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シェンムーは完結するのか|物語の“行き着く先”を最新情報と根拠から整理する【2025考察】

シェンムーの完結を見ることはできるのか — 25年越しの問いに向き合う

シェンムーの主人公・リョウ・ハズキが雨の中を走るドブ板通りの風景。ドリームキャスト初期のオープンワールドを象徴する街並みシーン

1999年、その衝撃はゲームの常識を変えた。
だが、プレイヤーが最も強く心に刻まれたのは“革新”ではなく“未完”だった。

主人公・芭月涼の物語は、父・芭月巌を殺害した藍帝を追う復讐譚として始まり、
古代遺物「龍の鏡」と「鳳凰鏡」をめぐる謎へと広がっていく。
しかし、物語はいまだ決着へ届いていない。

発売から25年以上が経った今でも、
ファンの間で繰り返される問いはひとつだけだ。

──この物語は、本当に完結を見ることができるのか。

3作目の発売で“再起”の希望が現れた一方、
シリーズの展開が休止している現実もある。
だからこそこのテーマは、過去を懐かしむ話ではなく、
「今どうなる可能性が残っているのか」を整理する価値がある。

この記事では、感情ではなく事実に基づいて
「シェンムー完結の可能性」をあらゆる角度から見ていく。
希望論でも悲観論でもなく、
“根拠から導かれる現実的な見通し”に向けて。

なぜファンは“完結”を求め続けるのか — 未回収の物語が残したもの

シェンムーが長く語られる理由は、「名作だから」「革新的だったから」だけではない。
それ以上に大きいのは、物語が完結していないまま動き続けているという事実だ。

父の仇である藍帝との決着。
古代遺物「龍の鏡」「鳳凰鏡」に秘められた意味。
涼が導かれていく“宿命”はどこへ向かうのか。
さらに、シェンファと涼の関係性、予言、夢の意味──。

どれも途中で止まったまま、答えが示されていない。

伏線は単なる未回収ではなく、
「核心に迫りつつあるタイミングで止まった」という点が大きい。
物語の輪郭がはっきりし始めた瞬間に、物語は途切れた。
だからこそ、年月を重ねても記憶が薄れるどころか
“いつか続きを知りたい”という気持ちは色褪せなかった。

そして忘れてはならないのは、
この物語は、当初から“長期構想”として始まっていたという点だ。
つまり、最初から「完結の形が存在する作品」だった。

プレイヤーは、“終わりがない物語”ではなく、
“終わりが用意されている物語の途中で止まってしまった”
という状況に置かれている。

だから人は問い続ける。

「完結を見届けたい」ではなく
「本来あるはずの完結を見たい」
のだ。

シェンムーは“本来完結する予定だった”——その根拠

夕焼けの中で桜の木を見上げるリョウ・ハズキ。シェンムーの象徴的なシーンで、物語の旅立ちを感じさせる美しい演出

「そもそも、この物語に本当に“終わり”は用意されているのか?」
ここをはっきりさせるためには、まず公式の発言や資料を押さえておく必要があります。

結論から言うと、シェンムーは
「最初から“完結までの全体構想”が作られているシリーズ」です。

11章構成の“完成したストーリー”が存在する

クリエイターの鈴木裕氏は、シェンムーの物語について
「全体で11の章から成るストーリーがある」と繰り返し語っています。

さらに、2024年のコミュニティ向けインタビューでは、
開発時に参照している“11章分の小説版”について、次のように説明しています。

  • 11章分が小説の形でまとまっており、物語の“完全版”がそこにある
  • ゲームのシナリオは、その小説版を参照しながら作っている

つまり、

・ゴール地点のない「行き当たりばったりな連載」ではない
・“最後まで書かれた原作小説”が存在し、その一部をゲームに落としている

という構造です。

プレイヤーが体験しているのは、
あくまで 11章分のうちの「途中まで」であって、
“結末そのものは作者の頭の中だけでなく、すでに文章として固定されている”
というのが重要なポイントです。

どこまでゲーム化されているのか

同じくインタビューでは、小説版に対応する
「脚本集(Legend of Akira)」が第5章まで存在することが明かされています。

・第1章:横須賀(シェンムー I)
・第2〜5章:香港〜桂林〜蘇州〜白沙など、中国各地の展開(順序や構成はゲーム版と一部異なる)

ゲームとしては、

  • シェンムー I・IIで物語の序盤〜中盤への入口
  • シェンムー IIIで“旅の途中”をさらに掘り下げつつ、まだ決着には届かない

という状態で止まっています。

鈴木氏自身も、2024年時点で
「小説版には“完全な物語”が書かれている」
「ゲーム化の際は、その一部をどう圧縮・再構成するかが課題」
と語っており、ストーリーの“終点”自体はブレていないことがうかがえます。

