サブカル文化史アーカイブ 連載/特集

解決してほしい日本の未解決事件10選|26年越しに動いた「名古屋市西区主婦殺害事件」が示す“希望”と現実

目次
  1. 26年後に動いた「名古屋市西区主婦殺害事件」──未解決でも終わりではない
  2. 解決してほしい未解決事件10選の選定基準(本記事のルール)
  3. 解決してほしい未解決事件10選(捜査特別報奨金の対象から)
  4. 未解決事件が長期間動かない理由
  5. それでも事件が動く瞬間に共通するもの
  6. まとめ:未解決事件は「終わった事件」ではない

26年後に動いた「名古屋市西区主婦殺害事件」──未解決でも終わりではない

解決してほしい日本の未解決事件10選|26年越しに動いた「名古屋市西区主婦殺害事件」が示す“希望”と現実

未解決事件は、時間が経つほど「もう真相には辿りつけないのでは」と感じやすい。けれど、1999年に名古屋市西区で起きた主婦殺害事件は、発生から26年を経て容疑者の出頭・逮捕という形で大きく動いた。長く止まっていた時計が、ある日ふいに再び動き出すことがある。

長期未解決の事件が進展する背景には、供述や情報提供だけでなく、捜査手法や鑑定技術の積み重ねがある。年月は残酷に過ぎていく一方で、証拠の再検証や新たな手掛かりによって「真相に近づく可能性」がゼロにはならない。

だからこそ、いまも解決が望まれる未解決事件がある。本記事では、社会的影響の大きさ、被害の重大さ、そして“解決に向けて動く余地”が残されているという観点から、解決してほしい日本の未解決事件10件を整理する。

解決してほしい未解決事件10選の選定基準(本記事のルール)

「解決してほしい未解決事件10選」は、“知名度が高いから”だけで選ぶと、ただの有名事件まとめで終わってしまう。そこで本記事では、長期未解決でも捜査が継続され、情報提供が今も求められている事件を軸に整理する。判断材料としては、警察庁が実施している「捜査特別報奨金制度」の対象事件(懸賞広告)や、警視庁など各警察が公表する懸賞広告事件の情報を優先する。

具体的には、次の条件に合う事件を中心に抽出する。
・被害が重大(殺人・強盗殺人・放火など)で、社会的影響が大きい
・捜査本部が設置されるなど、重要事件として捜査が続いている
・広く情報提供を募ることが「有効・適切」と判断され、公式に懸賞広告が実施されている

また、報奨金制度では「事件の解決に結び付く情報の提供」が対象となり、情報提供者の秘密は厳守される旨も明記されている。未解決事件は、年月が経つほど断片的な記憶や小さな違和感が手掛かりになることがある。名古屋の件のように、長い時間を経て大きく動くケースが現実に起きた以上、いま“止まって見える事件”にも、再び動く可能性は残っている。

解決してほしい未解決事件10選(捜査特別報奨金の対象から)

上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件(東京・世田谷)

  • 発生:2000年12月末
  • 場所:東京都世田谷区上祖師谷3丁目
  • 被害:一家4人
  • 類型:強盗殺人
  • 現状:未解決(警視庁が情報提供を継続呼びかけ中)

上祖師谷三丁目一家4人強盗殺人事件は、2000年12月末に東京都世田谷区上祖師谷3丁目で発生した一家4人が殺害された凶悪事件です。警視庁は現在も特別捜査本部を置き、事件解決につながる情報提供を継続して呼びかけています。現場周辺は河川や公園、グラウンドに囲まれ、当時は立ち退き区域の影響で住宅が少ない環境だったとされ、夜間に不審な人物や車両を見た記憶、事件後に急に姿を見なくなった人物に心当たりがあるなど、周辺の「違和感」に関する情報も重要視されています。

この事件では、犯人のものとみられる衣類や所持品など、具体的な遺留品情報が公開されている点も特徴です。帽子、上着、マフラー、靴、バッグ類などが挙げられており、購入場所や所有者につながる手掛かりが残っている可能性があるとして、似た品を見た・持っていた人物の情報提供が求められています。また、遺留品の中には販売数が限られていたとされる衣類も含まれ、こうした「入手経路の特定」が突破口になりうると考えられています。

