる漫画だ。

主人公は、どこにでもいそうな女子高生の狛江ショーコ。ある雨の日、同級生の片桐スイが「想像したものを、目に見えない実体として作り出せる」という能力を持っていることを知る。

透明な傘、風船、さまざまな道具。最初は二人で秘密の遊びを始めるような楽しさがある。しかし物語は、ただの不思議な日常にはとどまらない。学校での孤立やいじめが重なり、スイの想像力は少しずつ危険な方向にも向かい始める。

『ブランクスペース』第1巻が面白いのは、見えない物体を描くという発想そのものが、やがて「目には見えない他人の気持ち」を考える物語へつながっていくところだ。

今回は第1巻に収録された第1~5話を対象に、能力の仕組み、ショーコとスイの関係、漫画ならではの描写、そして物語が不穏な方向へ変わる理由を掘り下げたい。

※第1巻の展開に触れます。いじめや危険な物体の生成に関する話題も含みますが、第2巻以降の重要な展開や本編の結末には踏み込みません。

『ブランクスペース』はどんな漫画?

『ブランクスペース』は、熊倉献が描くSF漫画。2020年8月にヒーローズの漫画サイト「コミプレ」で連載が始まり、単行本は全3巻で完結している。

出版社は本作を、女子高生二人の出会いを描く「SFガール・ミーツ・ガール」と紹介している。

ただし、特殊能力を使って敵と戦うような、一般的な超能力バトルものとはかなり違う。

スイの能力は、人には見えないものを作ること。ショーコはその力に驚き、強い好奇心を抱く。二人は親しくなるが、それぞれの学校生活がずっと平穏に続くわけではない。

作画も独特だ。人物は比較的すっきりした線で描かれ、日常の会話には肩の力が抜けたような雰囲気がある。その一方で、突然現実にはない光景が差し込まれたり、画面の何も描かれていない部分が意味を持ち始めたりする。

不思議な設定を楽しめるだけでなく、漫画の描き方そのものに興味がある人にも向いている作品だ。

第1巻の基本情報

項目内容
作品名ブランクスペース 1
著者熊倉献
発行ヒーローズ
レーベルヒーローズコミックス ふらっと
発売日2021年1月15日
判型・ページ数B6判・160ページ(紙版)
ISBN9784864687775
紙版定価715円(税込・出版社書誌表示)
第1巻の収録範囲第1話~第5話
シリーズ状況本編全3巻完結

書誌情報は小学館クリエイティブの公式ページで確認できる。なお、電子版はストアによって162ページ、792円(税込)などと表示される。紙版とはページ数の数え方や販売価格が異なるため、購入する形式を確認してほしい。

第1巻のあらすじ|雨の日の出会いから始まる「空白」の物語

ある雨の日。女子高生の狛江ショーコは、同級生の片桐スイが、傘も持たずに雨をしのいでいることに気づく。

正確には、傘を持っていないわけではなかった。スイの頭上には、目には見えない傘が存在していたのだ。

スイには、頭の中で想像したものを現実に作り出す能力があった。ただし、生み出したものは透明で、本人にも普通の物体のようには見えない。何でも思い浮かべれば作れるというわけでもなく、その仕組みを理解し、組み立てられる必要がある。

ショーコはこの秘密に興味津々。スイとの距離を一気に縮め、二人は親しくなっていく。

スイが作る見えない道具は、最初のうちは秘密のおもちゃのようだ。物を作るために図書館で調べたり、想像した物体の性質を確かめたりする。そのやり取りには、放課後に友達同士で何かを試して遊んでいるような楽しさがある。

ところが、学年が進み、二人が別々のクラスになると状況は変わってくる。

スイは学校でいじめに遭い、心の中に不満や怒りをため込むようになる。見えないものを作る能力も、それまでのように楽しい道具だけを生み出すとは限らなくなる。

友達になったからといって、相手の苦しみまで全部分かるわけではない。ショーコはスイの変化に気づき、どう向き合えばいいのかを考えることになる。

最初は二人だけの秘密だった「空白」が、少しずつ周囲の現実へ影響を及ぼし始める。第1巻は、そんな物語の変化を収めた一冊だ。

なぜ「見えないもの」を描く漫画が面白いのか?

