エンターテインメント系 ゲーム系 連載/特集

初代プレイステーションの歴史|PS1発売日から名作ソフト誕生までをわかりやすく解説

目次
  1. 初代プレイステーションとは?
  2. 1994年|プレイステーション誕生前夜とデビューの一年
  3. 1995年|「新顔PS」から「本気で勢力図を崩しに来たハード」へ
  4. 1996年|サバイバルホラーと3DアクションがPSのイメージを塗り替えた年
  5. 1997年|「FFVIIショック」とグランツーリスモで“王者の道”に乗った年
  6. 1998年|成熟期のど真ん中、「PSで何でも遊べる」時代へ
  7. 1999年|PS2の足音が聞こえる中で、それでも主役だったプレイステーション
  8. 2000年|PS2元年と「PS one」登場、それでも現役バリバリだった初代プレイステーション
  9. 2001年|PS2本格始動の裏で、「安く・たくさん遊べるマシン」へシフトしたPS1
  10. 2002年以降|“主役”から“図書館”へ、静かに幕を閉じていくPS1
  11. まとめ:あの日、灰色の小さな箱がくれた「世界が広がる感覚」

初代プレイステーションとは?

初代プレイステーション(PlayStation / PS1)は、1994年12月3日にソニーが発売した家庭用ゲーム機です。
それまでの主流だったスーパーファミコンなどの2D中心のゲームから一歩進み、3Dポリゴンによる映像表現やCD-ROMを使った大容量データ、フルボイスやムービー演出を本格的に家庭に持ち込んだハードとして知られています。

ソニーにとっては、これが初の本格的な家庭用ゲーム機参入でした。
当初は「家電メーカーがゲーム機を出して、本当に任天堂やセガと戦えるのか?」という半信半疑の目も少なくありませんでしたが、結果として初代プレイステーションは世界的な大ヒットを記録。RPG、アクション、レース、恋愛シミュレーションなど、さまざまなジャンルの名作ソフトが生まれ、「ゲームの遊び方」そのものを塗り替えていきます。

この記事では、その初代プレイステーションの歴史だけに焦点を当てて、
1994年の発売から、PS2へバトンを渡す2000年前後までの流れを、当時の代表的なタイトルやゲーム業界の動きとともに、できるだけわかりやすく振り返っていきます。

1994年|プレイステーション誕生前夜とデビューの一年

1994年のゲーム業界は、ちょうど「16ビットから32ビットへ」世代が入れ替わろうとしていた年でした。
家庭用ではまだスーパーファミコンが現役で、『ファイナルファンタジーVI』『スーパーメトロイド』『ドンキーコング・カントリー』といった2Dドットの名作が次々と登場していた一方、アーケードでは『バーチャファイター』や『デイトナUSA』などポリゴン3Dゲームが主役になりつつある──そんな“境目”のタイミングです。

その中で、先に動いたのはセガでした。
1994年6月に32ビット機「セガサターン」を正式発表し、同年11月22日に日本で電撃的に発売。『バーチャファイター』の完全移植を武器に、「次世代3D時代の先頭はセガが取る」というムードが一気に高まります。

一方のソニーは、もともと任天堂と共同開発していた「スーパーファミコン用CD-ROMアダプタ計画」が流れたことをきっかけに、独自の家庭用ゲーム機プロジェクトへ舵を切ります。紆余曲折を経て誕生したのが、のちに「初代プレイステーション」と呼ばれることになる32ビット機でした。

そして1994年12月3日。
プレイステーションは日本で発売されます。価格は税込39,800円。ライバルのセガサターンの発売からわずか1週間遅れというタイミングで、いきなり“次世代機戦争”の真っ只中に飛び込むかたちになりました。

発売当日、ソニーが出荷した10万台は一日で完売。12月中に追加で出荷した20万台もすぐに売り切れ、「家電メーカーのゲーム機」という半信半疑の空気を一気にひっくり返します。発売から半年で国内200万台に到達し、「本気で売れている新ハード」として存在感を示しました。

ただし、1994年という年に限って言えば、数字の上ではセガサターンが優勢でした。
日本国内では『バーチャファイター』の人気に支えられて、サターンが発売初週から好調なスタートを切り、1994年末までの累計販売台数はサターン約50万台、プレイステーション約30万台とされています。

この頃のプレイステーションは、まだソフトの本数も多くはありません。
CD-ROMならではの音質やムービー演出を前面に押し出したタイトル、アーケードからの移植、実験的な3Dゲームなどが並び、「とにかく新しいことをやってみよう」という“手探り感”が強い時期でした。ロンチの看板となった『リッジレーサー』が「家庭用でもここまで3Dレースが動く」というインパクトを与えた一方で、立体迷路をポリゴンで再現した『TAMA』のような変わり種もあり、ハードの個性もまだ定まっていなかったと言えます。

さらに、日本国内だけでなく、北米やヨーロッパの一部のゲームファンの間では、すでに「日本版プレイステーションを個人輸入で入手する」動きも生まれていました。日本から持ち込まれた本体に、現地では700ポンド近い高額が付いたという記録も残っており、新ハードへの期待感は世界規模で高まっていたことが分かります。

まとめると、1994年のプレイステーションはまだ「覇権ハード」ではなく、
・サターンが先行して話題をさらう中で、
・ロンチのインパクトと売れ行きで“新参とは思えない存在感”を見せ、
・しかし市場全体の主役は依然としてスーパーファミコンとアーケードの3Dゲームだった、

という、“誕生の年”“0年目”にあたる一年でした。
ここから先、1995年以降にソフトラインナップが一気に厚くなり、プレイステーションの“らしさ”が形になっていきます。

1994年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • リッジレーサー(ナムコ/12月3日)
    ・ローンチタイトルの花形。アーケード版をほぼそのまま持ってきて、「PSってここまで動くのか?」と3D性能を世に見せつけた代表作。
  • クライムクラッカーズ(SCE/12月3日)
    ・ソニー自社タイトルの看板。FPS視点のダンジョン+RPG要素+シューティングを混ぜた先鋭的作品。Motion JPEGによるアニメムービーも話題になり、「PSらしいCD-ROMゲーム感」を象徴。
  • A列車で行こう4 EVOLUTION(アートディンク/12月3日)
    ・都市づくりシミュレーションの名門シリーズがPSに登場。作った街をフルポリゴンで“車窓モード”から眺められるのがウリで、こちらも「PSの3D表現」を印象付けた一本。
  • KING'S FIELD(フロム・ソフトウェア/12月16日)
    ・フロム初のゲームであり、のちの『DARK SOULS』へ続くダークファンタジー一人称3DアクションRPGの原点。日本のみの発売ながら商業的に一定の成功を収め、コアゲーマーの間で強烈な存在感を放った。
  • 実況パワフルプロ野球'95(コナミ/12月22日)
    ・PS初の野球ゲームであり、パワプロシリーズ第2作。スーファミ版『パワプロ’94』をベースにしつつ、メモリーカード対応でペナントデータを保存可能など、以降の“パワプロ文化”をPS側で育てる入口になったタイトル。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • 極上パロディウスだ! DELUXE PACK(コナミ/12月3日)
    ・アーケードシューティング『極上パロディウス』などをまとめたお得パッケージ。PS初年度から「アーケード移植の受け皿」としての役割を担い、STG勢の受け皿になった。
  • ツインビー対戦ぱずるだま(コナミ/12月9日)
    ・『対戦ぱずるだま』系パズル+ツインビーキャラという当時の定番コラボ。アーケード/他機種にも広がる“落ちゲー文化”をPS側でも楽しめる一本として位置づけ可能。
  • モータートゥーン・グランプリ(SCE/12月16日)
    ・コミカルなフルポリゴンレースゲーム。出来は荒いが、その後『グランツーリスモ』を手がける山内一典の初期仕事として知られ、PSレースゲーム史を語るうえでは外せない存在。
  • 柿木将棋(アスキー/12月22日)
    ・パソコン将棋ソフトで有名な“柿木将棋”のPS版。派手さはないものの、「CD機で本格思考型ボードゲームも出る」という安心感の象徴になり、知的ゲーム枠の代表格として挙げやすい。
  • 宝魔ハンター ライム Special Collection Vol.1(アスミック/12月22日)
    ・OVAアニメ『宝魔ハンター ライム』のマルチメディア的展開の一つ。アニメとゲームの境界がまだ手探りだった時代の“キャラ物×CD-ROM”の象徴として、資料的に面白いポジション。

