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ドラクエIII忖度なしレビュー|自由度の名作とHD-2Dリメイクの期待を徹底検証

「そして伝説へ…」ドラクエIIIを今あらためて遊ぶ意味とは?

『ドラゴンクエストIII HD-2Dリメイク』は、2024年11月にスクウェア・エニックスから発売されたRPGで、ファミコン版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(1988年)の公式リメイク作品です。HD-2Dエンジンによって、クラシックなドット表現に3Dの光や陰影を融合させ、懐かしさと新しさを両立したビジュアルを実現しています。

ロト三部作の完結編であり、シリーズ屈指の人気を誇る本作は、HD-2D化によって改めて大きな注目を集めました。特に、オリジナルの自由度の高い職業システムや広大な冒険の舞台を現代的に表現し直し、UIや操作性の改善も施されています。さらに、フルオーケストラによる音楽アレンジが加わり、名曲「そして伝説へ…」を新たな迫力で体験できるのもリメイク版の大きな魅力です。

単なる復刻にとどまらず、“往年の名作を今のプレイヤーに通用する形で蘇らせる”という挑戦的なリメイク。それが『ドラゴンクエストIII HD-2Dリメイク』の最大の特徴だと言えるでしょう。

リメイク版が注目された背景

『ドラゴンクエストIII HD-2Dリメイク』が発売されたのは2024年11月14日。対応ハードはSwitch、PS5、Xbox Series X|S、そしてPC(Steam/Windows)と、現行の主要プラットフォームをすべて網羅していました。この間口の広さ自体が、ファンの期待を大きく膨らませる要因だったと思います。

HD-2Dスタイルによる表現も注目されました。ドットの温かみを残しながらも、光や影の演出、奥行き感を重ねることで、懐かしいのに新しい――そんな不思議な体験を与えてくれます。スクリーンショットを見た瞬間に「これは単なる移植ではない」と感じた人も多いでしょう。

さらに、UIやテンポの改善だけでなく、新要素が加えられたことも大きな話題になりました。新職業「モンスターマスター」やモンスター闘技場などのコンテンツは、オリジナルを遊び尽くした世代にとっても新鮮味があり、「もう一度冒険してみよう」と思わせる仕掛けになっています。

また、発売前から『ドラゴンクエストI&II HD-2Dリメイク』が翌年に登場すると発表されていたことも忘れてはいけません。IIIからI、IIへと続く物語を改めて順番に楽しめる導線が整い、シリーズ全体の再評価につながる流れが作られていました。

そして背景には、やはり1988年に発売されたオリジナル版『III』の社会現象的ヒットがあります。学校を休んで並んだ子どもたちがニュースで取り上げられ、ゲーム史に刻まれるエピソードとなりました。実際には「発売日が休日に法規制された」というのは都市伝説に近い話ですが、文化的な重みがある作品であることは確か。その歴史的文脈があったからこそ、HD-2D版の登場は特別な出来事として注目されたのです。

忖度なしレビュー:良かった点

『ドラゴンクエストIII HD-2Dリメイク』を遊んでまず感じたのは、映像表現の美しさでした。ドット絵の懐かしさを残しつつ、光と影が差し込む街並みや、水面に反射する光、奥行きのある森や城の風景が「旅をしている実感」を強くしてくれます。ファミコン時代に想像で補っていた部分が、いまの技術で具体的に描かれることで、昔の冒険が立体的に蘇った印象を受けました。

遊びやすさの面でも大きく進化しています。メニュー操作や戦闘のテンポが最適化され、オートセーブやダッシュ機能といった現代的な快適さが加わったことで、ストレスを感じにくくなりました。昔は時間のかかったレベル上げや移動も、今作では自然とプレイに集中できるバランスに調整されています。

音楽の力も健在です。すぎやまこういち氏が手がけた名曲群は、フルオーケストラアレンジによってスケールを増し、特にフィールド曲「そして伝説へ…」を聞いた瞬間は胸が熱くなりました。イベントシーンでは演出と音楽がしっかり連動し、盛り上がるべき場面で気持ちを引き上げてくれる力があります。