この作品で最初に驚かされるのは、何も描かれていない場所に、確かに物体が存在しているという発想だ。

普通の漫画なら、傘が必要な場面では傘を描く。読者はその絵を見て、人物が何を持っているのかを理解する。

しかし『ブランクスペース』では、傘そのものを描いて見せることができない。見えないという設定なのだから、はっきりとした輪郭を描けば、作品の約束事が崩れてしまう。

そこで、傘の周囲で起きている現象が重要になる。

雨が降っている。けれど、ある場所だけ雨が遮られる。人物の手や体の位置から、そこに何かがあると推測できる。

物体を直接描かなくても、周囲への影響を描けば存在を伝えられる。

これは、文字だけで「透明な傘があった」と説明するのとは違う面白さだ。読者は人物と同じように、目の前の不可解な現象から何が起きているのかを考える。

第1話の導入は、スイの能力を説明すると同時に、この漫画の読み方まで教えている。

余白が「何もない場所」ではなくなる

漫画では、描かれていない部分にも役割がある。

人物の周囲の空白は、背景を省略した場所かもしれない。視線を誘導するための余白かもしれないし、何も起きていない静かな時間を表している場合もある。

ところが本作を読むと、その空白に別の可能性が生まれる。

何も描かれていないからといって、何も存在しないとは限らない。

スイが作ったものがどこにあるのか、次に何へ触れるのか。読者は何も描かれていない部分にまで注意を向けるようになる。

これは能力の設定と漫画表現が、うまく重なっているところだと思う。

派手なエフェクトを描き込んで超能力を見せるのではなく、描かないことによって超能力を成立させる。絵の情報を減らすことが、そのまま物語の仕掛けになっている。

スイは何でも作れる? 透明な能力の仕組みと制約

スイの能力は非常に強力だが、思い浮かべたものなら何でも無条件に生み出せるわけではない。

重要なのは、物体の仕組みを理解し、頭の中で組み立てられることだ。

この制約があるおかげで、能力は単なる魔法とは少し違ったものになっている。

例えば、見た目が分かっていても、内部の仕組みを知らない道具がある。複雑な物体を作りたいなら、図鑑や本を読んで構造を調べなければならない。

スイが図書館へ通い、物について調べることには、実際に意味がある。知識を増やすほど、作り出せるものの可能性も広がるからだ。

この作品には、想像力という言葉だけでは説明しきれない面白さがある。

自由に思い描く力と、それを形にするための知識は同じではない。スイは想像するだけでなく、調べ、理解し、頭の中で組み立てる。その過程が能力の一部になっている。

疑問第1巻で分かること
何を作れる?頭の中で構造を理解して組み立てられる物体
作った物は見える?通常の物体のようには見えず、透明な状態で存在する
触れられる?触れることができ、物理的な働きも持つ
ずっと残る?作ったときの記憶が曖昧になると消えていく性質がある
危険な物も作れる?能力は安全な道具に限定されていない

ただし、物体の大きさ、距離、質量、持続時間などについて、現実の機械の仕様表のように細かな上限が定義されているわけではない。説明されていない条件まで推測で補う必要はないだろう。

能力の使い方を考えるときには、何が作れるかだけでなく、スイが何を作ろうと考えるかにも目を向けたい。

同じ能力でも、楽しんでいるときと追い詰められているときでは、作りたくなるものが変わるからだ。

ショーコとスイ|正反対の二人をつなぐもの

ショーコとスイは、性格がよく似た二人ではない。

ショーコは好奇心が強く、面白そうなことがあれば近づいていく。スイの秘密を知ったときも、怖がって距離を置くのではなく、その能力で何ができるのかを知りたがる。

一方のスイは内向的で、周囲との関わり方も慎重だ。読書や物事を調べることに親しみ、頭の中には多くの知識と想像を抱えている。

この二人の関係で面白いのは、超能力を持っていないショーコの方が、思いつきで世界を広げていくように見えることだ。

スイには想像を現実にする力がある。しかし、何を作るかという発想を誰かと共有すると、そこには一人で考えているときとは違う可能性が生まれる。

ショーコが能力の使い道を面白がり、スイが自分の知識でそれを具体化していく。二人が一緒にいることで、初めて成立する遊びがある。

ここで重要なのは、スイの力をショーコが利用しているだけではないこと。

それまで自分一人の秘密だった能力が、誰かと笑ったり、驚いたり、考えたりするためのものになる。スイにとっても、ショーコとの出会いは日常の変化になっている。

超能力を持たない少女を物語の入口にしたのも、意味のある選択だと思う。

最初からスイの内面だけを描いていたら、読者は能力を使う側の事情を先に知ることになる。しかし、ショーコの視点で始まるからこそ、読者も彼女と一緒に透明な傘の秘密を発見できる。

