防災・災害

エルニーニョなのに2026年は猛暑?過去最強の記録と日本の異常気象を検証

目次
  1. 2026年は過去最強のエルニーニョなのになぜ猛暑?異常気象の理由
  2. 2026年は過去最強のエルニーニョなのに、なぜ猛暑になった?
  3. 2026年のエルニーニョは本当に過去最強?気象庁が記録を更新
  4. そもそもエルニーニョ現象とは?なぜ日本の天気まで変わるのか
  5. 2026年夏の異常気象① 西日本は歴史的猛暑、九州北部は記録的少雨
  6. 2026年夏の異常気象② 台風が多かったのはエルニーニョの影響?
  7. 2026年夏の異常気象③ 8月には千葉県で記録的な豪雨も発生
  8. 2026年秋の異常気象④ 9月は東日本太平洋側で記録的大雨
  9. 過去の強いエルニーニョでは、日本に何が起きていた?
  10. 強いエルニーニョほど、日本の異常気象も激しくなる?
  11. 2026~2027年の冬はどうなる?過去最強でも予報は別に確認
  12. エルニーニョと日本の異常気象について、よくある疑問
  13. まとめ|過去最強のエルニーニョでも日本が冷夏になるとは限らない

2026年は過去最強のエルニーニョなのになぜ猛暑?異常気象の理由

2026年の過去最強のエルニーニョと日本の異常気象を解説するイラスト。太平洋の海面水温上昇と日本の猛暑、少雨、台風、大雨を描いたアイキャッチ

エルニーニョ現象が発生すると、日本の夏は涼しくなりやすい。

そう聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

ところが2026年、日本ではまったく違うことが起きました。

春からエルニーニョ現象が発生し、9月には気象庁の観測で過去最大の強さを記録。その一方で、西日本は歴史的な猛暑に見舞われ、少雨や台風の多発、秋には記録的な大雨まで発生したのです。

エルニーニョなのに、なぜ冷夏にならなかったのでしょうか。

答えは、エルニーニョが日本の天候に影響を与えることはあっても、それだけで気温や雨の量が決まるわけではないからです。

気象庁は2026年9月1日、夏の異常気象について詳しい分析を公表しました。その結果、熱帯太平洋では典型的なエルニーニョ時の特徴が現れた一方、日本付近では過去の典型的な状態とは異なる偏西風の流れが生じていたことが分かっています。

つまり、エルニーニョが強かったことと、日本が猛暑になったことは矛盾しないのです。

今回は2026年10月20日までに公表された気象庁の公式資料を中心に、過去最大のエルニーニョがどれほど珍しいのか、日本では何が起きたのか、そして1993年の冷夏など過去の事例と何が違うのかを検証します。

2026年は過去最強のエルニーニョなのに、なぜ猛暑になった?

最初に、今回の最大の疑問から整理しましょう。

気象庁が過去のエルニーニョ発生時の日本の夏を調査した結果では、西日本で平均気温が低くなりやすく、北日本と東日本では平年並みか低くなりやすい傾向があります。

しかし、これは過去の事例を集めた統計的な傾向です。

「エルニーニョが発生した夏は、必ず冷夏になる」という意味ではありません。

2026年の場合、熱帯太平洋ではエルニーニョ特有の海面水温や大気の状態が観測されていました。それにもかかわらず、ユーラシア大陸から日本付近にかけての上空では、偏西風が平年より北側を流れるなど、過去の典型的なエルニーニョ時とは異なる状態が現れました。

日本列島は暖かい高気圧に覆われやすくなり、特に西日本で晴天と厳しい暑さが続いたのです。

さらに、地球温暖化によって大気全体の気温が上昇していることも、高温をもたらす背景となりました。

気象庁の分析を整理すると、2026年の猛暑には次のような要因が重なっていました。

  • 偏西風が日本付近で大きく蛇行し、平年より北側を流れた。
  • 上空のチベット高気圧などに伴い、日本付近が背の高い高気圧に覆われた。
  • 下降気流と強い日射によって気温が上がりやすくなった。
  • 太平洋高気圧の縁を回る暖かい空気も流れ込んだ。
  • 地球温暖化による大気全体の高温化が、暑さをさらに強める背景となった。