語りネタに最高な「迷作・珍作・実験作」候補

  • 麻雀ステーションMAZIN〜麻神〜(サン電子/12月3日)
    ・CPU雀士が3Dポリゴンで描かれ、「電撃PlayStation」では“お笑い目的でポリゴンが使われた例”と評された問題作。PS初年度の「とりあえずポリゴンでやってみよう」の空気を象徴する一本。
  • TAMA(タイムワーナーインタラクティブ/12月3日)
    ・ボールを転がして進める立体迷路パズル。PS/サターン両方で出たが、そのシュールな世界観と地味に難しいゲーム性から、“初期3Dパズルの実験作”として今なおネタにされる存在。
  • ツインゴッデス(ポリグラム/12月22日)
    ・主人公2人とラスボスだけ実写取り込み、ほかはアニメ調という奇抜なビジュアル構成の格闘ゲーム。PS初の格ゲーの一つでありつつ、現在は“実写系バカゲーのレジェンド”扱いで語られることも多い。
  • 熱血親子(テクノソフト/12月3日)
    ・もともとアーケード向け企画だった横スクロールアクションで、硬派な難度とマニアックな作りが特徴。発売本数や知名度の意味では地味だが、テクノソフトファンやアクション好きに語り継がれる“通好み枠”としておいしい。
  • 喜国雅彦印 笑う婦警さん パチスロハンター(FORUM/12月9日)
    ・ギャグ漫画家・喜国雅彦の作品系統のノリを持ち込んだ、“パチスロ+お笑い”というかなりニッチな一本。メインストリームとは真逆の方向性ゆえ、1994年PSソフトの中では貴重な珍種ポジ。

1995年|「新顔PS」から「本気で勢力図を崩しに来たハード」へ

1995年のプレイステーションは、
“産まれたての新参”から “本気で任天堂・セガの牙城を崩しに来たハード” へとポジションを変えていった一年でした。

国内ではまだ「サターン優勢」の空気が残るスタート

1994年末の時点で、日本国内の累計販売台数は
セガサターン:約50万台/プレイステーション:約30万台とされ、数字上はサターンがリードした状態で1995年を迎えます。

アーケードでは『バーチャファイター2』をはじめとする3D格闘ゲームが大人気で、
「3Dといえばセガ」「アーケード移植といえばサターン」というイメージを持つユーザーも少なくありませんでした。

一方で、プレイステーションはロンチの『リッジレーサー』『クライムクラッカーズ』『キングスフィールド』などで“通好みの話題”をじわじわと作っており、
1995年はそこからさらにソフトを増やしつつ「どんなハードになっていくのか」を固めていくフェーズに入ります。

1995年前半:タイトル数を増やしながら“PSらしい路線”を模索

1995年前半のPSは、アクション、パズル、スポーツ、テーブルゲームなど、ジャンルを問わずソフトを増やしていく一年でした。
アーケードからの移植や、既存シリーズのPS版も増えはじめ、「とりあえずPS版も出る」という土台が少しずつ整っていきます。

同時に、「完全新規IP」「3D表現を前提にした新しい遊び」を目指すタイトルも登場しはじめ、
2D主体のスーパーファミコンとは違う方向性を打ち出そうとする動きが見えます。

ただ、この段階ではまだ「キラータイトルが次々出ている」状態ではなく、
ユーザーの印象としては
「ときどき面白いタイトルが出るハード」
「PCっぽい変化球も多いマニア向けハード」
くらいの立ち位置にとどまっていたと言えます。

1995年の大きな転機:北米・欧州でのプレイステーション発売

1995年のプレイステーションにとって最も大きな出来事は、
日本の外──北米・欧州での本格参入です。

  • 北米発売:1995年9月9日
  • 欧州発売:1995年9月29日

このときソニーは、価格を299ドル(北米)に設定。
同年5月のE3 1995での発表では、
セガがセガサターンを399ドルで“本日から発売”とサプライズ発表した直後、
ソニー側の担当者が壇上で「299」とだけ告げて去る、という有名なシーンがありました。

この100ドルの価格差は、北米市場でのイメージを大きく左右します。
「高価でややマニア向けなサターン」と
「より安く、幅広い層に向けたPS」という構図が分かりやすく広まり、
発売直後2日間で北米だけで10万台以上を販売したと報じられています。

欧州でも状況は似ており、1995年末までにプレイステーションは
欧米市場で大きなシェアを獲得。
「世界的に見れば、次世代機はPS優勢」という認識が業界内で生まれ始めたのが、この年です。

ローンチラインナップで見せた“多ジャンル戦略”

北米ローンチでは、
『Ridge Racer』『Battle Arena Toshinden』『Rayman』『The Raiden Project』『NBA Jam T.E.』など、多ジャンルを揃えたラインナップで攻勢をかけます。

  • アーケード系レース(Ridge Racer)
  • 対戦格闘(バトルアリーナ闘神伝)
  • アクション/プラットフォーマー(Rayman)
  • シューティング(The Raiden Project)
  • スポーツ(NBA Jam T.E.)

といった具合に、
「どんなジャンルが好きな人でも、とりあえず1本は刺さる」ラインナップを意識しており、
“特定ジャンルのハード”ではなく、“オールラウンドなエンタメ機”としてのポジションを確立しようとしているのが分かります。

この戦略は奏功し、北米の1995年末時点の販売台数では、
プレイステーションがすでにサターンを上回ったとされます。

日本市場:まだ決定打は少ないが、PSらしい土台が固まりつつあった

一方、日本国内では1995年の段階では、
まだ“歴史的なキラータイトル”は少ない年です。

ただし、ここで重要なのは

  • 3D格闘(のちの『鉄拳』系統につながる流れ)
  • 3Dアクション/3Dレース
  • マニアックなRPG、シミュレーション

など、「PSらしい得意ジャンルの地盤」がこの年から形成され始めている点です。

1994年が“誕生の年”だとすれば、
1995年は “日本ではまだ成長途中、でも世界では一気に存在感を増した年” と言い換えられます。

  • 国内:サターン優勢から、徐々にPSが追い上げ始める
  • 海外:北米・欧州ローンチでPSが一気に有利に
  • 業界内:サードパーティ各社が「次の主戦場」としてPSを本格的に意識し始める

この3つが揃ったことで、
1996年以降の“黄金期に向けた地ならし”が完了したのが、1995年という一年でした。

1995年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • 鉄拳(ナムコ/1995年)
    ・アーケード版から移植された3D対戦格闘。各ボタンが「右手・左手・右足・左足」に対応する操作系と、コンボ主体の駆け引きで人気を獲得し、初期PSのミリオンタイトルの一つとしてシリーズの土台を築いた。
  • バトルアリーナ闘神伝(タカラ/1995年)
    ・サイドステップによる立体的な回避を特徴とする3D武器格闘ゲーム。セガサターンの『バーチャファイター』に対抗するPS側の看板格闘として扱われ、初期のCMや雑誌広告でもプレイステーションを象徴するタイトルとして大きく取り上げられた。
  • Wipeout(Psygnosis/1995年・欧州)
    ・反重力マシンでレースを行うSFレースゲーム。未来的なコースデザインとテクノ/クラブミュージックを中心としたサウンドトラックが特徴で、スタイリッシュなイメージとともに「PS=クールな3Dレース」という印象を作り上げた。
  • Jumping Flash!(SCE/1995年4月28日)
    ・一人称視点で三段ジャンプを駆使し、高所から自分の足元を見下ろしながら進む3Dアクション。ポリゴン空間を縦方向に使うゲームデザインが当時としては画期的で、「PSならではの立体アクション」を示した作品として評価されている。
  • Ase Combat(ナムコ/1995年6月)
    ・のちの『エースコンバット』シリーズにつながるフライトコンバットゲーム第1作。現実寄りの戦闘機とミッション形式を採用しつつ、操作はシンプルで遊びやすく、PSのポリゴン性能を活かした空戦ゲームの定番として親しまれた。
  • Rayman(ユービーアイソフト/1995年・欧州/北米)
    ・手描きアニメ調グラフィックと独特のキャラクターデザインが特徴の横スクロールアクション。特に欧州で高い人気を得て、PS初期の海外産オリジナルキャラクターゲームとして存在感を放った。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • Twisted Metal(SingleTrac/1995年・北米)
    ・武装した車両同士が戦うカーコンバットゲーム。ピエロ顔のアイスクリームトラックなど、強いインパクトのある車両デザインと、ダークでブラックユーモアの効いた世界観が特徴で、プレイステーションの“ハード路線”を象徴する作品となった。
  • Destruction Derby(Reflections/1995年)
    ・レースゲームでありながら、相手の車をどれだけ破壊できるかを競うモードを備えたタイトル。車体のへこみや破損がリアルタイムに表現され、ポリゴン3Dの特性を活かしたクラッシュ表現が人気を集めた。
  • Loaded(Gremlin Interactive/1995年)
    ・見下ろし視点のガンアクションゲーム。多彩な武器と派手なエフェクト、血の表現を含むバイオレンスな演出が特徴で、表現の幅広さという点で当時のPSラインナップの中でも異彩を放っていた。