さらに警視庁は、遺留品の使われ方に着目した呼びかけも行っています。特徴のある加工がされた布類が残されており、凶器の滑り止めのような用途で使われた可能性が示されています。もし同様の使い方を仕事や日常でしていた人が周囲にいた、あるいは似た発想を見聞きした覚えがある場合、それ自体が重要な情報になり得ます。未解決事件は年月が経つほど断片的な記憶が埋もれがちですが、長い時間を経て動くケースが現実に起きている以上、この事件もまた「些細な記憶」が解決につながる可能性を残しています。

六本木五丁目雑居ビル飲食店内殺人事件(東京・港)

  • 発生:2012年9月2日未明(午前3時43分ころ)
  • 場所:東京都港区六本木5丁目(クラブ店内)
  • 被害:男性客1人(殺害)
  • 類型:殺人(複数犯による暴行)
  • 現状:主犯格1名が逃走中(重要指名手配/情報提供呼びかけ中)

六本木五丁目雑居ビル飲食店内殺人事件は、2012年9月2日未明、港区六本木5丁目のクラブ店内で発生した殺人事件です。警視庁の公表によれば、複数の犯人が男性客1人を金属バットなどで殴って殺害したとされ、事件後も逃走を続ける主犯格の男について、情報提供が呼びかけられています。

警視庁が指名手配しているのは、見立真一(みたて しんいち)被疑者で、事件の「主犯格」であり、逃走中の唯一の被疑者とされています。警視庁は、事件直後に海外へ逃亡した一方で、すでに日本へ帰国して国内に潜伏している可能性もあるとして、所在に結びつく情報を求めています。想定される立ち回り先として、東京都内のほか、静岡県内・埼玉県内・宮城県内が挙げられています。

捜査の呼びかけでは、被疑者の身体的特徴も明示されています(身長167cmくらい、がっちりした体格、右前腕・左目上・前頭部・額部の創痕など)。「見かけた」「近くで働いていた/暮らしていた」「最近似た人物を見た気がする」といった断片的な記憶でも、照合の糸口になる可能性があるとして、情報提供が促されています。

この事件は、警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象で、上限300万円が示されています。さらに、事件の捜査に協力する会による懸賞金(上限300万円)も併記され、合計で上限600万円の範囲で情報提供が求められています。

柴又三丁目女子大生殺人放火事件(東京・葛飾)

  • 発生:1996年9月9日(月)15:50ごろ〜16:39までの間
  • 場所:東京都葛飾区柴又3丁目(被害者宅2階)
  • 被害:女子大生1人(当時21歳/英語学科4年)
  • 類型:殺人・放火(刺殺後に放火)
  • 現状:未解決(警視庁が情報提供を継続呼びかけ中/捜査特別報奨金の対象)

柴又三丁目女子大生殺人放火事件は、1996年9月9日、葛飾区柴又3丁目の被害者宅で、女子大生が刃物で殺害されたうえ自宅が放火されるという事件です。発生時間帯は、母親が外出していた15時50分ごろから、119番通報があった16時39分までの間とされ、当日は朝から雨が降り続く肌寒い一日だったと警視庁は記しています。

現場は、JR金町駅から南へ約1.3km、京成金町線・柴又駅から北西へ約250mに位置する2階建て一般住宅で、周辺は観光地の賑わいがある一方、駅西側には閑静な住宅街が広がっていると説明されています。警視庁は、事件前後や発生時間帯に「不審な男や車を見掛けた」「突然転居した/見掛けなくなった人を知っている」「突然仕事を休んだ/辞めた人を知っている」など、周辺の“変化”に関する情報も含めて提供を求めています。

この事件の特徴は、犯人が残したとみられる“手がかり”が具体的に公開され、そこから照合できる可能性が示されている点です。凶器は小型の刃物と考えられ、刃渡り8cm以上・刃幅約3cm・先の尖った片刃という特徴が挙げられています。 また、事件に使われたガムテープについては、静岡県下の工場で1994年1月以降に製造されたものとされ、一般的な布粘着テープ(幅50mm・長さ25m)で、主に梱包用途として流通していたこと、粘着面に植物片・木片・犬の毛などが付着していたことも明示されています。こうした付着物は、犯人が着衣などを通じて外から持ち込んだ可能性があるものとして整理されています。

さらに警視庁は、犯人像に関わる情報として「犯人は男性で、犯行当時に何らかのケガを負い出血している」「血液型はA型」と公表しており、当日に刃物傷・切り傷などのケガをしていた人物の心当たりも情報提供の重要ポイントとして挙げています。

