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実在人物のAI画像はどこからNG?炎上しやすい理由と線引き・投稿前チェックリスト

【結論から先に】
実在人物を生成AI画像で扱う場合、違法かどうか以前に炎上しやすいラインがあります。
特に次の条件が重なると、強く問題視されやすくなります。

・本人の同意がない
・性的/侮辱的に見える文脈
・本人が特定できる(顔・名前・連想情報)
・SNSなど拡散されやすい場所に投稿される

迷った場合は「扱わない」「公開範囲を閉じる」「本人の同意を取る」が、最も安全です。

目次
  1. 実在人物を生成AIで扱うと、なぜ一気に炎上しやすいのか?
  2. 今回の事例で何が起きた?(最小限に整理)
  3. なぜ「実在人物×生成AI」は揉めやすいのか
  4. 「違法かどうか」より先に炎上が起きる理由
  5. 投稿前チェックリスト(実在人物を扱うなら最低限ここを見る)
  6. 炎上したときの初動(一般論)|「やるべき順番」と「やらない方がいいこと」
  7. 「AI使用モラル」はどこで決まる?|結局はこの2本柱
  8. 法律面はどう考える?
  9. よくある疑問(FAQ)|実在人物×生成AIの「検索される疑問」を先回り
  10. まとめ

実在人物を生成AIで扱うと、なぜ一気に炎上しやすいのか?

実在人物を模したAI生成画像がSNSで炎上するリスクを示す解説イメージ。ぼかされた人物写真、注意アイコン、炎上マーク、チェックリストを拡大するルーペが配置され、投稿前に確認すべきポイントの重要性を表現

生成AIで画像を作ったり加工したりすること自体は、いまや珍しくありません。けれど「実在人物」を題材にした瞬間、空気がガラッと変わります。冗談のつもりでも、軽いノリでも、ある日いきなり“炎上案件”になってしまう。ここ数年、そのパターンが何度も繰り返されています。

ポイントは、生成AIの性能や流行ではなく、扱っているのが「現実に生きている誰かの顔・身体・人格」だという点です。そこには同意の問題、尊厳の問題、そしてSNSの拡散構造が重なります。結果として「違法かどうか」以前に、規約や社会的な受け止めでアウト判定が出やすいのが現実です。

この記事では、ある事例をきっかけに話題化した論点を“個人の断罪”ではなく、誰にでも起こり得るリスクとして整理します。なぜ揉めるのか、どこから危ないのか、投稿前に何をチェックすべきか。発信者側が自衛できるように、線引きとチェックリストをわかりやすくまとめます。

今回の事例で何が起きた?(最小限に整理)

このテーマは、個人への断罪や詳細な再掲に寄せるほど「再拡散装置」になりやすく、記事としての寿命も縮みます。なので冒頭では、読者が状況を理解できる最小限だけを、一次情報と主要報道の範囲で整理します。

報道によると、漫画家・イラストレーターの田辺洋一郎さんがX上の投稿をめぐって批判を受け、その後に謝罪文を投稿した流れが伝えられています。
本人の発信としては、X上で謝罪の投稿が確認できます。

ここで大事なのは「生成AIそのものが悪い」という話に短絡しないことです。今回の話題は、生成AIの使い方の中でも、とくに“実在人物を扱う局面”で反発が起きやすい、という点が焦点になりました。

このあと本記事では、特定個人を裁くのではなく、同じようなトラブルが繰り返されやすい理由を一般化して整理します。実在人物をAIで扱うときに、どこが危険で、何を避ければ事故率を下げられるのか。その「線引き」と「投稿前チェック」を中心に深掘りしていきます。

なぜ「実在人物×生成AI」は揉めやすいのか

実在人物を生成AIで扱うと炎上しやすいのは、AIの性能や流行というより「人の尊厳」と「拡散の設計」に直撃するからです。ここでは、揉めやすさの原因を4つに分解して整理します(特定個人を裁く話ではなく、誰にでも起こり得るリスクとしての一般論です)。

