つぶログ深掘り

宇宙人に向けて送られた「地球のレコード」には何が入っている?日本語や音楽も宇宙へ

ボイジャーのゴールデンレコードには何が入っている?日本語・画像・音楽を解説

宇宙を飛ぶボイジャー探査機と地球を背景に、ゴールデンレコードと収録された音楽・自然・人々の姿を描いたイメージイラスト

1977年、NASAは宇宙へ向かう2機の探査機に、金色のレコードを1枚ずつ載せました。そこに収められたのは、科学の情報だけではありません。波の音や鳥の声、各国の音楽、地球に暮らす人々の写真。そして、日本語のあいさつや日本の尺八演奏まで収録されていました。

このレコードは「ボイジャー・ゴールデンレコード(Voyager Golden Record)」。いつか地球外の知的文明が探査機を見つけたときに、地球がどんな場所なのかを伝えるために作られたものです。

ボイジャー・ゴールデンレコードの保護カバー(左)と金色のレコード本体(右)
左は再生方法や太陽系の位置を示す保護カバー、右はゴールデンレコード本体。画像:NASA/JPL-Caltech

NASAの公式解説によると、収録内容は画像115点、55言語のあいさつ、地球のさまざまな音、約90分の音楽など。レコードをどう再生するかも、宇宙人に向けて図形で説明してあります。

「地球のレコード」には何が入っている?まずは収録内容の全体像

分類主な収録内容
画像地球や太陽系、人体、動植物、家族、食事、建築物、科学技術など(NASAの現行解説では115点)
言葉日本語を含む55言語の音声によるあいさつ
地球の音雷、風、波、鳥、クジラ、心拍、笑い声、列車、ロケットなど
音楽バッハ、ベートーヴェン、チャック・ベリー、日本の尺八、世界各地の伝統音楽など約90分
文章当時の米国大統領ジミー・カーターと国連事務総長クルト・ワルトハイムのメッセージ

驚くのは、宇宙人に送るものとして「最高の科学技術」だけを選んでいないことです。赤ん坊や家族の姿、食事、動物の鳴き声、キスの音まで入っています。地球の説明書であると同時に、1977年の人類が選んだ「地球の自己紹介」ともいえる内容です。

ちなみに、115点という数字はNASAの現行の収録内容ページに合わせたもの。過去のNASA記事やスミソニアン博物館の資料には異なる数え方もあるため、後ほど整理します。

日本語も入っている?宇宙へ送られた55言語のあいさつ

日本語も、間違いなく収録されています。

NASAが公開している日本語のあいさつの英訳は「Hello? How are you?」。「こんにちは、お元気ですか?」という意味の、日常的な呼びかけです。宇宙人への壮大な演説ではなく、誰かと初めて会ったときのような言葉が選ばれているのが面白いところでしょう。

ここでの日本語訳は、NASAが公開する英訳に対応させたものです。NASAの公開一覧自体は各言語の録音を英語で説明しており、日本語音声の厳密な書き起こしを掲載しているわけではありません。

日本語以外には、どんな言葉がある?

収録されたのは当時の世界各地で使われる言語だけではありません。古代のアッカド語やシュメール語など、古い時代の言語によるあいさつも選ばれています。

言語NASA公式英訳の意味(日本語要約)
日本語こんにちは、お元気ですか?
英語地球の子どもたちから、こんにちは
アラビア語星々にいる友人へ。いつか会えることを願っています
中国語(閩南語・アモイ語)宇宙の友人たち、お元気ですか。食事はしましたか。時間があれば遊びに来てください
アッカド語すべてがうまくいきますように
ラテン語あなたが誰であれ、善意と平和を携えてあいさつします

同じ「こんにちは」でも、言葉の長さや伝えたい気持ちはずいぶん違います。NASAは、言語ごとに自由なあいさつを集めました。地球に一つの言葉しかないわけではないことも、このレコードが伝える大切な情報です。

英語の「地球の子どもたちから、こんにちは」という声を担当したのは、制作責任者カール・セーガンの息子ニック・セーガン。当時6歳でした。NASAが2007年に掲載した本人の回想によると、録音したころは、この言葉がどれほど遠くへ旅立つのか、十分には実感していなかったそうです。