2026年の猛暑は、エルニーニョの影響がまったくなかったと結論づけられたわけでも、エルニーニョだけで引き起こされたわけでもありません。

複数の大気現象が重なり、日本では通常のエルニーニョ時に見られやすい冷夏傾向とは異なる結果になった、というのが気象庁の分析に沿った説明です。

参考:気象庁「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果について」(2026年9月1日)

2026年のエルニーニョは本当に過去最強?気象庁が記録を更新

今回の「過去最強」という表現には、実際の観測データによる根拠があります。

気象庁は2026年10月9日、エルニーニョ監視速報を発表しました。

それによると、2026年9月のエルニーニョ監視海域の海面水温は、基準値より4.0℃高くなっていました。

これは、1949年以降の観測で最も大きかった1997年12月の+3.6℃を上回る値です。

発生期間最大水温偏差位置づけ
1982年春~1983年秋+3.2℃歴史的に強い現象
1997年春~1998年夏+3.6℃従来の最高記録
2014年春~2016年春+3.1℃強いエルニーニョ
2026年春~継続中+4.0℃2026年9月に過去最高を更新

※気象庁のNINO.3監視海域における月平均海面水温の基準値との差。2026年の値は9月までの観測結果であり、最終的な最大値はまだ確定していません。

2026年のエルニーニョは春から続いているとみられ、7月には+2.5℃、8月には+3.4℃を記録。9月に+4.0℃となり、従来の最高記録を更新しました。

気象庁は10月9日の時点で、冬にかけても過去最大の強さのエルニーニョ現象が続く見込みを100%と評価しています。

ただし、この100%は気象庁の予測における確率であり、観測値が今後も必ず上昇するという意味ではありません。

出典:気象庁「エルニーニョ監視速報」2026年10月9日発表、エルニーニョ・ラニーニャ現象の過去の発生期間

「+4.0℃」は日本の気温が4℃上がったという意味ではない

ここは誤解しやすいところです。

今回の+4.0℃は、日本の気温でも、日本周辺の海面水温でもありません。

気象庁がエルニーニョ監視に使う、太平洋赤道域の特定の海域における月平均海面水温と基準値の差です。

監視海域は北緯5度~南緯5度、西経150度~90度。一般に「NINO.3」と呼ばれています。

また、気象庁がエルニーニョ現象の発生を判定するときは、単月の水温偏差だけでなく、5か月移動平均値が一定の条件を満たす期間も使用します。

今回記録を更新したのは月平均海面水温の偏差です。エルニーニョ現象の継続期間や、世界中への影響の大きさが、あらゆる意味で過去最大と確定したわけではありません。

さらに、米国のNOAAなどは気象庁と異なる監視海域や指数も使用しています。海外の資料と数字を比較するときは、どの海域の、どの期間の偏差なのかをそろえる必要があります。

そもそもエルニーニョ現象とは?なぜ日本の天気まで変わるのか

エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の中部から東部で海面水温が平常時より高い状態となり、それが大気の流れにも影響を与える現象です。

普段、赤道付近の太平洋では「貿易風」と呼ばれる東風が吹いています。

この風は海面付近の暖かい水を西へ押し流すため、インドネシア周辺などの西太平洋では海水温が高くなりやすく、積乱雲も発達しやすい状態になります。

一方、南米沖を含む東太平洋では、深いところから比較的冷たい海水が湧き上がることなどにより、海面水温が低く抑えられています。

エルニーニョ現象が発生すると、この状態が変化します。

貿易風が弱まり、暖かい海水が太平洋の中部から東部へ広がりやすくなります。その結果、積乱雲が発達しやすい場所も普段とは異なる位置へ移動します。

積乱雲の発達する場所が変わると、そこで生じる大規模な上昇気流や下降気流の分布も変化します。こうした熱帯の変化が大気の波動を通じて遠くへ伝わり、偏西風や高気圧、低気圧の配置にも影響を及ぼすのです。

