規模拡大とともに高まる“外部取引リスク”

近年、ゲーム業界を含む多くの企業で、コンプライアンスや不正に関するニュースを目にする機会が増えている。こうした話題に触れたとき、多くの人は「開発現場に問題があるのではないか」と想像しがちだ。しかし実際には、不正が発生しやすい場所はゲーム制作そのものではなく、外部企業との取引が集中する領域であることが多い。
大規模なゲーム開発は、自社内だけで完結するものではない。グラフィック制作、3Dモデリング、映像、翻訳、品質管理、広告運用、グッズ製造、イベント運営など、多数の工程が外部パートナーによって支えられている。企業が成長し、プロジェクト規模が拡大するほど、関わる取引先の数は増え、契約形態や発注方法も複雑化していく。
この「外部との接点の増加」こそが、不正リスクを高める最大の要因だ。取引が多層化すると、意思決定は分散し、全体を一目で把握することが難しくなる。さらに、個々の担当者が持つ裁量も広がりやすくなるため、判断の透明性が低下しやすい。結果として、組織全体は健全であっても、一部の工程で問題が発生する余地が生まれてしまう。
不正が生まれる3つの条件
企業活動の中で不正が起きやすい状況には、共通する特徴がある。
第一に、金銭を伴う取引が存在すること。
第二に、担当者の裁量が大きいこと。
第三に、チェック体制が弱い、または形式化していること。
この3つが重なる場所では、業界を問わず不正リスクが高まる。ゲーム会社の場合、該当しやすいのは次のような領域だ。
- 外部制作会社への業務委託
- 広告代理店や制作会社への発注
- グッズや物流など周辺事業のサプライヤー管理
- システムや機材など各種調達業務
これらの工程では、「どの会社に依頼するか」「いくらで契約するか」「成果物を合格とするか」といった判断が発生する。つまり、担当者の決定そのものが金銭的価値を持つ構造になっている。ここに透明性の不足が重なると、不正の入り込む余地が生まれる。
なぜ企業規模の拡大がリスクを押し上げるのか
小規模な組織では、意思決定の距離が近く、状況の共有も容易だ。誰がどの取引を担当しているのか、周囲が自然に把握できる。しかし企業が成長すると、この前提は崩れていく。
取引先の増加、部署の細分化、同時進行するプロジェクトの増大――
こうした変化は効率を高める一方で、管理の難易度も引き上げる。
特に注意が必要なのは、「例外処理」の増加だ。
急ぎの案件、特殊な条件、前例のない契約形態。
こうした例外が積み重なるほど、通常のチェック手順は形骸化しやすくなる。
そして多くの場合、不正はこの例外の隙間から生まれる。
正式なルールの外側で行われた判断は、後から検証しにくいためだ。
問題の本質は“人”ではなく“構造”
不正の話題になると、特定の個人の倫理観に焦点が当たりがちだ。しかし実務の観点から見ると、より重要なのは不正を生みやすい構造が存在していたかどうかである。
どれほど優秀で誠実な人材が集まっていても、
- 裁量が集中し
- 記録が不十分で
- 相互チェックが働かない
こうした環境があれば、問題は起こり得る。
逆に言えば、構造を適切に設計すれば、不正リスクは大きく下げられる。
企業統治において問われるのは、個人の善意ではなく、
仕組みとして不正を防げているかという点なのだ。
外注発注フローで見る「不正が入りやすいポイント」
取引が回り始める瞬間にリスクは生まれる
ゲーム会社に限らず、外部取引の不正は「いきなり賄賂を渡す」ような分かりやすい形だけで起きるわけではない。実際には、通常の発注業務の流れの中に、少しずつ“ゆがみ”が混ざることで成立する。そのため、外注や調達のフローを分解して、どこでリスクが高まりやすいかを押さえると、コンプライアンス問題の理解は一段と具体的になる。
ここでは、外注発注で典型的な流れを「①仕様→②見積→③選定→④契約→⑤制作進行→⑥検収→⑦支払い→⑧評価・更新」の8工程に分け、それぞれの工程で起こりやすい問題と、一般的に有効とされる対策を整理する。
① 仕様・要件定義:曖昧さが“例外”を増やす
