
2019年に発表され、2021年には『牧場物語MOBILE』としてゲーム映像まで公開された『牧場物語』のスマートフォン向けプロジェクトが、正式に開発中止となりました。
マーベラスは2026年7月31日、テンセントグループから、ライセンス契約に基づいて開発してきた特定タイトルを中止するとの連絡を受けたと発表しています。
公表された理由は、事業環境や事業採算性などを総合的に判断した結果です。2019年3月の契約発表から数えると、約7年4か月を経てプロジェクトが終了することになりました。
同じ日には、マーベラスとテンセント子会社との資本業務提携解消も発表されています。
ただし、今回終了したのは、テンセントグループが開発していた特定のモバイルタイトルです。2019年に締結された『牧場物語』IPのモバイルゲーム展開に関するライセンス契約は継続しており、家庭用シリーズの終了やスマートフォン展開からの完全撤退が発表されたわけではありません。
この記事では、『牧場物語』スマホ版がなぜ開発中止になったのか、2019年の発表から何があったのか、テンセントとの提携解消との関係、家庭用シリーズや今後のモバイル展開への影響を、マーベラスの公式資料を中心に解説します。
『牧場物語』スマホ版の開発中止が正式発表
マーベラスは2026年7月31日、『牧場物語』IPのモバイルゲーム展開に関するライセンス契約に基づき、テンセントグループが開発していた特定タイトルの中止を発表しました。
マーベラスが自主的に中止を決定したのではなく、テンセントグループから開発を中止するとの連絡を受けた形です。
公式資料では、開発中止の理由について、テンセントグループが事業環境や事業採算性などを総合的に勘案した結果と説明されています。
一方、開発費の増加、想定していた利用者数、市場調査の結果、中国のゲーム規制など、判断に至った具体的な事情は公表されていません。
そのため、現時点で確定している中止理由は、事業環境と採算性を含めた総合判断までです。
発表から開発中止までの経緯
『牧場物語』のモバイルプロジェクトは、2019年のライセンス契約から始まりました。
その後、タイトルやゲーム映像の公開、中国版の事前登録まで進んだものの、正式サービスには至らないまま開発中止を迎えています。
| 時期 | 主な出来事 |
|---|---|
| 2019年3月 | 『牧場物語』モバイル展開のライセンス契約を締結 |
| 2020年5月 | マーベラスとテンセント子会社が資本業務提携を締結 |
| 2021年5月 | 『牧場物語MOBILE』のタイトルと映像を公開し、中国版の事前登録を開始 |
| 2024年6月 | 中国の情勢や法律面の変化へ対応しながら開発中と説明 |
| 2026年7月 | 特定タイトルの開発中止と資本業務提携の解消を発表 |
2019年3月|テンセントゲームスとライセンス契約を締結
マーベラスは2019年3月28日、『牧場物語』のモバイルゲーム展開について、テンセントゲームスとのライセンス契約締結を発表しました。
役割分担は、マーベラスが『牧場物語』の作品素材を提供し、テンセントゲームスが開発・配信・運営を担当するというものです。
両社のノウハウを組み合わせ、モバイル分野で『牧場物語』IPを展開することが目的とされていました。
ただし、この時点ではゲームのタイトル、対応端末、配信地域、料金体系、サービス開始時期などは発表されていません。
2020年5月|テンセントとの資本業務提携を開始
2020年5月25日、マーベラスはテンセントの完全子会社Image Frame Investment(HK)Limitedと資本業務提携契約を締結しました。
目的として掲げられていたのは、新しいIPや事業の創出、既存IPのグローバル展開などです。
ここで注意したいのは、2019年のライセンス契約と2020年の資本業務提携は別の契約だという点です。
『牧場物語』のモバイルプロジェクトが先に始まり、その翌年に会社間の協力関係が資本面を含む形へ拡大した順序になります。
2021年5月|『牧場物語MOBILE』として映像を公開
2021年5月16日、テンセントゲームスのオンラインイベント「Tencent Games Spark More 2021」で、開発中の作品が**『牧場物語MOBILE』**として公開されました。
映像では、作物の栽培、家畜の世話、木の伐採、牛の乳搾り、住人との交流など、シリーズらしい牧場生活が紹介されています。
中国版の公式サイトも開設され、事前登録の受け付けが始まりました。
しかし、具体的な配信日は明らかにされず、日本を含む中国以外の地域でのサービス開始についても正式な発表はありませんでした。
2024年6月|環境変化へ対応しながら開発中と説明
2024年6月21日に行われたマーベラスの経営近況報告会では、株主からモバイルゲームの開発状況について質問が寄せられました。
マーベラスは、中国の情勢や法律面など、さまざまな変化へ対応しながら開発を続けていると回答しています。
同時に、各種調整が必要となり、時間がかかっている状態だとも説明しました。
この回答から、2021年の映像公開後に計画が完全に止まっていたのではなく、少なくとも2024年6月時点では開発中のプロジェクトとして存続していたことが分かります。
2026年7月|正式サービスに至らないまま開発中止
2026年7月31日、テンセントグループから開発中止の連絡があったことを、マーベラスが公表しました。
2019年3月のライセンス契約発表から開発中止までは、約7年4か月です。
ただし、これは発表から中止までの経過期間であり、同じ規模や体制で7年以上開発が続けられていたことを意味するものではありません。
ゲームがどの段階まで完成していたのか、途中で仕様や開発体制が変更されたのか、正式配信の候補時期が決まっていたのかといった詳細は明らかにされていません。
『牧場物語』スマホ版はなぜ開発中止になった?
