地震で運転中はどうする?急ブレーキ・停車場所・キーを残す条件を解説

車を運転している最中に大きな地震が起きたら、すぐブレーキを踏んで止まるべきなのか。それとも、ある程度走り続けた方が安全なのか。
さらに「地震で車を置いて逃げるときは、キーを付けたままにする」と聞いたことがあっても、盗難が心配で、本当にそんなことをしていいのか迷う人もいるでしょう。
結論からいうと、走行中にいきなり急ブレーキをかけるのは避け、周囲へ注意を促しながら徐々に減速し、大きな揺れを感じたら道路の左側へ安全に停止するのが基本です。
そして、キーを車内に残すのは「地震が起きて停止したら必ず」ではありません。警察庁が具体的にキーを残すよう示しているのは、車を置いて避難しなければならず、やむを得ず道路上に車を残す場合です。
結論|地震発生時は「急停止」ではなく、安全に減速して左側へ
運転中に緊急地震速報を受信したり、大きな地震に気付いたりしたときの流れを先に整理すると、次のようになります。
| 状況 | 基本となる行動 |
|---|---|
| 緊急地震速報を受信した | 慌てて急減速せず、ハザードランプで周囲へ注意を促しながら緩やかに減速 |
| 大きな揺れを感じた | 急ハンドル・急ブレーキを避け、安全を確認して道路の左側へ停止 |
| 停止した | 慌てて外へ飛び出さず、地震情報・交通情報と周囲の状況を確認 |
| その後も運転する | 道路損壊、信号停止、障害物などに十分注意 |
| 車を置いて避難する | できるだけ道路外へ移動。やむを得ず道路上に残す場合は左側へ寄せ、エンジンを止め、キーを車内に残し、ドアをロックしない |
ポイントは、これらが全部同じタイミングの指示ではないことです。
「地震が起きたら急いで路肩へ止め、キーを付けたまま車を捨てる」と一連の動作として覚えてしまうと、かえって危険な行動につながります。
緊急地震速報が鳴っても、いきなり急ブレーキを踏まない
スマートフォンやカーラジオから突然、緊急地震速報が流れると、反射的にブレーキを強く踏みたくなるかもしれません。
しかし気象庁は、自動車を運転中に緊急地震速報を見聞きした場合、慌ててスピードを落とさず、ハザードランプを点灯して周囲の車へ注意を促し、急ブレーキをかけずに緩やかに速度を落とすよう案内しています。
なぜすぐ止まらないのか。
自分の車では緊急地震速報を受信していても、後続車が同じ情報を把握しているとは限らないからです。前の車だけが突然急停止すれば、追突事故を起こす危険があります。
そのため、「速報が鳴った=その場で急停止」ではありません。まず周囲へ注意を促し、車の流れや道路状況を見ながら速度を落としていきます。
気象庁は、大きな揺れを感じたら道路の左側に停止するよう示しています。
なお、「急ブレーキをかけない」は、目の前で事故が起きた場合などの緊急回避まで禁止するという意味ではありません。地震に気付いたことだけを理由に、周囲を確認せず急停止しないということです。
一般道は「路肩」ではなく「道路の左側」が基本
地震時の運転について「路肩へ止める」と説明されることがありますが、一般道について警察庁が使っている表現は少し違います。
警察庁の「交通の方法に関する教則」では、大地震が発生したとき、急ハンドルや急ブレーキを避け、できるだけ安全な方法で道路の左側に停止させるとしています。
つまり、一般道で必ず「路肩」という場所を探して入らなければならないわけではありません。
周囲の車、人、自転車、道路の損傷などを確認しながら、安全に左側へ寄せることが優先です。
一方、高速道路についてNEXCO中日本は「左側路肩に停車」と明記しています。一般道と高速道路では、この表現を分けて覚えておくと混乱しにくくなります。
停止したら、すぐ車外へ飛び出さない
無事に車を止められたとしても、そこで慌ててドアを開けて外へ出るのは危険です。
地震直後の道路では、後続車がまだ動いているかもしれません。建物の近くなら、看板やガラスなどが落下する可能性もあります。
JAFは、車を道路の左側へ停止させた後、エンジンを止め、安全のため揺れがおさまるまで車外へ出ずに待機するよう案内しています。
その間に、ラジオ、スマートフォン、カーナビなどから地震情報や交通情報を確認します。
警察庁も、停止後はカーラジオなどで地震情報や交通情報を聞き、その情報と周囲の状況に応じて行動するよう示しています。
大切なのは、「止めたからすぐ避難」「止めたからそのままずっと車内」という二択ではなく、その場所にどんな危険があるのかを確認して次の行動を決めることです。
地震後は、そのまま運転を再開してもいい?