外注発注の出発点は仕様書や要件定義だ。たとえば3Dモデル制作であれば、ポリゴン数、テクスチャ解像度、リグの仕様、納品フォーマット、修正回数、使用権の扱いなど、決めるべき項目は多い。広告クリエイティブやPV制作なら、尺や本数、納期、修正回数、素材管理、権利処理、成果物の定義が重要になる。
ここが曖昧なままだと、後工程で「想定外の追加」「急ぎの仕様変更」「修正無制限」など例外処理が雪だるま式に増える。例外が増えるほど、追加費用の妥当性や検収基準が曖昧になり、結果として支払いがブラックボックス化しやすい。
対策として基本になるのは、成果物の定義を具体化し、追加費用が発生する条件を事前に決めることだ。例外はゼロにできないが、例外を“記録と承認のある例外”に変えることで、後から検証できる状態にする。
② 見積取得:1社見積が常態化すると歪みが残る
見積の段階でリスクが高まる典型は「相見積もりが取れていない」「比較の前提が揃っていない」ケースだ。忙しさやスピード重視の現場では、「いつもの会社にお願いする」が常態化しやすい。しかし競争性が働かないと、単価が相場から乖離しても気づきにくい。
もう一つの落とし穴は、見積書の粒度が粗いことだ。「制作一式」「運用一式」のような大枠だけだと、どこに費用がかかっているのか判断しづらくなる。結果として、水増しや過剰請求が混ざっても発見が難しい。
対策としては、可能な範囲で複数社比較を行い、難しい場合でも「なぜ1社見積なのか」を理由付きで記録する。加えて、見積の内訳を可能な限り分解し、工数・単価・成果物単位で説明できる形にする。
③ 発注先選定:ここが“裁量の中心”になる
不正が入りやすい最大の山場が、発注先選定だ。担当者の裁量が最も大きく、「決定そのものが価値を持つ」ポイントだからである。
選定で起きやすい歪みは次のような形だ。
- 特定の会社だけがいつも勝つ
- 仕様がその会社に有利な形で作られている
- 価格よりも「関係性」が優先される
- 提案の比較が曖昧で、決定理由が残らない
これらは必ずしも不正を意味しないが、透明性がないと疑念が生まれ、実際の不正も入り込みやすくなる。
一般的な対策として有効なのは、選定の根拠を残すことだ。評価軸(価格・品質・納期・実績・体制など)を明文化し、なぜその会社を選んだのかを、後から第三者が追えるようにする。さらに重要なのが、選定と承認の分離である。選定する人と最終承認する人が同じだと、判断が個人の裁量に集まりすぎる。
④ 契約:権利と支払い条件が曖昧だと揉めやすい
契約で問題になりやすいのは、成果物の権利関係と支払い条件だ。ゲーム制作は知的財産の塊なので、「納品された素材をどこまで利用できるのか」「二次利用は可能か」「再編集や改変は可能か」などを曖昧にすると、後で揉めやすい。
また支払い条件が曖昧だと、検収が形骸化しやすい。「とりあえず支払ってしまう」「締めの都合で先払い」などが重なると、チェックが機能しなくなる。ここでも重要なのは、例外を“記録と承認のある例外”にすることだ。
⑤ 制作進行:追加作業が積み重なると不透明になっていく
制作が始まると、仕様変更や追加作業はどうしても発生する。問題は、それが「誰の判断で」「どの根拠で」「いくら増えるのか」が曖昧なまま積み上がることだ。
外注側から見れば、追加作業は追加費用の根拠になる。社内側から見れば、追加費用は説明責任の対象になる。ここが曖昧だと、担当者の裁量で金額が動き、後から検証しづらい状態になる。
対策として効果が高いのは、追加依頼の申請ルールを作ることだ。口頭のお願いではなく、メールやチケットで記録し、金額影響がある場合は承認者を通す。これだけで透明性は大きく上がる。
⑥ 検収:形骸化すると不正もミスも素通りする
検収は「成果物が要件を満たしたか」を確認する工程だが、忙しい現場では形骸化しやすい。検収が弱いと、不正だけでなく品質問題も素通りする。特に「チェックする人が同じ」「チェック項目が曖昧」「納期優先で確認が省略される」といった状態は危険だ。
