“絵本の世界”は今も魔法をかけてくる。HDリマスターのLoMを率直に語る
1999年に初登場した『レジェンド オブ マナ』が、2021年のHDリマスターでPS4/Switch/Steamに帰ってきた。背景は高精細に、音楽は下村陽子さん監修の新アレンジとオリジナルを切り替え可能。さらにエンカウントOFFや「リング・リング・ランド」の収録など、今の遊び方に合わせた仕立て直しが入っている。まずここまでは“事実として強い”。
そのうえで――実際に触ると、LoMらしい“余白”もやっぱり残っている。美術と音楽は確かなごちそうだが、テンポや不親切さをどう受け止めるかで評価は割れるはず。本レビューでは忖度なしで、良かった点もモヤっとした点もはっきり書く。なおモバイル(iOS/Android)は2021年12月配信、Xbox Series X|S版は2024年に追加されていて、今は遊ぶ器が広いのも事実だ。
作品概要・基本情報(HDリマスター)

1999年にプレイステーションで発売された『レジェンド オブ マナ』をベースに、2021年6月24日、PS4/Switch/Steam向けにHDリマスターが登場しました。その後も展開は広がり、同年12月にはiOS/Android版、さらに2024年にはXbox Series X|SとPC(Play Anywhere)にも対応し、今では幅広い環境で遊べるタイトルになっています。
本作の特徴は、自分の手で地図を作り上げる「ランドメイク」システム。プレイヤーの選択によって発生するイベントが変わり、自由度の高い物語が展開していきます。これはオリジナル版から続く最大の魅力であり、リマスターでもしっかりと受け継がれています。
HDリマスター版では、背景グラフィックを高解像度化し、音楽は下村陽子さんによる新アレンジとオリジナルの切り替えが可能になりました。さらに戦闘のエンカウントOFF機能、日本では未収録だったミニゲーム「リング・リング・ランド」の追加など、現代のプレイスタイルに合わせた改良も盛り込まれています。
また、ローカルでの2人プレイにも対応。本編の協力プレイに加え、リング・リング・ランドも二人で遊ぶことができ、当時の「並んで遊ぶ」体験を再現できるのも嬉しいポイントです。
HDリマスターで良くなった点
まず目に飛び込んでくるのは、美しく生まれ変わった背景グラフィックです。
オリジナル版からも“絵本のような美しさ”は際立っていましたが、HD化によって細部までくっきり描かれ、草木の色合いや光の揺らぎまで鮮やかに表現されています。
音楽の面でも大きな進化がありました。
下村陽子さん監修の新アレンジは、より厚みのある音作りになっていて、ヘッドホンで聴くと当時以上に没入できます。しかも、ワンタッチでオリジナル音源に切り替え可能。懐かしさを求める時と、新鮮なサウンドで冒険したい時を行き来できるのは嬉しい工夫です。
遊びやすさの面では、戦闘の「エンカウントOFF」が特にありがたい。
ストーリーやイベントを進めたい時、無駄に敵と戦わずテンポよく遊べるのは現代的。逆にじっくりレベル上げをしたい時はONにすればよく、プレイヤーのスタイルに合わせやすくなりました。
さらに、日本版では未収録だった「リング・リング・ランド」が追加されたのも見逃せません。
本編とは違った遊び方ができ、2人協力プレイでも盛り上がれるので、当時遊べなかった人にとっては新鮮な体験になります。
総じて、HDリマスターは“今だからこそ遊びやすい形”に整えられており、昔プレイした人にとっては懐かしさを噛みしめられるし、新規プレイヤーにも手を伸ばしやすい仕上がりになっています。
ゲームシステムと魅力

『レジェンド オブ マナ』の最大の特徴は、やはり「ランドメイク」システムです。
プレイヤーが手に入れたアーティファクトをマップ上に置くことで、新しい街やダンジョンが出現し、そこでイベントが始まる。この独特の仕組みは、一本道のRPGが多かった当時から見てもかなり異色で、いま触っても自由度の高さに驚かされます。
イベントも、ただ進めれば物語が自動的に完結するわけではありません。
プレイヤーがどの場所を優先して進めるか、どのキャラクターに関わるかによって展開が変わり、場合によっては見ないまま終わるエピソードも多い。
それだけに、一度クリアした後でも「次はこのルートを試してみよう」と思わせるリプレイ性が強いのが魅力です。
キャラクターも個性派揃い。
人間だけでなく、獣人や半妖精といったファンタジー色の強い仲間たちが登場し、それぞれの物語が小さな断片のように描かれていきます。
大きな一本のストーリーではなく、パッチワークのように積み重なる群像劇――このスタイルは好き嫌いが分かれる部分でもありますが、「絵本をめくるように読み進める楽しさ」を感じられる人には忘れられない体験になるはずです。
また、武器の種類や技、精霊魔法の組み合わせなど、戦闘の自由度も見逃せません。
派手さは控えめながら、自分好みのスタイルを模索できる余地がしっかり残されていて、じっくりやり込みたいプレイヤーほど深みを実感できます。
当時の評価とリマスター後の反応
1999年のオリジナル版『レジェンド オブ マナ』は、発表当時から強烈なビジュアルで注目を集めました。
手描きの背景は「まるで絵本」「美術品のよう」と称賛され、音楽も下村陽子さんのサウンドトラックが高い評価を受けました。
一方で、「物語が分かりにくい」「イベントのつながりが散漫」という声も少なくなく、RPGとしてのわかりやすさを求めるユーザーからは戸惑いの反応もありました。
結果として、映像美と音楽は絶賛、ストーリー運びは賛否両論という評価に落ち着いた印象です。
2021年のHDリマスター版が出ると、まず話題になったのはグラフィックと音楽の再現度でした。
「原作の雰囲気を壊していない」「懐かしさと新しさのバランスが絶妙」という肯定的な意見が多く寄せられ、当時遊んだ世代からは「待っていた!」という声も目立ちました。
一方で、リマスターであって根本的なゲーム構造は変わっていないため、オリジナルで指摘されていた“自由すぎて散漫”という印象はそのまま残っています。
現代の基準でRPGに慣れている新規プレイヤーからは、「美しいけれど遊びにくい部分もある」との声も上がりました。
とはいえ、リマスター版は「不便な部分は残しつつも、現代的に遊びやすくした絶妙な調整」と評価されることが多く、結果的に「LoMはやっぱり唯一無二の体験」と改めて語られる機会が増えました。
総合レビュー(良い点/惜しい点)