作者はどこまで“終わらせるつもり”なのか

では、その11章をどうやってゲームとして完結させるつもりなのか。

2024年のインタビューで鈴木氏は、
今後の展開についてかなり具体的に言及しています。

  • 物語全体は11章構成で、ゲームではまだ一部しか消化していない
  • すべてを細かく描けば「IV・V・VI・VII…」と伸びてしまう
  • プレイヤーのためにも、あと2作(IV・V)でエンディングまで到達するのが現実的
  • 描ききれない部分は、夢・回想・小説など別の形で補完する選択肢もあるshenmuedojo.com

ここから読み取れるのは、

  1. 作者の中では「完結のビジョン」が明確に存在する
  2. 11章すべてをゲームで丁寧にやるのは厳しい
  3. だからこそ
    • ゲームは“あと2本”で着地させる
    • 残りを小説や別メディアで補完する可能性も見ている

という、かなり現実的な“完結プラン”が描かれているということです。


ここまでを整理すると、

・シェンムーの物語は、11章分の完全な形で「書かれて」存在している
・そのうち、ゲームとしてプレイできているのはまだ一部
・作者は「あと2作でゲームとしての完結まで持っていく」構想を口にしている

つまり
「完結するかどうか分からない物語」ではなく
「完結させる設計は既にあり、そこへどう到達するかが課題」
という状態です。

シェンムー4はなぜ“止まっているように見える”のか —— 現状と壁

港の倉庫街で立つリョウ・ハズキ。シェンムーのリアルな生活描写と労働シーンを再現したドリームキャスト時代の名作ゲーム

まず前提として、
2025年11月時点で「シェンムー4」は正式発表されていません

それにもかかわらず、Yu Suzuki本人は2024年の大規模インタビューで、
かなり具体的に「IV」「V」の話まで踏み込んでいます。
ここに、このシリーズ特有の“ねじれ”があります。

1. クリエイター側の現状 — 「作りたいが、今は動いていない」

2024年のコミュニティインタビューで、鈴木裕ははっきりこう言っています。

  • 「シェンムーIVは“今は作っていない”。まだ企画段階」
  • 「IVを実現するには“パートナー”が必要」
  • 「興味を示してくれている会社は複数ある」

つまり、

  • すでに開発中という段階ではない
  • ただし、完全に諦めているわけでもない
  • ビジネス面で組むべき“相手探し”が最大のハードル

という状況が公式に語られています。

さらに同インタビューでは、

  • シェンムーI〜IIIは「自分の中では完了したプロジェクト」
  • 今考えているのは「IVやVといった“次のゲーム”」

とも語っており、“完結まで作る前提”で頭の中は動いていることがわかります。

2. 物語の進捗と「あと何作で終わるのか」

物語全体については、

  • もともと全11章構成の“小説版”があり、そこに完全なストーリーが書かれている
  • ゲームのシナリオは、この11章の小説を参照しながら作っている

と、公式に明言されています。

そのうえで、鈴木氏は

  • 「プレイヤーのことを考えると、ゲームとしてはあと2作(IV・V)でエンディングまで行くのが一番いい
  • 「すべてを詰め込むのは難しいので、夢・回想・小説などで補完する形もあり得る」

と話しています。

過去のインタビューでも、

  • 「IIIの時点で物語は“半分以下”」

と語っており、
「まだかなり先があるが、IV・Vで着地させたい」という意識が
はっきり見えてきます。

ここまでをまとめると、

  • 完全版ストーリー(11章)はすでに存在
  • ゲームとしてはまだ3〜4割程度しか描かれていない
  • それでも「あと2作で終わらせる形」を作者自身が検討している

という状態です。

3. なぜ“すぐにIVへ行けない”のか — ビジネスと権利の問題

では、なぜその「IV・V」へスムーズに進めていないのか。

ここには、シェンムー独特の事情が重なっています。

  1. IPの権利構造が複雑
    • オリジナルの「シェンムー」IPはセガが保有
    • 「シェンムーIII」の権利はYS NET側が持っている
    • アニメ2期や新作ゲームについても、「最終決定権はセガ側にある」と2024年インタビューで説明
  2. 資金とパートナーの確保が必須
    • IIIはKickstarter+外部投資+パブリッシャー(Deep Silver等)という複雑な資金構造で実現
    • IVはクラウドファンディングだけでは難しく、
      「ビジネス的に成立する規模のパートナー」が求められている状況
  3. 商業的には“ニッチで高コスト”なシリーズ
    • I・IIは革新的だった一方、超高予算で採算面では苦戦した歴史がある
    • IIIもコアファンには評価されつつ、「一般層向けにはかなりニッチ」という評価が多い