不思議な能力を持つ人ではなく、その能力を初めて知った人を入口にする。この構成によって、見えないものの不思議さが際立っている。

第1巻の転換点|楽しい想像が、なぜ危険なものに変わるのか

第1巻の前半には、二人の出会いを楽しむ余裕がある。

透明な物体を作れるなんて、普通なら想像するだけで楽しい。見えない傘を使ってみたいし、風船を作ったらどうなるのかも気になる。スイの能力は、最初のうちは秘密の遊び道具に近い。

ところが、進級によってショーコとスイが別々のクラスになり、スイはいじめに遭うようになる。

ここから、作品の空気が変わっていく。

それまで楽しい道具を生み出していた力が、怒りや不安と結びつく。スイが何を考え、何を作ろうとしているのかが、ショーコにも簡単には分からなくなる。

大切なのは、能力そのものが突然別のものになったわけではないことだ。

想像したものを実体化するという性質は同じ。それを使う本人の置かれた状況が変わってしまった。

だからこそ、この展開には単なる「超能力が暴走した」という説明では片づかない部分がある。

楽しい空想も、腹立たしい想像も、どちらも人間の頭の中に生まれる。普通なら想像するだけで終わることが、スイの場合は実体を持ってしまうかもしれない。

本作で怖いのは、強大な力を持つ悪役が現れることではない。

追い詰められた人が頭の中で思い浮かべるものに、現実を変える力があること。その危うさが、学校での出来事と重なってくる。

友達になっても、相手の苦しみが全部分かるわけではない

ショーコはスイの秘密を知っている。透明な物を作る能力について、周囲の人たちよりもずっと詳しい存在だ。

しかし、能力を知っていることと、相手の気持ちを理解していることは同じではない。

別々のクラスで過ごしている間に何が起きていたのか。スイが誰と話し、どんな扱いを受け、何を考えていたのか。ショーコには見えていない部分がある。

ここで、透明な物体という設定が別の意味を持ち始める。

目の前に確かに存在するのに、見えないものがある。

スイが作った傘もそうだが、ショーコの知らないところでスイが抱えている苦しみも、同じように簡単には見えない。

もちろん、現実の感情と超能力による物体は同じではない。それでも、二つを重ねて読むと、本作の設定が人間関係の描写にもつながっていることが分かる。

この漫画の「空白」は、ただ絵に何も描かれていない場所だけを意味するわけではないのかもしれない。

第1巻の5話をどう読むか|「文学」へつながる構成

『ブランクスペース』第1巻には、第1話「緑茶も紅茶も」から第5話「文学」までが収録されている。

話数タイトル注目したい変化
第1話緑茶も紅茶も透明な傘をきっかけに、二人が出会う
第2話風船能力の性質と、スイが抱える感情が少しずつ見えてくる
第3話夏そして春学校生活の変化と、二人の距離の変化
第4話多足類スイの問題が深刻になり、能力の危険な側面が強まる
第5話文学本や物語から着想を得ることで、想像の方向が変わっていく

この並びで特に面白いのは、最後の第5話が「文学」というタイトルになっていることだ。

スイにとって、読書は単なる趣味ではない。知識を得ることは、作れる物体の種類を増やすことにもつながっている。

しかし、文学作品に描かれるものは、必ずしも現実の道具や機械ばかりではない。

存在しない人物、奇妙な生き物、あり得ない出来事。小説や詩は、現実の物体とは違う方向へ想像力を広げてくれる。

第5話では、スイが文学から着想を得ようとする姿が描かれる。そこには、現実の道具の構造を調べることとは違う想像の広がりがある。

第1巻の前半で示された能力は、ものを作る仕組みに詳しくなればなるほど便利になるように見えた。しかし終盤では、物語や文学に触れることも新しい可能性を開く。

これは本作が単なる科学的な道具作りの話ではなく、「人間は何を想像できるのか」を考える漫画でもあることを示している。

なお、第2巻は第6話「比喩・変身・銃」から始まる。第1巻の最後に生まれた発想が、その後どのような結果になるのかについては、ここでは踏み込まない。

作者・熊倉献が描く、少し苦い青春

『ブランクスペース』の雰囲気を考えるうえで、作者の発言も参考になる。

2021年に『anan』へ掲載されたインタビューで、熊倉献は本作の制作について、いわゆる爽やかな青春ものへの距離感や、学生時代に楽しい思い出ばかりがあるわけではない人にも楽しめる作品を描きたいという考えを語っている。