つまり、日本から遠く離れた赤道付近の海で起きた変化が、巡り巡って日本の季節の天候を変えることがあります。

ただし、海面水温の上昇が日本の気温に直接そのまま加算されるわけではありません。

大気の流れを通じた間接的な影響であり、その途中には別の気象現象も関係します。

仕組みの詳しい解説:気象庁「日本の天候に影響を及ぼすメカニズム」

通常のエルニーニョでは、なぜ日本が冷夏になりやすい?

エルニーニョが発生すると、熱帯のインド洋からフィリピン周辺では、積乱雲の活動が平年より弱くなる傾向があります。

これに伴い、上空の亜熱帯ジェット気流は日本付近で南寄りを流れやすくなります。

太平洋高気圧も、本州方面への張り出しが弱くなり、日本付近には湿った空気が流れ込みやすくなります。

こうした状態では、晴れて強い日差しが続く日が少なくなり、気温が低くなりやすいのです。

気象庁が1948~2021年を対象に調査した統計では、エルニーニョ発生時の夏に次のような傾向が確認されています。

地域・項目エルニーニョ発生時の統計的傾向
西日本の夏の平均気温低い傾向
北・東日本の夏の平均気温平年並みか低い傾向
西日本日本海側の降水量多い傾向
北日本日本海側の日照時間少ない傾向
東日本日本海側の日照時間平年並みか少ない傾向

しかし、統計的な傾向はあくまで過去の事例で起きやすかった状態を表します。

日本付近の偏西風、高気圧、海面水温などの状態が異なれば、実際の夏が冷夏になるとは限りません。

2026年は、まさにその違いが大きく表れた年でした。

出典:気象庁「エルニーニョ現象発生時の日本の天候の特徴」

2026年夏の異常気象① 西日本は歴史的猛暑、九州北部は記録的少雨

2026年の日本で、通常のエルニーニョ時の傾向と特に大きく異なったのが西日本の天候です。

気象庁によると、2026年6~8月の西日本の平均気温は、1946年以降で3番目に高くなりました。

7月下旬から8月初めにかけては東日本と西日本で厳しい暑さとなり、8月下旬にも九州を中心に高温となりました。

さらに、西日本では梅雨明け以降に雨が少ない状態が続き、8月の九州北部地方の降水量は1946年以降で最も少なくなっています。

冷夏どころか、猛暑と少雨が同時に進行したのです。

原因となったのは偏西風の大きな蛇行

偏西風は、日本付近の上空をおおむね西から東へ流れる強い風です。

この偏西風は常に一直線に流れているわけではなく、南北に大きく蛇行することがあります。

2026年夏は、日本付近で偏西風が北側へ大きく蛇行しました。

この影響で西日本付近に上空のチベット高気圧に伴う高気圧が張り出し、地上付近から上空まで厚みのある高気圧に覆われる状態が生じました。

高気圧の下では空気が下降しやすくなります。下降する空気は圧縮されることで温まり、雲の発生も抑えられやすくなります。

強い日差しが地表を熱し、下降気流による昇温も加わることで、気温が大きく上昇しました。

また、太平洋高気圧の縁に沿って暖かい空気が流れ込んだことも、高温を強める要因となりました。

こうした状態では雨雲が発達しにくくなるため、少雨にもつながります。

2026年の西日本では、猛暑と少雨がそれぞれ無関係に発生したわけではなく、共通する大気の流れが影響していたのです。

地球温暖化も猛暑に影響していた

さらに重要なのが、地球温暖化との関係です。

気象庁は2026年9月1日の分析で、地球温暖化による大気全体の気温上昇も、西日本の高温に影響したと説明しています。

文部科学省の気候変動予測先端研究プログラムと気象庁気象研究所の合同研究チームが実施したイベント・アトリビューション解析でも、2026年7月中旬から8月上旬の西日本の高温について、地球温暖化がなかったと仮定すると、ほぼ発生し得なかったという結果が示されました。

