
【第4回】F-ZERO(SFC/1990)
1990年にスーパーファミコンと同時発売された『F-ZERO(エフゼロ)』は、任天堂が生み出した近未来レーシングゲームの金字塔です。重力を無視した“反重力マシン”が時速400kmを超えるスピードで疾走する世界観は、当時のゲームファンに衝撃を与えました。
SFCの新機能「モード7」を活かし、背景の拡大縮小・回転を駆使した立体的なコース表現が話題を呼び、「ゲーム機の進化を体感できる作品」として圧倒的な存在感を放ちました。操作はシンプルながら奥が深く、上級者向けのコース設計やスピン、ダメージ管理など、リプレイ性も高い1本となっています。
F-ZEROはその後のレーシングゲームや、後の『マリオカート』シリーズに多大な影響を与え、任天堂の未来志向を象徴するタイトルとも言われています。
🎮 ゲーム概要・特徴
『F-ZERO』は、スーパーファミコンの性能を最大限に活かした近未来型の超高速レースゲームです。プレイヤーは4種類のマシンから1つを選び、全15コース(全3リーグ)での優勝を目指します。舞台は「2200年代の地球外都市圏」で、マシンは地面から浮いた“反重力型”という設定。これにより、従来の自動車レースとは一線を画す滑らかな挙動とスピード感を実現しています。
最大の特徴は、SFCの「モード7」技術を用いた俯瞰視点の立体感ある背景スクロール。これにより、奥行きのあるコース表現とスピードの錯覚が生まれ、当時のユーザーは“次世代感”に興奮しました。また、各マシンには加速性能・耐久性・グリップの違いがあり、使いこなしには技術と戦略が求められるという奥深さも魅力です。
さらに、コース上にはダメージゾーンやジャンプ台、回復エリアなどが配置されており、単なるスピード勝負ではない緻密な駆け引きが展開されます。見た目の派手さだけでなく、やり込み要素も充実した1作です。
📅 発売当時の“時代背景”

1990年11月21日、スーパーファミコン(SFC)本体と同時発売されたローンチタイトルのひとつが『F-ZERO』です。当時のゲーム業界は、ファミコンの大ヒットを経て次世代機への期待が高まり、「より美しいグラフィック」「滑らかな動き」「広がる世界観」が求められていました。
その中で登場したSFCは、16ビットCPUやモード7といった新技術を搭載し、圧倒的な映像表現力を誇っていました。『F-ZERO』はその技術力をアピールする“技術デモ的役割”も担っており、「未来を感じさせるゲーム」として強烈なインパクトを残しました。
この時期、日本ではバブル経済がまだ続いており、家庭用ゲームへの投資も盛ん。TVゲームが“子どもの遊び”から“家族全体の娯楽”へと変わりつつあるタイミングでもありました。『F-ZERO』は、そんな時代の変化を象徴するタイトルとも言えるでしょう。
🎤 開発秘話・制作者コメント
『F-ZERO』の開発は、スーパーファミコンの“技術的可能性”を示すショーケースを作ることが出発点でした。中心となったのは、後に『スターフォックス』や『マリオカート』などを手がける任天堂情報開発本部(現・任天堂企画開発本部)。グラフィック処理に特化した「モード7」を最大限に活かすタイトルとして、「疑似3Dの高速レースゲーム」が選ばれたのです。
ディレクターを務めたのは今村孝矢氏(代表作:スターフォックスシリーズ)、そしてサウンド面では後に『ゼルダの伝説 時のオカリナ』などを担当する近藤浩治氏がBGMを手がけました。
当時のコメントでは、「“浮いて走るマシン”という設定は、処理の軽量化と新鮮味の両立を狙った」とされており、車輪の回転などの描写を省くことで、よりスムーズな動作と抽象的なデザイン性が生まれました。また、タイム制ではなく“順位勝負”を主軸にしたのも斬新で、競技としての緊張感を重視したとのことです。
ちなみに、このゲームの主人公的存在である「キャプテン・ファルコン」は、当初はアクションゲームの主人公として考案されていたキャラクターで、その後スマブラシリーズで一躍有名になります。
🚀 見どころ・魅力