語り草になった「迷作・珍作・実験作」候補

  • Street Fighter: The Movie(カプコン/1995年アーケード版/PS版は地域別に発売)
    ・実写映画『ストリートファイター』を題材にした対戦格闘ゲーム。実写取り込みグラフィックによるキャラクター表現が特徴だが、シリーズ本編と比べて操作感が大きく異なり、プレイヤーの評価は賛否が分かれた。現在では、PS時代を象徴する“変わり種格闘”として語られることが多い。
  • その他・海外専用3Dアクション/スポーツタイトル
    ・1995年はプレイステーションが北米・欧州で本格展開を始めた年であり、日本ではほとんど知られていない海外専用タイトルも多く発売された。これらのソフト群は、地域ごとに異なるラインナップが存在していたことを示す例として、当時のPS市場を振り返るうえで重要な位置づけになる。

1996年|サバイバルホラーと3DアクションがPSのイメージを塗り替えた年

1996年のプレイステーションは、「新顔の挑戦者」から「ゲーム業界の主役候補」へと立場を大きく変えた一年でした。ハード発売から2年目に入り、国内外で本体普及が進み、ソフトラインナップも量・質ともに充実。ソニーの資料によると、1996年末時点で欧州だけで約220万台(うち英国70万台)に到達し、世界的にPS陣営が勢いづいていたことが分かります。

その転換点の一つになったのが、カプコンの『バイオハザード(Resident Evil)』です。日本では1996年3月22日にPS用ソフトとして発売され、薄暗い洋館を舞台にした探索と緊張感のある戦闘で、従来のアクションゲームともアドベンチャーとも異なる体験を提示しました。 作品は大ヒットし、のちに「サバイバルホラー」というジャンル名が定着するきっかけになったことから、PS1時代だけでなくゲーム史全体を語るうえでも欠かせない一本になっています。

アーケードで人気を博していたナムコの『鉄拳2』も、この年にPSへ本格移植されました(アーケード版は1995年)。家庭用版には各キャラごとのフルCGエンディングや新モードが追加され、1996年の日本国内年間売上1位を記録するなど、PSを代表するキラータイトルとして定着します。 1作目と合わせて、「家でも本格3D格闘が遊べるハード=プレイステーション」というイメージを決定づけました。

さらにこの年は、3Dアクションの新しい象徴も次々と登場しました。ノーティドッグ開発の『クラッシュ・バンディクー』は、PS専用の3Dプラットフォーマーとして1996年に発売され、箱を壊しながら進むテンポの良いゲーム性とコミカルなキャラクターで世界的ヒットを記録します。 欧米では「PSのマスコット的存在」として扱われ、日本ではCM用にデザインが調整されるなど、ハードとキャラクターが一体になったプロモーションが行われました。

同じく1996年に発売された『トゥームレイダー』は、探検家ララ・クロフトを主人公にした3Dアクションアドベンチャーで、PS版も重要なプラットフォームのひとつとなりました。広大な3D空間を探索するゲームデザインや、シネマティックな演出が高く評価され、ララは世界的なゲームアイコンとしてブレイクします。

一方で、ライバル陣営からも大きな動きがありました。任天堂は次世代機「ニンテンドウ64」を1996年6月23日に日本で発売(北米は同年9月29日)。『スーパーマリオ64』など強力なロンチタイトルを掲げ、3Dゲーム時代の主導権を巡る競争が本格化していきます。 しかしソニー側は、既に多数のサードパーティタイトルが稼働していたこともあり、ハード・ソフトともに好調を維持。1996年末までには、PS向け開発中タイトルが約400本に達していたとされ、他機種を上回るソフト層の厚さをアピールしていました。

まとめると、1996年のプレイステーションは

  • 『バイオハザード』によるサバイバルホラー誕生
  • 『鉄拳2』の大ヒットで格闘ゲームの本拠地の一つに
  • 『クラッシュ・バンディクー』『トゥームレイダー』など、新たな3Dアクションの顔が台頭
  • そして、ニンテンドウ64登場による“本格的な次世代機戦争”の幕開け

という要素が重なり、「PS1の黄金期」に向かう助走として非常に重要な一年だった、と位置づけられます。

1996年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • バイオハザード(カプコン/3月22日)
    ・閉鎖空間での恐怖と限られた資源管理を組み合わせ、「サバイバルホラー」というジャンルそのものを世界に印象付けた一作。PS1に「大人向け」「ホラー」のイメージを決定づけた。
  • トゥームレイダー(コア・デザイン/海外版:11月)
    ・海外ではPC/セガサターンと並んでPS版も1996年に発売。3Dフィールドを自由に探索するアクションアドベンチャーとして評価され、ララ・クロフトは世界的なゲームアイコンとなった。
  • 鉄拳2(ナムコ/3月29日)
    ・アーケード版からの移植で、PS1向け3D格闘ゲームの完成形とされたタイトル。多数のキャラクターと豊富なモードを備え、日本では1996年の年間売上1位になるほどのメガヒットとなった。
  • クラッシュ・バンディクー(ノーティドッグ/9〜12月)
    ・海外で先行発売された3Dアクションで、奥行き方向に突き進む独特のステージ構成とコミカルな演出が特徴。ソニーのマスコット的キャラクターとして世界展開し、「PSといえばクラッシュ」というイメージを強めた。
  • パラッパラッパー(ソニー・コンピュータエンタテインメント/12月6日)
    ・ラップに合わせてボタンを刻むリズムゲーム。可愛いキャラクターとオリジナル楽曲で、「音ゲー」という新しい遊び方を家庭用ゲーム機に広めた。クラッシュと同じ発売日というエピソードも語り草になっている。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • ワイルドアームズ(メディア・ビジョン/12月20日)
    ・荒野と西部劇テイストの世界観が光るRPG。2Dフィールドと3Dバトルの組み合わせや、口笛の主題歌など独特の雰囲気で、「PS初期RPGの名作」として語り継がれている。
  • アークザラッドII(ジークラフト/日本:1996年)
    ・前作から続く物語を大幅にスケールアップさせたシミュレーションRPG。重厚なストーリーとやり込み要素で、PS初期のRPG層に強い支持を得た続編。
  • キングスフィールドIII(フロム・ソフトウェア/6月21日)
    ・フル3D・一人称視点のダークファンタジーRPGシリーズ第3作。迷宮探索のストイックさがコアなRPGファンから熱狂的な支持を集め、後の「ソウルシリーズ」へつながる系譜としても重要な一本。
  • ジャンピングフラッシュ!2 アロハ男爵大弱りの巻(ソニー・コンピュータエンタテインメント/1996年)
    ・ウサギ型ロボットを操る一人称視点3Dアクションの続編。高所からの大ジャンプと独特の浮遊感はそのままに、ステージ構成や収集要素を強化し、PSならではの立体アクションの魅力をさらに押し広げた。
  • ダイ・ハード・トリロジー(プローブエンターテインメント/8〜9月)
    ・映画「ダイ・ハード」三部作を、TPS・ガンシューティング・カーアクションという三つのジャンルでまとめた欲張りパッケージ。1本で3本分遊べるボリューム感から、海外を中心にベストセラーとなった。
  • トバルNo.1(ドリームファクトリー/スクウェア/1996年)
    ・スクウェア初のPSタイトルとなった3D格闘ゲーム。鳥山明デザインのキャラや滑らかな60fps表示が話題となり、ランダム生成ダンジョン探索モードなど実験的な要素も含めて格闘ゲーム好きの間で高い評価を得た。

語り草になった「迷作・珍作・実験作」候補

  • Bubsy 3D(アコレード/11月25日〈北米〉)
    ・2D時代からのマスコット「バブジー」を3D化したアクションだが、ぎこちない操作性と荒いグラフィックで酷評を浴びた問題作。現在では「悪い意味での伝説的PSソフト」として名前が挙がることが多い。
  • Perfect Weapon(ASC Games/11月21日)
    ・「鉄拳2 meets バイオハザード」といった触れ込みで登場した3Dアクション。重い操作感や単調さが指摘され、評価は伸びなかったが、96年当時の3Dアクション黎明期らしい意欲作として記憶されている。
  • King’s Field III: Pilot Style(フロム・ソフトウェア/8月22日)
    ・キングスフィールドIIIの世界を短時間で味わえる体験版的タイトル。短い内容ながら難度の高さと独特の空気感が濃縮されており、「フロム信者」向けの通好みディスクとして語られている。

1997年|「FFVIIショック」とグランツーリスモで“王者の道”に乗った年

1997年のプレイステーションは、
それまでの「有力ハードの一つ」から「家庭用ゲーム機の中心」に一気に駆け上がった一年でした。
その象徴が、1月に日本で発売された『ファイナルファンタジーVII』です。

FFVIIが「RPG=PS」のイメージを決定づける

『ファイナルファンタジーVII』は、日本で1997年1月31日にPS専用ソフトとして発売され、同年9月7日に北米、10月〜11月に欧州でも発売されました。

シリーズ初の本格的な3Dグラフィック&CGムービー、
プレイステーションのCD-ROM容量を使い切るボリューム、
そしてシナリオ面でのインパクトの強さから、発売直後から社会現象的な盛り上がりを見せます。

