HDリマスターの真価を問う──『テイルズ オブ エクシリア』再評価レビュー
2011年にPS3で登場した『テイルズ オブ エクシリア』が、HDリマスターとして復活。
Switch・PS5・Xbox・PC向けに同時リリースされ、解像度の向上やロード時間短縮など、快適さを重視した再構築が行われています。
ただし、新シナリオや追加キャラといった拡張要素はなく、あくまで“当時の完成度を現代環境で再体験する”ことに焦点を置いたリマスターです。
本記事では全機種版の動作やロードの違い、操作感、演出面を実機目線で検証。
懐かしさ補正を排し、シリーズファンとしての立場から“忖度なし”でその真価を評価します。
※本リマスターは大型の新規シナリオ追加などはありませんが、エンカウントOFF、オートセーブ、グレードショップ初期解放をはじめとする快適化(QOL)改善が多数盛り込まれています(詳細は本文「● リマスター版の改善点・QOL変更点」参照)。
1. 作品概要・リマスターの位置づけ
『テイルズ オブ エクシリア リマスター』は、バンダイナムコエンターテインメントによる人気RPGシリーズのHD再構築版です。
オリジナルは2011年にPlayStation 3向けに発売され、シリーズ15周年記念作品として大きな注目を集めました。
今回はそのリマスター版として、Switch・PS5・Xbox Series X|S版が2025年10月30日、PC(Steam)向けに2025年10月31日に登場。
グラフィック解像度の向上、ロード時間の短縮、UIの最適化などを中心に、現行機でも快適に遊べるよう調整されています。
一方で、新シナリオ・新キャラクター・追加ダンジョンといったゲーム内容の拡張要素は存在せず、
「当時のテイルズ体験をそのまま再現する」ことに焦点を置いた設計です。
そのため本作は、リメイクというより保存的リマスター(Preservation Remaster)といえる立ち位置にあります。
過去作の雰囲気を損なわず、より安定したフレームレートと高画質で楽しみたいファン層に向けた再リリースです。
2. オリジナル版との違い・追加要素

本作『テイルズ オブ エクシリア リマスター』は、2011年にPS3で発売されたオリジナル版を基にした技術的リマスターです。
内容面の改変はなく、シナリオや戦闘システム、キャラクター構成はすべて当時のまま。
“完全新作”ではなく、“当時の完成度を現代機で再体験する”ことを目的とした再構築版です。
● グラフィックとUI
テクスチャがHD化され、全体的に発色が自然になりました。
キャラクターや背景の輪郭がよりくっきりと表示されるようになり、携帯モードでも視認性が高くなっています。
また、フォントやUIサイズも解像度に合わせて再調整され、長時間のプレイでも読みやすい印象です。
ただし、モデリングやアニメーションはオリジナルそのままで、
現代基準の作品と比べると質感や動作にやや“古さ”が残ります。
● 操作性と快適性
基本的なボタン配置やメニュー構造はPS3版と同様で、
シリーズ経験者には馴染みやすい操作感です。
メニューの反応やカメラ移動はやや軽快になり、
テンポ全体が自然に改善されています。
一方で、UI階層の深さや一部挙動のもたつきはそのままで、
“当時の設計をそのまま再現したリマスター”という印象を受けます。
● リマスター版の改善点・QOL変更点
本作は大型の新規シナリオや新キャラクター追加こそありませんが、プレイ体験を快適にする改善が多数入っています。公式の「オリジナル版からの改善・変更点」から、特に重要な項目を抜粋します。
・エンカウント切り替え(ON/OFF)
コンフィグの「エンカウント設定」で野外・ダンジョンの戦闘発生を任意に切替可能。イベント戦は対象外。
・オートセーブ
マップ移動後・イベント終了後などに自動保存。セーブの手間・事故リスクを軽減。
・グレードショップの初期解放+項目追加
1周目開始時から5000GRADE所持で利用可能(引き継ぎ系など一部は1周目不可)。「アイテム50%OFF」など便利項目も追加。購入項目はメニュー→システム→「グレードショップ設定」でON/OFF切替可能。
・通常戦のリトライ
通常バトルのゲームオーバー時にその場でリトライが可能。
・ダッシュ移動の追加
長押し/切替でダッシュに対応。ウィングドブーツ所持でさらに加速。
・目的地/サブイベント/収集物の可視化
目的地は★(残距離表示)、サブイベントは「!」、期間限定は砂時計アイコンで表示。ミニマップ等に未取得の宝箱・探索ポイント・アイフリードの秘宝を表示可能。
・イベントスキップ強化
既読イベントの自動スキップ設定、イベント/ロングチャットの長押しスキップに対応。
・UI/操作の改善
NEW!アイコン、料理効果の常時表示、メニューから直接タイトルに戻る、メニュートップへ一発戻り、ショップ開発のボーナス素材一括選択、装備変更時のステ差分表示、宝箱等の当たり判定緩和 など。
・表示/操作カスタマイズ
マップカメラ距離(近・普・遠)、ボタンカスタマイズ(マップ操作含む)、画面の明るさ(21段階)、全体音量、戦闘/リザルト字幕ON/OFF など。
・テキストの修正と表現調整
誤字脱字の修正や一部表現の変更(例:アタッチメント名の調整)。
・DLC多数収録(※一部除外)
オリジナル版の衣装や便利アイテムなど40種以上を本編収録(有効化は「メニュー>アイテム>EXTRA」から)。
● DLC・追加要素
PS3版で有料配信されていた衣装・称号など一部DLCが初期収録されています。
ただし、全DLCが網羅されているわけではなく、
新しいシナリオや追加ダンジョンなどの拡張要素も存在しません。
そのため「完全版」ではなく、“快適な再体験を目的としたHDリマスター”という位置づけが最も正確でしょう。
このリマスターは派手な新要素こそないものの、
“当時の雰囲気を損なわず快適に遊べる”という点で一定の完成度を備えています。
特にグラフィックの明瞭さやUIの見やすさは、プレイ体験の印象を大きく変える要素といえます。
3. リマスターとしての完成度