『F-ZERO』最大の魅力は、超高速で滑走する浮遊マシンによる爽快感と緊張感のバランスです。時速400km超のスピードを誇る反重力マシンを操り、次々と迫るカーブや障害物をかわしながらゴールを目指す緊張感は、他のレースゲームにはない独自の体験でした。
SFCの「モード7」による疑似3D視点は、それまでの2Dレースゲームとは一線を画し、画面全体が回転・拡大・縮小する迫力のある演出が可能に。特にジャンプ台からの宙返りや、カーブの旋回時の視覚効果は当時のゲームファンにとって衝撃的で、「まるで未来のスポーツをしているかのよう」と言われました。
また、マシンごとに特性が異なり、加速重視・耐久力重視・操作性重視などプレイスタイルに合わせた選択が可能。さらにライバル車と激突して耐久ゲージが減るなど、単なるスピード勝負ではない戦略性の高さも本作の特徴です。
ビジュアルやスピード感に目を奪われがちですが、コース設計の妙も見逃せません。シンプルに見えてトリッキーなギミックが散りばめられており、何度もプレイしたくなる“中毒性”があります。
📚 裏技・豆知識

🎮 スタート直後の“加速ブースト”テクニック
レース開始と同時にアクセル(Bボタン)を「押しっぱなし」ではなく細かく連打することで初速が上がるというテクニックが存在。タイムアタック勢の中では常識となっている小技です。
🏁 コース選択の隠し仕様
ゲーム開始時、ランク選択画面で特定の操作を行うと、通常プレイでは登場しない順番でコースが選ばれるという報告も。ただし、公式に仕様として明言されたことはなく、裏技というよりはバグに近い挙動の可能性もあります。
🧠 一部ステージにある“謎のオブジェクト”
ステージによっては地形に溶け込むように置かれた意味深な構造物が確認されており、「開発中に削除されたギミックの名残では?」という説もあります。機能的には無意味でも、背景アートとして話題になったことがあります。
🕵️♂️ 幻の「5台目マシン」説
一部のファンコミュニティでは、開発初期には5台目のマシンが存在していたが、処理落ちや難易度調整の都合で削除されたという噂が囁かれています。ROM解析などでも明確な痕跡はなく、現時点では“都市伝説”の域を出ません。
🚀 ライフゲージギリギリゴールの特殊演出?
耐久値(ライフゲージ)がゼロ寸前でゴールすると、爆発演出とゴール演出が同時に再生されることがあるとの報告も。仕様ではなく偶然の演出のタイミングによるもので、プレイヤーの間では“ギリゴール”と呼ばれることもあります。
🤖 AIマシンの謎の挙動
特定のステージでは、CPU操作のマシンがまるで“意図的に妨害してくる”かのような動きを見せるケースも。AIパターンに関する正確な仕様は不明ですが、「あれは妨害プログラムだ」と感じた人も少なくありません。
📚 F-ZEROが与えた影響・シリーズ展開

🛣 モード7技術のショーケース
『F-ZERO』は、スーパーファミコンの“モード7”回転拡大機能を活かした初期タイトルとして開発され、擬似3Dによる圧倒的なスピード感を実現。当時としては革新的な技術を用いたゲームプレイは、SFCの性能を印象づける“技術デモの代表例”としても語り継がれています。
🚀 近未来レースゲームの礎
浮遊するマシン、反重力のコース、高速バトルといったSF的要素が満載で、レースゲームの中でも独自のジャンルを築きました。後の『ワイプアウト』や『FAST Racing Neo』など、F-ZEROに影響を受けた作品も多数登場し、ジャンルの開拓者としての地位を確立しています。
📦 続編とマルチ展開の歴史
F-ZEROは複数のハードで続編が登場しました:
- 『F-ZERO X』(NINTENDO64):フル3D化され、30台同時出走や宙返りコースなど大胆な新要素を導入。
- 『F-ZERO GX』(ゲームキューブ):セガAM2と共同開発され、グラフィックと難易度が飛躍的に進化。
- 携帯機展開(GBA):『Maximum Velocity』『GP Legend』『Climax』などが発売され、ドットベースながら高速感を表現。
2004年の『F-ZERO Climax』(日本限定)を最後に、しばらく完全新作のリリースは途絶えていました。
🔁 “復活の兆し”と現代への再評価
近年では以下のような再注目が進んでいます:
- 2023年:『F-ZERO 99』登場
Nintendo Switch Online加入者向けに、99人同時対戦が可能なバトルロイヤル形式の新作が登場。原作のゲーム性を継承しつつ、現代的な競技性をプラスした意欲作として話題に。 - 2024年:GBA旧作の復刻配信
『GP Legend』『Climax』がSwitch Onlineにて初の英語版配信。これまで日本でしか遊べなかった作品が海外ユーザーにも開放され、シリーズ全体の再評価につながっています。 - 2025年:『F-ZERO GX』の復刻(報道ベース)
GameCubeタイトルをSwitch 2向けに対応させるプロジェクトの中で、『GX』の再登場が示唆されています。リマスターではなく“高解像度化+オンライン対応”の形が期待されており、ファンの注目を集めています。
🎮 『スマブラ』を通じた継続的な露出
シリーズの代表キャラ「キャプテン・ファルコン」は、『スマブラ』シリーズにおける定番ファイター。彼の存在と共に、F-ZEROの世界観は今も新たな世代に継承されています。ステージ「MUTE CITY」や「BIG BLUE」も、シリーズ未体験層への“窓口”として機能しています。
📝 ユーザー評価/ゲーム雑誌評価

