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いのちのつかいかた(The Use of Life)正式版レビュー|3年半のEAを経て“完成”したRPGは本当に面白い? 良かった点・不満点を忖度なしで評価

いのちのつかいかた(The Use of Life)正式版とは?3年半の早期アクセスを経て“ついに完成した理由”

2025年11月26日、PC向けRPG「いのちのつかいかた(The Use of Life)」がついに正式版へ到達しました。
2022年から約3年半の早期アクセス(EA)開発を続け、多数の章追加・シナリオ強化・戦闘調整を経て、ついに“すべてのエンディング”と“実績”が実装され、作品としての完成に至ったタイトルです。

ジャンルは「ゲームブック×JRPG×ターン制バトル」。
選択肢によって物語が大きく変化し、主人公ゴーシュの“いのちのつかいかた”=価値観の違いによって複数の結末へ向かう構造が最大の特徴。
善悪の二項対立ではなく、プレイヤーがどんな執着を抱き、どんな生き方を選ぶのかによって物語が揺らぐ――という独自性が、Steamレビューでも長年高評価を維持し続けている理由になっています。

本記事では、発売日にプレイを開始した立場として
・良かった点
・気になった点
・おすすめできる人/できない人
忖度なしでまとめます。

いのちのつかいかた(The Use of Life)作品概要

  • タイトル
    いのちのつかいかた(The Use of Life)
  • 開発
    だらねこげーむず(日本の個人開発者)
  • 販売
    PLAYISM
  • プラットフォーム
    PC(Steam)
  • リリース状況
    ・2022年5月21日:Steamにて早期アクセス配信開始
    ・約3年半のアップデートを経て、2025年11月26日に正式版(1.0)リリース
    ・正式版で「すべてのエンディング」+「実績」が実装され物語が完結
  • ジャンル
    ゲームブック風・アドベンチャーブック風 JRPG
  • 物語の特徴
    ・主人公:ウサギ族の青年ゴーシュ
    ・行動選択に応じてゴーシュの“執着”が変化
    ・「善/悪」ではなく「どのように生きたか」によって複数の結末へ分岐
  • ゲームシステム
    ・ゲームブック風テキストによる分岐型ストーリーパート
    ・ターン制コマンドバトル+QTEによる行動演出
    ・イベント解決も選択・判定で展開が変化
    ・キャラ育成・ビルド要素あり(能力値振り・クラス選択など)
  • 価格
    税込 2,380円(Steamストア)
  • 対応言語
    日本語/英語/簡体字/繁体字
  • 評価(発売時点)
    ・Steamの全期間評価:非常に好評
    ・正式版リリース後も高評価維持

本音で述べる良かった点(プレイして強く感じた魅力)

「いのちのつかいかた」のイベントシーン。砂漠の岩場で寄り添うキャラクターが満天の星空を見上げる感動的なストーリーパートのワンカット

1)“選択の重み”が物語とゲームプレイの両方に反映される

選択肢で物語が変わるRPGは珍しくありませんが、本作は「選んだ行動の影響」が物語だけでなくイベント成功率・キャラの育成方向・戦闘スタイルにまで連動しているのが特長です。
「ここで助ける/見捨てる」「挑む/逃げる」「譲る/奪う」といった行動の積み重ねが、能力値や“執着”に反映され、その後の展開や戦闘の有利不利までも変えていきます。
ストーリーとゲーム性が切り離されず、選択の意味が最後まで生き続ける感覚が強いです。

2)ターン制コマンドバトルが“読ませる”テンポを持っている

一見クラシックなターン制ですが、味方・敵の行動選択が交互に処理されることで、読み合い要素が自然に生まれます。
QTEによるアクション入力やスキルの発動タイミングも絡み、テンポの良さと緊張感を両立
イベントシーンと戦闘が断絶せず、物語の緊張感を保ちながらプレイできるのは大きな魅力です。