NASA公式の55言語の音声を聴く

次はNASAが公開している「Golden Record Greetings」の公式音声プレイヤーです。日本語を含む各言語の声を実際に確認できます。

プレイヤーが表示されない場合は、NASA公式の55言語のあいさつ一覧から聴けます。

音楽は約90分|ロックとクラシック、そして日本の尺八

宇宙へ持っていく音楽として何を選ぶか。制作チームにとって、これも難しい問題だったはずです。

選ばれた音楽は約90分。バッハやベートーヴェンのようなクラシックの名曲だけでなく、アメリカのロックンロール、アフリカの打楽器、ジャワのガムラン、中国の古琴、南米の伝統音楽まで並んでいます。

作品・演奏人物・地域収録時間
ブランデンブルク協奏曲第2番 第1楽章バッハ/カール・リヒター指揮4分40秒
Johnny B. Goodeチャック・ベリー2分38秒
Tsuru No Sugomori(鶴の巣籠)山口五郎/日本の尺八4分51秒
『魔笛』夜の女王のアリアモーツァルト/エッダ・モーザー2分55秒
Melancholy Bluesルイ・アームストロング&ホット・セブン3分05秒
交響曲第5番 第1楽章ベートーヴェン/オットー・クレンペラー指揮7分20秒
Flowing Streams(流水)管平湖/中国の古琴7分37秒
Dark Was the Nightブラインド・ウィリー・ジョンソン3分15秒

NASAの公式音楽リストには27項目が掲載されています。資料によっては、組曲や録音単位の数え方が異なるため、曲数の表記に差が見られます。この記事ではNASAが公開する27項目のリストを基準にしています。

なぜ日本の尺八が選ばれたのか

日本から選ばれたのは、尺八奏者・山口五郎による「Tsuru No Sugomori(鶴の巣籠)」です。尺八は竹で作られた縦笛の一種で、息の強弱や音色の変化も表現に使います。

宇宙へ送る音楽というと、巨大なオーケストラや壮大な合唱を想像するかもしれません。その中に、たった一本の竹の楽器から生まれる音が入っているわけです。

ただし「尺八が選ばれた決定的な理由」を一文で断定するのは適切ではありません。NASAの公開曲目表で確認できるのは、作品名、演奏者、収録時間などです。各曲の細かな選考経緯と、選曲から読み取れる意図は分けて考える必要があります。

チャック・ベリーのロックまで入っている

意外な選曲として、チャック・ベリーの「Johnny B. Goode」もあります。スミソニアン誌の制作関係者取材では、ロックを入れることに意見の違いがあったエピソードも紹介されています。

それでも、レコードにはロックンロールが残りました。宇宙へ送ったのは、古典として評価の定まった音楽だけではなかったのです。1970年代の人類がすでに楽しんでいた、多彩な音楽文化が収録されています。

波の音、クジラの声、キスまで|「地球の音」の中身

ゴールデンレコードには、音楽とは別に、地球のさまざまな音をつないだ部分があります。単に珍しい音を集めたものではなく、自然から生命、人間の暮らしや技術へとつながる流れを意識した構成です。

種類収録例
自然の音波、風、雷、雨、火山や地震に関する音
生き物の音鳥、クジラ、チンパンジーなど
人間の音心拍、赤ん坊の声、笑い声、足音、キス
文明の音道具や機械、モールス信号、列車、乗り物、ロケットの打ち上げ

NASAの探査機紹介では、地球の生命や活動にまつわる35種類の音が収録されたと説明しています。音の連なりについては、スミソニアンの制作関係者取材が約12分間の構成として詳しく紹介しています。

日常生活の中で聞いても気に留めないような音が、ここでは地球を伝える貴重な手掛かりになっています。もし地球のことを何も知らなければ、列車の走る音も、動物が鳴く声も、きっと新鮮な情報になるのでしょう。

NASA公式の「地球の音」を聴く

NASAが公開する「Sounds of Earth」の音声です。何十年も前に、宇宙へ持たせるために選ばれた音を実際に聴けます。

プレイヤーを利用できない場合は、NASA公式の地球の音・音楽ページでも確認できます。

アン・ドルーヤンの脳波まで収録されていた

さらに変わった記録もあります。制作チームのアン・ドルーヤンは、自分の脳波を測定し、その信号を音として記録しました。

当時、ドルーヤンはカール・セーガンとの恋愛関係が始まった時期にありました。収録に際して人間の人生や感情について考えたこと、のちにセーガンと結婚したことは、スミソニアンの取材や本人の回想で語られています。

もっとも、脳波の記録は人間の記憶や思考を文章のように保存したものではありません。宇宙人がその音を再生したとしても、考えていた内容まで読み取れる保証はないのです。「恋心を宇宙に送った」という話は象徴的ですが、科学的な記録の意味とは分けて受け止めたいところです。