同意がないと「本人の意思」を勝手に上書きしてしまう

実在人物の顔・身体は、その人の人格や生活と結びついています。本人が望んでいない文脈に置き換えられると、「自分のイメージを勝手に使われた」「勝手に別人のように扱われた」と受け止められやすい。ここが、創作キャラや架空人物と決定的に違う点です。

さらに、性的な画像の無断拡散が深刻な被害を生む現実があるため、日本でも被害拡大を防ぐ目的で法律の枠組みが整備されています。警察庁も、いわゆるリベンジポルノ防止法の目的を「名誉や私生活の平穏の侵害による被害の発生・拡大の防止」と説明しています。
「違法かどうか」を断定する話ではなくても、同意のない扱いが“強い反発を生みやすい土台”になっている、という点は押さえておくべきポイントです。

性的文脈は“受け取り側の基準”が一気に厳しくなる

実在人物を「性的に見える文脈」に寄せた瞬間、反応は格段に厳しくなります。理由は単純で、からかい・侮辱・性的消費と結びつきやすく、被害性が強く見えるからです。

実際にMetaの監督委員会(Oversight Board)は、実在の女性公人の顔を合成しヌード等の文脈にしたAI画像について、Metaの「いじめ・嫌がらせ」ポリシー(侮辱的な性的フォトショップ等の禁止)に該当すると判断した事例を公開しています。
つまり、プラットフォーム側も「実在人物×性的な合成画像」を“害のあるコンテンツ”として扱う方向性がはっきりしています。

SNSは拡散前提で、内輪の冗談が成立しない

投稿者の意図が「冗談」「ネタ」「軽い遊び」でも、SNSは第三者が見て判断する場です。文脈はすぐ剥がれ、引用・切り抜きで“別の意味”として流通します。結果として、投稿者の意図よりも「どう見えるか」「どう受け取られるか」が優先されます。

またXは、合成・改変メディアについて「害をもたらす可能性が高い」などの観点で規制・ラベル付けの対象になり得ることをルール上明記しています。
この“拡散と誤解の加速”がある以上、実在人物を扱う投稿は、最初から事故率が高い設計になっています。

一度出たものは消えにくく、被害が長期化しやすい

炎上時に「消したから終わり」とはなりにくいのが現実です。スクリーンショットや再投稿で残り、当事者にとっては“時間が経っても回収できない”状態になりやすい。だからこそ、周囲の反発も強くなります。

この点は、法律面でも「被害の発生・拡大を防止する」という目的が前面に置かれていることと整合します。
つまり、問題は投稿その瞬間だけではなく、拡散後に長く残り続ける“構造”にあります。

「違法かどうか」より先に炎上が起きる理由

実在人物を生成AIで扱う話題が揉めやすいのは、法律で白黒が付く前に、まず「プラットフォームのルール」と「社会的な受け止め」で“アウト判定”が出やすいからです。ここを押さえると、「なぜこんなに燃えるのか」が感覚ではなく構造として理解できます。

まず当たるのは“法律”ではなく「規約」と「信用」の壁

SNSでの炎上は、法廷で判断が出るよりもずっと速く進みます。投稿が批判される段階では、多くの場合「違法かどうか」より先に、

  • 規約に反していないか
  • 嫌がらせ・侮辱・同意なき性的文脈に見えないか
  • 被害や不快感を生むリスクが高くないか

という観点で“止められる”ことが多いです。

たとえばX(旧Twitter)のルールには、Synthetic and Manipulated Media(合成・改変メディア)について「害をもたらす可能性が高いものを、欺く目的で共有してはならない」こと、そして必要に応じてラベル付け等を行う可能性があることが明記されています。
つまり、投稿者が「悪意はない」と言っても、外から見て害が大きいと判断されれば、規約の文脈で処理され得るわけです。

