リリース初期レビュー:ガチャ撤廃の“新標準”になれるか

2025年10月28日、『デュエットナイトアビス(Duet Night Abyss)』がPC(自社/EPIC系ランチャー)とモバイル(iOS/Android)でグローバル配信開始。日本時間では10月28日午前11時前後の始動となりました。
最大の話題は、正式サービス直前に「キャラ/武器ガチャ」と「スタミナ制」を撤廃し、入手は無料解放やコスメ課金中心へ舵を切ったこと。原神や鳴潮と比較されがちな“銃×剣”のハイブリッドアクションと、二人主人公のデュアル叙事は実際どう映るのか。
ここでは初期ビルドを実機で検証し、操作感・描画・最適化・課金設計の良否を率直に評価します。今後の大型アプデで化ける余地も含め、現時点の「事実ベース」の所感をまとめました。
グラフィック・演出×バトルの実感
蒸気機関と魔法が同居するアトラシアの美術は、金属質のディテールと柔らかな光表現が同時に立ち上がるタイプ。キャラと背景のコントラストも強すぎず、銃火のエフェクトが映える設計だ。
世界観の核は“複数武器ロードアウト×3Dコンバット”。二人主人公の視点が交差する物語線と合わせて、画面の“密度”を保ちつつも可読性は破綻しない。
公式の打ち出しどおり“全キャラ・全武器が無料で解放可能”という前提は、バトル映えする多彩な演出を試しやすい基盤になっている。
ゲームプレイは“近接×銃撃”の切り替えが軸。近接で間合いを詰め、弾幕や弱点処理を銃で捌く往復運動が基本線だ。
ダブルジャンプやスライド、ヘリックスジャンプといった機動アクションが移動のリズムを作り、群敵相手でもテンポを崩しにくい。
実戦では“敵の波”を掃くフェーズが多く、手数の多さと切り替えの小気味よさが体感の“強さ”に直結する印象。
戦闘を補助するオンフィールド仲間は過度に強くはないが、立て直しやスキル回しの“間”を作る役回りで、プレイのリズムを割らない。
一方で、初期版らしい粗さも報告がある。PC環境次第ではフレーム落ちやスタッター、ノイズの強いモーションブラーに悩む声があり、設定調整(FPS上限、V-Sync、描画負荷の軽減)での暫定対処がコミュニティでは推奨されている。
最適化アップデート次第で化ける余地は大きいが、現時点では“滑らかな爽快感”を取り切れないケースがあるのも事実だ。
レビュー執筆時点の論点として、ここは検証を継続したい。
総じて、“見た目の説得力”と“切り替えの気持ちよさ”は既に強み。群敵処理の設計はジャンル内でも個性が立ち、無料解放方針がビルドの自由度を後押ししている。あとは描画最適化と視界情報(ブラーや読みやすさ)のブラッシュアップが進めば、演出とアクションの相乗が一段上がる──そういう“伸びしろ前提”の初期評価だ。
課金システムの印象 ― 「遊んで解放」「見た目で応援」
『デュエットナイトアビス』の課金設計は、アクションRPGの中でもかなり異色です。
まず最大の特徴は、キャラクターや武器にガチャが存在しないこと。
プレイヤーはゲームを進めることで全キャラ・全武器を自然に開放でき、スタミナ制も廃止されています。
つまり「遊ぶほどに確実に強くなる」タイプで、課金が前提にならない構造です。
アンロックの進行もシンプルで、ストーリーや探索を進めて素材を集めることで新キャラや装備が手に入ります。
さらに、限界突破、いわゆる“凸(とつ)”――キャラクターや武器の重ね強化要素も、プレイを通して段階的に進められる設計です。課金でショートカットする手段はありますが、基本的には時間をかければ誰でも最大強化を目指せる仕組みになっています。
一方で、課金が活きるのは主に見た目やコスメティック要素。
キャラ衣装や装飾スキンなどは有料通貨で購入でき、限定デザインも登場します。
いわば「推しキャラを自分好みに飾るための課金」であり、性能に影響はありません。
リリース時点では手軽なパックや月額プランも用意されていますが、どれも“便利さ”や“外見の違い”にとどまっています。
全体を通して感じるのは、課金=強さではなく、課金=応援や個性の表現という方針。
従来の“ガチャで強キャラを引く”モデルとは一線を画しており、誰でも同じ条件で戦える公平さがあります。
少なくとも現段階では、無課金でも遊びの幅を失わないバランスの良さが際立つ内容と言えるでしょう。
惜しい点と改善に期待したいところ

リリース初期としては高い完成度を見せる『デュエットナイトアビス』ですが、実際に遊んでみると“あと一歩”惜しい部分も感じられます。
まず挙げたいのは、初日から報告されていた不具合の多さです。
一部のプレイヤー環境では、クエスト進行中にキャラクターが突然消えたり、目的地マーカーが反応しなくなったりといったトラブルが発生。
また、ロード中にフリーズやループが起こるケース、戦闘時に一瞬操作不能になるケースなども散見されました。
動作面でもフレームレートの急低下や、エフェクト過多による視認性の悪化が報告されており、描き込みの美しさがそのまま負荷につながってしまっている印象です。