イベント・アトリビューションとは、ある異常気象の発生確率や強さに、人為的な気候変動がどの程度影響したかを、気候モデルなどで分析する手法です。

ただし、この分析結果は「2026年の暑さの原因がすべて地球温暖化だった」という意味ではありません。

実際の気圧配置や偏西風の蛇行が高温を引き起こす直接的な要因となり、長期的な温暖化がその高温をさらに起こりやすく、強くしたと考えるのが適切です。

気象庁の分析からは、エルニーニョという一つの現象だけで、その年の猛暑を説明できないことが分かります。

2026年夏の異常気象② 台風が多かったのはエルニーニョの影響?

2026年は、台風の発生数も多い年になりました。

気象庁の異常気象分析によると、6~8月の台風発生数は17個。平年値の11.0個を大きく上回り、1951年の統計開始以降では3位タイの多さです。

では、この台風の多さはエルニーニョが原因だったのでしょうか。

ここについては、気象庁もエルニーニョが影響した可能性を示しています。

ただし、直接的な主な要因として挙げているのは、7~8月に「偏東風波動」の活動が活発だったことです。

台風の種になる「偏東風波動」が活発だった

偏東風波動とは、熱帯の東から西へ吹く風の中に現れる、波のような大気の乱れです。

この乱れの中では低気圧性の渦が生まれることがあり、海面水温や大気の湿り具合などの条件がそろうと、熱帯低気圧や台風へ発達する場合があります。

2026年夏は、この偏東風波動の活動が特に活発でした。

気象庁は、エルニーニョ現象が発生している夏には、西太平洋の熱帯域で偏東風波動の活動が強まりやすい傾向があることを指摘しています。

そのため、2026年の顕著なエルニーニョ現象が、偏東風波動の活発化を通じて台風の発生数の多さに影響した可能性があります。

ここで重要なのは、エルニーニョが発生すれば必ず台風が増えるわけではないということです。

台風の発生には海面水温、大気の湿度、上空の風、熱帯の大気の乱れなど、複数の条件が必要になります。

エルニーニョがその一部に影響していた可能性はあっても、2026年に発生したすべての台風をエルニーニョが直接生み出したと考えることはできません。

また、台風の発生数が多いことと、日本への上陸数が多いことも別です。台風の進路は太平洋高気圧や偏西風など、その時々の大気の流れで変わります。

2026年の台風発生数の特徴や、偏東風波動が活発になった仕組みについては、つぶログの「2026年はなぜ台風が多い?55年ぶりハイペースの理由」でも詳しく解説しています。