炎上は“違法”より前に「被害っぽさ」で成立する

実在人物に関するAI画像が燃えやすいのは、「その人が傷つく/侮辱される/同意なく性的に消費される」ように見えた瞬間に、受け止めが一気に厳しくなるからです。

この方向性は、プラットフォーム側の判断にも表れています。Metaの監督委員会(Oversight Board)は、実在の女性公人の顔を用いた“AI生成のヌード等”の画像について、MetaのBullying and Harassment(いじめ・嫌がらせ)ポリシーに反するものとして扱うべきだ、という判断・説明を公開しています。
ポイントは「技術がAIかどうか」ではなく、“侮辱的に性的文脈へ落とす行為”が被害性として重く見られている点です。

「白か黒か」ではなく“グレーを踏みに行くと燃える”構造

スマートフォンを中心にSNSネットワークが広がる構造を表したイラスト。ユーザーアイコンやコメントアイコンが放射状に接続され、投稿がどのように拡散し影響を広げるかを視覚化。

実在人物×生成AIは、そもそも境界線が複雑です。

  • 元画像(公式素材か/転載か/自分で撮ったか)
  • 本人の同意の有無
  • 画像の内容(性的か、侮辱的か)
  • 拡散範囲(不特定多数に届くか)
  • 対象者を特定できるか

これらが絡むので、外から見たときに「被害性が高い」「やってはいけないことをしている」に寄りやすい。結果として、法律の議論に到達する前に“炎上という社会的制裁”が先に起きます。

日本では「私事性的画像」の拡散を止める法制度がある

「だから違法だ」と断定するのではなく、背景として知っておくべきなのが、日本には私事性的画像の提供等による被害を防止するための法律枠組みがあることです。

警察庁は、いわゆるリベンジポルノ防止法について、私事性的画像記録の提供等を処罰し、個人の名誉や私生活の平穏の侵害による被害の発生・拡大を防止する趣旨を説明しています。
法律の条文自体はe-Govでも確認できます。
さらに警察庁は、法律の概要PDFで定義や罰則の枠組みを整理しています。

ここで言いたいのは、「生成AI画像=即違法」という短絡ではありません。実在人物を性的文脈に寄せたり、同意なく拡散したりする行為が、社会的にも制度的にも“被害を生みやすい領域”として強く問題視されている、という前提です。

結論|「違法か?」を調べる前に“燃える条件”が揃ってしまう

まとめると、炎上が先に来るのはこういうことです。

  • 規約は「害」を基準に早く動く(ラベル・制限・削除など)
  • 社会的には、同意なき実在人物の性的文脈が特に強く反発される
  • 日本には私事性的画像の被害拡大を防ぐ制度があり、文脈的にも敏感になりやすい

だからこそ、実在人物を扱う生成AIは「法律の結論を待ってから考える」では遅い。投稿前の段階で“燃える条件”を避けるのが、いちばん現実的なリスク管理になります。

ディープフェイク (PHP文芸文庫)

ディープフェイクが、なぜ「違法かどうか以前に炎上」しやすいのか。実在人物の扱い、拡散の怖さ、境界線の曖昧さを“物語”として体感できる文庫小説です。重い解説書が苦手でも入りやすい一冊。

価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

投稿前チェックリスト(実在人物を扱うなら最低限ここを見る)

1) 本人の同意は確認できる?

「本人がOKと言っている」ことが明確でないなら、基本は避けるのが安全です。

2) 性的・下着・ヌード方向に寄っていない?

この領域は最も炎上しやすく、被害性の指摘も受けやすい。Meta側でも、性的に侮辱するAI画像を問題視した事例があります。

3) 元画像は、権利的に使っていいもの?

公式素材・自分が撮った写真でも、写っている人物の扱いが別問題になることがあります。加えて著作権・肖像の扱いも絡むため、安易な転載素材を使わない。

4) “拡散された前提”で説明できる?

炎上時に「冗談だった」だけでは通りません。第三者が見て納得できる説明ができないなら投稿しない。

5) その人の尊厳を下げる文脈になっていない?

侮辱、からかい、貶め、性的な消費。ここに触れた瞬間、受け止めは一気に厳しくなります。

6) 削除しても残ると理解している?