本事件は警察庁の捜査特別報奨金制度の対象で、報奨金上限300万円に加え、私的懸賞金(上限500万円)があると明記されています(合計上限800万円)。応募期間は2025年9月9日から2026年9月8日まで(必着)とされています。

群馬町三ツ寺(現在高崎市)における一家3人殺人事件(群馬)

  • 発生:1998年1月14日夜中
  • 場所:群馬県高崎市内(旧群馬町)三ツ寺
  • 被害:一家3人(夫婦と親族1人)
  • 類型:殺人
  • 現状:被疑者(小暮洋史)が重要指名手配/情報提供呼びかけ中(捜査特別報奨金の対象)

群馬町三ツ寺(現在高崎市)における一家3人殺人事件は、1998年1月14日夜中、群馬県高崎市内(旧群馬町)で一家3人が殺害された事件です。群馬県警は現在も情報提供を呼びかけており、事件の解決や被疑者の検挙につながる手がかりを広く集めています。

この事件で警察が行方を追っているのが、警察庁指定の重要指名手配被疑者とされる小暮洋史(こぐれ ひろし)です。群馬県警の公開情報では、小暮洋史は昭和44年7月31日生まれ、身長170cm位とされています。犯行から長い年月が経過しているため、現在の外見は当時と異なる可能性があり、群馬県警は「推定顔貌」も複数パターンで示して情報提供を求めています。

捜査は警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象にも指定されており、小暮洋史の所在など、検挙または事件解決に結び付く情報の提供に対して、報奨金の上限は300万円とされています。今回の募集期間(必着)は、2025年11月1日から2026年10月31日までと明記されています。

本事件は「未解決事件のまま年数だけが過ぎてしまう」タイプではなく、いまも公式に“手配中の被疑者がいる事件”として扱われています。事件当時の人間関係や生活圏の記憶、あるいは「その頃から急に連絡が取れなくなった人物」「当時の行動に不自然さがあった人物」など、断片的な情報が再検討の糸口になることがあります。とくに重要指名手配事件では、過去の記憶が“現在の所在”に直結するケースもあり得るため、心当たりが少しでもあれば、捜査機関への情報提供が強く求められています。

宮古市川井地内における女性殺人事件(岩手)

  • 発生:2008年7月1日(遺体発見)
  • 場所:岩手県宮古市内(事件当時:下閉伊郡川井村)の山間部
  • 被害:当時17歳の女性1人
  • 類型:殺人
  • 現状:被疑者(小原勝幸)が重要指名手配/情報提供呼びかけ中(捜査特別報奨金の対象)

宮古市川井地内における女性殺人事件は、2008年7月1日、岩手県宮古市内(事件当時は下閉伊郡川井村)の山間部で、当時17歳の女性が遺体で発見された殺人事件です。岩手県警は同年7月29日、殺人の罪で小原勝幸被疑者を指名手配し、現在も行方を捜査しています。

この事件は、警察庁の「捜査特別報奨金制度」の懸賞広告の対象にもなっており、指名手配されている小原勝幸被疑者の所在に関する情報など、検挙または事件解決に結び付く情報の提供が求められています。

公式の公開情報では、被疑者の氏名(小原勝幸)や、身長が「170cmくらい」であることなど、照合のための基礎情報も示されています。事件から年月が経っているため、外見や生活圏が変わっている可能性もありますが、捜査特別報奨金の広告では「所在に関する情報」を明確に対象としており、“今どこにいるか”につながる具体的な手掛かりが重要視されている事件です。

(※この事件の報奨金上限は300万円。応募期間は2025年11月1日〜2026年10月31日(必着)とされています。)

太田市高林東町地内パチンコ店における幼女略取誘拐容疑事件(群馬)〔ゆかりちゃん誘拐事件〕

  • 発生:1996年7月7日(日)午後(店内で行方不明)
  • 場所:群馬県太田市内(高林東町地内のパチンコ店)
  • 被害:横山ゆかりさん(当時4歳)
  • 類型:幼女略取誘拐容疑
  • 現状:未解決(捜査特別報奨金の対象/群馬県警が情報提供を呼びかけ中)
  • 懸賞金:上限700万円(捜査特別報奨金300万円+太田遊技防犯協力会の謝礼金400万円)
  • 応募期間:2025年7月1日〜2026年6月30日(必着)