  • 日本では発売3日で200万本以上を販売
  • 北米でも発売から数週間で50万本以上を売り上げ、年末までに100万本超え

といった記録が残っており、「RPGの主戦場はPS」というイメージを世界規模で固めました。
それまで任天堂ハードで展開してきた大型RPGシリーズが、
ハードごと移籍してきたインパクトは業界内でも非常に大きく、
サードパーティ各社がPS向け大作RPGを本格的に計画する流れを加速させることになります。

2Dアクションの金字塔『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』

同じ1997年には、今なお名作として挙げられる2Dアクション『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』(Castlevania: Symphony of the Night)も登場します。

  • 日本:1997年3月20日
  • 北米:同年10月2日(3日表記の資料もあるが、公式系では2日が多数)
  • 欧州:1997年11月1日

という形でPS向けに発売され、
従来のステージクリア型から、探索重視の“メトロイドヴァニア”スタイルへ舵を切った作品として知られています。

当初、北米では宣伝規模が小さく、発売時の売上はそこまで大きくなかったものの、
後年の評価の高まりとともに「PS1時代の2Dアクション最高峰の一つ」として再評価されるようになりました。

3D全盛に向かう中で、
PS1でもここまで作り込まれた2Dゲームが出せる、という実例になったこともポイントです。

年末には『グランツーリスモ』が登場し、リアル系レースの時代へ

1997年の締めくくりとして欠かせないのが、
日本で12月23日に発売された『グランツーリスモ』です。

リアル志向の挙動、実在メーカーの車種、多数のレースイベント、
そしてリプレイ映像の映像美など、
それまでの家庭用レースゲームとは次元の違う“クルマ遊び”を提示しました。

  • 日本では発売から1か月で100万本以上を販売し、1997年の年末商戦を代表する一本に
  • その後も売れ続け、PS全体でもトップクラスの販売本数を記録

といった結果を残し、
プレイステーションを「リアル系レースゲームの本場」として位置づけるきっかけになります。

ハード普及の面でも“PS一強”ムードが強まる

ハード販売の面でも、1997年前後でPSの優位は一段と明確になります。

1996年末の時点で、ヨーロッパにおけるPS販売台数はおよそ220万台(うちUK70万台)に達しており、
同時期に任天堂64やセガサターン向けに開発されていたタイトル数と比べても、
PS向け開発中タイトルが約400本と圧倒的に多かったことが報告されています。

1997年には世界累計出荷が1,000万台規模に到達し、それを記念したゴールドカラーの特別モデルが製造されたことも知られています。
この頃には、
「市場全体の標準プラットフォームはPS」
という見方が業界内でほぼ共有されていたと言ってよい状況でした。

競合ハードとの関係:N64・サターンとの“立場の差”が明確に

任天堂側は1996年に発売したニンテンドウ64で『スーパーマリオ64』『スターフォックス64』などを展開し、
3Dアクション/3Dシューティングの面では非常に高い評価を獲得していました。

一方セガサターンは、2D格闘やシューティング、サターンならではのコア向けタイトルで一定の支持を維持していたものの、
1997年の段階では、PSとの販売差・ソフト数の差が徐々に大きくなっていきます。

そこへ

  • FFVIIをはじめとする大作RPG
  • 月下の夜想曲などの2D高品質タイトル
  • グランツーリスモのようなリアル系レース

といった“決定打”が1997年に集中したことで、
「PS=あらゆるジャンルの決定版が集まるハード」というイメージが完成していきました。


整理すると、1997年のプレイステーションは

  • FFVIIの世界的ヒットで「RPGの主戦場」が完全にPSへ
  • 悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲で2Dアクションの新たな方向性を提示
  • 年末にグランツーリスモが登場し、リアル系レースのスタンダードを確立
  • ハード販売・ソフト本数ともに、ライバル機との差が決定的になっていく

という要素が重なり、「PS1の黄金期」が本格的に始まったターニングポイントの年、と位置づけられます。

1997年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • ファイナルファンタジーVII(1997年1月31日/スクウェア)
    ついにFFがPSへ移行した記念碑的RPG。フルポリゴンのキャラとCGムービー、重厚な物語で、PS=FFVIIというイメージを決定づけた一本。
  • ファイナルファンタジータクティクス(1997年6月20日/スクウェア)
    “イヴァリース”を舞台に、階級闘争や権力闘争を描いたシミュレーションRPG。ジョブシステムと硬派なストーリーで、いまも根強いファンを持つ名作。
  • 悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(1997年3月20日/KCE東京)
    2D探索型アクションの完成形とも言われる一本。広大な城を探索する“メトロイドヴァニア”スタイルを決定づけ、後続タイトルにも大きな影響を与えた。
  • グランツーリスモ(1997年12月23日/ソニー・コンピュータエンタテインメント)
    実在車・リアル挙動・ライセンス制など、それまでのレースゲームの常識を塗り替えた本格ドライビングシミュレーター。PS発・世界的ブランドへ成長していくシリーズの第1作。
  • 風のクロノア door to phantomile(1997年12月11日/ナムコ)
    2Dキャラ+3Dステージの“2.5D”アクション。ポップなビジュアルと、ラストに向けて一気にシリアスになる物語のギャップが語り継がれる純度の高い名作。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • サガ フロンティア(1997年7月11日/スクウェア)
    7人の主人公による“フリーシナリオ”RPG。GB版サガとロマサガのエッセンスを融合したようなごった煮世界観と自由度の高さで、熱狂的サガファンを生んだ。
  • クラッシュ・バンディクー2 コルテックスの逆襲!(1997年/ソニー・コンピュータエンタテインメント)
    奥スクロールを中心としたクラッシュ続編。難度は高めながらアクションの完成度が増し、PS時代の“洋ゲー3Dアクション”の代表格としてシリーズ人気を固めた。
  • ブシドーブレード(1997年/スクウェア)
    体力ゲージなし・一撃必殺もありの“時代劇チャンバラ格闘”。ガードや立ち回りの重みが桁違いで、好きな人には忘れられない異色格闘ゲーム。
  • ブレス オブ ファイアIII(1997年/カプコン)
    竜に変身する少年リュウの旅を描くRPG。3D背景+2Dキャラの表現や、ジャズ寄りのサウンドが独特で、PS世代の“カプコンRPG”として高く評価された。
  • トンバ!(1997年/フーイーピーキャンプ)
    ピンク髪の野生児トンバが大暴れするアクションADV。横スクロールの見た目でありながら、クエスト要素や探索性が高く、知る人ぞ知るカルト的人気作になった。

語り草になった「迷作・珍作・実験作」候補

  • クーロンズ・ゲート -九龍風水傳-(1997年/ソニー・ミュージックエンタテインメント)
    返還前夜の香港・九龍城砦を題材にしたアドベンチャー。濃密なCG背景と独特の“香港ゴシック”な世界観で、ゲームというより体験型アートとして語り継がれている一本。
  • The Note(公開されなかった手記)(1997年/NKシステム)
    行方不明の女子高生を追ってヨーロッパの洋館を調査する、一人称視点サバイバルホラーADV。B級ホラー映画のような雰囲気とクセのある操作感で、マニアには忘れられない存在。
  • Clock Tower: The First Fear(1997年7月17日 PS版/ヒューマン)
    SFC版『クロックタワー』の強化移植。PSならではの演出強化とともに、“追われる恐怖”を強調したゲーム性が再評価され、ホラーゲーム史の重要作として語られている。
  • Spider(1997年/Acclaim)
    科学者の精神がクモ型メカに移植されるという、かなり尖った設定の海外製アクション。グロさを抑えつつも世界観はかなり異色で、「PS1らしい実験作」として海外レトロ界隈で話題に上ることが多い。

1998年|成熟期のど真ん中、「PSで何でも遊べる」時代へ

1998年のプレイステーションは、
“PS1黄金期”のまさにど真ん中にあたる一年です。

ハード発売から4年目に入り、本体は値下げを重ねて普及が進み、
サードパーティもPSを主戦場とみなして大型タイトルを集中投入。
RPG・アクション・レース・恋愛ゲーム・音ゲー・ギャルゲー・SLGなど、
ほぼあらゆるジャンルに「決定版クラス」のソフトがそろい始めました。

『ゼノギアス』『ゼノ』路線のはじまり

1998年2月11日にスクウェアが発売したRPG『ゼノギアス』は、
それまでの王道ファンタジー路線とは一線を画す、SF+宗教観+哲学が入り混じった重厚な物語で話題を呼びます。
バトルは2Dドットキャラのコンボ式コマンドバトル+巨大ロボット“ギア”戦という構成で、
当時としてもかなり尖った内容の作品でした。

