
葬送のフリーレン(1)レビュー|“冒険のその後”をどう生きるか。静かな時間が胸に残る
原作=山田鐘人、作画=アベツカサ。『週刊少年サンデー』連載の話題作『葬送のフリーレン』は、 「魔王を倒した後」から始まる後日譚ファンタジー。第1巻は、長命なエルフ・フリーレンが 人を“知る”旅に踏み出すまでの心の揺れを、淡く丁寧に描きます。派手な戦闘よりも、会話の余白や 仕草、小さな出来事が物語を動かすタイプ。静かに読んで、長く残る1冊です。
発売情報
- 発売日:2020年8月18日
- 出版社/レーベル:小学館/少年サンデーコミックス
- 判型・ページ:新書判・192ページ
- 定価:594円(税込)
- ISBN-13:9784098501809
出典:小学館コミック公式 商品ページ(発売日・判型・頁数・ISBN・定価)。
どんな物語?(ネタバレなしの導入)
勇者一行の魔法使い・フリーレンは、仲間と別れ、数十年後に再会したとき──彼らが すっかり“老いている”現実に向き合います。寿命の感覚が違うエルフにとって、人間の時間は一瞬。 ヒンメルの死をきっかけに、彼女は「自分は仲間の何を見てきたのか」を考え、人を知る旅へ。 ここから、別れの意味を丁寧に拾い直す長い物語が始まります。
参考映像:マンガPV(公式)
マンガ大賞受賞を記念して公開された公式PV。作品の“静かな熱”が数分で伝わります。
PV出典:週刊少年サンデーTV 公式YouTube。
この1巻で掴める“読み味”
1. 静けさが語る
派手なバトルの代わりに、流れる時間と“間”で感情を描く。コマの余白、景色の描き込み、 ほのかな表情の変化が、言葉より雄弁です。過去の冒険は回想に留め、いま目の前の関係を見つめることで、 「何を見過ごしてきたのか」という問いが読者にも返ってきます。
2. “長命種×人間”の時間差ドラマ
エルフの長寿と人間の短さ──設定自体はファンタジーの定番ですが、本作は大げさに悲嘆しません。 何十年という時間を、折り目正しい日常の連なりとして描き、そこに滲む温度差で胸を打つ。 第1巻は、その温度差を“旅立ちの理由”に変えるまでの話です。
3. 大ゴマと会話のリズム
風景の大ゴマで“時間の流れ”を置き、会話でテンポを刻む。アベツカサの線は情報密度が高いのに 目が迷わず、ページの“呼吸”が心地よい。紙でも電子でも読みやすい構成です。
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おすすめ読者層
- “別れのあと”を描く物語に弱い人
- 会話や仕草のニュアンスで心情を読みたい人
- アニメから原作へ遡ってみたい人(世界観の核を落ち着いて味わえる)
関連リンク(公式)
まとめ
1巻は、「人を知る」ための最初の一歩が描かれます。大切な人の“当たり前”を、 当たり前のうちに受け取ることの難しさ──それを静かな筆致で伝える名導入。 試し読みで空気を掴み、響いたら紙でも電子でもどうぞ。