太田市高林東町地内パチンコ店における幼女略取誘拐容疑事件は、1996年7月7日午後、群馬県太田市内のパチンコ店で、家族と来店していた横山ゆかりさん(当時4歳)が、店内で1人で遊んでいる間に行方不明となった事件です。群馬県警は「ゆかりちゃん誘拐事件」として、現在も情報提供を呼びかけています。

この事件は、警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象事件として継続的に広告が出されており、事件の解決に結び付く情報提供が求められています。制度上の上限300万円に加え、地元の太田遊技防犯協力会による謝礼金が上限400万円とされ、合計で上限700万円の範囲で懸賞金が示されています。

群馬県警の呼びかけ資料では、当時の状況を知る“重要参考人”像として、「当時の年齢30〜50歳」「身長158cmくらい」「がに股歩き」といった特徴が挙げられています。事件から長い年月が経っているため、外見や生活圏は変わっている可能性がありますが、こうした特徴に心当たりがある、または当時「店内でゆかりさんに話しかけていた人物」などに関する記憶がある場合は、断片的な情報でも捜査の照合材料になり得るとして情報提供が呼びかけられています。

情報提供先は、太田市高林地内パチンコ店における幼女略取誘拐容疑事件捜査本部(太田警察署)とされ、フリーダイヤルも案内されています。

泉南郡熊取町における小学生女児に対する未成年者略取誘拐事件(大阪)〔吉川友梨さん行方不明事案〕

  • 発生:2003年5月20日(火)午後3時ごろ
  • 場所:大阪府泉南郡熊取町七山
  • 被害:吉川友梨さん(当時9歳/小学4年生)
  • 類型:未成年者略取誘拐(小学生女児の行方不明)
  • 現状:未解決(大阪府警が情報提供を継続呼びかけ中/捜査特別報奨金の対象)
  • 報奨金:捜査特別報奨金 上限300万円
  • 応募期間:2025年7月2日〜2026年7月1日(必着)

泉南郡熊取町における小学生女児に対する未成年者略取誘拐事件は、2003年5月20日午後3時ごろ、大阪府泉南郡熊取町七山で、吉川友梨さん(当時9歳・小学4年生)が行方不明になった事案です。大阪府警は現在も捜査を継続し、事件解決につながる情報提供を呼びかけています。

この事件は、警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象事件として指定されており、被疑者の検挙または事件の解決に結び付く情報の提供が報奨金の対象になると明示されています(上限300万円)。情報提供先は大阪府泉佐野警察署の捜査本部で、どんな些細な情報でも構わないとして連絡が求められています。

また大阪府警は、事件に関する情報を整理した資料(PDF)や、情報提供を求める動画も用意し、当時の状況や記憶を掘り起こす取り組みを続けています。長期化した事案ほど、当時の「見かけた」「話を聞いた」「車や人物に違和感があった」といった断片が、のちに照合の鍵になることがあります。心当たりが少しでもある場合は、公式窓口への情報提供が強く望まれます。

新潟市東区空港西1丁目におけるタクシー運転手被害強盗殺人事件(新潟)

  • 発生:2009年11月1日深夜
  • 場所:新潟市東区空港西1丁目
  • 被害:タクシー運転手1人(車内で殺害、売上金が奪われた)
  • 類型:強盗殺人
  • 現状:未解決(捜査特別報奨金の対象/情報提供呼びかけ中)
  • 情報提供先:新潟東署捜査本部(フリーダイヤル案内あり)

新潟市東区空港西1丁目におけるタクシー運転手被害強盗殺人事件は、2009年11月の深夜に発生した未解決の強盗殺人事件です。報道によれば、タクシー運転手の阿部次男さんが車内で殺害され、売上金が奪われたとされています。

警察は「JR新潟駅南口から最後にタクシーに乗った男」が事件に関与した可能性があるとして行方を追っており、事件解決につながる情報提供を呼びかけています。

本件は警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象事件として継続して懸賞広告が出されており、事件に結び付く有力情報には上限300万円の報奨金が示されています。

豊田市生駒町地内における女子高校生強盗殺人事件(愛知)

  • 発生:2008年5月2日(金)午後7時30分ごろ
  • 場所:愛知県豊田市生駒町切戸地内(農道)
  • 被害:女子高校生1人(部活動帰りに自転車で帰宅途中)
  • 類型:強盗殺人(通学用ショルダーバッグが奪われた)
  • 現状:未解決(捜査特別報奨金の対象/情報提供呼びかけ中)
  • 応募期限:2026年12月9日まで(変更の可能性あり)