ストーリーの難解さや、ディスク2枚目の構成など賛否もありつつ、
のちの「ゼノ」シリーズ(ゼノサーガ、ゼノブレイドなど)につながる系譜の出発点として位置づけられています。

『メタルギアソリッド』で「ステルスアクション」が一気にメジャーに

1998年9月3日にコナミから発売された『メタルギアソリッド』は、
PS1の代表作どころか、ゲーム史全体のターニングポイントの一つとして語られるタイトルです。

  • 敵に見つからないよう潜入する“ステルスアクション”を前面に押し出したゲームデザイン
  • フルボイスのドラマパートと、映画的なカメラワーク
  • コントローラーの振動や、メモリーカードの内容を読むメタ演出(サイコ・マンティス戦)

など、プレイステーションのハード機能をフル活用した演出が大きな話題になり、
世界で600万本以上を売り上げるヒット作となりました。

「アクションゲーム=反射神経」だけでなく、
「隠れる・観察する・情報戦」という遊び方を大衆レベルに広めたという点でも、
1998年という年を象徴する一本になっています。

『バイオハザード2』でサバイバルホラーが“ジャンルとして定着”

1998年1月21日には、『バイオハザード』の続編『バイオハザード2』がPS用ソフトとして発売されます。

  • レオン編とクレア編の2主人公制
  • シナリオA/Bの組み合わせによる周回プレイ
  • 洋館からラクーンシティ市街へと舞台を広げたスケール感

などが高く評価され、前作を上回る売上を記録。
サバイバルホラーというジャンルが、一過性のブームではなく
「PSを代表する定番ジャンル」として完全に定着したことを示すタイトルになりました。

ジャンルの多様化:音ゲー・ギャルゲー・ADVも成熟期に

1998年は、
RPGやアクションだけでなく、他ジャンルの「決定版」も多数登場した年です。

  • リズム/音ゲーでは、『beatmania』系や『パラッパラッパー』から続く流れを受けた派生タイトルが増加
  • 恋愛ADV・ギャルゲーもPSでの移植・新作が大量にリリースされ、
    いわゆる“ギャルゲー=PC or サターン”という図式が崩れ始める
  • アドベンチャー・推理ゲームも、『トワイライトシンドローム』系など、ホラー寄りの作品が存在感を増していく

といった形で、
「とにかくPSを持ってさえいれば、そのジャンルの代表作は大体遊べる」
という状況に近づいていきました。

市場全体の空気:PSが“標準機”、N64が“任天堂ワールド”という住み分けに

ハード販売・ソフト本数の面では、引き続きプレイステーションが優位を保ちます。

  • 世界の累計出荷台数はこの頃すでに数千万台規模に達し、
    “すでに家にあるハード”として扱うユーザーが多数
  • 新作タイトルの多くはまずPS版が前提で企画され、
    その後に他機種へ移植される、という流れが一般化

一方、ニンテンドウ64は『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(1998年11月)など
超強力な1stタイトルを抱えながらも、カートリッジ媒体の制約やサードパーティの減少により、
「任天堂らしいゲームを遊ぶマシン」という性格を強めていきます。

セガサターンはすでに後継機ドリームキャストへの移行が見え始めており、
1998年の時点で“次世代機戦争の主戦場=PS vs N64+PC”という構図が、
実質的に固まっていたといえます。

1998年のプレイステーションを一言でまとめるなら、

  • 『ゼノギアス』など尖ったRPGでコア層を掴み
  • 『バイオハザード2』『メタルギアソリッド』で、“大人向けの映画的ゲーム体験”を決定づけ
  • その裏で、恋愛ADVや音ゲーなどサブカル寄りジャンルも充実し
  • 「とりあえずPSさえあれば何でも遊べる」という空気が、完全に当たり前になった年

という位置づけになります。

1998年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • バイオハザード2(1998年1月/カプコン)
    ・前作の恐怖感をそのままに、舞台をラクーンシティ全体へ広げたサバイバルホラー。2人の主人公による表裏シナリオで遊びごたえが大幅アップし、「PSといえばバイオ」のイメージを決定づけた一本。
  • メタルギアソリッド(1998年9月3日/コナミ)
    ・映画的カットシーンとフルボイスのドラマ展開で、ステルスアクションというジャンルを一般層にまで広げた名作。シネマティック路線の“PSらしさ”を象徴するタイトル。
  • ゼノギアス(1998年2月11日/スクウェア)
    ・重厚なシナリオとロボットバトル、独特の宗教観・哲学要素が融合したRPG。賛否両論を呼びつつも、今なお語られる“問題作にして傑作”としてPS1の歴史に刻まれている。
  • パラサイト・イヴ(1998年3月29日/スクウェア)
    ・現代ニューヨークを舞台にしたシネマティックRPG。リアルタイム制バトルとホラー要素を組み合わせた独自路線で、「FFでもバイオでもないスクウェアの大人向けタイトル」として存在感を放った。
  • 鉄拳3(PS版 1998年発売/ナムコ)
    ・アーケードからの移植とは思えない完成度で、家庭用3D格闘ゲームの頂点クラスに君臨。読み合いの楽しさと爽快コンボで、格ゲー初心者からガチ勢まで幅広く刺さった一本。

1998年・押さえておきたい「定番・人気作」

  • ブレイヴフェンサー 武蔵伝(1998年7月16日/スクウェア)
    ・アクションRPGとしての操作感と、“技をコピーする”システムが好評だったタイトル。デフォルメ調のキャラや軽快なノリも含め、当時のスクウェアの懐の深さを示す作品。
  • 幻想水滸伝II(1998年12月17日/コナミ)
    ・108星システムと群像劇ストーリーがさらに磨かれたRPG続編。政治劇のような重厚な展開と、前作からのキャラ継続要素がファンの心をつかみ、「PSRPGの名作」として今も名前が挙がることが多い。
  • クラッシュ・バンディクー3 ブッとび!世界一周(Crash Bandicoot 3: Warped/1998年11月4日〈欧州版〉ほか/ノーティードッグ)
    ・世界各地を舞台にした多彩なステージ構成と、シリーズで完成形に到達したと言われるアクション性が魅力。PS1時代の“マリオポジション”とも言える看板アクションとして存在感が大きい。
  • アーマード・コア プロジェクト ファンタズマ(1997年末〜1998年頃/フロム・ソフトウェア)
    ・AC1の拡張版的な位置づけながら、新ミッションとパーツ群で“自分だけのロボットを組む楽しさ”をさらに推し進めたタイトル。硬派なメカアクション路線が、PS1後期まで続くシリーズ人気の土台になった。

1998年・語り草になった「迷作・珍作」たち

  • LSD: Dream Emulator(1998年10月22日/アスミック・エース)
    ・夢日記をもとにした、目的らしい目的のない“夢の中散歩ゲーム”。奇妙なグラフィックと不可思議な世界観から、発売当時は完全にカルト向けだったが、現在では「PS1屈指の実験作」として再評価されている。
  • Crisis Beat(クライシスビート)(1998年6月18日/バンダイ)
    ・豪華客船を舞台にしたベルトスクロールアクション。王道ながらB級映画のような雰囲気と独特のテンポ感で、一部のアクション好きから「妙にクセになる一本」として語られることの多いタイトル。

1999年|PS2の足音が聞こえる中で、それでも主役だったプレイステーション

1999年のプレイステーションは、
ハードとしては完全に成熟期に入りつつも、
次世代機プレイステーション2の登場が公式に発表されることで、
“現役トップ”と“そろそろ引退が見えてきたベテラン”という二つの顔を同時に持ち始めた年です。

PS2正式発表、それでもPS1はソフトの勢いを維持

ソニーは1999年3月2日に、次世代機「プレイステーション2(PS2)」を正式発表。
その後、同年9月の東京ゲームショウなどでも詳細が明かされ、
「DVD再生機能」「下位互換(PS1ソフトが動く)」といったキーワードが話題になります。

一方で、PS1そのもののソフト供給は衰えず、
この年にも

  • クロノ・クロス(スクウェア)
  • デジタルカードバトル系や“ポケットステーション”連動タイトル
  • ジャンル問わず中〜大規模タイトル

などが次々と登場し、
「PS2が出るまでPS1で十分遊べる」という空気がユーザー側にもありました。

『クロノ・クロス』:時をめぐる物語のもう一つの答え

1999年11月18日に発売された『クロノ・クロス』は、
『クロノ・トリガー』の流れを汲む新作RPGとして登場。

  • 主人公セルジュの“生存/死亡”で分岐する平行世界
  • 多数の仲間キャラ(40人以上)が存在し、周回ごとに違う仲間が加入
  • コマンドバトルながら、物理/属性攻撃や「エレメント」システムで独自の戦略性を持つ

といった特徴を持ち、ストーリー・音楽ともに非常に評価が高い作品です。
物語の解釈には今なお議論が残るほどで、
PS1後期RPGの代表格としてしばしば挙げられます。