スクショ・転載を前提に、「一度出したら戻せない」覚悟が必要です。

7) 迷ったら“扱わない”が最適解

実在人物は、オリジナルキャラや自分自身の創作と違い、リスクが段違いです。迷いがある時点で、投稿しない判断が一番の自衛になります。

炎上したときの初動(一般論)|「やるべき順番」と「やらない方がいいこと」

生成AI絡みの炎上は、論点が複数(同意・尊厳・権利・規約)にまたがるぶん、初動が遅れると“説明不能な空白”が生まれやすいです。ここでは、個別ケースを断定せず、一般論として「被害拡大を止める」順番だけ整理します。

1)まず“現物”を確認する(スクショ含む)

炎上時は、引用・切り抜き・再投稿で内容が変形していきます。最初に、何が投稿され、どこが問題視されたのかを自分で把握するのが最優先です。

2)規約と被害性の観点で、投稿の扱いを決める(残す/下げる/削除)

プラットフォームは、合成・改変メディアについて「害をもたらす可能性」などの観点でラベル付けや制限を行うことがあります。Xのルールでも、Synthetic/Manipulated media(合成・改変メディア)に関する方針が示されています。
「自分の意図」よりも、「第三者が見た時に害・侮辱・同意なき性的文脈に見えるか」が焦点になりやすい点を前提に判断します。

3)謝罪するなら、言うべき要点は3つだけ

SNS投稿前のチェックリストをテーマにしたイラスト。机の上に置かれたチェックリストをルーペで確認し、注意アイコンとOKスタンプが並び、投稿前のリスク確認と安全性チェックを強調。

今回のように“実在人物の扱い”が争点になりやすいケースでは、謝罪の中身がブレると火に油です。

  • 何について謝るのか(不適切だった点をぼかさない)
  • 誰に迷惑をかけたのか(当事者・関係先・ファン・コミュニティ)
  • 何を止め、どう再発防止するのか(今後の取り扱い方針)

実際に報道されている事例でも、本人が「不適切な投稿」について謝罪し、反省点を述べた流れが伝えられています。

4)「誤解です」「悪気はない」は最初に出さない

炎上初動でこれを言うと、論点が「被害の有無」から「開き直り」にズレて、鎮火が難しくなりがちです。まずは被害性・不快感が生じたことを受け止め、説明は後に回した方が安全です。

5)二次拡散の抑制を最優先にする

画像や加工指示の詳細を“説明のために”再掲すると、結果的に拡散装置になります。記事でも同様で、再掲・リンクの貼り方は慎重がベターです。


「AI使用モラル」はどこで決まる?|結局はこの2本柱

AIのモラルは「気持ちの問題」や「好き嫌い」で片付けられがちですが、実在人物を扱う領域では、かなり明確に“判断の軸”が収束します。結論から言うと、炎上するかどうか(=社会的に許容されるかどうか)は、ほぼ次の2本柱で決まります。

  • ① 相手の尊厳を下げていないか(同意・侮辱・性的消費)
  • ② 拡散設計の中で被害が増幅しないか(届きすぎ・消えない・模倣される)

この2本柱は、プラットフォーム側のルールや判断にも一致しています。Xは「害をもたらす可能性が高い合成・改変メディア」を問題視し、ラベル付け等を行う場合があると明記しています。
Metaの監督委員会(Oversight Board)も、実在人物の顔を使いヌード等の文脈にしたAI画像が、いじめ・嫌がらせ(Bullying and Harassment)ポリシーで禁じる「侮辱的な性的加工(derogatory sexualized photoshop)」に当たる、という判断を公開しています。


① 相手の尊厳を下げていないか(同意・侮辱・性的消費)

AIのモラルで最重要なのは「技術を使ったか」ではなく、「その人を、どう扱ったか」です。実在人物は、顔や身体がそのまま人格と結びついているため、同意のない加工や、侮辱的・性的な文脈への置き換えは“本人の意思や尊厳を上書きする行為”として受け止められやすい。