2026年夏の異常気象③ 8月には千葉県で記録的な豪雨も発生

猛暑と少雨が続いていた2026年夏ですが、場所によっては非常に激しい雨も発生しました。

その代表例が、8月13日夕方から14日未明にかけて千葉県で起きた記録的な豪雨です。

気象庁の発表によると、千葉市では24時間降水量367mm、1時間降水量115mmを観測するなど、観測史上1位の値を更新しました。

この豪雨について気象庁は、日本の南海上の大規模な低気圧である「モンスーンジャイア」、上空の寒冷渦、暖かく湿った空気の流入などが関係したと分析しています。

房総半島付近では、下層に暖かく湿った空気が流れ込む一方、上空には寒気が入り、大気の状態が非常に不安定になっていました。

さらに、関東内陸部で降った雨によって冷たい空気の層が形成され、その境界付近に暖湿気が流れ込むことで積乱雲が次々に発達しました。

このような仕組みで、局地的な非常に激しい雨が発生したと分析されています。

ただし、気象庁はこの豪雨について、エルニーニョだけが直接の原因だったと結論づけているわけではありません。

同じ2026年夏でも、西日本の猛暑と千葉県の豪雨では、直接の発生要因が異なっています。

全国で起きた異常気象を、すべて一つの原因で説明しようとしないことが重要です。

2026年秋の異常気象④ 9月は東日本太平洋側で記録的大雨

2026年の異常気象は、夏が終わっても続きました。

気象庁が10月1日に発表した資料によると、9月の東日本太平洋側は、1946年の統計開始以降で最も雨が多く、日照時間が最も少ない9月になりました。

2026年9月の東日本太平洋側平年比記録
月降水量236%1946年以降の9月で最多
月間日照時間46%1946年以降の9月で最少

月降水量の従来の最多記録は1982年の平年比182%でしたが、2026年は236%まで増えました。

また、関東地方南部を中心とする12地点で、9月の月降水量の多い方からの記録が更新されています。

今回の大雨の主な原因として気象庁が挙げているのは、秋雨前線の長期間の停滞と、暖かく湿った空気の継続的な流入です。

日本の東海上には太平洋高気圧と一体化した優勢な高気圧が停滞する一方、大陸からは秋の高気圧が張り出しました。

その間に秋雨前線が長く停滞し、さらに日本の南海上から暖湿気が流れ込み続けたことで、前線の活動が非常に活発になったと分析されています。

過去最強のエルニーニョが大雨を引き起こしたのか?

ここは今回の記事で、特に慎重に区別したいところです。

2026年9月は、エルニーニョ監視海域の水温偏差が+4.0℃となり、過去最大を記録した月でもあります。

しかし、同じ月に日本で記録的大雨が起きたという事実だけでは、エルニーニョがその大雨を引き起こしたことにはなりません。

実際、気象庁は10月9日のエルニーニョ監視速報で、9月の日本の天候について、エルニーニョ現象時の特徴は明瞭に見られなかったと説明しています。

一方、9月の大雨に関する分析では、秋雨前線、気圧配置、暖湿気の流入などが具体的な要因として示されています。

エルニーニョが過去最大だった月に記録的大雨が起きたことは事実ですが、その大雨の原因をエルニーニョだと断定する根拠にはなりません。

出典:気象庁「9月の東日本太平洋側の記録的な多雨・日照不足と今後の見通しについて」(2026年10月1日)

過去の強いエルニーニョでは、日本に何が起きていた?

エルニーニョが強いほど、日本の異常気象も激しくなるのでしょうか。

これを考えるために、過去の代表的なエルニーニョと日本の天候を比較してみます。

1993年|記録的冷夏と米不足

日本で冷夏と聞いて思い出される出来事の一つが、1993年の米不足、いわゆる「平成の米騒動」です。

1993年の夏はほぼ全国的に記録的な低温となり、長雨や日照不足も重なりました。

仙台管区気象台によると、この年は沖縄・奄美地方を除いて梅雨明けを特定できず、冷害によって米の生産にも大きな影響が出ました。

特に東北地方では、オホーツク海高気圧から冷たく湿った空気が流れ込む「やませ」が、農作物に深刻な影響を与えました。

1993年は、現在の気象庁の統計ではエルニーニョ現象の発生期間に含まれています。

最大水温偏差は+1.3℃で、2026年の+4.0℃と比較すると、はるかに小さい値です。

それでも日本では、社会生活や農業に大きな影響を与える冷夏になりました。

ただし、1993年の冷夏をエルニーニョだけが引き起こしたと説明するのは正確ではありません。太平洋高気圧の張り出しの弱さや、オホーツク海高気圧、やませなどの大気の流れも重要でした。