幸い、開発元はこれらの問題をすでに把握しており、初期パッチでの修正を予告しています。今後の最適化で大きく改善される余地は十分にあります。
次に感じるのが、カメラ挙動と操作感の粗さです。
銃撃と近接を切り替えるスタイル自体は新鮮ですが、ロックオンの精度が安定せず、ボス戦などでは視点が暴れやすい場面もあります。
戦闘エフェクトが派手な分、攻撃範囲の把握が難しくなることもあり、もう少し“見やすさ”を意識したカメラ距離の調整やエフェクト軽減オプションが求められます。
そしてもう一つ、UIの導線の複雑さも気になる点です。
メニュー階層が深く、慣れるまではどこに何があるのか分かりづらい。
チュートリアルは親切に作られているものの、要素が多いぶん情報整理が追いつかず、初心者には少し取っつきにくい印象を受けます。
とはいえ、これらはいずれもリリース初期によく見られる“伸びしろ”の範囲です。
基盤となるゲーム体験や世界観の完成度は高く、根本的な設計に破綻はありません。
公式も早期の修正アップデートを明言しており、ユーザーの声を迅速に反映しようという姿勢が見られます。
総じて、“惜しい”と感じる部分は裏を返せば進化の余地です。
アートの美しさと独自のバトル設計を備えた本作が、今後の調整でどこまで洗練されるか――。
“初期の粗が懐かしい”と言われる日が来ることを期待したいところです。
総評 ― 美しさの中に、次の進化を待つ余白
『デュエットナイトアビス』は、リリース初期の段階で明確に“他とは違う哲学”を感じさせる作品でした。
アクションRPGという枠の中で、ガチャやスタミナ制を排した設計は大胆であり、「遊べば解放できる」というシンプルな理念が、ここまで洗練された美術と共存していること自体が驚きです。
課金が強さに直結せず、推しキャラを飾る楽しみに重きを置いている点も好印象。
プレイヤーが“自分のペースで世界を味わえる自由さ”は、近年のソーシャルRPGにはなかった解放感をもたらしています。
一方で、初期版ならではの不安定さや操作感の荒さも確かに存在します。
カメラ挙動、最適化、ロード関連の不具合――どれも没入感をわずかに削いでしまう要素ではありますが、
同時にそれは“未完成ゆえの期待値”でもあると感じます。
基盤の設計にしっかりした骨格があるからこそ、今後のアップデートで化ける余地が大きい。
その期待を持てる段階にあるのが、本作の強みです。
総じて『デュエットナイトアビス』は、美しい映像と自由な戦闘を両立した新世代アクションRPGの原石といえます。
完成度という意味ではまだ途上ですが、作品全体から伝わる“挑戦する意志”が、何より印象的です。
これが単なる初期作ではなく、今後の進化の“序章”として記憶されることを願いたい――そう思わせてくれる一作でした。
| 項目 | スコア(10点満点) | 所見(短評) | 注記 |
|---|---|---|---|
| グラフィック/演出 | 8.0 | 世界観は美しく、光と陰影の描写に深み。部分的にテクスチャやモーションの粗が気になる。 | 質感は高いが、場面により没入感にムラ。 |
| バトルシステム | 7.5 | 銃と近接の切替は独創的でテンポ良好。ロックオンとカメラ挙動に改善余地。 | 長時間プレイで疲労感が出やすい場面あり。 |
| 課金・育成設計 | 9.5 | ガチャ撤廃+スタミナなし。遊べば解放でき、凸もプレイ進行で段階的に可能。 | 課金は主にコスメと時短。性能に直結せず公平。 |
| 安定性・最適化 | 6.5 | 初日はバグ・フリーズ・読み込み遅延が散見。設定調整で緩和するが根本改善待ち。 | パッチでの最適化に期待大。 |
| 総合(初期体験) | 7.9/10 | 独自性と公平性が光る意欲作。完成度は途上だが伸びしろが大きい。 | Ver.1.0時点のプレイ体験に基づく暫定評価。 |
まとめ
リリース初期の『デュエットナイトアビス』は、耽美な世界観と“銃×近接”の切替アクションに明確な個性がある一方、カメラ挙動や最適化などの粗も確かに残しています。とはいえ、ガチャ撤廃&スタミナなし、そして遊び進めての解放や凸の進行という設計は、公平で気持ちよい土台として強く機能しており、作品の核はすでに魅力的です。
初日はバグやカクつきが目立つ場面もありましたが、ここはパッチで伸びる余白。基盤がしっかりしているからこそ、チューニングが進めば評価は素直に上振れするはずです。現時点の総合は7.9/10。未完成ゆえの“荒さ”よりも、挑戦の方向性と自由度の高さが印象に残る初期体験でした。
このレビューは“資産記事”として継続更新します。大型アップデートや改善パッチの到来ごとに、挙動・快適性・ゲーム内経済を再検証し、スコアも追記していきます。読者の皆さんのプレイ感や改善要望も歓迎です。次の更新で、どれだけ化けるか――その過程も含めて見届けたいタイトルです。