Yu Suzuki自身も、

  • IIIは「ファンのために作った部分が大きい」
  • IVを作るなら「もっとカジュアル層にも届くようにしたい」

と語っており、
「ファンが望む濃さ」と「ビジネスとして成立する間口の広さ」の両立が課題になっています。

4. それでも“完全に途絶えてはいない”サイン

一方で、「本当に望みゼロなのか?」と言えば、そうとも言い切れません。

  • 2024年インタビューでは、「IVは企画段階」「興味を示している会社は複数ある」と発言
  • コミュニティ主導で、毎月4日にX(旧Twitter)でのハッシュタグキャンペーンや「Shenmue 4 Rally Call」が継続的に実施されている
  • 2025年には、ININ Gamesから「Shenmue III Enhanced」が発表され、
    次世代機向けに強化版を展開する動きも出てきている(PS5/PC/Xbox Series、Nintendo系もTBC)。
  • さらに2025年4月、BAFTAの投票企画で初代『シェンムー』が
    「史上最も影響力のあるゲーム」に選ばれるなど、
    シリーズ全体の“文化的評価”はむしろ高まっている。

これらはすべて、

  • IPとしてはまだ死んでいない
  • 市場・コミュニティ側には「続きへの期待」が可視化されている

ことを示す材料になっています。


ここまでの話を踏まえると、現時点のシェンムーは

  • 物語の“完全版”はすでに存在し
  • 作者も「IV・Vで終わらせたい」と明言し
  • ただしパートナーとビジネス的な条件が揃っていないために
    「企画段階で足踏みしている」

という状態だと言えます。

シェンムーの完結はあり得るのか — 現実的な3つのシナリオ

シナリオA:ゲームとして完結まで描かれるパターン(楽観寄り)

シェンムーの主人公・リョウ・ハズキが夕暮れの港で街を見つめるシーン。旅立ちを感じさせる印象的なドリームキャスト名作ゲームの一場面

一番わかりやすく、ファンが望む形はこれですよね。

  1. ININ Gamesによる「シェンムー3 Enhanced」などの展開で
    シリーズ全体の価値を“今のハード世代”に繋ぎ直す
  2. その販売状況や反響を材料に、
    シェンムー4の企画が本格的に動き出す
  3. ユーザー層を少し広げつつ、4と5でエンディングまで描き切る

実際、Yu Suzuki本人は過去のカンファレンスで
「まず11章構成の小説を書き、それをゲームのベースにした」と語っており、
物語の“ゴール”はすでに文章として存在しています。

さらに、近年のインタビューでは

  • シリーズ全体は11章構成で設計されている
  • すべてをゲームでやるのは難しいため、
    プレイヤーのためには“あと数作で終わらせる”のが現実的

というニュアンスも語られており、
「IV・Vで完結まで行く」という構想は、作者側の頭の中にはあると見ていいでしょう。

加えて、Shenmue 3 の新パブリッシャーである ININ Games は

「シェンムーの物語はまだ終わっていない」
「シリーズの次のフェーズに向けたビジョンがある」

と公式コメントを出しており、
IPとしては“まだ続ける前提で扱っている”ことがはっきりしています。

このあたりを組み合わせると、

  • ビジネス条件さえ整えば、
    純粋なゲーム作品として完結まで描かれる可能性は十分に残っている

というのが、もっともポジティブなシナリオです。


シナリオB:ゲーム+他メディアで「折衷的に」完結させるパターン(中庸)

次にあり得そうなのが、

「ゲームだけで11章すべてを細かく描くのではなく、
 ゲーム+アニメ/小説/資料集などを組み合わせて完結させる」

という折衷案です。

実際、Yu Suzukiは

  • 11章の“原作小説”があり、そこに完全な物語が書かれている
  • ゲームはその一部を再構成しているに過ぎない

と語っており、メディア横断での表現は最初から想定されていたとも言えます。

過去にはアニメ版『シェンムー』も制作されましたし、
シナリオ資料「The Legend of Akira」の存在など、
“ゲーム外の形でストーリーを提示する下地”もすでにあります。

