
「実は作曲家」所ジョージ──木梨憲武にいじられるほど知られていない音楽の顔
最近、木梨憲武さんとの共演を通して「所ジョージって曲も作ってるんだ!」と改めて注目される場面が増えています。バラエティや司会の印象が強い所さんですが、実はデビュー当時から数多くの楽曲を手がけてきたシンガーソングライターでもあります。にもかかわらず、その活動は一般にはあまり知られておらず、時にはノリさんにネタにされるほど。自由なスタイルで音楽を作り続けてきた“作曲家・所ジョージ”の歩みを振り返りながら、その魅力を改めて考察してみましょう。
デビュー当時からの作曲活動
所ジョージさんが音楽の世界に飛び込んだのは、1977年。
デビュー・シングルは 「ギャンブル狂騒曲/組曲:冬の情景」。作詞・作曲はもちろん本人。遊び心たっぷりの言葉運びと、耳に残るメロディで、“バラエティの人”とは違う顔を最初から見せていました。発売日は 1977年7月29日 とされ、音源配信ページやディスコグラフィの記録にも残っています。
同じ年の冬には、2枚目のシングル 「ムーン・ナイト・セレナーデ(月光夜曲)」 をリリース。こちらも本人のオリジナルで、のちの所さんらしい“肩の力の抜けたロマンチシズム”が顔をのぞかせます。リリース日は 1977年11月25日 の記録が確認できます。
レコード会社は当時の キャニオン・レコード。同年12月には、デビュー期を凝縮したアルバム 『ジョージ・ファースト 現金に手を出せ!!』 を発表。タイトルからして所さん節ですが、音作りは意外と骨太。バンドの鳴りに言葉遊びを乗せる“所流ソングライティング”の型が、この頃にはもう出来上がりつつあります。
以降もペースを崩さず、
1978年「夢みるジョンジョロリン」、1979年「Do Do Do」(テレビ東京『ドバドバ大爆弾』OP)や「TOKYOナイト&デイ」(映画『下落合焼とりムービー』主題歌)、同年「寿司屋」など、自作曲を次々と発表。テレビや映画の現場と自然につながり、タレント活動と作曲活動が“地続き”で回っていきます。
そして大事なのは、“今も作っている”こと。
所さん名義の作曲作品は歌詞サイトのデータだけでも 200曲超 に及び、近年は 「世田谷ベース」 の動画でも新曲やストック曲をライトに披露。スタジオよりもガレージが似合う—そんな距離感で、日常の延長として曲を紡いでいるのが所さんらしさです。
きっちり“作品”として固めるより、思いつきを遊びながら形にしていく。
その軽やかさが、所ジョージの作曲の芯なんだと思います。
(あまり知られていない)提供曲・コラボの実例
「所さんって、実は“いろんな人に曲を渡してる”んだ…」と気づくと、見え方がガラッと変わります。ここ数年だけでも、こんな広がりがありました。
1) 青山 新「TOKYOメトロブルース」
木梨憲武さんがプロデュース、作詞・作曲は所ジョージ。TBSラジオ『木梨の会。』発の流れから正式リリースされ、USEN演歌・歌謡のリクエストランキング1位にも。ノリさん&所さんのコーラス参加も“らしい”余韻。
2) 新浜レオン「全てあげよう」
若手歌手へ作詞・作曲で提供。カップリング曲「月あかり」も所さん作詞・作曲という“W所”。演歌・歌謡シーンでも所メロディが息づいているのが面白い。
3) 田中あいみ「ドアを開けてみた with 木梨憲武」
作詞・作曲:所ジョージ。タイトルどおりノリさんとの“デュエット仕様”。同時期に「仁川エアポート with 所ジョージ」や、2025年には「NAZO with 木梨憲武・所ジョージ」もリリースされ、三者の関係性が音で可視化された時期。
4) 荻野目洋子「Let's Shake」
作詞・作曲:所ジョージ/プロデュース:木梨憲武。“ダンシング・ヒーロー”世代の耳にもスッと入る新ダンスチューンで、レーベルの公式情報でも所×木梨の布陣が明記。
5) 松本伊代「ちょっと素敵なジャーニー」
作詞・作曲:所ジョージ、プロデュース:木梨憲武・矢吹俊郎。“伊代はまだ16歳”からの時の流れを愛おしく振り返る歌詞が刺さる。TuneCoreやご本人SNSでもクレジット確認できます。
6) ヒロミ「多摩地域南部の唄」
ヒロミさんの地元・八王子をテーマに、作詞・作曲:所ジョージ。“多摩あるある”をユーモアで包んだ、所さんならではの地元賛歌。配信ストアの解説にも所クレジット。
7) 岩井ジョニ男「ジョニー・A・グッド」
お笑い芸人・岩井ジョニ男さんのソロ曲。作詞・作曲:所ジョージで、制作エピソードも各所で話題に。オフィシャル発表・配信情報・歌詞サイトで裏取り可能。
8) AkaTake「恋人になる3日前のお話し」
武田雛歩×akaのユニット曲。作詞・作曲:所ジョージ/プロデュース:木梨憲武&矢吹俊郎。PR TIMESと配信ページでクレジットが一致。
どの曲にも共通するのは、“肩の力を抜いた言葉遊び”と“生活の温度”。
派手なバズの陰で淡々と“曲が人に届いていく”感じが、いかにも所さんです。木梨さんが時にいじり、時に背中を押す――この関係性が、ここ数年のコラボ群を面白くしています。