豊田市生駒町地内における女子高校生強盗殺人事件は、2008年5月2日夜、豊田市生駒町切戸地内の農道で、部活動を終えて自転車で帰宅途中の女子高校生が何者かに襲われて殺害され、通学用のショルダーバッグが奪われた事件です。奪われたバッグは、隣接する岡崎市稲熊町地内の小呂川の土手で発見されたと愛知県警が公表しています。

本事件は警察庁の「捜査特別報奨金制度」の対象で、寄せられた情報が検挙や事件解決に結び付いた場合、上限300万円の報奨金が支払われる仕組みです。愛知県警は専用ページで、事件概要に加えて「発見されていない被害品ジャージ(同型)」として、同型ジャージの情報(adidas製/サイズ表記など)も示し、心当たりのある情報提供を求めています。

また、2025年12月の呼びかけでは、同制度の対象期間が延長されたことが報じられ、名古屋市西区の主婦殺害事件が長期間を経て動いた例も挙げながら、情報提供や出頭を促すメッセージが発信されました。年月が経った事件ほど「当時は言い出せなかった話」「身近な人の不自然な変化」などが、のちに照合の決め手になることがあります。少しでも心当たりがある場合は、愛知県豊田警察署の特別捜査本部へ情報提供が呼びかけられています。

左京区岩倉幡枝町における殺人事件(京都)〔京都精華大学生殺害事件〕

  • 発生:2007年1月15日(月)午後7時45分ごろ
  • 場所:京都市左京区岩倉幡枝町の歩道上
  • 被害:京都精華大学1年生・千葉大作さん(当時20歳)
  • 類型:殺人(刃物による刺傷)
  • 現状:未解決(捜査特別報奨金の対象/情報提供呼びかけ中)
  • 応募期間:2025年12月14日〜2026年12月13日(必着)
  • 情報提供先:京都府下鴨警察署「左京区岩倉幡枝町における殺人事件捜査本部」(フリーダイヤルあり)

左京区岩倉幡枝町における殺人事件は、2007年1月15日夜、京都市左京区岩倉幡枝町の路上で、自転車で帰宅中だった大学生が刃物で殺害された未解決事件です。京都府警は現在も情報提供を継続して呼びかけており、事件解決に結び付く手がかりを広く求めています。

京都府警が公開している「当時の目撃情報」では、犯人は20〜30歳、身長170〜180センチ、センター分けで髪がボサボサ、上下黒っぽい服装、黒っぽいママチャリ風の自転車に乗っていた、などの特徴が整理されています。また、興奮すると「アホ、ボケ」を連発し、顔や上半身を左右に振る・目の焦点が合っていない、といった行動面の特徴も挙げられています。こうした“見た目+振る舞い”の組み合わせに心当たりがある情報は、照合の重要材料になり得ます。

京都府警は、現場近くで不審者を見かけた記憶だけでなく、「似ている人物を知っている」「普段から鋭利な刃物を持ち歩く人物を知っている」といった周辺情報も含め、些細な情報でも提供してほしいと明記しています。本事件は警察庁の捜査特別報奨金制度の対象で、上限300万円の範囲で報奨金が示されています。

未解決事件が長期間動かない理由

日本地図をもとに未解決事件をデータ分析する未来的UIイメージ。全国の犯罪情報を可視化するコンセプト図

未解決事件が年単位、時には数十年単位で動かなくなる背景には、捜査側の「やる気」ではなく、時間の経過によって積み重なる複数の壁があります。まず大きいのが、物的証拠と記憶の問題です。現場に残る痕跡は、適切に保全されていても、時間とともに劣化したり、当時の技術では十分に解析できなかったりします。加えて、目撃情報や周辺情報は人の記憶に依存するため、年月が経つほど曖昧になり、本人の転居・死去などで「確認すべき相手」そのものが失われていきます。

次に、事件を“線”にするための情報が揃いにくいことがあります。未解決事件の多くは、犯人像や動機が十分に固まらない段階で止まっているケースが少なくありません。捜査は、証拠・証言・行動履歴など複数の点が結びついてはじめて大きく前進しますが、決定的な1点が欠けたままだと、再捜査をしても同じ場所を周回しやすい。特に、計画性のある犯行や、被害者との接点が薄いケースほど、容疑者に辿り着くための“入口”が少なくなります。