そして何より評価したいのは、新しい要素が単なる“おまけ”に留まらないことです。モンスターを仲間にできる新職業「モンスターマスター」や、闘技場といった追加要素は、オリジナルを知るファンにとっても新鮮で、再び遊ぶ理由を与えてくれました。懐かしさと新鮮さを同時に体験できる──それがリメイク版の強みだと感じます。

忖度なしレビュー:微妙だった点

遊んでみて素直に感じたのは、「確かに進化はしているけれど、完璧とは言えない」という点でした。

まず気になったのは、HD-2D特有の“見づらさ”です。ドットのキャラが奥行きのある背景に配置されることで雰囲気は出るのですが、暗いダンジョンや入り組んだ街ではキャラクターが背景に溶け込みやすく、視認性が落ちる場面がありました。昔のシンプルなドット絵のほうが逆に見やすかった、という瞬間もあります。

次にテンポ感。戦闘やイベントの演出は華やかになったものの、そのぶん処理が重く感じられる部分があり、サクサク感を求める人にはやや冗長に映るかもしれません。特に旧作のテンポを体に刻んでいるプレイヤーほど、「もっと軽快でよかったのでは」と思う場面があるでしょう。

また、新要素への評価も分かれるポイントです。モンスターを仲間にできる「モンスターマスター」や闘技場といった追加コンテンツは確かに新鮮ですが、人によっては「オリジナルのシンプルさが良かった」と感じるかもしれません。過去作の“完全再現”を期待していた層からは「余計な要素では」という声も見られます。

そして最後に、価格面の印象も無視できません。フルプライスに近い設定で発売されたことから、「移植ではなくリメイクとはいえ、ボリューム感に対して高いのでは」と感じたユーザーもいました。もちろん制作にかかるコストや演出面を考えれば納得できる部分もありますが、ライト層には手を出しにくい価格設定だったのも事実です。

こうした点を踏まえると、『HD-2Dリメイク』は間違いなく挑戦的で価値ある作品ですが、誰にとっても無条件に“神リメイク”とは言い切れない。だからこそ賛否が分かれ、議論を呼ぶ作品になっているのだと思います。

グラフィック比較

HD-2Dリメイク版を実際にプレイすると、まず目を奪われるのは画面の美しさです。懐かしいドットの雰囲気を残しつつ、光や影の演出、遠近感のある背景によって、オリジナルとはまったく別物の臨場感を与えてくれます。ここでは特に変化が大きい三つの場面を比較してみましょう。

街の風景では、旧作ではシンプルなブロックで表現されていた建物が、HD-2D版では立体的な陰影と光の演出で再現されています。窓の明かりや街灯の光まで描き込まれていて、歩いているだけで雰囲気に浸れるのは大きな進化です。

フィールド画面では違いがさらに顕著です。平面的だった大地が、HD-2D版では山や森に奥行きが生まれ、空の色合いや影の動きで広大さを感じられるようになりました。船で新しい大陸に渡ったときのワクワク感が、映像演出によってより強調されています。

オリジナル版 フィールド

オリジナル版(SFC)

HD-2Dリメイク版 フィールド

HD-2Dリメイク版(2025)

そして戦闘画面。旧作のドット絵の敵キャラも味わい深いものでしたが、リメイク版ではアニメーションと演出が加わり、迫力が段違いです。魔法を唱えた時の光のエフェクトや、カメラの動きによる演出が、単なるドットバトルを“戦闘シーン”にまで高めています。

実際に比較してみると、リメイク版が“ただ美しくなっただけ”ではなく、“当時の想像を映像として実体化した”作品であることがはっきりと伝わってきます。

オリジナル版 戦闘

オリジナル版(SFC)

HD-2Dリメイク版 戦闘

HD-2Dリメイク版(2025)

戦闘・ゲームシステムの評価

HD-2Dリメイク版の戦闘は、基本的には従来のドラクエらしいコマンド選択式を踏襲しています。ターンごとに「たたかう」「じゅもん」「どうぐ」といった選択肢を選ぶシンプルさはそのままに、現代的なインターフェースで整理されており、非常に見やすく直感的に操作できます。オートセーブやバトルスピード調整といった快適機能も盛り込まれていて、遊びやすさは確実に向上しています。