このシナリオBでは例えば、

  • ゲーム:4で一区切りとなる大きな転換点までを描く
  • 書籍やアニメ:ラストに向かう細かな章や、その後の補完を提示する

という形もあり得ます。

プレイヤー心理としては
「全部ゲームでやってほしい」という思いが強いですが、
ビジネス面・制作リソースを考えると、
“マルチメディアで完結させる”という選択肢はかなり現実的です。


シナリオC:ゲームとしては未完のまま、構想だけが明かされるパターン(悲観寄り)

一番避けたい、けれどもゼロではないのがこれ。

  • シェンムー4以降のゲーム企画が最後まで成立せず
  • IPとしては過去作のリマスター/エンハンスで細く長く続く
  • 物語の完全版は、インタビューや資料、書籍などで
    「こういうエンディングにする構想だった」と語られるだけ

というパターンです。

ただし、この“C案”にも少しだけ希望があります。

2025年には、BAFTAの一般投票で初代シェンムーが
「史上もっとも影響力のあるゲーム」に選ばれるという出来事がありました。ガーディアン+1

  • 商業的には決して大成功とは言えなかったタイトルが
  • 数十年越しに“文化的評価”で頂点扱いされた

という流れは、資金面・企画面でプラスに働く可能性があります。

もし本当にゲームとしての続編が難しくなったとしても、

  • 完全版ストーリーを小説や資料集の形で正式公開する
  • アニメやドラマ的な映像作品で“結末だけ描く”

といった“救済策”が取られる余地は、
昔よりむしろ広がっているとも言えます。


いま言える「現実的な結論」

ここまでをまとめると、2025年時点の結論はこうなります。

  • シェンムーの物語は、11章構成の“完全版”としてすでに書かれている
  • 新パブリッシャーも「物語は終わっていない」と明言しており、
    IPとしては“続ける方向”で扱われている
  • ただし、シェンムー4はまだ正式発表されておらず、
    企画・パートナー探しの段階にとどまっていると見られる

そのうえで、

  • ゲームとして完結まで行く可能性(シナリオA)は、
    「決して高くはないが、まだ十分現実的にあり得る」
  • ゲーム+他メディアによる完結(シナリオB)は、
    作者の発言や現状を踏まえるとかなり有力なライン
  • ゲームは未完のまま、構想だけが語られる(シナリオC)も
    最悪のケースとしては想定しておくべき

というバランスになっている、というのが
今のところ一番フラットな見立てかなと思います。

シェンムーの完結を見る“可能性”はゼロではない —— いま私たちにできること

発売から四半世紀が過ぎても、「シェンムーは完結するのか?」という問いは消えていません。
むしろ、年を追うごとにその重みは増しているようにさえ感じます。

ここまで整理してきた通り、

  • 物語そのものは、11章構成の“完全版”としてすでに書かれている
  • 作者である鈴木裕の頭の中にも、完結までのビジョンははっきり存在している
  • 新たなパブリッシャーも「物語は終わっていない」と公言している

という意味で、「完結の設計」は間違いなく存在します。

一方で、

  • シェンムー4はまだ正式発表されておらず
  • 資金・パートナー・IPの権利関係といった課題も山積みで
  • “すぐに続きが出る”段階にはない

という現実も、冷静に認めざるを得ません。

だからこそ、現時点で出せる結論は

「ゲームとしての完結を堂々と約束できる状況ではない。
 それでも、“どんな形であれラストに辿り着く可能性”は確かに残っている」

という、慎重だけれど前向きなものになります。

もしかすると、
私たちが最初に思い描いた理想どおりの形ではないかもしれません。

・ナンバリングの続編としてIV・Vで完結するのか
・ゲーム+アニメ/小説といった折衷案になるのか
・あるいは、作者自身の言葉や資料という形で“答えだけが公開される”のか

そのどれになるにせよ、
「ラストまでの道筋はすでに書かれている」という事実は変わりません。

シェンムーが特別なのは、
“未完だから伝説になった”のではなく、
“完結までの設計があるのに辿り着けていない”という、
極めて稀な状態で時間を止めてしまった作品だからです。

このシリーズは、ファンの熱量とコミュニティの活動によって
一度“眠り”から引き戻されました。
ならば、二度目の奇跡が起きないと決めつける理由もありません。

つぶログとしては、
噂話やリークではなく、
公式の発言・一次ソース・具体的な動きをベースにしながら、
今後も「シェンムー完結への道」を長期的に追いかけていきます。

いつか本当にエンディングが描かれるその日まで、
この問いは続きます。

──シェンムーの完結を見ることはできるのか。

その答えを、アップデートされていく“現在進行形の物語”として
これからも一緒に見守っていきましょう。

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