🗞 ファミ通クロスレビューでの高評価
『F-ZERO』は、1990年の発売当時からゲーム業界内でも高い注目を集めており、ゲーム雑誌『週刊ファミ通』のクロスレビューでは、40点満点中「34点」という好スコアを記録しました(レビュアー4名中、9点をつけた者も複数名)。
これは当時としては非常に高い評価で、SFCローンチタイトルの中でも抜群の完成度が認められていた証です。
✍ TACO-X氏も“絶賛”した革新性
当時、歯に衣着せぬ辛口批評で知られたファミ通の名物ライター「TACO-X」氏は、F-ZEROに対して非常にポジティブなコメントを寄せていました。
「“未来のレースゲーム”というだけでなく、操作感・疾走感・世界観、すべてが新次元。SFCのローンチでこの完成度は異常」
(※当時の誌面より要約)
と語り、特に「スピード感と没入感の演出が当時の家庭用レースゲームとは別物」である点を強調しています。
氏がここまで褒めることは珍しく、F-ZEROがいかに衝撃的な存在だったかを物語っています。
💬 ユーザーからのリアルな反応
発売当時、ゲーマーたちの間でも「スピード感がすごい」「音楽が近未来でカッコいい」「コントロールが難しいけどクセになる」など、多くの声が寄せられ、特に**「レースゲームに苦手意識がある人もハマった」という声**が印象的でした。
近年ではSNSでも再注目され、「F-ZERO 99」などをきっかけに原作に触れたZ世代からも、「古いけど速くて面白い」と再評価の声が増加しています。
🧠 高速ゆえの“目押しゲー”?というウワサ
『F-ZERO』が発売された当時、プレイヤーの間では「これはレースゲームというより**“記憶と反射神経”の目押しゲーだ!」という声が囁かれていました。というのも、本作の魅力である超高速スクロールによる爽快感は、そのまま「視認性の限界」とも隣り合わせだったのです。
特に終盤の高難度コース、たとえば「Fire Field」や「Silence」では、カーブの直前での急ブレーキや左右移動のタイミングを“画面で見てから”では間に合わない場面が多発。結果として、プレイヤーは「この辺りで障害物が来る」とコースレイアウトを“覚えて”操作するしかないというゲーム性が浮き彫りになりました。
つまりF-ZEROは、単なるレースではなく「知識×技術×瞬発力の総合スポーツ」とも言える構造。こうした要素は、後のレースゲームやeスポーツ的な評価軸にもつながっており、F-ZEROが時代を先取りしていた証といえるかもしれません。
一部プレイヤーの中には「“初見殺し”の洗礼が心地よい」という声もあり、そのスリリングな難易度こそがF-ZEROの中毒性の一因となっていました。
🏁 まとめ|スピードだけでは語れない、F-ZEROの“革新”

『F-ZERO』は、単なる「速いレースゲーム」という枠に収まらない、任天堂の技術力とゲームデザイン哲学の結晶ともいえるタイトルです。スーパーファミコン初期タイトルでありながら、“モード7”による擬似3Dの驚き、スタイリッシュなビジュアル、疾走感のあるサウンドトラックなど、すべてが次世代の幕開けを感じさせる内容でした。
また、操作性の奥深さや「LRボタンによる微調整」「コースを記憶して挑む高速目押しプレイ」など、当時としては非常に高度なゲーム性も備えており、プレイヤーの“慣れ”と“覚え”を前提とした構造は今見ても挑戦的です。
F-ZEROは単発作品にとどまらず、後の『スマブラ』や他のレースゲームにおける操作感・世界観・BGMの面でも多大な影響を残しました。続編が出ていない現在でも、なお語られ続ける理由は、単なるノスタルジーではなく、「ゲームの未来を先取りしていた革新性」が今なお色褪せないからでしょう。
速さのその先へ。
F-ZEROは、ただのレースではなく、“未来”を走り抜けたゲームでした。
F-ZEROの高速感って、“モード7”っていう当時の最新技術で表現されてたんだよ~! スーファミの進化を感じるよねっ!