大きな地震が起きたら、停止した車は二度と動かしてはいけない――という決まりではありません。
警察庁の教則には「引き続き車を運転するとき」の注意事項も記載されています。
ただし、普段と同じ道路だと思って走り始めるのは危険です。
- 道路が陥没・損壊していないか
- 信号機が停止していないか
- 倒木や落下物などの障害物がないか
- 警察や道路管理者による交通規制が出ていないか
こうした点を確認しながら慎重に判断する必要があります。
したがって、地震が起きた瞬間に「車を捨てなければならない」と考える必要もなければ、揺れがおさまったからといって、すぐ通常どおり走り始めてよいわけでもありません。
キーを残すのは「車を置いて避難するとき」
地震時の車について特に誤解されやすいのが、「キーを付けたままにする」というルールです。
地震が起きて車を停止しただけなら、その時点で必ずキーを車内に置いて離れるわけではありません。
警察庁が具体的に示しているのは、「車を置いて避難するとき」の対応です。
まずは、できるだけ道路外へ移動する
車を置いて避難しなければならない場合、警察庁は、まずできるだけ道路外の場所へ移動しておくよう求めています。
大規模災害では、道路が救急車、消防車、警察車両、復旧作業車などの重要な通行路になります。一般車両が道路上に残れば、それだけ災害対応の妨げになる可能性があります。
道路上に残すしかない場合は、キーを車内へ
道路外へ移動できず、やむを得ず道路上に車を置いて避難する場合は、警察庁の教則で次のように示されています。
- 道路の左側へ寄せて駐車する
- エンジンを止める
- エンジンキーは付けたままにするか、運転席など車内の分かりやすい場所へ置く
- 窓を閉める
- ドアをロックしない
- 避難する人や災害応急対策の妨げになる場所へ駐車しない
つまり、正確には「地震が来たらキーを残す」のではなく、「道路上に車を残して避難せざるを得ないときにキーを残す」という順番です。
なぜキーを残して、ドアもロックしない?
理由は、災害対応の邪魔になったときに、その車を移動できるようにするためです。
NEXCO中日本も、大地震で車を離れる場合について、救護活動や事故処理に支障をきたすときは車を移動させる場合があるため、キーを残し、ドアをロックしないよう案内しています。
普段なら車を離れるときに鍵を掛けるのが当然ですが、大規模災害時に道路上へ残す車については、緊急車両の通行や救助・復旧活動を確保することが優先されます。
なお、NEXCO中日本は、車を離れる場合には貴重品を車内へ残さないよう呼びかけています。
スマートキーはどうすればいい?
現在は、鍵穴へ差し込むタイプではなくスマートキーの車も多くなっています。
この場合、「キーを付けたまま」という言葉だけを文字どおり受け取る必要はありません。
警察庁の教則では、エンジンキーについて「付けたままとするか、運転席などの車内の分かりやすい場所に置いておく」とされています。
スマートキーなら、ポケットへ入れたまま避難せず、運転席周辺など車を移動する人が見つけやすい場所に残す、という考え方になります。
道路外へ移動できた車も、必ずキーを残す?
ここも「必ず」とは書かない方が正確です。
警察庁の教則は、「できるだけ道路外の場所へ移動する」としたうえで、やむを得ず道路上に置いて避難するときの措置として、キーを残すことやドアをロックしないことを具体的に示しています。
そのため、駐車場など道路外へ安全に移動した場合まで、「全国共通で必ずキーを残さなければならない」と一般化するのは適切ではありません。
高速道路で地震が起きた場合はどうする?