良い点
まず、やはり 背景グラフィックと音楽 の完成度は群を抜いています。
HD化によって細部まで鮮明になった背景は、ただ歩いているだけで心を癒やしてくれるし、下村陽子さんの新アレンジとオリジナルを自由に切り替えられる仕組みもファンにとって大きな魅力です。
また、エンカウントOFF や オートセーブ といった機能は、遊びやすさの面で現代的。
日本未収録だった「リング・リング・ランド」も楽しめるようになり、2人プレイでの協力要素も加わって、オリジナルを超える体験を提供しています。
そして、ランドメイクによる自由度の高さ。
一本道ではなく、自分のペースで世界を形作り、イベントを拾い集めていく進め方は、今なお独創的で唯一無二の遊び心地です。
惜しい点
一方で、ストーリー構成の分かりにくさ は今遊んでも変わりません。
エピソードが断片的に積み重なる群像劇は魅力であると同時に、物語の軸を追いたい人にはわかりにくく、「結局どういう話なの?」と戸惑うプレイヤーも多いです。
また、戦闘バランスやテンポ に古さを感じる部分もあります。
エンカウントOFFが追加されたとはいえ、アクション性はシンプルで、現代のRPGと比べると物足りなさを覚える人もいるでしょう。
さらに、自由度の高さゆえに「何をすればいいのかわからなくなる」場面もあり、特に初見プレイヤーには敷居が高いと感じられるかもしれません。
総評
総じて、『レジェンド オブ マナ HDリマスター』は、オリジナルの強みと弱みをそのまま受け継ぎつつ、遊びやすさを加えた作品といえます。
当時を知るファンには「懐かしさを新しい形で追体験できる一本」として価値が高く、初めて触れる人には「独特の世界観と美術・音楽に浸れる特別なRPG」としておすすめできます。
画像比較(PS版 vs HDリマスター)
『レジェンド オブ マナ』は、PS版の時点で“絵本のように美しい”と評されていました。
しかしHDリマスターで背景がくっきり描かれるようになったことで、光の表現や色の濃淡が際立ち、当時の雰囲気を損なわずに現代的なビジュアルに生まれ変わっています。
特に街やフィールドは、オリジナルでは柔らかいタッチで表現されていた部分が、リマスター版では細部の線や装飾が際立ち、まるでアニメ背景をそのまま動かしているような感覚を与えてくれます。
以下は実際の比較例です。

オリジナル版(PS)

HDリマスター版(2021)
オリジナル版では、背景がやや柔らかいタッチで描かれており、全体的に淡い色合いが特徴的でした。建物や木々も輪郭がなめらかで、絵本の挿絵のような雰囲気を強く感じさせます。
一方でHDリマスター版では、同じ風景でも線や装飾のディテールが際立ち、光と影のコントラストもはっきり表現されています。そのため、単なる懐古ではなく「アニメ背景を動かしているかのような鮮やかさ」に進化しているのが分かります。
この違いは街や建物だけでなく、草花や地面の質感にも現れており、当時の空気感を残しつつも現代的な解像度で再体験できるのが大きな魅力といえるでしょう。
総まとめ
『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ HDリマスター』は、1999年のオリジナル版が持っていた“絵本のような世界観”をそのままに、現代的な遊びやすさをプラスした作品です。
高解像度になった背景は改めてアートとしての存在感を放ち、音楽はアレンジとオリジナルを切り替えられることで新旧のファンを満足させてくれます。戦闘やイベント構成には当時の“クセ”が残っているものの、それも含めて「レジェンド オブ マナらしさ」と受け止められる人には唯一無二の体験になるでしょう。
懐かしさを再確認したい人にも、新しく触れる人にも――20年以上経ってなお色あせない「物語の断片を紡ぐRPG」として、多くのプレイヤーにおすすめできる一本です。