TikTokで相次ぐ「収益化停止」騒動とは?2025年12月に何が起きたのか

2025年12月上旬ごろから、TikTokで収益化していた日本人クリエイターの間で「突然、収益化が止まった」「クリエイター報酬プログラムから外された」といった報告が一気に増えました。元ラグビー選手のノッコン寺田さんをはじめ、芸人・インフルエンサー・日常系クリエイターなど、ジャンルを問わず複数のアカウントが収益化剥奪を訴えており、SNS上では不安と戸惑いの声が広がっています。
こうした中で12月11日、TikTok Japanは公式Xアカウントで声明を発表し、12月4日〜10日にかけて収益化プログラム「Creator Rewards Program」にシステムエラーが発生し、一部の動画で報酬が正しく支払われない事象があったことを公表しました。現在はエラーを修正済みで、影響を受けた動画について順次審査と対応を進めていると説明し、クリエイターに対して謝罪しています。
一方で、「なぜ自分のアカウントだけ収益化が外されたのか」「日本人クリエイターが狙い撃ちにされているのでは」といった憶測も飛び交っています。しかし、現時点でTikTok公式が「日本人のみを対象に収益化停止を行った」と明言した事実はなく、多くのケースでは停止理由が具体的に示されていないことが、クリエイターの不信感を高めている状況です。
この記事では、2025年12月時点で判明している「公式に説明されている事実」と、「ネット上で語られている仮説・憶測」をきちんと分けながら、TikTokの収益化停止問題を整理していきます。あわせて、今後同じようなトラブルに巻き込まれた場合にクリエイター側が取れる対策についてもまとめていきます。
2025年12月のTikTok収益化トラブルを時系列で整理
今回の騒動は、2025年12月7日〜10日ごろにかけて、日本人TikTokerの間で「収益化が突然止まった」「Creator Rewards Programから外された」といった投稿が一気に増えたことから一気に可視化されました。X(旧Twitter)やYahoo!リアルタイム検索でも、「収益剥奪」「収益化停止」といった関連ワードが急上昇し、情報が錯綜する状況になっています。
一方でここ数カ月〜1年ほど前から、海外のクリエイターの間でも「Creator Rewards Programの報酬が突然減った・止まった」といった声がSNSやフォーラムでたびたび話題になってきました。
そして12月11日、TikTok Japanが公式Xで「Creator Rewards Programに関するシステムエラー」が12月4日〜10日にかけて発生していたと公表し、一部の動画で報酬が正しく支払われていなかったことを認めました。今回の日本人クリエイターの収益化停止ラッシュは、この期間の不具合と重なっている点が特徴です。
どんなクリエイターが収益化停止の影響を受けたのか
報道やネット上の証言を整理すると、今回影響を受けたのは、特定ジャンルに偏った一部のクリエイターではなく、かなり幅広い層です。家族の日常を発信するアカウント、大学生あるあるを投稿する芸人、金融系インフルエンサー、日常寸劇系クリエイターなど、ジャンルもフォロワー規模もさまざまなアカウントが「収益化剥奪」「報酬ゼロ」を報告しています。
特に注目されたのが、元ラグビー選手でTikTokを主な収入源のひとつとしていたノッコン寺田さんのケースです。夫婦アカウントと個人アカウントを合わせて、11月には10万円超の報酬があったものの、12月分が「ゼロ」になったと伝えられており、生活への影響を率直に語っています。同様に、月10万円以上の収益を安定して得ていたクリエイターが、一夜にして収入源を失うケースも複数報告されています。
また、これまで著作権グレーなコンテンツに頼らず、オリジナル動画を投稿していたクリエイターにも影響が出ているという証言もあり、「何がNGなのか分からない」という声が不安を増幅させている状況です。
TikTok公式が説明する「Creator Rewards Program」のシステムエラー
TikTok Japanは12月11日、公式Xアカウントで「お知らせ」と題した文書を公開し、12月4日(木)〜10日(水)にかけて、収益化プログラム「Creator Rewards Program」のシステムエラーにより、一部クリエイターの動画で報酬が正しく支払われない事象が発生したと説明しました。
声明によると、エラー自体はすでに修正済みであり、影響を受けた動画については順次「適切な審査と対応」を進めているとされています。あわせて、クリエイターに対して「ご迷惑とご心配をおかけしましたことをお詫び申し上げます」と謝罪し、今後も安心して利用できる環境づくりに努めるとコメントしています。
一方で、この声明では「どのような基準で収益が停止されたのか」「どの範囲のクリエイターが影響を受けたのか」といった点は具体的に示されていません。そのため、現場のクリエイター側からは「本当にシステムエラーだけが原因なのか」「自分のアカウントが永続的に収益化不可になっていないか」など、疑問や不安の声が残っているのが実情です。
「日本人狙い撃ち」「政治的報復」説は事実なのか?