対策としては、検収基準を具体化し、可能な範囲で複数人の目を入れる。すべてを完璧にするのが難しくても、少なくとも重要案件では“二重チェック”を設計するだけで、歪みは入りにくくなる。
⑦ 支払い:最後の砦は「証跡」と「分離」
支払いの段階で重要なのは、支払いが「検収の完了」と紐づいているかどうかだ。検収前に支払われてしまうと、検収の意味が薄れ、チェックが抜けやすくなる。
また、支払いの承認権限が担当者に集中していると、歪みが起きやすい。一般論として、発注・承認・検収・支払いを同一人物に集中させない“職務分掌”は、内部統制の基本として広く説明されている。発注と支払いが分離されるだけでも、単独で不正を成立させにくくなる。
⑧ 評価・更新:不正は「関係が固定化した後」に起きやすい
意外に見落とされやすいのが、取引先評価の工程だ。発注先が固定化すると、相見積もりが省略され、単価の妥当性チェックも弱まり、担当者の裁量が増える。関係が長期化するほど「いつものやり方」が増え、例外処理が常態化しやすい。
だからこそ、一定期間ごとに取引先評価を行い、価格・品質・納期・コミュニケーションなどの観点で見直すことが重要になる。更新の判断を複数人で行うだけでも、透明性は上がりやすい。
不正の“型”を具体化する
現場で起きやすいシナリオと、危険なサイン
外注発注のフローを分解すると、不正が入りやすい場所は「裁量が集まり、例外が増え、証跡が薄くなる瞬間」だと分かる。では実際に、現場ではどのような形で不正が成立しやすいのか。ここでは、業界を問わず外部取引で起こりやすい代表的な“型”を整理し、ニュースを読む側でも判断材料にできるよう、危険なサイン(レッドフラッグ)とセットで具体化する。
型1:リベート(キックバック)型
発注や検収の便宜と引き換えに、私的利益を受け取る
最も典型的なのが、担当者が取引先に便宜を図り、その見返りとして金品や利益を受け取るパターンだ。外注・調達の現場では、便宜の形は必ずしも露骨ではない。
- 競合より有利な条件で発注先に選ぶ
- 追加発注を優先的に回す
- 検収を甘くする、またはチェックを省略する
- 単価を上げる、工数を増やす
- 仕様をその会社向けに最適化する
この型が厄介なのは、「仕事が回っているように見える」ことだ。納期は守られ、帳尻は合い、表面上はプロジェクトが進む。しかし、社内のコストは静かに膨らみ、競争性は失われ、品質や価格が劣化していく。
レッドフラッグ(危険なサイン)
- 特定の取引先への発注が継続的に偏っている
- 相見積もりが取られず、例外が常態化している
- 選定理由が口頭でしか説明されない
- 「急ぎだから」「いつも通りだから」が万能の理由になる
- 検収担当が固定され、二重チェックがない
型2:利益相反(コンフリクト・オブ・インタレスト)型
社内の判断が、外部の利害に引っ張られる
利益相反は「贈収賄」のように派手な動きがないぶん、発見が難しい。本人や関係者が外部企業に利害関係を持ち、社内の意思決定がその外部企業に有利な方向へ歪む。
具体的には次のような構図が典型だ。
- 本人や家族・近しい人物が関係する会社に発注が流れる
- 外部会社の株式・役職などを通じて利害が発生する
- 在職中の知見や人脈を使い、外部事業を有利にする
- 競争性を装いつつ、実質的に特定会社を勝たせる
この型は「不正」として扱われる前に、「透明性の欠如」として組織を弱らせる。周囲が疑念を持っても、明確な証拠がないと指摘しづらい。だからこそ、企業側の一般的な対策は、利益相反が起こり得ることを前提に、申告と管理の仕組みを置く方向に進む。
レッドフラッグ(危険なサイン)
- 選定に関わる情報が特定の人に集中している
- 外部との関係性が不自然に強い(私的な接点が多い)
- 「その会社しか無理」が繰り返される
- 仕様がピンポイントで特定会社向けになっている
- 社内で説明できない“前提”が多い
型3:水増し・過剰請求型
見積と成果物の定義が曖昧なところに紛れ込む
外注や制作の現場は、成果物の評価が主観に寄りやすい。ここに曖昧さが残ると、見積の水増しや過剰請求が入り込む余地が増える。
- 「一式見積」で内訳が見えない