実際、本作には青春漫画にありがちな「友達ができたから、もう大丈夫」という単純な解決がない。

ショーコとスイが出会い、親しくなったことは確かに良い出来事だ。二人が一緒に遊ぶ時間には、読んでいて気持ちが軽くなるような楽しさがある。

しかし友達がいることによって、学校にある嫌なことがすべて消えるわけではない。

スイの内面には、ショーコが知らない部分もある。二人が仲良くなったあとも、その問題は残り続ける。

だから、この作品の友情は都合のよい救済装置にはなっていない。

友達と笑える時間があることと、つらい状況に置かれていることは両立してしまう。その当たり前で厄介な現実を、超能力を持つ少女の物語に組み込んでいる。

この少し苦い青春の描き方が、『ブランクスペース』を単なる不思議な能力の漫画では終わらせていない理由だと思う。

作者の制作背景については、『anan』に掲載された熊倉献のインタビューでも確認できる。

『ブランクスペース』1巻の長所と気になる弱点

この第1巻で評価したいのは、能力の珍しさと人物の感情が別々になっていないことだ。

見えない傘は、読者に世界の不思議さを教える入口になる。風船や道具は、二人が親しくなるための遊びにもなる。危険なものを作ろうとする発想は、スイの抱えた怒りや不安と結びつく。

同じ設定が、物語の進行によって違う意味を持つ。この使い方がうまい。

また、透明な物体を読者へ伝えるために、周囲の反応や物理的な影響を利用できることも強みだ。超能力の演出を派手にすればするほど面白くなる、という考え方とは正反対の作り方である。

一方、この作品には人を選ぶ部分もある。

日常SFだと思って読むと、途中からかなり空気が変わる

最初の雨の日の出会いや、二人で能力を面白がる場面には、軽い読み味がある。

しかし第1巻の途中から、学校でのいじめや危険な想像が物語の中心へ入ってくる。

能力を使って遊ぶ、穏やかな日常の話が続くと思っていると、この変化には戸惑うかもしれない。特に、いじめを扱う話が苦手な人には注意が必要だ。

ただし、刺激の強い場面を次々に見せるホラー作品とは方向性が異なる。緊張感はあるが、その背景にあるのは少女たちの学校生活と人間関係だ。

超能力のルールを細部まで説明する漫画ではない

見えないものを作れるという能力は、仕組みを考え始めると疑問がいくらでも浮かぶ。

どこまで大きなものを作れるのか。複雑な機械は動くのか。何をどこまで覚えていれば物体が残るのか。

本作には能力を使ううえでのルールがあるものの、あらゆる条件を技術資料のように説明する作品ではない。

厳密な超能力設定を検証するSFを期待する人には、説明が足りないように感じられる可能性がある。

一方、作品の中心を「何ができるか」ではなく「その力を持つ人が何を考えるか」に置いて読むなら、細かな仕様を説明しすぎないことにも意味が出てくる。

第1巻だけで物語全体が解決するわけではない

第1巻は160ページ、全5話。ショーコとスイの出会いから、能力が思わぬ方向へ向かうところまでを描く導入巻だ。

二人の関係や能力の可能性は大きく動くが、作品全体の謎や問題がこの一冊で解決するわけではない。

一冊で完結する短編のような読後感を求める人には、続きが気になるまま終わる構成が弱点になるかもしれない。

ただ、第1巻の中でも能力の意味はかなり変わっている。単なる長い設定紹介にはなっていないところは評価したい。

タイトルの「ブランクスペース」は何を意味する?

「ブランクスペース」というタイトルから、まず連想するのは何もない場所や空白だろう。

物語の中では、スイが作った透明な物体が、その空白に存在している。

見た目には何もない。しかし、触れれば確かにそこにある。

この意味だけでも、タイトルと能力の関係は分かりやすい。

ただ、第1巻を人間関係の物語として読むと、別の受け取り方もできる。

ショーコが知らないスイの時間。言葉にしていない感情。二人が別々のクラスで過ごす間に広がっていく距離。

それらも、外から見ただけでは簡単には分からないものだ。

つまりタイトルの「空白」は、スイの能力で作られた透明な物体を直接指すと同時に、人と人の間にある見えない部分を考える手がかりにもなる。

後者は第1巻から読み取れる一つの解釈であり、タイトルの唯一の正式な意味だと断定するものではない。

それでも、この二つの意味が自然に重なって見えるところに、作品名の面白さがある。

本編は全3巻完結|『ブランクスペース補遺』との違い

『ブランクスペース』の本編は、全3巻で完結している。

第3巻は2022年9月29日発売。本編の連載は全17話で、第1巻が第1~5話を収録している。

さらに、2025年9月16日には『ブランクスペース補遺』という関連書籍が発売された。

書籍位置づけ
ブランクスペース 1~3本編。第3巻で完結
ブランクスペース補遺本編の登場人物や空白たちを描くスピンオフ短編集

『ブランクスペース補遺』は本編の第4巻ではない。ショーコとスイの日常や、別の空白たちに関わる物語を収録した独立した作品だ。

これから読み始めるなら、まず本編の第1巻から順番に読むのが自然だろう。第1巻レビューの段階で『補遺』の具体的な内容を知る必要はない。

関連書籍の刊行情報は、ヒーローズ公式の『ブランクスペース補遺』発売案内でも確認できる。

どんな人におすすめ?