同意がない時点で、モラル上のハードルが一段上がる

同意のない利用が強く反発される背景には、現実に「同意なく性的画像等を公表される被害」が存在し、被害拡大防止の枠組みが整備されてきた経緯があります。警察庁は、いわゆるリベンジポルノ防止法について、個人の名誉や私生活の平穏の侵害による被害の発生・拡大を防止する目的で施行された、と説明しています。
(ここで言いたいのは「AI画像=即違法」ではありません。社会が“同意なき性的文脈”に敏感にならざるを得ない土台がある、という話です。)

性的文脈は「侮辱」「性的消費」に直結しやすい

実在人物を下着・ヌード方向へ寄せると、たとえ投稿者が“冗談”のつもりでも、受け手側の解釈は一気にシビアになります。Metaの監督委員会は、実在の女性公人の顔を用いたヌード等のAI画像について、Bullying and Harassmentポリシーの「侮辱的な性的加工(derogatory sexualized photoshop or drawings)」に当たると判断し、MetaがAI生成コンテンツをケースバイケースで評価することも説明しています。
つまりモラルの線引きは、「AIで作ったから」ではなく、「実在の誰かを、侮辱的に性的文脈へ落としたから」引かれる。ここが最重要ポイントです。

“本人が公人だからOK”にはならない

Oversight Boardの事例は「公的人物」でも保護の対象になることを明確に示しています。公人は批判にさらされやすい一方で、侮辱的な性的加工のような行為は「安全と尊重」を損なうとして問題視される、という考え方です。

この柱の結論
AI使用モラルは「本人の同意」「尊厳を下げる要素(侮辱・性的化)」が入った瞬間に、社会的にアウト寄りになります。特に性的化は“議論の余地がほぼ消える”ゾーンです。


② 拡散設計の中で被害が増幅しないか(届きすぎ・消えない・模倣される)

もう一つの柱は「その投稿が、被害を増幅させる設計になっていないか」です。モラルは“行為そのもの”だけでなく、“拡散した結果”も含めて判断されます。

SNSは「意図」より「拡散した時にどう見えるか」が勝つ

SNSは、投稿者の文脈や関係性を知らない第三者に届く場所です。だから「内輪の冗談」は成立しにくい。切り抜き・引用・まとめで文脈が剥がれた瞬間、受け取りが変わります。

Xのルールも、合成・改変メディアについて「害をもたらす可能性が高い」場合を中心に扱い、ラベル付けを行う可能性があると示しています。
ここで重要なのは、モラル判断が「作ったかどうか」より「害が生まれ得るか」に寄っていることです。

「消したら終わり」ではない(消えない・増える)

拡散した画像は、スクリーンショットや再投稿で残り続けます。さらに“作り方”が共有されると模倣が増えます。だから、炎上が長期化しやすい。
この“被害が拡大する構造”は、警察庁が被害防止の啓発で示す問題意識とも整合します(ネット公表が被害者に大きな苦痛を与え、拡大防止が重要である)。

モラルの最終判定は「被害の連鎖を作ったかどうか」

同意のない実在人物のAI画像が強く反発されるのは、当事者だけでなく、似た立場の人にも「次は自分かもしれない」という不安を広げるからです。だから社会は、“被害の連鎖を作る行為”に厳しくなります。

この柱の結論
AI使用モラルは「拡散設計(届きすぎ・消えない・模倣される)」が入った瞬間に、投稿者の意図と無関係にアウト寄りになります。実在人物は、ここが最初から危険域です。

実在人物を扱うAI表現のモラルは、「相手の尊厳を下げないこと」と「拡散で被害を増幅させないこと」の2点で決まる。プラットフォームも“害”を基準に合成・改変メディアを扱い、侮辱的な性的加工は明確に問題視されている。

法律面はどう考える?

