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『ばらかもん』1巻レビュー|なぜ書道家・半田を「書道の練習」ではなく島暮らしへ放り込む?

ヨシノサツキ『ばらかもん』第1巻の表紙

『ばらかもん』1巻の半田清舟は、書道家です。

自分の書に強い自負があり、評価にも敏感です。

そんな半田が都会を離れ、五島列島で一人暮らしを始めます。

ところが島へ来ても、静かに書へ集中できるわけではありません。

琴石なるをはじめ、子どもや近所の人たちが次々と家へ入ってくる。

なぜ「自分の書」を探す書道家を、書道の練習ではなく島民との生活へ放り込むのか。

1巻では、半田の問題が筆の技術だけではなく、他人の評価と自分の書を切り離せなくなっていることとして見えてきます。

半田は「字が下手だから」島へ来たわけではない

半田には書道家としての技術があります。

だから島へ来て基礎から習い直す話ではありません。

問題は、自分の書へ向けられた批評を受け止められず、感情的に反応してしまうことです。

評価されたい。自分の実力を認めてほしい。

その気持ちが強いぶん、「自分は何を書きたいのか」より「どう見られるのか」が前へ出ます。

だから技術練習を増やすだけでは、同じところを回る可能性があります。

島では、半田が決めた予定どおりに一日が進まない

半田は一人で書に集中するつもりでも、島の生活はそうさせてくれません。

子どもが来る。近所の人が来る。予定外の用事が入る。

都会での半田が、自分の時間と空間をかなり管理していた人物だとすれば、島ではその管理が簡単に崩れます。

この「邪魔」が1巻では重要です。

半田は書道の問題を解決するために島へ来たのに、書道とは直接関係ない出来事へ何度も連れ出される。

そのたびに、自分の思い通りにならない相手と付き合わなければならなくなります。

なるは、半田を「正しく導く先生」ではない

琴石なるは、半田へ人生の答えを教える人物ではありません。

むしろ半田の都合を無視して家へ入り、動き回り、騒ぎを起こします。

だから「無邪気な子どもが疲れた大人を癒やす話」とまとめると、この二人の面白さが薄くなります。

半田から見れば、なるはまず面倒な存在です。

でも、その面倒さを完全に排除できない。

自分の思い通りにならない他人を、作品づくりの邪魔として切り捨てずに同じ生活へ残す。

それが、半田の島暮らしを単なる静養にしません。

「書道家の家」が、いつの間にか人の集まる場所になる

半田が住み始めた家は、本人にとって仕事場でもあります。

静かに書くための場所にしたいはずです。

ところが島の子どもたちにとっては、以前から入り込んでいた遊び場でもある。

同じ家を、半田と島民が違う意味で使っている。

この食い違いが、島での生活を象徴しています。

「ここは自分の場所だから、自分のやり方で使う」と押し切れない。

半田は家の使い方から、人との距離まで調整し直すことになります。

島の人たちは、半田を「有名な先生」としてだけ扱わない

半田は書道家として東京では評価を気にしていました。

しかし島では、周囲の人が彼を作品の肩書きだけで扱いません。

若い先生として見られ、近所の一人として用事へ巻き込まれます。

作品の出来が良いか悪いかとは関係なく、生活上の付き合いが発生する。

これは半田にとって、評価から逃げられるというより、評価とは別のところで自分が人に見られる経験です。

書道家という肩書きだけで自分を作れなくなることが、逆に書へ戻ったときの見方を変えていきます。

島暮らしを「田舎は温かい」で片づけない

1巻の島民は距離が近く、半田へよく関わります。

そのため「都会は冷たく、田舎は温かい」という話に見えやすい。

ただ、半田にとってその近さは最初から快適ではありません。

勝手に家へ入られることも、予定へ割り込まれることもある。

島の暮らしを理想化するのではなく、他人との距離が近すぎる不便さごとコメディにするから、半田が変わるきっかけに説得力が出ます。

書の変化を、いきなり「上達」として見せない

半田は島へ来たからといって、すぐ理想の字を書けるようになるわけではありません。

1巻で重要なのは、完成した答えより、書くときに持ち込む経験が増えることです。

人と関わる。外へ出る。腹を立てる。予想外のことに巻き込まれる。

書道とは無関係に見える時間が、半田の中へ残ります。

作品づくりと生活を切り離さないことが、1巻の「島へ送る」設定の意味です。

コメディでは、半田の「格好よく決めたい」が何度も崩される

半田は若く、見た目も整った書道家ですが、島ではあまり格好よく決まりません。

子どもに振り回され、慣れない生活で失敗し、感情をむき出しにする。

この崩し方があるため、彼のプライドが「高尚な芸術家の悩み」だけになりません。

読者は半田の未熟さを笑いながら、その未熟さが書へのこだわりとつながっていることも見ていきます。

弱点|1巻だけでは「書がどう変わるか」の答えはまだ遠い

1巻は、半田が島へ来て生活へ巻き込まれるところに多くの時間を使います。

書道の技法や作品制作を深く掘る芸術漫画を期待すると、生活コメディの比重がかなり大きいでしょう。

また、島民の距離の近さは作品の魅力でもありますが、現実ならかなり困る場面もあります。

半田が人との関わりを受け入れていく速度を、都合よく感じる読者もいるかもしれません。

それでも1巻では、答えを急がず「書く以外の時間を持つこと」自体を半田へ経験させるところに重点があります。

本編は18巻で完結。2023年に「19 日々」と実写ドラマ

『ばらかもん』本編は2018年12月発売の第18巻で完結しています。

その後、2023年7月には追加エピソードを収録した『ばらかもん 19 日々』が発売されました。

映像化は2014年のTVアニメに続き、2023年にフジテレビ系で杉野遥亮さん主演の実写ドラマが放送されています。

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まとめ|書道の答えを、書道の外へ探しに行く1巻

『ばらかもん』1巻の半田は、書道ができない人ではありません。

むしろ技術と自負があるからこそ、評価を否定されたときに大きく揺れます。

そこで作品は、さらに練習させるのではなく島へ送る。

なるたちに予定を崩され、書道とは関係ない時間を過ごし、自分の肩書きだけでは通じない場所で暮らす。

その経験が増えてから、半田はもう一度筆を持ちます。

1巻は「島で癒やされて自分を取り戻す話」ではありません。書道のことしか見ていなかった書道家へ、書道の外にある材料を無理やり増やす巻です。

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ばらかもん(1)

若き書道家・半田清舟が五島列島へ移り住み、琴石なるをはじめとする島民に生活をかき回されながら、自分の書と向き合い始める第1巻。

価格・在庫・版の違いなどは変動します。購入時は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

書誌情報

  • 作品:『ばらかもん』1巻
  • 著者:ヨシノサツキ
  • 出版社:スクウェア・エニックス
  • レーベル:ガンガンコミックスONLINE
  • 発売日:2009年7月22日
  • 判型:B6判
  • 定価:730円(税込)
  • ISBN:9784757526167

書誌・完結情報はスクウェア・エニックス公式、実写ドラマ情報はフジテレビ公式を基準に確認しています。

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