- 追加工数が当然のように積み上がる
- 仕様変更の履歴が残らず、誰が判断したか不明
- 修正回数が無制限で、費用も無制限になる
- 成果物の合格基準が担当者の感覚頼み
これは取引先が悪意を持っているとは限らない。現場の混乱や仕様の曖昧さが原因で、結果的にコストが膨らむこともある。ただし、不正という観点では「曖昧さ」は最大の弱点になる。チェック不能な構造は、意図的な水増しを見抜けないからだ。
レッドフラッグ(危険なサイン)
- 見積が常に「一式」で、比較できない
- 追加費用が事後報告になりがち
- 仕様変更の記録が残らない
- 同種の成果物なのに単価のブレが大きい
- 予算超過が“いつものこと”になっている
型4:架空発注・名義貸し型
実体のない取引で、会社の支払いが発生する
最も深刻なのが、実体のない取引を作り、会社の支払いを発生させるパターンだ。発注書や請求書の体裁は整っていても、成果物が存在しない、または別案件の成果物を流用しているケースがある。
この型は、発注と検収と支払いの権限が一人に集まっているほど成立しやすい。逆に言えば、職務分掌と証跡管理が強い会社ほど、単独で成立させにくくなる。
レッドフラッグ(危険なサイン)
- 成果物の保存場所が不明、またはアクセス権が限定的
- 検収のエビデンス(チェック記録)がない
- 納品物が曖昧で、確認に時間がかかる
- 支払いが異常に早い、もしくは例外が多い
- 取引先の実体(所在地・担当者・体制)が見えない
型5:検収の形骸化型
“通すこと”が目的化すると、歪みが固定される
外注取引での不正は、検収が弱いときに最も通りやすい。検収は本来、品質とコストの最後の防波堤だ。しかし納期や現場の忙しさが続くと、「とりあえず通す」「後で直す」が常態化し、チェックが機能しなくなる。
検収が形骸化すると、不正の有無にかかわらず損失が出る。品質が落ち、修正が増え、コストが増大し、現場も疲弊する。つまり検収の強化は、不正対策であると同時に、プロジェクト成功率を上げる実務対策でもある。
レッドフラッグ(危険なサイン)
- 検収のチェック項目がない、または形だけ
- 検収と発注が同一人物
- 「納期があるから」で確認が省略される
- 不具合・未完了のまま支払いが進む
- 重要案件でもレビューが一人だけ
“型”で理解するとニュースの見方が変わる
ここまでの型は、特定の企業や業界だけのものではない。外部取引がある組織なら、規模に関係なく起こり得る。だからニュースで企業の不正が報じられたとき、読み手が本当に見るべきなのは「誰が悪いか」だけではない。
- どの工程で歪みが起きたのか
- 裁量が集中していなかったか
- 記録と承認の仕組みはあったか
- 検収は機能していたか
- 通報や監査で止められたか
こうした視点があると、同じニュースでも理解の解像度が上がる。
仕組みで止める:実効性のある再発防止チェックリスト
読者が“保存できる”形で整理する
不正の型を知ると、「結局、企業は何をすればいいのか」という問いに行き着く。ここで重要なのは、精神論ではなく、実務として回る仕組みだ。不正は通常業務に混ざって起きる以上、通常業務の中で止められる設計が必要になる。
以下は、外部取引(外注・調達・広告・周辺事業)を抱える企業が実務上とりやすい対策を、優先度の高い順に並べたチェックリストである。ゲーム会社に限らず、外部取引が多い組織ならそのまま当てはまる。
まず押さえるべき「10のチェック」
1)発注・承認・検収・支払いが分離されているか
最重要ポイントは権限の集中を避けることだ。1人が流れを握ると、不正もミスも素通りしやすい。すべてを分離できなくても、少なくとも“支払い承認”だけは別系統にするだけで抑止力が上がる。
2)相見積もりが原則になっているか(例外は理由が残るか)
相見積もりが取れない状況は現実にある。その場合も「なぜ1社なのか」「なぜ今この会社なのか」を理由付きで記録し、後から検証できるようにすることが重要だ。
3)選定理由が文書で説明できるか
「価格」「品質」「納期」「体制」「過去実績」など評価軸を明文化し、選定理由が残るか。口頭だけの運用は、透明性を下げ、不正の温床になる。