『ブランクスペース』第1巻は、変わった設定の漫画を探している人にはかなり魅力的な候補だと思う。

特に、少し不思議な日常と、その裏側にある人間の感情を描く作品が好きな人に向いている。

目に見えないものをどう漫画にするのか、という表現上の仕掛けを楽しむのもいいし、ショーコとスイという性格の違う二人の関係を追うのも面白い。

作品の発想を通じて漫画表現そのものに興味を持った人なら、『ルックバック』のレビューも関連して読める。あちらは絵を描く行為を通じた二人の関係、本作は見えない物体を使った二人の関係と、題材は違うものの、絵で何を伝えるかという点に共通する面白さがある。

また、不思議な設定を持つ作品との出会いを楽しみたいなら、『つらねこ』第1巻レビューで扱った世界観とも、別の方向からつながるだろう。ただし『ブランクスペース』の方が、学校での孤立や不安に踏み込む分、読み味は重い。

反対に、明るい日常だけが続く作品を読みたい人や、いじめを扱う展開が苦手な人には、慎重に薦めたい。

穏やかな作画に見えても、中身まで終始穏やかな漫画ではない。その点を知ったうえで読み始めた方が、本作の持つ独特な面白さを受け止めやすいと思う。

公式で第1話を無料試し読みできる?

『ブランクスペース』を初めて知った人には、まず第1話を見てほしい。

ヒーローズの公式漫画サイト「HERO'S Web(コミプレ)」では、第1話「緑茶も紅茶も」が公開されている。

HERO'S Web公式|『ブランクスペース』第1話「緑茶も紅茶も」を読む

雨の日の出会いを通して、スイの能力がどんなものなのか、ショーコがその秘密をどのように受け止めるのかを確かめられる。

一見すると何もない場所に、確かに物体がある。そんな変わった漫画の描き方が気に入るかどうか、第1話だけでも判断する手がかりになるはずだ。

LINEマンガにも作品の配信ページがあり、第1話の無料公開が案内されている。ただし、後続話の無料・有料条件は配信先で確認してほしい。

ブランクスペース 1巻

熊倉献/ヒーローズコミックス ふらっと。透明な物を作り出せる少女・片桐スイと、その秘密を知った狛江ショーコの出会いから始まる青春SF。第1~5話を収録した本編第1巻です。

価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

まとめ|「何も見えない」からこそ、見えてくるものがある

『ブランクスペース』第1巻の魅力は、想像したものを透明な物体として作れるという、ひとつの不思議な能力から多くの面白さを引き出していることだ。

第1話の透明な傘は、その象徴と言っていい。

何も描かれていない場所に物体がある。雨や人物の動きを手がかりに、読者はその存在を想像する。これは漫画ならではの仕掛けだ。

しかし第1巻が進むにつれて、気になってくるのは物体だけではなくなる。

ショーコはスイの秘密を知っていても、彼女の苦しみをすべて知っているわけではない。友達として近くにいても、見えない部分は残る。

その距離が、二人の関係を単純な友情物語にはさせない。

目に見えないものを現実に作るスイと、現実には存在しないものを自由に思い描くショーコ。二人の想像力は似ているようで違う。

そして、その想像力は楽しいものにも、危険なものにもなり得る。

何もないはずの場所を見つめるうちに、他人の心の中にも、簡単には見えないものがあると気づかされる。

『ブランクスペース』は、そんな読書体験を与えてくれる、少し不思議で、少し苦い青春SFだ。

まずは第1話の雨の日の出会いから、この漫画ならではの「空白」を確かめてみてほしい。

参考資料:小学館クリエイティブ『ブランクスペース 1』公式書誌/HERO'S Web公式連載ページ/朝日新聞「好書好日」掲載書評/『anan』熊倉献インタビュー/ヒーローズ『ブランクスペース補遺』刊行案内。書誌・刊行状況は2026年10月18日時点。作品分析は第1巻の収録範囲および確認可能な公式・公開資料に基づくもので、実本全ページの通読による数値採点とは区別しています。

-マンガレビュー
-, , , ,