10月27日は「文化を記録し、言葉を守る日」

10月27日は、文化や知識を“記録し、継承する力”に光を当てる一日です。
ユネスコが制定した「世界視聴覚遺産デー」、そして日本で法律により定められた「文字・活字文化の日」。さらに、読書週間もこの日から始まります。
言葉を通して記憶を残し、映像や音声で時代を刻む——どれも、人間の知恵と感性が積み重ねてきた文化の証です。デジタル時代の今だからこそ、記録の価値を見つめ直すきっかけになる日といえるでしょう。
文字・活字文化の日(日本)
10月27日は、読書や出版、図書館など“文字と活字”をめぐる文化を育てるために、日本で法に基づいて定められた記念日です。活字が社会にもたらす学びの機会、公正な情報へのアクセス、世代を超えて知恵を受け渡す装置としての役割に、静かに光を当てます。
本や新聞、雑誌はもちろん、点字や拡大文字、電子書籍や音声読み上げといった多様なフォーマットも、この日の視野に入ります。重要なのは「どんな人にも読める形がある」こと。学校や図書館、出版社や書店、地域の読書会がそれぞれの持ち場で工夫し、読みたい人とコンテンツのあいだの段差を小さくしていく――その積み重ねが文化の土壌を豊かにしていきます。
デジタル時代の今、一次情報へのたどり着き方や、情報の信頼性を見きわめる力は欠かせません。紙とデジタルを対立で捉えるのではなく、検索・要約・保存の便利さと、紙の集中しやすさや記憶への残り方を組み合わせることで、学びはより確かなものになります。10月27日は、生活の中の“読む時間”を少しだけ取り戻し、知の循環に参加するきっかけとなる一日です。
世界視聴覚遺産デー(World Day for Audiovisual Heritage/UNESCO)
10月27日は、映像・音声という“時間の容れ物”を守り育てる日です。映画フィルム、テレビ・ラジオの番組、録音された音楽や語り、ホームムービー、ニュース映像——私たちの記憶をかたちにした記録物は、劣化や機器の老朽化、フォーマット消滅という静かな危機にさらされています。
保存の現場は地味ですが、極めて創造的です。温湿度を管理する保存庫、酢酸臭が出たフィルムの応急処置、磁気テープの再生装置を蘇らせる修復、デジタイズ後のメタデータ付与や権利処理、検索可能にするための記述の工夫。一本の映像が未来の学びや文化の再発見につながるまでには、多くの専門性が結び合わさっています。
デジタル化は万能ではありません。複製は容易になっても、長期保存には継続的な点検・更新が不可欠で、フォーマットや記録媒体の寿命、サーバ運用の費用、著作権・肖像権への配慮といった新しい課題が生まれます。それでも、地域の公文書館や放送アーカイブ、大学・美術館、市民の私的コレクションが力を合わせれば、消えかけた記録に息を吹き込むことができます。
視聴覚遺産は「懐かしさ」だけのために残すのではありません。災害の記録、地域の祭り、産業や暮らしの手つき、社会運動の現場——映像と音の連なりは、未来の意思決定に資する一次資料です。10月27日は、スクリーンの向こうに広がる“人類の記憶装置”を思い出し、次の世代へ手渡す意味を静かに確かめる一日です。
読書週間(日本|10月27日〜11月9日)
10月27日から始まる読書週間は、日本の秋の風物詩。文化の日(11月3日)をはさむ2週間にわたり、図書館・学校・書店・出版社・自治体が連動し、読書に親しむ機会を広げます。戦後間もない時期に始まり、知を開き合う習慣を社会に根づかせることを目的に続いてきました。
特徴は、場所ごとの“顔”が立つこと。図書館は選書展示やビブリオバトル、学校は読み聞かせや読書通帳、書店はフェアや著者イベント、地域は古書市や読書スタンプラリー——同じ「読む」を合図に、世代や関心の違いを越えて人が集まります。紙の本だけでなく、点字・拡大文字・DAISY・電子書籍・オーディオブックなど多様なフォーマットが並ぶのも、近年の広がりです。
読み方も一つではありません。調べ学習のために索引から入る、忙しい日は短編や詩歌で気分を整える、音声で“ながら読む”、児童書で基礎を確かめる、大人になってからの学び直しに新書を一冊——生活のリズムに合う読み方を選べば、読書は負担ではなく、呼吸を整える時間になります。
この2週間は、背表紙を眺めるだけでも十分なスタートです。気になった一冊にしおりを挟む、借りた本の返却日を家族で共有する、感想を数行だけメモする。小さな手がかりが積み重なるほど、読書は“続く楽しみ”になります。
テディベアズ・デー(日本・民間制定)
10月27日は「テディベアズ・デー」。米国第26代大統領セオドア・ルーズベルトの誕生日(1858年10月27日)にちなみ、テディベア文化の普及を目的とする日本の団体が“思いやりと友情の象徴”として位置づけた日です。名の由来は、1902年に狩猟で射撃を拒んだルーズベルトの逸話が新聞漫画で広まり、玩具店が「テディの熊」と名付けて販売したことに遡る、とされています。
ぬいぐるみとしてのテディベアは、単なる玩具を超え、贈り物やチャリティ、医療・福祉現場での心理的サポートにも活用されてきました。素材や綿の詰め方、関節(ジョイント)や目の留め具、安全基準など、見た目の可愛らしさの裏に細やかな配慮が積み重ねられています。アーティストベアや修復・里帰りの文化も育ち、長く手元に置くほど物語が深まる点が魅力です。
10月27日は、そばにある一体を手入れし、贈る相手を思い浮かべ、作り手の技や安全への配慮に目を向けるのに良い節目。世代や言語を超えて“やさしさを手渡す道具”としての価値を静かに確かめる一日です。
まとめ
10月27日は、「記録し、読み継ぎ、手渡す」行為が静かに重なる一日でした。
法律で定められた文字・活字文化の日は、誰もが読める形で知を開く意義を確かめ、世界視聴覚遺産デーは映像・音声という一次資料を未来へ残す責任を思い出させます。さらに、読書週間の幕開けは日常に“読む時間”を取り戻す合図となり、テディベアズ・デーはやさしさを形にして手渡す文化を映し出します。
今日の気づきを小さく実践に。図書館カードを確認する、家の写真や動画のバックアップを一つ進める、気になる一冊の最初の数ページだけ読む、そばにある大切なものを手入れする——そんな小さな積み重ねが、記憶と文化のバトンを確かなものにしていきます。