サザンがSMAP「世界に一つだけの花」を歌った2018年|5人の歌唱と忘れられない理由

先日、サザンオールスターズの5人が『世界に一つだけの花』を歌う短い映像が、Xでたまたま流れてきた。
知っている曲だ。何度も聴いてきた曲だ。それなのに、映像を見ているうちに、思い浮かんだのはSMAPの5人が並んで歌う姿だった。
しかも、歌っていたのは桑田佳祐さん一人ではなかった。
原由子さんも、関口和之さんも、松田弘さんも、野沢秀行さんも。サザンの5人が横一列に並び、まるでSMAPのように一人ずつ歌をつないでいた。
その光景を見ているうちに、不意にこんなことを思った。
もっと聴いていたかったな。
自分でも少し驚いた。というのも、SMAPが活動していた頃の私は、『世界に一つだけの花』に少し飽きていたような気がするからだ。
嫌いだったわけではない。むしろ、いい曲だと思っていた。それでもテレビで何度も流れ、何度も歌われるうちに、「またこの曲か」と感じることがあった。
なのに、今になって思う。あんなに飽きていたはずなのに、もっともっと、飽きるほど聴いていたかった。
あの頃、テレビの最後にはSMAPがいた
『世界に一つだけの花』は、槇原敬之さんが作詞・作曲を手がけ、2002年のアルバム『SMAP 015 / Drink! Smap!』に収録された楽曲だ。翌2003年3月5日にはシングル・ヴァージョンが発売され、ドラマ『僕の生きる道』の主題歌としても広く知られるようになった。
けれど、私の記憶に残っているのは、発売日や売上の数字以上に、テレビの中で歌われる光景そのものだ。
音楽番組や特別番組で、大勢の出演者が並ぶ。そろそろ番組が終わるという頃にSMAPが出てきて、『世界に一つだけの花』を歌う。最後には周囲も一緒になって歌い、和やかな雰囲気で締めくくられる。
もちろん、あらゆる番組がそうだったわけではない。けれど当時の私には、何か大きな番組があれば、最後にSMAPがこの曲を歌ってくれれば間違いない、という印象があった。
不思議なのは、何度聴いても曲としての役割が変わらなかったことだ。にぎやかなバラエティのあとでも、感動的な企画のあとでも、どこか収まりがよかった。大勢の人が一緒に歌えるし、誰か一人だけを主役にするような曲でもない。
そして、その中心にはいつも5人がいるように感じられた。
歌がうまいとか、ダンスがそろっているとか、そういう話だけではない。5人が並んで歌うと、テレビの中に一つのまとまりができる。ああ、これで今日の番組も終わるんだな、と自然に思える。
今考えると、あれは単なるヒット曲の披露ではなく、テレビを見る側にとっての、ちょっとしたお決まりの風景だったのかもしれない。
正直、『世界に一つだけの花』には少し飽きていた
好きな曲でも、繰り返し聴いているうちに新鮮さは薄れていく。
初めて聴いたときには歌詞が印象に残ったり、メロディーを口ずさんだりする。何度目かには、一緒に歌えることが楽しくなる。でも、それが何年も続くと、やがて曲が始まる前から、このあとどんな雰囲気になるのかまで分かってしまう。
『世界に一つだけの花』も、私にとってはそういう曲になっていた。
「また『世界に一つだけの花』か」。そんなふうに思ったことも、きっと一度や二度ではなかったと思う。
ただ、飽きるというのは必ずしも嫌いになることではない。むしろ、好きか嫌いかを考えるまでもなく、そこにあることが当たり前になっていた、という方が近い。
次に見たいのは新曲だったり、別の曲だったりする。それでも、テレビで『世界に一つだけの花』が流れれば、結局は何となく最後まで見てしまう。口では「またか」と思っていても、そこにSMAPがいること自体には何の疑問もなかった。
だって、次もあると思っていたから。
来年も、再来年も、大きな音楽番組があればSMAPが出てきて、何度目かの『世界に一つだけの花』を歌っている。そういう未来を、わざわざ想像する必要すらなかった。
いつでも聴けると思っていたから、飽きることができた。今になって、そんなふうに感じる。