SNS投稿の倫理とルールのバランスを象徴するイラスト。左右にシルエットの人物、中央の天秤にはハートとメッセージアイコンが置かれ、感情と法的・社会的ルールの調和を可視化した構図。

前提として、ここでの整理は「個別案件の違法断定」や「法律相談」ではなく、実在人物×生成AI(特に性的ディープフェイク周辺)で、実務上どんな法的論点が出やすいかを一般論としてまとめたものです。
実在人物を扱う場合、法的リスクは1本ではなく、刑事(犯罪になり得る)/民事(損害賠償・差止)/プラットフォーム規約(削除・制限)が同時に走るのが特徴です。


1)まず押さえるべき「リベンジポルノ防止法」の射程

日本には、いわゆるリベンジポルノ防止法(正式名:私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)があります。目的は、私事性的画像の流通によって生じる名誉・私生活の平穏の侵害の被害を防ぐことだと、警察庁の解説でも明確です。
条文(e-Gov)でも、目的や定義、罰則の骨子が確認できます。

ただし重要なのは、この法律が基本的に「私事性的画像記録」という定義に基づいて動く点です。警察庁の概要PDFでは、定義(第2条)や罰則(第3条)などが整理されています。
ここから言えるのは、

  • “性的で、本人が特定できる形で、拡散・公然陳列される”ほど危険度が上がる
  • ただし、生成AI画像がどの条文にどう当たるかは、画像の成り立ち(元が実写か、合成の態様)、内容、拡散方法、特定可能性などで評価が変わり得る

ということです。記事では「この法律がある」「何が被害として想定されているか」までを押さえ、個別案件の適用断定は避けるのが安全です。


2)「AIで作った=法律の外」にはなりにくい(別ルートが立つ)

仮にリベンジポルノ防止法の当てはめが難しいケースでも、実在人物を“それっぽく見せる”ことで、別の法的論点が立ちます。ここが、生成AIの落とし穴です。

民事:人格権(肖像権・プライバシー)+不法行為

実在人物の顔や身体の無断利用は、一般に肖像権・プライバシーなどの人格権侵害として問題になる可能性があり、損害賠償や差止の論点になります。最高裁判例で整理されてきた権利として、法律専門の解説でもまとめられています。

民事:名誉毀損(社会的評価を下げる表現)

性的文脈の合成は、とくに「その人が性的行為をしているかのように誤認させる」方向へ行きやすく、社会的評価の低下(名誉侵害)という論点が立ちやすい、と整理する法律家の解説もあります。
(ここも個別断定は避けつつ、“そう争点になりやすい”と整理するのが記事向きです)


3)「作る」より「拡散」で一気に重くなる

法的には、作成行為それ自体よりも、不特定多数への提供・公然化で問題が深刻化しやすいです。警察庁の解説も「インターネット上に公表」されることで被害が拡大する実情を踏まえている、と述べています。

  • 個人端末内に留まる(この時点でもアウトになり得る論点はゼロではない)
  • SNS投稿・共有・第三者が見られる場所に置く(危険度が跳ね上がる)
  • まとめ・転載・再投稿で拡散(回収不能になり、被害が連鎖する)

この構造があるので、「消したら終わり」になりにくいわけです。


4)開示請求・削除の論点がセットで動く(被害救済の現実ルート)

被害側の救済は、刑事だけでなく、プラットフォームへの削除要請や発信者情報開示など、複数ルートが並行しやすいです。リベンジポルノ防止法の枠組み自体に、関連制度(情報流通・被害拡大防止の観点)が意識されていることが警察庁解説でも触れられています。


5)最新の論点:性的ディープフェイクは「現行法で追いつくか」が焦点化

直近でも、性的ディープフェイク被害が社会問題化し、「同意なき生成・拡散」を性暴力として捉える議論や、現行法の限界を指摘する報道が出ています。
また政府側も、性的ディープフェイク対策について被害実態を整理し「適切に対応」するといった趣旨の発言が報じられています(2026年1月時点)。


ここだけ要約

実在人物×生成AIの法的リスクは、「どの法律に当たるか」を一発で断定できる単純な話ではない。リベンジポルノ防止法のように“私事性的画像の拡散”を念頭に置いた枠組みがあり、さらに肖像権・プライバシー・名誉侵害などの民事論点が重なり得る。とくに「拡散(不特定多数への提供)」でリスクが跳ね上がり、回収不能になって被害が長期化する点が、現実の争点になりやすい。


よくある疑問(FAQ)|実在人物×生成AIの「検索される疑問」を先回り

Q1. 実在人物の写真を生成AIで加工するのは違法?