今回の問題をめぐっては、一部メディアや個人ブログで「日中関係の悪化に対する政治的な報復ではないか」「日本人クリエイターだけが狙い撃ちにされているのでは」といった強い表現も見られます。実際、日本人クリエイターの収益化停止報告が短期間に集中したことで、こうした見方に注目が集まりました。
ただし、現時点でTikTokや親会社側が「日本を特別扱いした」「政治的な理由で収益化を止めた」と公式に認めた事実はありません。報道や個人の分析記事でも、政治的背景との関連はあくまで「可能性のひとつ」として語られている段階であり、決定的な証拠が示されているわけではない点には注意が必要です。
また、海外でもCreator Rewards Programをめぐる不満や「理由が不明なまま収益がカットされた」という声は以前から存在しており、日本だけに特有の問題とは言い切れない面もあります。
そのため、この記事では「日本人だけが意図的に狙われた」といった断定は行わず、「日本のクリエイターの間で収益化停止の報告が短期間に集中した」という状況と、「政治的な要因を指摘する見方もあるが、現時点ではあくまで仮説段階にとどまっている」という整理にとどめます。
Creator Rewards ProgramとTikTok収益化の仕組み
TikTokのCreator Rewards Program(クリエイター報酬プログラム)は、一定の条件を満たしたクリエイターが、再生回数や視聴維持率などに応じて報酬を受け取れる制度です。公式ヘルプによると、高品質なオリジナルコンテンツを投稿することを前提に、動画の解像度や視聴時間、エンゲージメントなど複数の指標が報酬計算に用いられます。
日本語の解説記事やTikTok公式の案内を総合すると、収益化の対象になるためには、一定以上のフォロワー数や視聴回数、年齢や居住地域などの条件を満たし、コミュニティガイドラインや利用規約に違反していないことが求められます。また、著作権で保護された音源や映像を無断で使った動画、AI生成コンテンツの扱いなども審査対象となり、オリジナリティと権利関係のクリアさがより重要になっているとされています。
今回のように「システムエラー」が発生した場合であっても、最終的にどの動画が支払い対象となるかの判断はTikTok側の審査に委ねられており、プログラムの仕組み自体がクリエイターからは見えにくい、いわゆる「ブラックボックス」状態であることが不安を大きくしている要因のひとつです。
クリエイターが今できる5つの対策

今回の騒動は、個々のクリエイターがコントロールできないシステム側の問題も含んでいますが、「何もできない」わけではありません。現時点で一般的に有効と考えられる対策を、5つの観点から整理します。
1. コミュニティガイドラインと収益条件の再確認
まずは、TikTok公式ヘルプに掲載されているコミュニティガイドラインやCreator Rewards Programの条件を改めてチェックし、自分の動画にグレーゾーンがないかを確認することが重要です。特に、著作権コンテンツの利用、誤解を招きやすい表現、過度なセンシティブ表現などは、収益化審査に影響する可能性があります。
2. 公式サポートへの問い合わせ・ログの保存
収益化が停止されたり、報酬額に不自然な変動があった場合は、アプリ内からフィードバックやサポートへの問い合わせを行いましょう。その際、いつから収益が止まっているのか、どの動画でどのような変化があったのかをスクリーンショットやメモで記録しておくと、後から状況を説明しやすくなります。
3. コンテンツのオリジナリティと権利関係の強化
音源・映像・画像などは、できる限り自作または権利的に問題のない素材を使う方が安全です。トレンド音源や他人のコンテンツに大きく依存したスタイルから、オリジナル要素を増やしたスタイルに少しずつシフトしていくことで、アルゴリズムや審査基準の変化に対する耐性も高まります。
4. 収益源をTikTokに一本化しない
今回の件で浮き彫りになったのが、「プラットフォーム依存のリスク」です。YouTubeやInstagram、X、そしてブログ・メルマガなど、自分がコントロールできる“土台”を複数持っておくことは、クリエイターとしてのリスクヘッジになります。TikTokの伸びを活かしつつ、その流れを他の媒体にも流す導線作りを意識しておくと安心です。
5. 情報の「一次ソース」を確認する習慣をつける
今回のように情報が錯綜している状況では、SNSのタイムラインだけを追っていると、不安だけが膨らみやすくなります。TikTok公式の発表や、信頼できるニュースメディアの報道、公式ヘルプページなど、一次情報に近いソースをチェックする習慣をつけておくと、冷静な判断につながります。
まとめ:事実と憶測を分けて、長期的な対策を考える時期
2025年12月のTikTok収益化トラブルでは、日本人クリエイターを中心に「収益化停止」「報酬ゼロ」といった深刻な影響が短期間に集中して発生しました。その背景には、Creator Rewards Programのシステムエラーが一因として公式に認められていますが、個々のアカウントがどのような基準で影響を受けたのかまでは明らかになっていません。
同時に、「政治的な報復ではないか」「日本人だけが狙い撃ちにされているのでは」といった強い言葉も飛び交っています。しかし、こうした見方は現時点ではあくまで仮説の域を出ておらず、公式に裏付けられた事実ではありません。だからこそ、感情的な情報拡散に飲み込まれず、「分かっていること」と「まだ分からないこと」を切り分けて受け止める姿勢が重要になります。
TikTokは依然として大きな影響力を持つプラットフォームであり、今回のようなトラブルを経てシステムやルールが改善されていく可能性もあります。一方で、プラットフォームに収益のすべてを依存するリスクも改めて浮き彫りになりました。短期的には、ガイドラインや収益条件の再確認、公式サポートへの問い合わせといった「守り」の対応を行いつつ、中長期的にはYouTubeやブログなど別の収益基盤を育てていくことが、クリエイターにとっての現実的な生存戦略と言えそうです。