参考:仙台管区気象台「やませと1993年の冷夏」

1997~1998年|2026年まで最強だったエルニーニョ

1997年春から1998年夏にかけても、非常に強いエルニーニョ現象が発生しました。

1997年12月の水温偏差は+3.6℃。2026年9月に更新されるまで、気象庁の月平均水温偏差では過去最大の記録でした。

この現象は世界的にも非常に強いエルニーニョとして知られています。

ただし、当時の日本や世界で発生したすべての異常気象がエルニーニョによって引き起こされたわけではありません。

また、1997年の+3.6℃と2026年の+4.0℃は、気象庁の特定の監視指数による比較です。現象の継続期間や社会的な影響まで含めて、一方がもう一方を必ず上回ると判断することはできません。

2015~2016年|強いエルニーニョと全国的な暖冬

2014年春から2016年春にも、強いエルニーニョ現象が続きました。

最大水温偏差は+3.1℃。気象庁の記録では、1997~1998年に次ぐ歴史的に強い現象の一つです。

この期間にあたる2015年12月~2016年2月、日本は全国的に暖冬となりました。

日本海側の降雪量も全般的に少なく、沖縄・奄美では冬の降水量が平年比188%に達するなど、記録的な多雨となりました。

しかし、その冬に寒波がなかったわけではありません。

2016年1月下旬には強い寒気が流れ込み、九州北部地方で大雪となるなど、各地で厳しい寒さが観測されています。

冬全体では暖冬でも、一時的には強い寒波が発生することを示す実例です。

出典:気象庁「2016年の日本の天候」

2023~2024年|エルニーニョの冬は全国的に暖かかった

比較的新しい例として、2023年春から2024年春にかけてのエルニーニョもあります。

このときの最大水温偏差は+2.3℃でした。

2023年12月~2024年2月は全国的に平均気温がかなり高く、日本海側を中心に降雪量の少ない冬となりました。

ただし、2024年2月5~6日には南岸低気圧の影響で東日本太平洋側の平地でも大雪が発生しています。

この事例でも、暖冬と大雪は同時に成立しています。

出典:気象庁「2023年~2024年の冬の天候」

強いエルニーニョほど、日本の異常気象も激しくなる?

過去の事例を比較すると、興味深いことが分かります。

1993年のエルニーニョは最大水温偏差+1.3℃でしたが、日本では歴史的な冷夏が発生しました。

一方、2026年は+4.0℃という過去最大の記録に達したにもかかわらず、西日本では歴史的な猛暑となりました。

この違いは、エルニーニョの強さだけを見ても、日本の天候を判断できないことを示しています。

エルニーニョは、日本から遠く離れた海洋と大気に生じる大規模な変動です。

その変動が日本へ影響するまでには、熱帯の積乱雲の活動、偏西風、高気圧、低気圧など、多くの仕組みが関わっています。

さらに、それぞれの年にはエルニーニョ以外の大気や海洋の変動も存在しています。

気象庁も、エルニーニョ発生時に見られる天候の特徴を、統計的な傾向として整理しています。

そのため「エルニーニョが強ければ強いほど日本の夏が涼しくなる」「過去最強なら過去最悪の異常気象になる」といった単純な関係は成立しません。

また、地球温暖化によってエルニーニョ現象そのものが今回過去最大になったと断定することも、現在確認できる資料だけではできません。

地球温暖化が日本の高温を強めたことと、エルニーニョの記録更新の原因を温暖化に帰することは、分けて考える必要があります。

2026~2027年の冬はどうなる?過去最強でも予報は別に確認

ここまで2026年の夏と秋を中心に見てきましたが、これから迎える冬についても気になるところです。

気象庁は2026年10月9日のエルニーニョ監視速報で、冬にかけて過去最大の強さのエルニーニョ現象が続く見込みとしています。

一般にエルニーニョ発生時の日本の冬は、西日本で平均気温が平年並みか高く、東日本太平洋側と沖縄・奄美では降水量が多くなる傾向があります。

ただし、2026年の夏がそうだったように、過去の統計的傾向がそのまま現れるとは限りません。

冬全体の平均気温が高くても、一時的に強い寒気が南下することはあります。降雪量が少ない冬でも、短期間に大雪が降る可能性はあります。

また、季節予報で示される降水量には雨も雪も含まれています。降水量が多い予報だからといって、必ず大雨になるという意味ではありません。

2026~2027年冬の気温、降雪量、地域別の見通しについては、別記事の「2026年エルニーニョは過去最強、日本の冬は暖冬?雪・雨はどうなるのか」で詳しく整理しています。