画像115点には何が写っている?地球の写真だけではない

レコードに入っている画像は、風景写真の寄せ集めではありません。科学の説明図から人間の生活まで、地球を知らない相手に何を見せればよいかを考えて選ばれています。

分野NASA公式リストにある例
科学と宇宙太陽、物理的な単位、DNAや細胞の図、太陽系に関する資料
人間の体と命人体の構造、受精、胎児、誕生、親子、家族
自然と動物海岸、砂丘、森、雪の結晶、イルカ、魚、ワニ、チンパンジー
日常と文化食事、料理、職人、農作業、スポーツ、踊り、弦楽四重奏
建築と技術万里の長城、タージ・マハル、シドニー・オペラハウス、工場、列車、電波望遠鏡

例えば人体の図は「私たちはどんな体をしているか」を伝える手掛かりになります。一方、家族の写真や食事の風景からは、人々がどのように暮らし、互いに関わっているのかが見えてきます。

豪華な建築物ばかりでなく、農作業や料理の場面まで残されているところに、このレコードの面白さがあります。1977年の地球が、一枚の観光ポスターに収まるような世界ではなかったことも伝わる内容です。

写真はどうやってレコードに入れた?

もちろん、金色の盤面に小さな写真が印刷されているわけではありません。画像をアナログ信号へ変換し、レコードの溝に記録しています。信号を決められた方法で読み取り、並べ直すことで画像として再現できる仕組みです。

現在ならデジタルファイルに画像や動画をまとめて保存するのが自然ですが、ボイジャーが打ち上げられたのは1977年。宇宙空間で長く残すための記録媒体として、金メッキを施した銅製レコードが採用されました。

実際の収録画像は、NASA公式のゴールデンレコード画像一覧で一部公開されています。ただし、著作権上の制約から全画像を自由に掲載できるわけではありません。NASAのギャラリーにも転載制限の注意書きがあります。

画像は115点?116点?数字が違う理由は判明している?

検索すると、ゴールデンレコードの画像数が115点、116点、117点、118点、122点などと紹介されていることがあります。

実際にNASAの現行ページは115点、NASAの2002年の記事は116点、スミソニアン国立航空宇宙博物館の収蔵資料は122点と記載しています。これは単なるネット上の書き間違いではなく、資料そのものに差がある例です。

画像の区分や数え方が違う可能性はありますが、これらの数字が食い違う理由を公式に確定できる説明は見つかっていません。そのためこの記事では「NASAの現行解説では115点」と記載し、すべての資料で同一の数字が使われているとは扱っていません。

宇宙人はどうやって再生する?金色のカバーに刻まれた「説明書」

レコードを偶然見つけた宇宙人がいても、再生の仕方が分からなければ中身は伝わりません。そこで制作者たちは、保護カバーに図形を刻みました。

レコードは直径約30センチの金メッキされた銅製。アルミニウムの保護ケースに収められ、針とカートリッジも付属しています。再生速度は毎分16と3分の2回転。一般的なLPレコードの毎分33と3分の1回転よりも遅い速度です。

保護カバーに描かれた図には、次のような情報が含まれています。

  • 針をどこに置き、どちらの方向へ再生するか
  • 1回転に約3.6秒かかることを表す二進数
  • 画像信号を512本の縦の走査線として復元する方法
  • 14個のパルサーを手掛かりに太陽系の位置を示す地図
  • 水素原子の状態変化を利用した時間の基準
  • ウラン238の放射性崩壊から経過時間を推定する手掛かり

なかでも興味深いのが水素原子です。地球の秒や分という単位が伝わらなくても、物理現象なら共通の基準にできるかもしれない。そんな発想から、水素原子の特定の状態遷移が時間を表す基準として使われています。

また、画像の復元方法を示す図には、正しく再生できたか確かめるための円の画像も描かれています。宇宙人が受け取ることを本気で想定し、確認方法まで用意したわけです。

ただし、図形があれば必ず理解できるという保証はありません。そもそもレコードを見つけ、図の意味を推定し、読み取る装置を作る技術が必要です。NASA公式のカバー解説では、刻まれた図を詳しく見ることができます。

なぜ1977年に、地球のレコードを宇宙へ送ったのか

ボイジャー1号と2号の本来の役割は、遠くの惑星を調べることでした。2号は1977年8月20日、1号は同年9月5日に打ち上げられ、木星や土星などの探査を進めていきました。レコードは科学観測装置ではなく、その長い旅に添えられたメッセージです。