『どこでもいっしょ』とポケットステーションブーム

1999年7月22日には、『どこでもいっしょ』が発売されます。

  • 「ポケピ」と呼ばれるキャラクターたちと会話し、ことばを教えていくコミュニケーションゲーム
  • 携帯端末「ポケットステーション」との連動により、PSの電源が入っていない間も育成・交流が続く設計

という新しい遊び方が人気を集め、
ポケットステーション本体も店頭で品薄になるほどのブームを巻き起こしました。

この「どこでもキャラと一緒にいる」感覚は、
のちの携帯機ゲームやスマホゲームに通じる部分も多く、
PS1終盤に生まれた“生活密着型”タイトルとして非常に重要です。

『サイレントヒル』で“ホラーの方向性”がさらに分岐

1999年2月にコナミから発売された『サイレントヒル』は、
同社の『メタルギアソリッド』に続くPS向けオリジナルIPとして生まれたサバイバルホラー。

  • 霧に覆われた町サイレントヒルを舞台に、主人公ハリーが娘を探す物語
  • 画面を覆う濃い霧と暗闇、ざらついた映像表現で“不安感”を演出
  • バイオハザード的な“ビックリ系ホラー”とは違う、心理的な怖さを追求

といった特徴から、
「サバイバルホラー=バイオ」のイメージに対して、
“静かにじわじわ怖いホラー”という新しい方向性を示したタイトルになりました。

アクション・RPG・ADV…粒のそろった中堅タイトルが多数

1999年は、超ド級の“社会現象級”タイトルこそ少なめですが、
振り返ると「当時PSを持っていた人なら1本は遊んでいる」ような中堅〜人気作が多い年でもあります。

例を挙げると:

  • ワイルドアームズ2(1999年4月29日/メディア・ビジョン)
  • ブレス オブ ファイアIV(1999年にPS向け発表、実際の発売は日本で2000年4月)
  • 影牢〜刻命館 真章〜(続編的トラップアクション/1998末〜1999年にかけて評価が定着)
  • アークザラッドIII(シリーズ完結編として1999年10月28日発売)

など、RPG・アクション・シミュレーションの各ジャンルで“シリーズのまとめ”的な作品や、
PSで育ったシリーズの続編が多く出ています。

ハードとしては「次世代へのバトン渡し」に入る

1999年の市場全体を見ると、

  • PS1は既に世界累計7,000万台以上を販売しており、普及台数の点では圧倒的優位
  • 一方で、ソフトメーカー各社はPS2世代を見据えた準備を着々と進めている
  • 任天堂64はすでにラインアップが絞られ、セガはドリームキャストへ本格移行

という状況でした。

ユーザー側の感覚としては、

  • 「PS2が出てもPS1ソフトは互換で動くらしいから、今買っても無駄にならない」
  • 「PS2が出るまでに、PS1の名作RPGやホラーを遊び尽くしておこう」

という、
“終わりが見え始めたからこそ、図書館の本を読み尽くすように楽しむ時期”
に入っていたとも言えます。


ざっくりまとめると、1999年のPS1は:

  • 『クロノ・クロス』『どこでもいっしょ』『サイレントヒル』など、今も名前が挙がるタイトルが登場
  • ポケットステーション連動や心理ホラーなど、新しい方向性の試みが続いた
  • 一方でPS2正式発表により、「次世代機への布石」「シリーズ完結編」の色が濃くなっていく

という、“成熟と移行が同居した年”といった位置づけになります。

1999年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • ファイナルファンタジーVIII(1999年2月11日/スクウェア)
    ・学園を舞台にした青春群像劇と、GF・ジャンクションシステムが特徴のRPG。リアル寄りのキャラ表現とムービー演出で、「PS後期FF」の方向性を決定づけた一本。
  • クロノ・クロス(1999年11月18日/スクウェア)
    ・平行世界をテーマにしたRPG。40人以上の仲間キャラと独特の属性バトル、評価の高い音楽で、PS1後期RPGの代表格として今も名前が挙がる作品。
  • サイレントヒル(1999年2月/コナミ)
    ・濃い霧とノイズだらけのラジオが生む“心理的な怖さ”が特徴のサバイバルホラー。ビックリ系のバイオとはまた違うホラーの方向性を提示し、シリーズ化される人気IPになった。
  • ディノクライシス(1999年7月1日/カプコン)
    ・恐竜が徘徊する研究施設を舞台にしたサバイバルホラー。リアルタイム3D背景と素早い敵AIで、“バイオ+恐竜”というコンセプトをしっかり形にしたアクション寄りタイトル。
  • どこでもいっしょ(1999年7月22日/SCE)
    ・トロをはじめとした「ポケピ」と会話し、ことばを教えていくコミュニケーションゲーム。ポケットステーション連動で大ヒットし、PSを代表するキャラクターブランドを生んだ。
  • エイプエスケープ(サルゲッチュ)(1999年6月24日/SCE)
    ・デュアルショック必須の3Dアクション。右スティックで“サル捕獲ガジェット”を操作する独特の操作感と、コミカルな世界観で、PS後期を代表するアクションシリーズの起点となった。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • 聖剣伝説 Legend of Mana(1999年7月15日/スクウェア)
    ・美麗な2Dグラフィックと「ランドメイク」による世界構築が特徴のアクションRPG。シナリオを短編オムニバス的に進めていく構成で、雰囲気ゲーとして今も根強い人気を持つ。
  • ワイルドアームズ セカンドイグニッション(1999年4月29日/メディア・ビジョン)
    ・西部劇テイストのRPG第2作。テロ組織と戦う群像劇ストーリーと、3Dバトル演出の進化でシリーズファンから高評価を得た、PS後期の“地味だけど強い”RPG枠。
  • アークザラッドIII(1999年10月28日/SCE)
    ・アーク三部作の完結編となるシミュレーションRPG。クエストを受けて世界を巡る“仕事人プレイ”のスタイルが特徴で、PS初期から続いたSCE製RPGラインを締めくくる一本になった。
  • ヴァルキリープロファイル(1999年12月22日/エニックス)
    ・北欧神話を題材にしたRPG。サイドビューのコンボバトルと、多数のエインフェリアの死生観に焦点を当てたシナリオで、「PS末期の名作RPG」として長く語り継がれている。
  • デビルマン(PS版)(1999年8月5日/バンダイ)
    ・永井豪原作の同名作品を題材にした3Dアクション。評価は割れるものの、当時のPSならではの3D表現と原作再現を目指した作りで、一部ファンには印象深い一本。

語り草になった「迷作・実験作」候補

  • LSD: Dream Emulator(廉価版再販・じわじわカルト化継続)
    ・1998年発売だが、99年頃には中古市場や口コミでじわじわと知名度を上げ、“PS時代の変なゲーム”として語られることが多くなった実験作。PS1後期の空気を象徴するカルトタイトル枠。
  • Clock Tower II: The Struggle Within(海外版クロックタワー2派生/1999年)
    ・日本のサバイバルホラー『クロックタワーGH』をベースにした海外向けタイトル。日本国内のPSユーザーにはやや影が薄いものの、“ホラー乱立時代”を象徴する一例として挙げられることが多い。
  • その他:ポケットステーション専用タイトル群
    ・『どこでもいっしょ』のヒットを受けて、デジモン系やカードバトルなどポケットステーション連動ソフトも多数登場。個々の評価は玉石混交だが、「当時ならではの実験的ミニゲーム群」としてレトロ界隈で話題に上ることがある。

2000年|PS2元年と「PS one」登場、それでも現役バリバリだった初代プレイステーション

2000年はゲーム業界的には「PS2元年」として語られることが多い年です。
ソニーは2000年3月4日にプレイステーション2を日本で発売。DVD再生機能+PS1互換という強力な武器を引っさげ、ローンチから大きな話題を集めました。

一方で、“置いてきぼり”になったわけではなかったのが初代プレイステーション。
PS2はPS1ソフトとの下位互換を備えていたため、

  • すでに持っているPS1ソフト資産をそのまま活かせる
  • 新作PS1タイトルも、PS2購入後もムダにならない

という安心感があり、ユーザーは「PS2を待ちながらPS1を遊び尽くす」「PS2を買ってもPS1ソフトでしっかり遊ぶ」という二重の楽しみ方ができる状態でした。

小型モデル「PS one」登場で、PS1が“もう一度主役”に返り咲く

そんな中で登場したのが、小型・廉価版の新モデル「PS one」。
2000年7月7日に発売されたこのモデルは、初代PSを一回り小さく、可愛らしいデザインにしたリビジョン機で、価格も抑えられていました。

