元社員4名が受賄罪で有罪、関与サプライヤーはブラックリスト入り──何が起きたのか(2026年2月版)

2026年2月、miHoYo(米哈游)が社内で確認された不正行為について、反不正(反舞弊)に関する通告を公表したと複数メディアが報じた。内容は、外部取引をめぐる受賄などの不正が社内で発覚し、元社員4名が「非国家工作人员受贿罪(非国家公務員受賄罪)」で有罪判決を受けたこと、さらに不正に関与したサプライヤー(取引先)をブラックリストに登録し「永久に取引しない」方針を示した、というものだ。
本記事では、報道で一致している事実に絞って、何が起きたのか、企業としてどこまで踏み込んだ対応をしたのか、プレイヤー目線で「現時点で言えること/言えないこと」を整理する。
今回の公表で確定しているポイント
骨格だけを抜き出すと、確定情報は大きく次の5点だ。
- miHoYoは反不正(反舞弊)に関する通告を公表したと報じられている
- 直近の内部調査で確認された事例は「3件」、関係者は「5名」規模とされる
- このうち4名が非国家工作人员受贿罪で有罪判決(刑期の報道あり)
- もう1名は重大な利益相反として解雇され、公安機関へ線索(資料)が移管され調査が継続しているとされる
- 不正関与のサプライヤーはブラックリストに登録され「永不合作(永久に取引しない)」、リストは継続更新すると報じられている(社数は24社)
ここまでが、記事として断定してよい範囲だ。
何が起きたのか:3件の不正事案(報道の範囲で整理)
今回の通告は、主に調達・外部取引の現場で起きやすい不正の類型が並ぶ。ポイントは「会社の金庫から何かが消えた」というより、外部取引における立場を利用し、便宜供与と引き換えに私的利益を得る構造が問題になっている点だ。
事案1:供給・サービス領域での受賄(有罪3名、刑期の報道あり)
供給・サービス関連の元社員らが、職務上の立場を利用して取引先から不正な利益(リベート等)を得たとして、裁判で有罪判決を受けたと報じられている。刑期は、懲役1年4か月、1年3か月、1年3か月。
事案2:周辺(グッズ)運用領域での受賄(有罪1名、刑期6か月)
周辺(グッズ等)プロジェクト運用の元社員が、複数のサプライヤーに不正な利益をもたらし賄賂を受け取ったとして、有罪(懲役6か月)と報じられている。
事案3:重大な利益相反(解雇、公安へ資料移管、調査継続)
『原神』のプロダクトマーケティング関連の元社員について、在職中に外部で設立した会社に利益をもたらす行為が確認され、重大な利益相反として解雇、さらに公安機関へ線索(資料)を移管し調査継続と報じられている。
この3件の整理から見えてくるのは、不正の舞台が「外部取引の裁量が集まる場所」だということだ。会社が大きくなるほど、調達、外注、周辺制作、物流、マーケティングなど外部との接点は増える。ここに透明性の穴が生まれると、贈収賄や利益相反が起きやすい。
「非国家工作人员受贿罪」とは何か(一般向けに噛み砕く)
日本語のニュース見出しでは「収賄罪」とまとめられがちだが、中国側の報道では「非国家工作人员受贿罪」という表現が使われている。これは、国家公務員ではない企業従業員などが、職務上の地位を利用して賄賂を受け取ることを指す罪名として報じられている。
要するに「会社員が、取引の決定や便宜供与と引き換えに、取引先から金品を受け取る」タイプの不正だ。ゲーム会社に限らず、調達やサプライヤー管理、外注管理の現場で発生しやすいのは、まさにこの構造があるからだ。発注先の選定、発注量、納期、検収、追加費用の承認など、判断の分岐点が多いほど「見えにくい利益」が入り込む余地が増える。
ブラックリスト登録と「永不合作(永久取引停止)」の重み
今回の公表で大きな注目を集めたのが、サプライヤーに対するブラックリストだ。報道によれば、不正に関与したサプライヤーは《涉舞弊供应商黑名单》に登録され、永不合作(永久に取引しない)とされる。さらに、清単(リスト)は継続的に更新する方針だという。
ここで大事なのは、ブラックリストが「行政処分のような公的制裁」ではなく、企業が自社の取引を管理するための措置だという点だ。つまり、社会的な断罪というより、企業として「不正に関与した相手とは二度と取引しない」という取引管理の宣言に近い。とはいえ、企業活動において取引停止は極めて重い。外部制作や供給網が広い業界ほど、サプライヤーの入れ替えはコストも手間もかかるからだ。その負担を背負ってでも線を引く、という姿勢が示されたことが今回のポイントになる。
また、掲載社数は24社と報じられている。
ただし、各社がどの案件で何をしたのか(納品物、期間、関与の具体内容)までを、主要報道だけで確定させることは難しい。社名から具体行為を推測して断定するのは危険で、記事としても誤情報になりやすい領域だ。
miHoYoが示した再発防止:制度と通報窓口
今回の通告は「処分の報告」で終わらず、再発防止の枠組みも合わせて示したと報じられている。たとえば、社員守則(行動規範)、礼品报备(ギフト申告)、利益冲突管理(利益相反管理)、举报人保护和奖励(通報者の保護と報奨)などの制度体系を整え、通報の受理から線索の核査、閉環処置(最後まで処理する仕組み)までのフローを構築している、という説明だ。
加えて、miHoYoの公式サイトには通報窓口として、メールと電話番号が掲載されている。
・メール:jubao@mihoyo.com
・電話:021-54100513(平日10:00〜18:00)
企業が「通報先」を公に示すのは、内部統制の観点では重要な意味を持つ。抑止力にもなるし、もし同種の不正が起きた場合に「どこへ届ければよいか」が明確になるからだ。
プレイヤーへの影響:現時点で確認できる範囲
プレイヤーとして気になるのは、「ゲームの中身や運営に影響するのか」という点だろう。現時点の報道は、社内不正と取引管理(ブラックリスト)に焦点が当たっており、サービス停止や大規模な仕様変更といった、プレイヤー体験に直結する影響が発生したという情報は確認されていない。
したがって、このニュースは作品内容のトラブルというより、企業統治・コンプライアンスの問題として理解するのが正確だ。むしろ、不正を把握し、公表し、処分と再発防止の枠組みを示したこと自体が、長期的な信頼維持に向けた動きとして位置づけられる。
まとめ:今回の公表の本質は「処分」だけではなく「線引き」の明文化
今回のニュースの核心は、元社員の有罪判決という結果そのものだけではない。社内不正を把握し、処分し、外部取引先についても永久取引停止という強い線引きを行い、さらに制度と通報導線を明文化した。その一連のプロセスを公にした点にある。
ゲーム産業の規模が拡大するほど、開発力だけでなく「取引の透明性」も同時に問われる。調達・外注・周辺制作といった外部接点が増えるほど、不正の芽は生まれやすい。
だからこそ、企業がどこまで踏み込み、どこまで公表し、どう再発防止を回すのかが信頼の土台になる。