高速道路では一般道以上に急停止が危険です。
NEXCO中日本は、地震を感じた場合、決して急ブレーキをかけず、ゆっくり減速して左側路肩へ停車し、エンジンを止めるよう案内しています。
また、大きなのり面の下やトンネルの出入口付近は、地震の規模によって崩落の危険があるため、可能な範囲で避けて停止するよう求めています。
停車後はハザードランプなどで後続車へ知らせ、警察や高速道路会社、道路情報板、ハイウェイラジオなどの情報を確認します。
やむを得ず車を離れる場合は、エンジンを切り、窓を閉め、ドアはロックせず、キーを残します。高速道路上にとどまるのは危険なので、周囲の安全を確認したうえでガードレールの外など安全な場所へ避難します。
大規模災害時には、高速道路の本線が緊急車両の通行に使われることもあります。「車を動かせる状態で残す」という考え方は、ここでも重要になります。
沿岸部では「車で高台へ逃げればいい」とは限らない
地震のあと、もう一つ判断を難しくするのが津波です。
海岸や川沿いにいて強い揺れを感じた場合などは、津波からの避難を急がなければならないことがあります。しかし、だからといって「車に乗って一斉に高台へ向かう」のが全国共通の正解ではありません。
内閣府は、地震・津波発生時には家屋の倒壊、落下物、道路損傷、渋滞、交通事故などのおそれがあるため、津波避難は徒歩を原則としています。
一方、避難場所までの距離や要配慮者の存在など、地域の事情によって自動車で避難せざるを得ない場合があることも認めています。
警察庁も、津波から避難するためやむを得ない場合を除き、避難のために車を使用しないよう示しています。
つまり、「津波なら絶対に徒歩」「津波なら必ず車で高台へ」のどちらも一律の答えではありません。地域の避難計画、道路状況、津波到達までの時間などを踏まえて行動する必要があります。
また、津波は海が引いてから来るとは限りません。海辺で「引き潮を確認してから逃げよう」と考えるのが危険な理由は、津波は海が引いてから来る?「引き潮を確認してから逃げる」が危険な理由で詳しく整理しています。
普段から「どこで止めるか」より、周辺の災害リスクを知っておく
実際の地震では、「左側へ寄せれば安全」とは限りません。
左側に崖がある、沿岸部を走っている、橋や道路自体が損傷しているなど、その場所特有の危険が重なることがあります。
普段よく走る道路や自宅周辺については、津波、土砂災害、洪水など、どの災害リスクがある場所なのかを平時に確認しておくと、地震後の判断材料になります。
なお、ハザードマップで色がついていない場所でも「絶対に安全」という意味ではありません。地図の見方については、ハザードマップで自宅に色がついていない=安全?「色なし」の本当の意味で確認できます。
よくある誤解を整理すると
| よくあるイメージ | 実際の考え方 |
|---|---|
| 速報が鳴ったらすぐ急停止 | 急停止せず、周囲へ注意を促しながら緩やかに減速する |
| 一般道でも必ず路肩へ | 警察庁の基本は「道路の左側」。高速道路は左側路肩 |
| 停止したらすぐ外へ逃げる | 慌てて飛び出さず、まず揺れと周囲の危険を確認する |
| 地震後は絶対に運転してはいけない | 状況によっては運転継続も想定されている。ただし道路損壊や信号停止などに十分注意 |
| 地震が来たら必ずキーを残す | 車を置いて避難し、やむを得ず道路上に残す場合にキーを車内へ残す |
| 津波なら車で高台へ逃げる | 徒歩避難が原則。地域事情によって自動車避難がやむを得ない場合もある |
まとめ|「止める」「降りる」「キーを残す」は別々に判断する
運転中に地震が起きたとき、最初に意識したいのは急ブレーキを避けることです。
緊急地震速報を受信した場合はハザードランプなどで周囲へ知らせながら緩やかに減速し、大きな揺れを感じたら安全を確認して道路の左側へ停止します。
停止後は慌てて車外へ飛び出さず、揺れがおさまるのを待ちながら地震情報や交通情報を確認します。その後に運転を続けるのか、車を置いて避難するのかは、道路や周囲の状況によって変わります。
そして、車を置いて避難する場合は、できるだけ道路外へ移動します。どうしても道路上へ残さなければならない場合は、左側へ寄せ、エンジンを止め、キーを車内の分かりやすい場所へ残し、ドアをロックしません。
「地震が来たら急停止」「地震が来たらキーを残す」と一つのルールで覚えないこと。
走行中なのか、停止した直後なのか、車を置いて避難する段階なのか。それぞれを分けて考えておく方が、実際の地震でも行動を選びやすくなります。