前例がなかったわけではありません。先に宇宙へ送り出されたパイオニア10号・11号には、人間の姿や地球の位置などを描いた金属板が搭載されていました。ボイジャーでは、より多くの情報を残すため、音と画像を収録できるレコードへ発展したのです。

制作をまとめたのは天文学者のカール・セーガン。フランク・ドレイク、アン・ドルーヤン、ティモシー・フェリス、ジョン・ロンバーグ、リンダ・サルツマンらが、それぞれの分野で関わりました。NASAの2007年の記事では、選定チームに与えられた期間が6週間足らずだったとも紹介されています。

地球のすべてを記録するのは不可能です。何を入れるかと同時に、何を入れないかも決めなくてはなりません。音楽にも写真にも選択の余地があり、レコードの内容を「人類全体が選んだ唯一の正解」と考えることはできないでしょう。

カーター大統領と国連事務総長のメッセージもあった

当時の米国大統領ジミー・カーターと、国連事務総長クルト・ワルトハイムによる文章のメッセージも含まれています。

カーター大統領は、地球の音、科学、画像、音楽、思考、感情を贈り物として届けるという趣旨の文章を残しました。NASAの2002年の記事では、その文章が画像として収録されたことが説明されています。大統領本人が音声で語りかけたと単純に理解しないことが重要です。

なお、レコードには音楽を作る人々へ、すべての世界と時代に向けた献辞も刻まれました。中身だけでなく、レコードそのものにも小さなメッセージが残されています。

地球のレコードは今どこにある?宇宙人にはもう届いた?

2026年10月時点で、ボイジャー1号・2号はともに太陽圏の外にある星間空間を飛行しています。NASAによると、1号が太陽圏を出たのは2012年8月25日、2号は2018年11月5日です。

太陽圏とは、太陽から放出される粒子や磁場の影響が支配的な領域のこと。「星間空間へ出た」といっても、太陽系のすべての外縁を通過したという意味ではありません。はるか外側に広がるオールトの雲は、まだこれからの領域です。

また、ボイジャーは特定の宇宙人の住む星を目指しているわけでもありません。NASAは、約4万年後に1号がグリーゼ445、2号がロス248という恒星から約1.7光年の距離を通ると予測しています。しかし、それは恒星の近くへ降り立つという話ではなく、ましてレコードが誰かに拾われる予定があるわけでもありません。

現在まで、地球外文明がこのレコードを見つけたり、再生したりした事実は確認されていません。

宇宙空間はとても広く、偶然探査機を発見する可能性は極めて低いと考えられています。レコードは誰かへ確実に届ける通信手段というより、見つけられたときのために残したタイムカプセルです。

ボイジャーの現在のミッション情報はNASA公式のボイジャー特設ページで確認できます。探査機の通信状態や運用機器は今後変わる可能性がありますが、レコードが将来発見されるかどうかは分かっていません。

ゴールデンレコードの実物は見られる?音楽もすべて聴ける?

宇宙へ向かった2枚を地球で直接見ることはできませんが、NASAはレコード本体や保護カバーの写真、制作風景を公開しています。スミソニアン国立航空宇宙博物館にも、同じ計画に由来するレコードが収蔵されています。

音声については、この記事内に埋め込んだNASA公式プレイヤーで「55言語のあいさつ」と「地球の音」を聴けます。一方、音楽は著作権が関わるため、公式の収録リストが公開されていることと、すべての原盤音源を自由に再生・転載できることは別です。

収録された写真にも権利上の制約があります。本物の収録画像を確認したい場合は、先ほど紹介したNASAの画像ギャラリーを見るのが確実です。レコードの見た目と収録内容は、同じNASA公式資料でも公開方法が異なります。

まとめ|宇宙へ送られたのは、1977年の地球の「自己紹介」だった

ボイジャーのゴールデンレコードには、日本語を含む55言語のあいさつ、約90分の音楽、波や鳥など地球の音、そしてNASAの現行解説で115点とされる画像が入っています。日本の尺八演奏も、その一つです。

どんな生物がいて、人間は何を食べ、どんな建物を作り、どんな音楽を楽しむのか。宇宙人へ見せようと選ばれたのは、特別な偉業だけではなく、地球では当たり前の風景でもありました。

まだ、誰かがこのレコードを見つけたという知らせはありません。それでも、宇宙のどこかへ向かって、日本語の「お元気ですか?」にあたる声や、一本の尺八から生まれた音が旅を続けている。そう考えると、いつも見慣れた地球の姿まで、少し違って見えてきます。

主な参考資料

-つぶログ深掘り
-, , , ,