冬の予報を確認する際は、エルニーニョの強さだけで判断せず、気象庁の最新の3か月予報や1か月予報、短期の天気予報も合わせて確認することが重要です。

エルニーニョと日本の異常気象について、よくある疑問

Q. エルニーニョなのに猛暑になることはある?

あります。

エルニーニョ発生時の日本の夏は、統計的には低温になりやすい傾向がありますが、必ず冷夏になるわけではありません。

2026年は偏西風が平年より北側を流れ、高気圧が日本付近を覆ったことなどにより、西日本で歴史的な猛暑となりました。

Q. 2026年の+4.0℃は世界共通の過去最高記録?

気象庁が監視するNINO.3海域の月平均海面水温偏差では、1949年以降で過去最大の記録です。

ただし、気象機関によって監視海域や使用する指数が異なります。すべての国際的な指標で過去最高を記録したという意味ではありません。

Q. エルニーニョが強いほど、台風が増える?

単純に比例するわけではありません。

2026年夏は台風の発生数が多く、その背景にエルニーニョが影響した可能性が指摘されています。

しかし台風の発生には偏東風波動など複数の条件が関係するため、エルニーニョが強い年は必ず台風が多くなるとは限りません。

Q. エルニーニョと地球温暖化は同じ現象?

異なる現象です。

エルニーニョは、太平洋赤道域の海面水温や大気の流れが数か月から数年の時間スケールで変動する自然現象です。

一方、現在進行している地球温暖化は、人間活動による温室効果ガスの増加を主な原因として、地球全体の平均気温が長期的に上昇している現象です。

両者は異なりますが、実際の気温や降水量には両方の影響が重なる場合があります。

Q. 2026年のエルニーニョはいつ終わる?

2026年10月20日時点で、終了する時期は確定していません。

気象庁は10月9日の監視速報で、冬にかけて過去最大の強さのエルニーニョ現象が続く見込みを示しています。

今後の海面水温や大気の状態によって見通しが変わる可能性もあるため、気象庁のエルニーニョ監視速報を確認する必要があります。

まとめ|過去最強のエルニーニョでも日本が冷夏になるとは限らない

2026年9月、エルニーニョ監視海域の月平均海面水温偏差は+4.0℃となり、気象庁の観測では1949年以降で過去最大を記録しました。

しかし、日本で実際に起こったのは典型的な冷夏ではありませんでした。

西日本では夏の平均気温が1946年以降で3番目に高くなり、九州北部地方では8月の降水量が過去最少。夏の台風発生数は17個となり、9月には東日本太平洋側で記録的な大雨と日照不足が発生しました。

こうした異常気象には、偏西風の蛇行、高気圧の配置、偏東風波動、秋雨前線、暖湿気の流入、そして地球温暖化など、さまざまな要因が関係しています。

台風の多発には顕著なエルニーニョが影響した可能性がある一方、西日本の猛暑や9月の記録的大雨を、エルニーニョだけで説明することはできません。

過去の事例を振り返っても、1993年は冷夏、2015~2016年は暖冬となるなど、同じエルニーニョ発生期間でも日本に現れる天候は異なります。

「過去最強のエルニーニョ=日本で過去最悪の異常気象」というわけではありません。

日本の天候を理解するうえで大切なのは、遠く離れた太平洋の海面水温だけでなく、日本付近の大気の流れや、その時期に重なっている別の気象現象も合わせて見ることです。

2026年の夏と秋は、そのことを改めて示す事例になりました。

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