4)成果物の定義と検収基準が具体的か
「一式」「適宜対応」など曖昧な契約・仕様は、追加費用や検収の形骸化を招きやすい。納品形式、品質条件、修正回数、合格基準が具体化されているかがカギになる。
5)追加依頼・仕様変更のルールがあるか
仕様変更は発生する。問題は“口頭で積み上がる”ことだ。追加費用が絡む場合の申請手順、承認者、履歴の残し方が定められているかを確認する。
6)取引先(サプライヤー)の登録・審査があるか
新規取引先がどの基準で登録されるか。実体確認、責任者、契約主体、反社チェックなど、最低限の入口管理があるかどうかでリスクは大きく変わる。
7)特定取引先への集中発注を定期的に監視しているか
“いつもの会社”が悪いわけではない。だが偏りが固定化すると、競争性が失われ、単価や品質が劣化しやすい。発注比率・支払額の偏りを定期的に可視化しているか。
8)検収に二重チェック(または重要案件のレビュー)があるか
すべての案件で二重チェックは難しい。だからこそ「重要案件だけでも必ず二人以上」「金額が一定以上ならレビュー必須」など、現実的な線引きで仕組みにする。
9)内部通報が“使える状態”になっているか
制度が存在しても、報復が恐くて使われなければ意味がない。匿名性、守秘、通報後のプロセス、報復禁止の明文化など、運用として成立しているかが重要になる。
10)監査や点検が“仕組みとして”回っているか
監査は犯人探しではなく、穴を塞ぐ作業だ。定期監査に加え、抜き打ち点検やデータ監視など「見られている状態」を作ることが抑止力になる。
次に効く「5つの強化策」
11)ギフト・接待の申告をルール化しているか
金額基準や申告フローが曖昧だと抜け道になる。小さなところから制度が崩れやすい領域なので、明文化の効果が高い。
12)利益相反の申告と管理が機能しているか
本人や家族・関係者の利害が絡む可能性がある業務ほど、申告と審査の仕組みが重要になる。申告が“自己申告だけ”になっていないかも確認ポイントだ。
13)取引先の評価・更新を定期的にやっているか
価格・品質・納期・体制・対応品質などを定期評価し、固定化を防ぐ。評価を複数人で行うだけでも透明性は上がる。
14)契約・成果物・検収エビデンスの保存ルールがあるか
不正が疑われた時、証拠がなければ止められない。納品物の保存場所、検収チェック記録、承認履歴などが一定期間残る設計が必要になる。
15)例外処理を例外のままにしない(例外の理由を残す)運用があるか
「急ぎ」「特別対応」はゼロにできない。だからこそ、例外は必ず理由付きで記録し、後で検証できるようにする。例外が増えると組織は弱るため、ここを押さえると不正にもミスにも強くなる。
読者目線:ニュースを見るときの“評価軸”が変わる
企業の不正ニュースは感情的になりやすい。だが、読み手として本当に見るべきポイントは「不正が起きたか」だけではない。企業が次の問いに答えられるかどうかで、信頼回復の質は変わる。
- どの工程で、何が弱かったのか
- 裁量が集中していなかったか
- 記録と承認の仕組みは機能していたか
- 検収は実態として行われていたか
- 通報・監査で止められたか(止められなかったなら何を変えるか)
この視点があると、同じニュースでも理解の解像度が上がり、単なる炎上消費ではなく、社会の仕組みとして捉えられるようになる。
まとめ|不正対策の本質は「倫理」より「設計」
不正は、異常な行為として突然起きるのではない。多くの場合、通常業務の中に曖昧さや例外が積み重なり、裁量が集中し、証跡が薄くなることで成立する。だからこそ、有効な対策も精神論ではなく、仕組みの設計になる。
- 権限を分ける
- 理由を残す
- 基準を具体化する
- 例外を管理する
- 監査と通報が機能する状態を作る
ゲーム産業の規模が拡大するほど、開発力だけでなく、取引の透明性と統治の強度が競争力になる。ニュースを読む側も、単純な善悪ではなく「仕組みとしてどう止めるか」を軸に理解していくことが、最も価値のある視点になる。