公式に示された理由は、テンセントグループが事業環境や事業採算性などを総合的に判断した結果です。
それ以上の詳しい理由は公表されていません。
2024年には、中国の情勢や法律面の変化への対応に時間がかかっていると説明されていました。そのため、中国市場を取り巻く環境が開発の長期化に影響したことは確認できます。
一方で、マーベラスは、中国の制度や法律面だけが開発中止の直接的な原因だったとは説明していません。
正確には、次のように分けて考える必要があります。
- 開発が長期化した背景:環境や法律面の変化への対応、各種調整
- 最終的な中止判断:事業環境や採算性などを含めた総合判断
「中国の規制だけが原因だった」「開発に失敗した」「完成したものの配信許可が下りなかった」と断定できる公式情報はありません。
約7年でどこまで完成していたのかは不明
2021年には実際のゲーム映像が公開されているため、少なくとも映像として紹介できる段階まで制作が進んでいたことは確認できます。
ただし、開発中止時点での完成度は公表されていません。
次のような情報も明らかになっていない状態です。
- ゲーム全体の完成度
- 社内テストや外部テストの実施状況
- 正式サービス開始の候補時期
- 途中で行われた仕様変更
- 開発にかかった費用
- 開発中止による個別の損失額
したがって、**「完成直前だった幻のゲーム」「ほぼ完成していたが発売できなかった」**といった表現も、現時点では使えません。
テンセントとの資本業務提携解消が原因なのか
スマホ版の開発中止と同じ2026年7月31日、マーベラスはImage Frame Investmentとの資本業務提携を解消しました。
同時に発表されたため、提携解消によってゲームが中止されたようにも見えます。
しかし、公式資料では、資本業務提携の解消とモバイルタイトルの開発中止について、それぞれ異なる理由が説明されています。
| 発表内容 | 公式に示された理由 |
| 資本業務提携の解消 | テンセント側の投資ポートフォリオと資本配分方針の見直し |
| モバイルタイトルの中止 | 事業環境や事業採算性などを含めた総合判断 |
そのため、資本業務提携が解消されたから、ゲームも自動的に中止されたとまでは断定できません。
資本業務提携を解消した理由
テンセントグループは、投資ポートフォリオの見直しと資本配分方針に基づき、子会社が保有するマーベラス株式の売却意向を示しました。
マーベラスとImage Frame Investmentが今後の協業体制について協議した結果、2026年7月31日付で資本業務提携を終了しています。
マーベラスは、提携を始めた当時から中国・世界市場や自社のグローバル展開体制が変化し、パートナーも多様化したと説明しています。
今後は、特定企業との強い資本関係を軸にする形から、複数のパートナーと柔軟に協業する形へ移行する方針です。
ライセンス契約は終了していない
資本業務提携は終了しましたが、2019年に締結された『牧場物語』IPのモバイルゲーム展開に関するライセンス契約は継続します。
マーベラスは、今回の特定タイトルの開発中止によって、両社間の契約関係には影響がないと説明しています。
整理すると、今回の発表で変わったのは次の2点です。
- 2020年に始まった資本業務提携は終了
- 開発中だった特定のモバイルタイトルは中止
一方、2019年のライセンス契約や、両社間に存在するその他の個別契約まで、すべて終了したわけではありません。
開発中だったスマホ版はどんなゲームだった?