一方で、オリジナル版の特徴だった職業システムや転職の奥深さもしっかり残されており、自分だけのパーティを編成して育てる面白さは健在です。勇者に加えて、戦士・僧侶・魔法使い・武闘家・商人・遊び人などを自由に組み合わせ、戦略に応じて転職させることで、プレイスタイルが大きく変わっていきます。特に長く遊ぶほど「育成の幅」が感じられるのは本作ならではの醍醐味でしょう。

さらにリメイク版では、新職業「モンスターマスター」の追加や、モンスター闘技場といった新要素が加わりました。これにより、既存のプレイヤーにも新たな戦術や遊び方が提示され、単なる懐古ではない“もう一度やりたくなる理由”が生まれています。

総じて言えるのは、リメイク版の戦闘は「懐かしい操作感」と「現代的な快適さ」が絶妙に両立していること。ドラクエらしさを壊さず、しかし不便さは可能な限り解消した設計は、シリーズを知らない新規ユーザーにとっても入りやすく、往年のファンにとっても満足できる仕上がりだと感じました。

音楽・演出

ドラクエシリーズにおいて音楽は欠かせない要素ですが、HD-2Dリメイク版『ドラゴンクエストIII』でもその存在感は圧倒的でした。すぎやまこういち氏が手がけた名曲群は、今作ではオーケストラアレンジで収録されており、フィールド曲「そして伝説へ…」を耳にした瞬間は胸が熱くなるファンも多いはずです。序曲からして重厚感が増し、冒険への期待感を強く引き立ててくれます。

演出面でも大きな進化があります。HD-2Dならではの光と影の表現がイベントシーンに映え、キャラクターの動きや表情を最小限に抑えつつも、視線の誘導やカメラワークで物語の盛り上がりをしっかり演出しています。例えば仲間が揃う瞬間や、重要なボス戦の直前には光の差し込みや音楽の高まりが重なり、自然と感情を引き上げてくれる仕組みになっています。

また、戦闘中の魔法や特技のエフェクトも見逃せません。オリジナルでは一瞬のエフェクトで済んでいた呪文も、リメイク版では光の粒や爆発の広がり方まで丁寧に描き込まれており、「メラゾーマを撃った!」という実感が視覚的にも楽しめるようになりました。こうした小さな演出の積み重ねが、バトルを単なる作業ではなく、一つひとつ印象に残る体験へと昇華させています。

総じて、音楽と演出は「懐かしさの再現」と「新しい感動」の両方を兼ね備えた仕上がり。オリジナルの空気を知る世代には郷愁を、新しい世代にはドラマチックな冒険感を与えてくれる、大きな強みだと感じました。

総合評価・まとめ

『ドラゴンクエストIII HD-2Dリメイク』は、ただ懐かしさを追体験するための復刻ではなく、現代のRPGとして堂々と遊べる一本に仕上がっていました。

良かった点としてまず挙げたいのは、やはりグラフィックと音楽の進化です。HD-2Dならではの表現力が、街や大地、そして戦闘を鮮やかに彩り、すぎやまこういち氏の楽曲をオーケストラで聴ける体験は格別でした。オリジナル版を知っている人にとっては「当時頭の中で想像していた冒険風景が現実になった」という感覚を味わえるはずです。

さらに、戦闘や育成のシステムはオリジナルの面白さを守りながらも快適に改良され、テンポよく遊べる点も大きな魅力。新職業や追加要素によって、シリーズ経験者でも新しい驚きを感じられるよう工夫されていました。

一方で、全体のテンポに物足りなさを感じる部分もあり、戦闘演出やイベントシーンがやや長く感じる場面もあります。ファミコン版やスーパーファミコン版のスピード感を記憶している人ほど、その違いが際立つかもしれません。しかし、それ以上に映像美や音響演出による没入感が勝り、マイナス要素を大きく上回る仕上がりといえるでしょう。

総合的に見れば、本作は「過去を知らない新しいプレイヤーにも十分おすすめできるRPG」であり、同時に「オリジナルを愛した世代にも応えてくれるリメイク」でした。HD-2Dの表現はまだシリーズの可能性を広げる第一歩に過ぎず、今後の『I』『II』への展開にも期待が高まります。

リメイクという言葉の枠を超え、時代を越えて語り継がれる作品──『ドラゴンクエストIII HD-2Dリメイク』は、まさにその名にふさわしいタイトルだと感じました。

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