サザン5人の歌声で、思い出したのはあの5人だった
今回、そんな気持ちが突然よみがえったのは、SMAP本人たちの映像ではなかった。
サザンオールスターズの5人が『世界に一つだけの花』を歌っていた。
桑田佳祐さんを中心に、原由子さん、関口和之さん、松田弘さん、野沢秀行さんが並び、それぞれの声で歌をつないでいく。
サザンのライブといえば、桑田さんの歌声が中心になる場面が多い。だからこそ、メンバー全員がマイクを持って歌っている姿は、とても新鮮だった。
もちろん、サザンが歌えばSMAPとは違う表情になる。同じメロディーでも、歌う人が変われば声も雰囲気も違う。その違いを楽しむこともできる。
でも私の場合、その歌声を聴いているうちに、少し別の方向へ気持ちが向かってしまった。
SMAPの5人が歌っているところを、また見たい。
そう思った瞬間、「そういえば、昔は嫌というほど聴いたな」という記憶が続いてやってきた。そして次に浮かんだのが、「嫌というほど、なんて言わずに、もっと聴いておけばよかった」という気持ちだった。
ここが、自分でもうまく説明しきれないところだ。
『世界に一つだけの花』という曲は、なくなったわけではない。CDもあるし、ほかの歌手が歌うこともある。好きなら今でも聴けばいい。理屈としては、その通りだ。
けれど、今聴きたいと思ったのは、音源だけではなかった。
番組の終わりが近づいて、SMAPが出てきて、5人で歌い始める。周りの出演者も笑顔になって、こちらも何となくテレビを見続けている。そんな、わざわざ大切に覚えておこうとも思わなかった時間だった。
2016年12月26日の『SMAP×SMAP』最終回でも、5人は『世界に一つだけの花』を歌った。あの歌が特別な意味を持つようになったことは、当時から分かっていたつもりだった。
それでも今、ふとした映像から思い出すのは、最後の一回より、むしろ最後だと思わずに聴いていた無数の時間だ。
何でもない番組の締めくくり。特別な覚悟もなく見ていた、いつもの5人。
もう少し、あの「いつも」を見ていたかったのだと思う。
サザン5人が歌ったのは2018年の「第三回ひとり紅白歌合戦」
あの映像がいつのものだったのか気になって調べてみると、2018年の桑田佳祐さんの公演『平成三十年度!第三回ひとり紅白歌合戦』にたどり着いた。
この公演は、2018年11月29日、12月1日、12月2日の3日間、パシフィコ横浜 国立大ホールで開催されたものだ。
『ひとり紅白歌合戦』は、桑田さんが昭和から平成までのヒット曲を次々と歌い、衣装や演出にも工夫を凝らす特別なコンサート。エイズ啓発活動「Act Against AIDS」の一環として行われ、第1回は2008年、第2回は2013年、2018年が完結編となった。
2018年の公演では全55曲が披露され、その37曲目がSMAPの『世界に一つだけの花』だった。
当時のライブレポートを読むと、歌唱の様子も詳しく残っている。
『8時だョ!全員集合』を思わせる掛け声とともに、サザンのメンバーが法被姿で登場。そして5人が横一列に並び、振り付けを交えながら『世界に一つだけの花』を一人ずつ歌っていった。
続いて披露されたのは、ザ・ドリフターズの『ドリフのビバノン音頭』。松田弘さんが加藤茶さんの「ちょっとだけよ」をまねる場面まであったという。
ドリフを思わせる衣装で登場したサザンが、SMAPの曲を5人で歌う。
笑いのある演出なのに、時を経てその映像を見た私は、思いがけず胸を打たれた。
2016年のSMAP解散から、まだ約2年。あのステージが披露された時期を考えると、なおさら感慨深い。
2018年当時の詳しい模様は、『rockin'on.com』の現地ライブレポートで確認できる。また、サザンオールスターズ公式サイトの公演記録にもセットリストと出演者が掲載されている。
あの歌唱は公式Blu-ray・DVDにも収録されている
この『世界に一つだけの花』の歌唱は、2019年6月5日に発売された公式映像作品『Act Against AIDS 2018「平成三十年度!第三回ひとり紅白歌合戦」』に収録されている。