木梨憲武さんとの近年の関係性と化学反応
ここ数年の所ジョージさんは、“木梨さんと組むとギアが一段上がる”。
印象的なのは、TBSラジオ『土曜朝6時 木梨の会。』での雑談や思いつきが、そのまま歌になる制作スピード感です。たとえば新浜レオンさんの「全てあげよう」。生放送中のひとことをきっかけに、数日で所さんが詞曲を書き上げ、木梨さんがプロデュース。実際にMV公開やメディア露出まで駆け上がりました。この“番組→即曲化”の導線は、二人ならではの化学反応です。
この“ラジオ発→曲化”は他の歌手にも広がっています。
青山 新「TOKYOメトロブルース」は“木梨プロデュース × 所ジョージ作詞作曲”で、やはり『木梨の会。』発の流れから正式リリースへ。演歌・歌謡の土台に都会的なムードが乗って、新鮮な聴き心地になりました。
田中あいみさんの「ドアを開けてみた with 木梨憲武」も同番組がきっかけ。
所さんが作詞・作曲、木梨さんがコーラスで参加し、のちに続編的なコラボ「NAZO with 木梨憲武・所ジョージ」へと展開。MVには二人も出演し、遊び心満載の“所×木梨ワールド”が可視化されました。
さらに、80’sアイドル世代との化学反応も面白い。
**荻野目洋子「Let's Shake」**は“作詞/作曲:所ジョージ、プロデュース:木梨憲武”という布陣で、ダンス・ポップの鮮度を引き上げました。**松本伊代「ちょっと素敵なジャーニー」**は「センチメンタル・ジャーニー」へのオマージュを所さんが詞曲で受け止め、木梨さん&矢吹俊郎さんがプロデュース。往年のファンにも届く“懐かしさ×今”の仕立てです。
“地元×ユーモア”路線も二人の真骨頂。
ヒロミ「多摩地域南部の唄」は、所さんが作詞作曲し、木梨さん&矢吹俊郎さんがプロデュース。八王子という具体的な土地感覚を、所さんらしい言葉遊びでポップに包み、耳に残るご当地ソングへ。
お笑い界にも波及。
岩井ジョニ男「ジョニー・A・グッド」は所さんの作詞・作曲で、舞台裏エピソードまで含めて“ノリで曲が転がり出て完成する”スピード感が話題に。後日談を含むインタビューやニュースでも、所さんから楽曲が届いた経緯が語られています。
プロジェクトは女性ユニットにも拡張。
AkaTake「恋人になる3日前のお話し」は、所さん作詞作曲、木梨さん&矢吹俊郎さんプロデュースの布陣。若い声に“所メロディ”を通すと、軽やかな言葉の転がりがより映えるのが分かります。
2025年に入ってからも勢いは落ちません。
田中あいみさんの「NAZO with 木梨憲武・所ジョージ」、新浜レオンさんの「炎のkiss」(コラボ第2弾)、さらに山西アカリさんの「道しるべ」など、所=詞曲/木梨=プロデュースのラインが次々に可視化。二人の“遊び”は、もう完全に“仕組み”として機能しています。
まとめ:二人の“遊び”は、最短距離で作品になる
- 起点:ラジオや雑談の“思いつき”
- 加速:所さんがすぐに曲を仕立てる
- 着地:木梨さんがプロデュースで世に出す
この最短ルートが確立されたことで、ジャンルや世代をまたいだ曲が量産されました。
“ノリで始まるのに、仕上がりはちゃんと良い”。—これこそが、近年の所ジョージ×木梨憲武の化学反応だと思います。
考察:所さんにとって“作曲”とは?
所ジョージさんの曲づくりは、職人的に机に向かうというより、
生活の呼吸の中で自然に湧いてきたフレーズをそのまま形にする——そんな軽やかさがあります。
- 日常の延長線
何気ない会話やラジオのワンフレーズがそのまま歌詞の核になる。
「おもしろい」「言葉が転がる」瞬間を逃さず、即メロディにのせる速さが持ち味。 - 言葉遊びと温度感
派手な比喩より、“暮らしの温度”が伝わる語彙を選ぶ。
くすっと笑える言い回しなのに、芯に小さな真実がある。 - コラボで最短距離
木梨憲武さんと組むと、雑談→曲→配信・MVが最短で繋がる。
作品化のスピードが速いからこそ、アイドル/演歌/ご当地ソングまでジャンル横断が自然に起きる。 - “作品”より“遊び”
完璧主義で磨き上げるより、“いま楽しい”を優先する姿勢。
その軽さが結果的に普遍性を生み、世代をまたいで届いている。
要するに、“作曲=日々の楽しみを他人と共有する方法”。
そこにプロデューサーとしての木梨さんが寄り添い、楽しみを大勢の前に運んでいく——この往復運動が、近年の活況を支えているように感じます。
まとめ
バラエティの顔が強い所ジョージさん。
しかし、その裏側には何十年も続く“作曲家の顔”がありました。
思いつきを遊び心で転がし、言葉に温度を宿し、
コラボで最短距離に作品化する。
木梨憲武さんに“いじられる”ほど知られていなかった音楽の顔は、むしろ今こそ再評価のタイミングです。
昭和から令和へ。
所さんの作曲は、時代の波に迎合するのではなく、暮らしのリズムで続いてきた。
その自由さが、これからの音楽の作り方にささやかなヒントをくれるはずです。