『テイルズ オブ エクシリア リマスター』は、グラフィック・UIの最適化を中心とした堅実なリマスターです。
大幅な刷新や新要素の追加こそないものの、「当時の完成度を損なわずに遊びやすくする」という目的は十分に達成されています。
高解像度化によって全体の印象は明るく、UIの読みやすさも向上。
とくに戦闘中の視認性や文字情報の明瞭さは改善されており、
長時間プレイでも疲れにくくなっています。
一方で、キャラクターモデルやアニメーションの古さは隠せず、
演出テンポやカメラワークも当時のまま。
グラフィックの質感やボイス演出などは、
“あくまでPS3世代の作品を今遊びやすくした”という域を出ていません。
総じて、リマスターとしての完成度は高めながら、再定義ではなく再確認の一本。
オリジナルを尊重する方向性に徹しており、
「最新作のような驚き」よりも「当時の良さを静かに味わう」タイプの作品です。
4. 総評(忖度なしスコア)
| 評価項目 | スコア(10点満点) | コメント |
|---|---|---|
| グラフィック | 7.0 | HD化で鮮明になったが、演出やモデルはPS3世代の域を出ない |
| 操作性 | 6.5 | 安定しているがUI階層の深さが古く、テンポにやや難あり |
| ストーリー | 7.5 | 群像劇としての完成度は高く、今でも魅力的に映る |
| サウンド | 7.0 | 音質は明瞭だがリマスター効果は限定的 |
| ボリューム | 7.5 | 本編は長いが、やり込み要素はシリーズ中では少なめ |
| コスパ | 6.0 | 追加要素が少なく、再購入の満足度は人を選ぶ |
総合スコア:6.7/10
🎯 総評コメント

リマスターとしては堅実な仕上がりで、
“当時の空気感を崩さず快適に再現した”という目的は達成されています。
グラフィックの明瞭さやUI調整は確かな進化を感じる一方、
アニメーションやカメラ演出にはPS3世代特有の古さが残ります。
また、他のテイルズ作品と比べるとやり込み要素が控えめで、
称号集めやスキル構築などの奥深さは『ヴェスペリア』や『ベルセリア』ほどの密度ではありません。
本作は“派手な進化”よりも“原点の再確認”に価値を見出せる一本です。
シリーズ未経験者には入門向け、往年のファンには懐かしさを味わう一本。
ただし、“完全版”を期待する層にはやや物足りなさも残ります。
5. 購入をおすすめできる人・控えた方が良い人
● 購入をおすすめできる人
- テイルズシリーズ未プレイの人
物語の完成度が高く、キャラクター同士の掛け合いや世界観の深さを通して、
シリーズの魅力を体験するには最適な入門作。
戦闘システムも複雑すぎず、RPG初心者でも遊びやすい構成です。 - オリジナル版を懐かしく再体験したい人
解像度の向上やUIの最適化によって、当時よりも快適に遊べる環境。
“思い出を壊さず再現したリマスター”という点では満足度が高い。 - 携帯モードでじっくりRPGを進めたい人
Switch版の携帯プレイは安定しており、
通勤・通学などのスキマ時間にも進めやすい設計。
● 購入を控えた方が良い人
- 新シナリオや新要素を期待している人
リメイクではなく、あくまで解像度アップ中心の再リリース。
「物語や戦闘の“大型追加コンテンツ”はありません
(※ただし、エンカウント切替・オートセーブ・グレードショップ初期解放などQOL改善は多数)。 - 近年のテイルズ作品(例:ベルセリア、アライズ)を基準に遊びたい人
操作テンポ・演出・グラフィックのいずれも世代差が明確。
現代RPGのスピード感を求める人には物足りなく映る可能性があります。 - やり込み要素の豊富さを重視する人
サブイベントや隠し要素は存在しますが、
シリーズ全体で見ると“遊び尽くすほどのボリューム”ではありません。
攻略的な深掘りより、物語を楽しむ方向けです。
シリーズ屈指の完成度を誇った当時の名作を、
現代の環境でストレスなく再体験できるという点では確かな価値がある。
ただし、“過去作の最適化”という位置づけを理解した上でプレイすることが、
このリマスターを最も楽しむためのポイントと言えるでしょう。
6. まとめ|懐かしさと快適さのバランスで再評価された一本
『テイルズ オブ エクシリア リマスター』は、
シリーズの中でも群像劇としての完成度が高く、
“原点の良さ”をもう一度確かめるような作品です。
リマスターとしての出来は堅実で、
高解像度化やUI改善などによって現代機で快適に遊べるようになりました。
一方で、新要素や大規模なリメイク要素はなく、
当時の設計をそのまま味わうスタンスの作品です。
華やかさよりも、じっくり腰を据えて物語を追うRPGらしさを求める人には最適。
逆に、新しい挑戦や刺激を期待する層には少し物足りないかもしれません。
“懐かしさと快適さの中間点”に立つ一本として、
シリーズの節目を静かに彩るリマスターといえるでしょう。
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