  • 機能は基本的にそのまま
  • サイズはぐっとコンパクトに
  • デザインも“丸っこくて白い”ポップ路線に

ということもあり、家電量販店では

  • 「リビング用のPS2」と「子ども部屋用のPS one」
  • 「とりあえずPS1から入門」「DVDも欲しい人はPS2」

のような住み分けも見られました。
実際、2000年後半にはPS oneが他機種はもちろん、PS2本体よりも売れたというデータもあり、
“次世代機が出た年に、旧世代機のリニューアルモデルが売れまくる”という、なかなか珍しい状況が生まれています。

RPGラッシュのピーク:『FF9』『DQ7』『Vagrant Story』が同居した異常な一年

ソフト面で見ると、2000年のPS1は「RPGの豊作年」として語り継がれています。

  • ベイグラントストーリー
    ・日本では2000年2月10日発売。タクティクスオウガ/FFタクティクスの松野泰己チームによるアクションRPGで、重厚な世界観と複雑な武器・コンボシステムが特徴。ファミ通40点満点を獲得し、“PS1最後期の問題作にして傑作”として評価されています。
  • ファイナルファンタジーIX
    ・2000年7月7日、日本で発売。シリーズ原点への原点回帰を掲げ、中世ファンタジー調の世界観とデフォルメ寄りのキャラデザインに戻ったナンバリングタイトル。PS1で発売された最後のFFナンバリング作品として、現在も“PS1世代のFF集大成”とみなされています。
  • ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち
    ・2000年8月26日発売。N64向け計画からの紆余曲折を経てPS独占タイトルとして登場し、ボリュームたっぷりの冒険と、石版システムによる世界再生ストーリーで話題に。発売初日から長蛇の列ができ、2000年日本市場の顔とも言えるRPGになりました。

たった一年間に

  • 松野作品の頂点クラスとされるベイグラントストーリー
  • “原点回帰”を掲げたFF9
  • 当時の国民的RPG最新作DQ7

が全部PS1で出ている、というのは冷静に考えるとかなり異常な密度です。
「PS2が出て、もうPS1は終わり」という空気とは真逆で、
RPGファンにとってはむしろ“PS1黄金期のラストスパート”のような年でした。

世代交代の中で変わる「PS1の立ち位置」

2000年の市場全体を振り返ると、

  • 新作の“超大作RPG”はまだPS1が主戦場
  • PS2はハードとしての話題性&将来性で注目
  • 小型PS oneが「安くて遊べる入門機」として普及

という三重構造になっていました。

ユーザーの実感としては、

  • 「PS2は欲しいけど、とりあえずPS1(PS one)で十分」
  • 「PS2を手に入れても、当面はPS1ソフトをRPG中心に遊び続ける」

という、“PS1ライブラリを遊び尽くしながら次世代機へ移行する”時期。
逆に言えば、この頃に発売されたPS1タイトルは

  • すでに普及台数が極限まで伸び切ったハード上で
  • PS2互換のおかげで“将来も遊ばれやすい”状態で出た

という、ビジネス的にも非常に有利なタイミングに乗っていたとも言えます。


ざっくり整理すると、2000年のPS1は:

  • PS2発売とPS one登場で、「安価な現役機」+「次世代への橋渡し」という二つの顔を持ち
  • Vagrant Story/FF9/DQ7など、RPG史に残る大作が集中した“ラストスパート期”
  • ユーザーが「PS1ライブラリを堪能しながらPS2時代に入っていく」転換点

として位置づけられる一年、という形になります。

2000年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • ベイグラントストーリー(2000年2月10日/スクウェア)
    ・レアモンドという城塞都市を舞台にしたアクションRPG。部位狙いのバトル、複雑な武器カスタム、政治劇的な物語が高く評価され、ファミ通クロスレビュー40点も獲得したPS1末期の問題作にして傑作。
  • ファイナルファンタジーIX(2000年7月7日/スクウェア)
    ・クリスタル、王国、黒魔道士など「FFらしさ」への原点回帰を掲げたナンバリング第9作。デフォルメ寄りキャラと中世ファンタジーの世界観で、PS1時代のFFを締めくくる集大成的タイトルとなった。
  • ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち(2000年8月26日/エニックス)
    ・石版システムで失われた大陸を復活させていく超ボリュームRPG。長い制作期間を経てPS独占タイトルとして登場し、日本国内で400万本超を売り上げたPS1時代最大級のキラーソフトの一つ。
  • ポポロクロイス物語II(2000年1月27日/SCE)
    ・心優しい王子ピエトロの物語を描くRPG続編。絵本調のグラフィックと温かいストーリーが評価され、「ハード末期にもこういうRPGが出ていた」としてPS1の多様性を象徴する一本になった。
  • テイルズ オブ エターニア(2000年11月30日/ナムコ)
    ・“エターニア”を舞台にしたテイルズシリーズ第3作。リニアモーションバトルの完成度が高く、スキットシステムやボイス量も含めて、PS1テイルズの決定版とされることが多い。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • クロックタワーII(クロックタワーGH/廉価版や再評価含む)
    ・実際の初出は1998年だが、2000年前後にかけてホラー需要の高まりとともに再評価され、“サイレントヒルやバイオとは違う怖さ”を求めるユーザーに支持されたシリーズ作。
  • 幻想水滸伝III(※PS2だが、“III発表前後でI・IIの人気が再燃”)
    ・2000年時点ではまだPS1向け新作は出ていないが、IIIの発表前後でPS1用『幻想水滸伝』『幻想水滸伝II』の評価がさらに高まり、中古市場でプレミア化が進んだ時期として語られる。
  • サガ フロンティア2(1999年作品、2000年にじわじわ評価定着)
    ・発売は1999年だが、2000年にかけて“PS1後期RPGを遊び尽くそう”という空気の中でプレイするユーザーが増え、繊細な水彩調グラフィックとシナリオ構成が改めて話題になった。
  • フロントミッション3(1999年作品、PS2時代に遊ばれたタクティカルRPG)
    ・これも発売自体は1999年だが、PS2の下位互換を活かして2000年以降に遊ぶユーザーが多く、ヴァンツァーカスタムとシナリオ分岐の面白さで、PS1末期の“じっくり遊べるSRPG枠”として定着した。

※2000年は純粋な“新作の中堅RPG”よりも、
PS2互換に乗って「少し前のPS1良作を掘り返す」動きが強かったため、
このブロックは“2000年前後に評価が固まったPS1タイトル”という扱いで整理しています。


語り草になった「迷作・実験作」候補

  • チョロQ3(発売は1998年だが、PS oneとのセット需要で再評価)
    ・デフォルメカーでレースをする“チョロQ”シリーズの3作目。2000年頃にはPS oneと一緒に遊ぶライト向けタイトルとして再び脚光を浴び、“PSで気軽に遊ぶソフト”の代表格として語られることが多い。
  • デジモンワールド2(2000年7月27日/バンダイ)
    ・育成要素に加え、3Dダンジョン探索+ターン制バトルを組み合わせたデジモンRPG。テンポやバランスにクセがあり賛否両論だが、“PS1末期の子ども向けRPG”として印象に残っているプレイヤーが多い。
  • その他:PS one向け廉価版・ベスト版の数々
    ・2000年以降は“PlayStation the Best”などの廉価版ラインナップが充実し、名作RPGやアクション、ホラーが低価格で再供給された時期でもある。新作というより“名作再評価の土壌”として機能した点で、PS1の歴史的には重要。

2001年|PS2本格始動の裏で、「安く・たくさん遊べるマシン」へシフトしたPS1

2000年に発売されたプレイステーション2は、2001年になると供給体制も整い、
グランツーリスモ3、メタルギアソリッド2、ファイナルファンタジーXといった
大型タイトルが次々と登場し、完全に“据え置きゲームの主役”になります。

その一方で、初代プレイステーション(+小型モデルのPS one)はすぐに消えたわけではなく、

  • すでにソフト資産が膨大にある
  • 本体価格が安い
  • PS2でそのままPS1ソフトが遊べる

という条件も相まって、

  • 「子ども用・サブ機としてのPS one」
  • 「PS2を買っても、とりあえずPS1ライブラリで遊び続ける」

という立ち位置に、ゆっくりと移っていきます。

小型PS one+ベスト版で、“入門機&図書館”のような存在に

2000年に登場した小型モデル「PS one」は、2001年も継続して販売され、
ポップなデザインと低価格で、“初めてのゲーム機”として選ばれるケースが多くなりました。

同時に、

  • PlayStation the Best などの廉価版シリーズ
  • 過去のヒット作・名作の再廉価発売

がかなり充実していて、

  • 「名作RPGをまとめて安く買える」
  • 「アクション・レース・格闘を1〜2本ずつ揃えても、まだ安い」

という、“ゲームの図書館”的なポジションがより強くなっていきます。
2000年代初頭には、PS1向けタイトルは累計4,000本以上リリースされていたと言われ、
中古市場と組み合わさることで、とにかく“ソフト選びに困らないハード”になっていました。