3)“どのキャラにも正解がある”マルチエンディング思想

善悪やハッピー/バッドの二項対立ではなく、どのエンディングにも「その生き方の結末」があるという思想が貫かれています。
「勝てば良い」「救えば良い」といった単純な価値観が通用せず、最後に振り返った時に“自分はどう生きたか”を問われる構造になっているのが印象的。
プレイヤーの価値観によって“感情の揺れ方”が大きく変わるため、SNSでも「他の人の感想を見ても結末を知った気にはならない」と言われるのも納得できます。

4)選択・育成・戦闘がすべて“自己責任で楽しい”ように設計されている

本作は「正しい育成ルート」に誘導されることがほとんどありません。
能力値の振り方・クラス・スキル構成を、プレイヤーが手探りで最適化していく方式で、失敗もまた物語の一部として楽しめるデザイン
良い意味で「整えられすぎていない」ため、インディーRPG好き・TRPG好きには刺さりやすい感触です。

5)“値段以上に遊べる密度”がはっきり体感できる

2,380円という価格に対し、
・複数ルート
・複数エンディング
・ビルドの試行錯誤
・取り逃がしが気になるイベント
など、周回プレイへの誘導が自然に働く作りになっています。
1周で語りきれないゲームデザインなので、「1回クリアして終わり」よりも「考え続けたくなる」タイプの体験に近いです。

気になった点・合わない可能性があるポイント

1)“自由度”と“自己責任”の設計は、人によって刺さらない

本作は選択肢や育成方針に正解を用意しない設計になっています。
これは大きな魅力でもありますが、裏返すとガイド不足と感じる人が一定数いるのも事実です。
どの能力を伸ばすべきか、どのスキルが強いのか、どのイベントを優先するべきか──
ゲーム側から明確な誘導がないため、手探りの探索が苦手なプレイヤーにはストレスにつながりやすいです。

2)読み物重視なので“テンポ良く遊びたい人”には不向き

本作はゲームブック風のため、テキストを読む時間の比率が高いです。
「戦闘のテンポは良いが、イベントはしっかり読ませる」という構造のため、
・短時間でサクッと遊びたい
・画面が派手に動くタイプが好き
というプレイヤーだと、最初の数時間で合う/合わないがはっきり出やすいです。

3)エンディングを見るには“1周で消化しきれない”仕様

分岐が多く、1周で物語の全貌を把握できる設計ではありません。
ルートによって見られるイベント・出会うキャラ・戦闘の展開などが変化し、さらに「取り逃しがそのまま後悔になる」タイプの構造です。
これはハマる人には強烈に刺さりますが、
「全部見ないと気が済まない」「取り逃しを嫌う」タイプのプレイヤーだと負担になりやすいです。

4)難度は“ビルド理解によって大きく変わる”

序盤は比較的やさしめですが、
・育成の方向性
・スキル構成
・相性の把握
によって中盤以降の難度が大きく上下します。
「好きなように育てたら詰まった」というケースもあり、行き当たりばったり育成はややリスクあり
詰まった時の難度調整要素はありますが、プレイヤーが調整を能動的に使う必要があるため、完全な救済とは言い切れません。

5)“感情移入の方向性”が人によって異なるシナリオ構造

主人公や出会うキャラが「善悪ではなく、生き方の違い」を体現する物語なので、
・共感できるキャラクター
・理解しづらいキャラクター
が出やすいタイプです。
全員が“好きになれるキャラ”ではないぶん、誰に感情移入し、どんな選択をするかで評価が変動しやすいと感じました。

➤ 面白さのピークと“失速しやすい部分”の正直な印象

「いのちのつかいかた」のバトル画面。荒野で刀を構えるキャラクターが赤い獣のような巨大モンスターに攻撃するターン制コマンドバトルシーン

『ザ・ユース・オブ・ライフ(The Use of Life)』の面白さが最高潮に達するのは、序盤~中盤にかけて「選択によって人生が変わっていく」ことを最も実感できるタイミングです。
戦闘の難易度・育成の成長実感・分岐のドキドキ感が同時に噛み合い、たった1つの判断で“主人公の未来が分岐してしまう”という緊張感がプレイヤーの没入度を一気に高めます。
“代償を払うリスク”を承知で強さを手に入れるか、それとも安全を取って平穏ルートに進むか──このジレンマが最も強く感じられるあたりが、本作のピークと言えるはずです。