一概に「全部違法」とは言い切れません。何が問題になるかは、画像の内容、本人の同意の有無、拡散の仕方、対象者が特定できるか、など条件で大きく変わります。

ただし日本には、いわゆる「リベンジポルノ防止法」(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)があり、撮影対象者を特定できる方法で私事性的画像記録を不特定多数に提供・公然陳列する行為などを処罰対象とする枠組みがあります。法律本文と、警察庁の概要資料でも趣旨や定義・罰則が整理されています。
なので記事では「個別の違法断定は避けつつ、法の枠組みがある」ことを押さえるのが安全です。

Q2. 「本人の同意がない」ことが、なぜそんなに大きい?

実在人物の顔・身体は、その人の人格や尊厳と結びついています。本人の意思と無関係に“別の文脈”に置かれると、名誉や私生活の平穏を侵害されたと受け取られやすい。リベンジポルノ防止法の目的も、まさに「名誉・私生活の平穏の侵害」を防ぐ点に置かれています。

Q3. 「違法じゃなければOK」にならないのはなぜ?

現実には、法律の前に“プラットフォームのルール”で止まることが多いからです。X(旧Twitter)は、合成・改変メディア(synthetic & manipulated media)について、害をもたらす可能性が高い場合は削除対象になり得る、という方針を示しています。
つまり「法的に白黒が付く前に、規約や社会的受け止めでアウト判定」が起きやすい、という構造です。

Q4. 性的な加工(下着・ヌード方向)が特に危ないのはなぜ?

性的文脈は“侮辱”“性的消費”と結びつきやすく、被害性の指摘が強くなります。Metaの監督委員会(Oversight Board)も、実在の公的人物の顔を使ってヌード等の性的な文脈にしたAI画像について、いじめ・嫌がらせ(Bullying and Harassment)ポリシーに反すると判断した事例を公開しています。

Q5. 画像そのものを貼らなくても、文章で説明しただけで危険?

画像を再掲しなくても、説明の仕方によっては二次拡散の燃料になり得ます。特に「どんな加工指示を出したか」を細かく書くと、模倣や再生成を促す読み物になってしまう。

Q6. 炎上したら“消して謝れば終わり”?

終わりにくいです。理由は2つあります。
1つ目は、SNSは保存・転載・切り抜きで残りやすいこと。2つ目は、プラットフォーム規約や社会的信用の問題が絡むと「投稿削除」だけでは回復しないことがある点です。Xの合成・改変メディア方針でも、状況に応じてラベル付けや削除などの措置が想定されています。

Q7. クリエイターは、実在人物を題材にしたAI表現を一切やめるべき?

「一切やめるべき」とまでは言い切れませんが、リスク管理の観点では“やらない判断”が最も安全な場面が多いです。特に本人の同意が確認できない場合、性的文脈に寄る場合、拡散した後に説明責任を持てない場合は避けるのが堅実です。
(ここは法解釈の断定ではなく、炎上・規約・信用の観点からの実務的な結論です)

まとめ

実在人物を生成AIで扱うと炎上しやすいのは、AIの是非というより「同意」と「尊厳」、そしてSNSの拡散構造が直撃するからだ。特に性的文脈に寄った合成・加工は、プラットフォームのルールや社会的な受け止めの面でも厳しく見られやすい。
発信者側ができる最善の自衛は、投稿前に同意の有無と被害性をチェックし、迷った時は扱わない判断を取ること。もし炎上した場合も、二次拡散を増やさず、論点をぼかさない謝罪と再発防止の提示が重要になる。

出典メモ

  • 警察庁
    私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)概要
  • X(旧Twitter)
    Synthetic and Manipulated Media(合成・改変メディア)に関するポリシー
  • Meta Oversight Board(監督委員会)
    AI生成画像・合成画像に関する判断事例(Bullying / Harassment ポリシー)
  • 主要報道(事例整理)
    TBS NEWS DIG/ENCOUNT/よろず〜ニュース ほか

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