新作ソフトは「子ども向け・ライセンス物・スポーツ」が中心に

2001年のPS1向け新作ソフトは、前年までと比べると明らかに数が減り、
いわゆる“大作RPG”や“フルプライスの完全新規シリーズ”は、
ほぼPS2側にシフトしていく流れになります。

その代わりに目立ってくるのが、

  • アニメ・映画・特撮のキャラクターゲーム
  • サッカー・野球などのスポーツゲーム
  • パーティゲームやミニゲーム集

といった、“ライト層・低年齢層向け”のタイトル群です。
ハード末期によく見られる現象ですが、
PS1も例外ではなく、「家にあるPSで子どもが遊ぶソフト」を
補うような形でラインナップが続いていきます。

市場としては「ピークを越えたが、まだ十分に息の長いハード」

出荷台数ベースで見ると、2001年時点でもPS1+PS oneはまだ世界的に流通しており、
生産自体が止まるのは2006年3月と、そこからさらに数年先の話になります。

ただし、

  • 新聞・雑誌・ゲーム情報番組の主役は完全にPS2へ
  • 小売店の棚も、徐々に“PS2:PS1=メイン:片隅”という配置へ
  • それでも、廉価版コーナーや中古棚ではPS1が強く残る

という、“目立たないけれど、確実にまだ現役”という状態。

ユーザー目線で言えば、2001年のPS1は

  • 新作を追うハードというより、
  • 「名作RPG・アクションを安く揃えられる、お得なゲームマシン」

へと完全に役割が変わった年、とも言えます。

2001年・PS1を象徴する「代表作」候補

  • ロックマンX6(Mega Man X6)(2001年11月29日/カプコン)
    ・PS2時代に入ってからも、あえてPS1向けにリリースされた2Dアクション。シリーズ第6作として、シビアな難易度と複雑なステージ構成が賛否を呼びつつも、「PS1最後期のロックマン新作」として強く記憶されている。
  • トニー・ホーク プロスケーター3(Tony Hawk’s Pro Skater 3/2001年発売/Neversoft・アクティビジョン)
    ・PS2版と同時期に、PS1版も並行して発売されたスケボーアクション。ポリゴン数やグラフィックは簡略化されつつも、連続トリックとコンボの気持ちよさは健在で、「旧世代機でもまだここまで出来る」と感じさせた一本。
  • Dragon Warrior VII(ドラゴンクエストVII 北米版)(2001年10月/エニックス)
    ・日本では2000年発売のDQ7が、北米向けにタイトルを改めてローカライズされたPS1用RPG。英語圏でのPS1末期RPGとして一定の存在感を持ち、「PS2へ移行しつつも、DQはまだPS1で遊ぶ」という構図を象徴する。
  • 風雨来記(ふううらいき)(2001年/FOG)
    ・バイク旅を題材にしたアドベンチャー。日本各地を巡って写真を撮り、取材を進める“旅ゲー”という独自ジャンルで、「派手さはないが、じっくり浸れる大人向けPS1ソフト」として語られることが多い。

コアユーザー&シリーズファンに刺さった「ヒット作・通好み」候補

  • ワールドサッカー ウイニングイレブン系 2001年版(コナミ)
    ・メインはPS2へシフトしつつも、PS1向けにも最新データを反映したサッカーゲームが継続してリリース。グラフィックは控えめながら、操作感のこなれたサッカーゲームとして、当時のサッカーファンに“まだPS1で十分”と思わせる出来だった。
  • パワフルプロ野球系 2001年版(コナミ)
    ・『実況パワフルプロ野球』シリーズも、PS2版と並行してPS1向けに展開。選手データ更新版としての側面が強いが、「家にあるPS1で最新シーズンを遊ぶ」ニーズをきっちり拾い、スポーツゲーム層を支え続けた。

2002年以降|“主役”から“図書館”へ、静かに幕を閉じていくPS1

2002年に入ると、日本市場での「新作PS1ソフト」は一気に少なくなります。
完全新規の大作RPGやアクションはほぼPS2に移行し、PS1向けに出るのは

  • アニメ・特撮・映画などのキャラクターゲーム
  • サッカー・野球などのスポーツシリーズの継続作
  • 子ども向け・低価格帯のタイトル

といった“ライト層・キッズ向け”が中心、という状況になっていきます。
ゲームショップの棚も、メインはPS2とGBAになり、PS1は徐々に中古コーナーや廉価版コーナーへと追いやられていきました。

それでも、ここからすぐに“終わり”というわけではなく、
PS one(小型モデル)+廉価版ソフトの組み合わせによって、

  • 「はじめての据え置きゲーム機」としての入門機
  • 名作RPGやアクションを安く遊べる“ゲーム図書館”

という、第二の役割を担うようになります。
「PS2を持っているけど、PS1のソフトをまとめ買いして遊び直す」という遊び方も、この頃によく見られたスタイルです。

2003〜2004年頃になると、新作としてのPS1ソフトはごくわずかになり、
海外を含めてもスポーツ系やライセンス物が細々と続く程度になります。
一方で、日本でも「PlayStation the Best」などの廉価版ラインはまだ生きており、
過去のヒット作・名作が低価格で再発売されることで、
「昔遊びそこねたタイトルを埋め合わせるハード」という立ち位置が、より強くなっていきました。

ハードそのものの生産が完全に止まるのは2006年。
発売から実に10年以上、初代PS/PS oneは店頭に並び続けたことになります。
その頃には、家庭用ゲームの主役はすっかりPS2と携帯機(GBA〜DS、PSP)に移っており、
PS1はひっそりと生産終了を迎えた、という形です。

ただ、物語としてはここで終わりではなく、
2000年代後半〜2010年代にかけて、

  • PS3/PSPの「ゲームアーカイブス」でPS1タイトルが配信
  • レトロゲームブームの中で、PS1時代のRPGやホラーが“発掘”される
  • ミニハードや復刻企画で、当時の名作が再び語られる

といった流れが生まれ、
プレイステーション初代は、“当時の最先端ハード”から “一つの時代を象徴するレトロ機”へと、ゆっくり立場を変えていきます。

まとめると、2002年以降のPS1は

  • 新作の主戦場からは完全に退き
  • 安価に名作を遊べる入門機・サブ機として余生を送り
  • 生産終了後は、ダウンロード配信やレトロブームの中で“思い出のハード”として生き続けている
プレイステーションパーフェクトカタログ 下巻

初代PlayStationのハード・周辺機器に加え、発売中期以降のタイトルまでを 写真と共に網羅したデータカタログ本。パッケージ画像や基本情報が一覧できるため、 コレクション整理や当時のラインナップの振り返りにも役立つ資料性の高い一冊です。

価格・在庫・特典内容は変動します。購入の際は各ショップの最新情報をご確認ください。

まとめ:あの日、灰色の小さな箱がくれた「世界が広がる感覚」

初代プレイステーション(PS1)の本体とコントローラーが描かれたイラスト。ゲームディスクやメモリーカード、宝箱や城のアイコン、懐かしいゲームを象徴する要素が周囲に浮かび上がり、PS1が紡いだゲームの記憶と物語を表現。画面右下にはスマホを手にした子どもが登場し、過去と現在をつなぐイメージを演出。

1994年にそっと生まれた初代プレイステーションは、
ただの新しいゲーム機ではありませんでした。

まだ3Dゲームが珍しく、ムービー技術も発展途上だった時代に、
テレビの前でコントローラーを握った私たちは、
自分の部屋に“見たことのない世界”が次々と現れるのを体験しました。

  • 初めてポリゴンの街を歩いた日
  • ボス戦前のムービーに息を飲んだ日
  • メモリーカードの容量を気にしながらセーブした夜
  • 友達の家にソフトを持ち寄って遊んだ休日

どれも特別な出来事ではなく、
だけど今思い返すと、胸の奥が少しだけあたたかくなる瞬間ばかり。
PS1は“生活の中のちょっとした魔法”みたいな存在でした。

時代が進み、PS2が主役になり、
PS1はやがて小さなPS oneへ姿を変え、
棚の片隅へと場所を移していきました。

それでも、ディスクの回転音、
読み込み中に流れるあの白いロゴ、
ランプが点灯する瞬間のわくわくは、
20年以上経った今でも、ふと心に浮かんできます。

ゲームの技術は大きく進化して、
映像も音も、あの頃とは比べものにならないほど豊かになりました。
それでも──
初代プレイステーションの“驚き”や“発見の喜び”は、
何かの拍子にすぐ蘇ってしまうほど、確かにここに残っています。

この年表で振り返った通り、PS1は

  • 90年代のゲーム革命を支え、
  • 2000年代序盤の橋渡し役になり、
  • そして今は“時代を象徴するレトロ機”として愛され続けている

そんな特別なハードです。

もし今、当時のソフトを起動することがあったら──
そこには、かつての自分が見上げた“はじめての冒険”が
きっとそのままの姿で待っているはずです。

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