一方で、失速しやすいと感じるのは中盤以降の“ビルド研究フェーズ”に突入したタイミング。
育成ルートが広がり、自由度が高くなる一方で、明確な正解が存在しないため、
「どのスキルを伸ばせば良いのかわからない」
「どの程度リスクを負うべきか判断しづらい」
と迷いやすく、攻略情報がほしくなる人も一定数いるはずです。
また、バトルが慣れてくると“ビルドや装備構成が固まった瞬間に一気に楽になる”場合もあり、ピーク時の緊張感がやや薄れる局面もあります。

ただし、ここで“失速=つまらなくなる”という意味ではありません。
このフェーズを乗り越えて進んだルートによって、後半のドラマやエンディングの重みが変化するため、
「迷いながら、自分だけの人生観を形成していく時間」が本作の本質でもあります。

総評として、
・序盤~中盤:選択と成長が噛み合い一気にハマるピーク
・中盤:自由度と試行錯誤の幅が広がり、人によっては失速を感じる
・後半:選んだ結果の“回収”がドラマとして刺さる
という構造になっており、テンポ変化の理由と狙いがゲーム性とテーマに完全一致しているのが特徴です。

忖度なしスコア

『いのちのつかいかた(The Use of Life)』は、
“広く浅く楽しんでもらうRPG”ではなく、
「選択の重み」「生き方の結果」をじっくり味わう、かなり尖ったインディーRPG という立ち位置の作品です。

ゲームブック風のテキスト進行と、ターン制+QTE要素を盛り込んだバトル、
そして“執着”によって変わるマルチエンドという構造は、
ハマる人には強烈に刺さる一方、ライト層には最初からかなり人を選びます。

その前提で、つぶログ基準の10点満点評価はこんなイメージです。

ゲーム性8.5 / 10
シナリオ・世界観8.0 / 10
グラフィック7.0 / 10
サウンド・BGM7.5 / 10
操作性・快適さ7.0 / 10
ボリューム・やり込み8.5 / 10
コスパ(価格に対する満足度)8.5 / 10
総合スコア8.0 / 10

総評|“人生の選択”をゲームとして味わいたい人向けの一本

焚き火の前に座る獣人のようなキャラクターを描いた「いのちのつかいかた」のキービジュアル。暗い森の中で炎を見つめる孤独な雰囲気の公式アート

ザ・ユース・オブ・ライフ(The Use of Life/いのちのつかいかた)は、
「派手さ」や「キャラ人気」で押し切るタイプのRPGではありません。

・選択のたびにじわっと背筋が伸びる感覚
・「あの時こうしていれば…」という後悔まで含めて一つの物語
・ビルドや行動の組み合わせで、プレイヤーごとに“自分だけのゴーシュ”が出来上がっていく

こういう“地味だけど噛めば噛むほどおいしいインディーRPG”が好きなら、かなり高確率で刺さると思います。

逆に言うと、

・一本道でサクッとクリアしたい人
・親切なガイドに従って、あまり悩まずに最善手を選びたい人
・ビジュアルや派手な演出を最優先したい人

には、正直あまりおすすめしません。
テキスト量も多く、プレイヤー側に“考える責任”をかなり預けてくるゲームなので、ライト層にはとっつきづらいはずです。

ただ、だからこそ

「ちょっと変わったRPGを遊びたい」
「自分の選んだ“生き方の結果”を、ゲームの中でちゃんと突きつけられたい」

という人にとっては、2,380円の元は十分すぎるほど取れる一本です。

PC(Steam)専用というハードルはありますが、
・インディーRPGが好き
・ゲームブックやTRPGの空気感が好き
・マルチエンド作品をじっくり噛みしめたい

このあたりに一つでも当てはまるなら、
“自分のタイミングでじっくり向き合う価値がある作品” として、自信を持って候補に入れていいタイトルだと思います。

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