2018年公演を収録した通常盤はBlu-rayとDVDの2種類。初回限定の「三部作コンプリートBOX」には、2008年と2013年の公演も収録されている。
あの5人の歌唱を見たいだけなら、2018年公演の通常盤で見ることができる。公式の収録曲一覧では、『世界に一つだけの花』が37曲目に掲載されている。
作品の収録内容や仕様は、サザンオールスターズ公式ディスコグラフィーで確認できる。
桑田佳祐さんの公式YouTubeチャンネルでは、2019年4月24日に映像作品のトレーラーも公開された。以下は公演全体の雰囲気を伝える公式予告映像で、『世界に一つだけの花』のフル歌唱映像ではない。
短い映像では分からなかった、法被姿での登場から歌唱、そしてドリフの曲へと続く流れも、公式映像作品では振り返ることができる。
2018年の「第三回ひとり紅白歌合戦」を収録した公式ライブ映像作品。
サザンオールスターズの5人によるSMAPの
『世界に一つだけの花』を含む全55曲と、
ボーナス映像のメイキングを収録。
2019年6月5日発売。
Blu-ray 1枚組/品番:VIXL-1100/JAN:4988002787050。
※掲載画像は三部作コンプリートBOXのビジュアルです。
リンク先の商品は2018年公演のみを収録した通常盤Blu-rayです。
価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。
熱心なファンではなかった。それでも、もっと聴いていたかった
私はSMAPを熱心に追いかけていたわけではない。
もちろん、好きな曲はあった。テレビに出ていれば見ていたし、『SMAP×SMAP』も身近な番組だった。でも、それは生活の中でごく自然に触れていた、という感覚に近い。
だから、SMAPの活動が終わったときに寂しさを感じたとしても、ずっとそのことを考え続けていたわけではなかった。
時間がたてば別の番組が始まり、新しい曲が流れ、新しいスターが登場する。テレビはそうやって変わっていくものだし、こちらも普段はその流れの中で暮らしている。
それなのに、ふとしたきっかけで思い出してしまう。それも、熱心に追いかけていた特別な思い出ではなく、ただテレビをつけていた頃の、どうということのない光景を。
思えば、あまりにも身近なものは、それがあるうちには価値を測りにくい。毎年同じ時期に流れる番組も、毎週決まった曜日に見ていた番組も、何となく聞こえてきた曲も、続いている間は「また次がある」と思ってしまう。
だから、その繰り返しを十分に味わったとは思わない。もうたくさん見たはずなのに、終わってみると、まだ見足りなかった気がする。
SMAPの解散をめぐる出来事や、テレビから5人の姿が消えた寂しさについては、以前の記事「SMAP解散から10年|2016年、なぜ日本中があれほど衝撃を受けたのか」でも振り返った。けれど、今回の気持ちは少し違う。解散の理由を考えたいのでも、過去をやり直したいのでもない。
ただ、あの頃みたいに、何の前触れもなく『世界に一つだけの花』が始まってほしいのだ。
「またこの曲か」と思って、でもそのまま最後まで見て、番組が終わったらテレビを消す。そんなありふれた夜が、もう少し続いてほしかった。
今となっては、5人がそろって歌っているというだけで、あの頃の自分には見えていなかったものが見えてくる気がする。
たぶん私は、『世界に一つだけの花』を聴き足りなかったのではない。SMAPがいることを当たり前だと思える時間が、もっと欲しかったのだ。
あの頃、あと何回この曲を聴くことになるのだろうと思っていた。
今なら、こう思う。
またこの曲か、と笑っていたかった。もう何回目だよ、と言いながらテレビを見ていたかった。
あんなに飽きていたのに、もっともっと、飽きるほど聴いていたかった。
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