2021年に公開された『牧場物語MOBILE』の映像では、シリーズの基本となる牧場生活が3Dグラフィックで表現されていました。
作物を育てる、動物の世話をする、素材を集める、住人と交流するといった要素が紹介されており、スマートフォン向けでありながら、家庭用シリーズの特徴を受け継ぐ作品を目指していたことがうかがえます。
昼と夜の変化や、住人との親密な交流を思わせる場面も確認できました。
ただし、映像は開発中の内容です。紹介された要素が、すべて最終的な製品版へ実装されると決定していたわけではありません。
恋愛や結婚の詳しい仕様は不明
『牧場物語』シリーズでは、里の住人と交流を深め、恋愛や結婚へ進む要素も大きな特徴です。
『牧場物語MOBILE』の映像でも、住人との交流や恋愛を思わせる場面は紹介されていました。
一方、結婚候補の人数、イベントの条件、同性婚への対応など、具体的なシステムは公表されていません。
家庭用作品と同等の恋愛・結婚システムが完成していたとまでは判断できない状態です。
基本プレイ無料やガチャの有無も発表されていない
スマートフォンゲームとして開発されていたものの、料金体系や収益方法は最後まで明らかになりませんでした。
次のような項目も不明です。
- 基本プレイ無料か買い切り型か
- ゲーム内課金の内容
- ガチャ機能の有無
- スタミナや行動回数の制限
- 他のプレイヤーとの交流機能
- 対応OSや必要な動作環境
テンセントが開発していたという理由だけで、ガチャを中心としたゲームになる予定だったと決めつけることはできません。
牧場生活を紹介する映像は公開されたものの、運営形式や課金方法は確定しないまま開発中止になったというのが正確です。
日本での配信は正式決定していなかった
2021年に開設された公式サイトと事前登録は、中国版を対象としたものでした。
日本版の配信日、事前登録、サービス開始については、正式な発表を確認できません。
マーベラスは過去に、モバイル分野における『牧場物語』IPの世界展開を目指すと説明していましたが、日本を含む各地域での配信が具体的に決定したわけではありません。
そのため、中国での展開準備が進んでいたことは確認できる一方、日本で遊べる予定だったかどうかは最後まで確定しなかったと整理するのが適切です。
今後、新しい『牧場物語』スマホ版は出る?
2019年のライセンス契約が残っているため、契約上はテンセントグループとの協力関係が継続します。
ただし、契約が有効であることは、新しいゲームの開発が決定したことを意味しません。
2026年8月2日現在、次のような計画は発表されていません。
- 中止されたタイトルの開発再開
- 別タイトルとしての作り直し
- 他社への開発移管
- 新しい『牧場物語』スマホゲームの制作
- 新たな事前登録や配信時期
現時点の結論は、今回の特定タイトルは中止されたが、将来のモバイル展開まで完全に終了したわけではないというものです。
新しいプロジェクトが発表されるまでは、「スマホ版はもう出ない」とも「別作品が近く発表される」とも断定できません。
中止されたゲームが復活する可能性は?
公式発表で使われている表現は「延期」や「一時停止」ではなく、開発の中止です。
したがって、2019年から進められてきた特定タイトルについては、現在の開発計画が終了したと考えるのが自然です。
一方、開発済みのキャラクター、背景、プログラム、ゲームシステムなどが今後どう扱われるのかは公表されていません。
将来、新しいスマホ版が発表されたとしても、今回の素材を再利用した作品なのか、企画から作り直した別作品なのかは、公式情報が出るまで判断できません。
家庭用『牧場物語』シリーズへの影響は?
今回の中止対象は、テンセントグループが担当していた特定のモバイルタイトルです。
Nintendo Switch 2、Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Steamなどで展開されている家庭用・PC向けシリーズについて、開発中止やシリーズ終了は発表されていません。
マーベラスが2026年7月に示した今後の事業方針でも、『牧場物語』はオリジナル作品、リメイク、コラボなどを展開する主要IPとして掲載されています。
また、『牧場物語』は2026年にシリーズ30周年を迎え、記念イラスト、キャラクター人気投票、思い出コンテスト、関連商品の展開など、複数の企画が実施されています。
したがって、モバイルプロジェクトの中止を、家庭用シリーズや『牧場物語』IP全体の終了と受け取る必要はありません。
開発中止による業績への影響は?
マーベラスは、資本業務提携の解消、一部プロジェクトの中止、株主構成の変更など、今回公表した一連の事項について、2027年3月期の連結業績に与える影響は軽微としています。
そのため、今回の中止を理由に、通期業績予想を大きく変更するような影響は現時点で見込まれていません。
一方、スマホ版単体の開発費、中止によって生じた損失額、マーベラスとテンセントの費用負担などは個別に公表されていません。
2019年の発表では、テンセントゲームスが開発・配信・運営を担当すると説明されていましたが、その役割分担だけから、実際の費用や損失の内訳を判断することはできません。
公式情報から分かるのは、会社全体の連結業績への影響は軽微であり、プロジェクト単体の金額は明らかになっていないという点までです。
まとめ
『牧場物語』のスマートフォン向けプロジェクトは、2019年3月にマーベラスとテンセントゲームスのライセンス契約が発表され、2021年には『牧場物語MOBILE』としてゲーム映像と中国版の事前登録が公開されました。
しかし、正式サービスには至らず、2026年7月31日、事業環境や事業採算性などを総合的に判断した結果として、特定タイトルの開発中止が発表されています。
同じ日にはテンセント子会社との資本業務提携も解消されましたが、2019年に締結されたモバイルゲーム展開のライセンス契約は継続します。
今回の発表で終了したのは、発表から約7年4か月が経過していた一つのモバイルプロジェクトです。
家庭用『牧場物語』シリーズや30周年企画は継続しており、シリーズ全体が終了するわけではありません。
今後、別のスマートフォン向け作品が作られるかは未定です。現時点では、中止されたタイトルと将来のモバイル展開を切り分け、マーベラスからの新たな発表を待つ段階となっています。