さらに、捜査資源にも現実的な制約があります。新たな事件が発生すれば、当然そちらの初動捜査が優先されます。未解決事件は捜査が打ち切られるわけではなくても、限られた人員・時間の中で「決め手が見えたときに集中的に動く」形になりやすい。だからこそ警察庁は、重要凶悪犯罪などで広く国民から情報提供を受ける仕組みとして「捜査特別報奨金制度」を運用し、情報を集める導線を維持しています。

一方で、制度面の事情も“長期化”に影響します。殺人や強盗殺人など、一定の重大犯罪では公訴時効が廃止されていますが、だからといって自動的に事件が解決するわけではありません。時効がない=時間切れにならない、という意味であって、結局は証拠と情報の積み上げが必要です。法務省も、改正により「人を死亡させた罪」のうち死刑が法定刑上限のものは公訴時効が廃止された趣旨を説明しています。

そして最後に、長期未解決の最大の壁は「新しい情報が生まれにくい」ことです。事件当時に言えなかったこと(家庭・職場・交友関係の事情、犯人に繋がりうる噂や目撃)が、時間の経過でさらに言い出しづらくなっていく。逆に言えば、未解決事件が突然動く瞬間は、この“新しい情報”が入ってきたときです。だからこそ、どんな小さな情報でも寄せてほしい、という呼びかけが続きます。

それでも事件が動く瞬間に共通するもの

未解決事件が長期間止まって見える一方で、ある日突然「動き出す」ことがあります。そうした転機には、いくつかの共通パターンがあります。ここでは、推測ではなく、制度として明示されている仕組みや、実際に報道・公的機関の資料で確認できる“動く要因”を整理します。

1)出頭・供述で一気に動く

長期未解決が大きく動く最大の引き金は、関係者の出頭や供述です。外部からは見えないところで状況が変わっていても、最終的に「本人が出頭する」「関係者が語る」ことで捜査が一気に前進するケースがあります。
実例として、1999年の名古屋市西区の主婦殺害事件は、発生から約26年後の2025年10月31日に容疑者逮捕が報じられ、本人が出頭したことも伝えられました。

2)科学捜査の進歩で“当時は読めなかった証拠”が読めるようになる

未解決事件が動くきっかけとしてしばしば挙げられるのが、DNA鑑定など科学捜査の進歩です。証拠が保全されていれば、当時は解析できなかったものが、後年の技術で“意味のある情報”に変わる可能性があります。
この文脈は、公訴時効の改正(殺人などの時効廃止・延長)に関する議論の中でも、背景要素として語られてきました。法務省は改正内容として、殺人罪(既遂)や強盗殺人罪など「人を死亡させた罪」のうち法定刑上限が死刑のものは公訴時効を廃止したと説明しています。

3)“再検証”が回り始める(資料・記録の掘り起こし)

捜査が完全に止まっているのではなく、一定のタイミングで「再点検」「再鑑定」「再聞き取り」が行われ、そこで新しいつながりが見えることがあります。
これは「新情報が何もないのに急に解決した」というより、過去の点を結び直す作業が、ある瞬間に線になるイメージです。

4)情報提供がまとまって入る(制度・呼びかけが“効く”瞬間)

警察庁の「捜査特別報奨金制度」は、対象事件名や応募期間、情報受付部署などを警察庁サイトに掲載して広告し、情報提供を促進する仕組みです(上限額は原則300万円、期間は原則1年で更新・延長等あり)。
この制度が機能する“瞬間”は、1本の決定打というより、複数の情報が集まり、照合可能な形になったときに起きやすいです。

5)継続報道で「思い出した」「言えるようになった」が起きる

事件が動く条件として見落とされがちなのが、報道による“風化防止”です。長期未解決ほど、報道をきっかけに当時の記憶が呼び起こされたり、周辺の人が「今なら話せる」と判断したりすることがあります。
名古屋の事件を扱ったNHK番組に関する記事でも、毎年一定時期に報道が増え、警察に情報が寄せられやすくなる旨が触れられています。

未解決事件: 死者の声を甦らせる者たち

未解決事件が「なぜ動かないのか」「どうやって動き出すのか」を、捜査や検証の現場目線で追う一冊。証拠の再検証や情報の積み重ねが真相に近づく過程を描き、この記事の“続き”として読みやすい。

価格・在庫・版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

まとめ:未解決事件は「終わった事件」ではない

未解決事件の資料や証拠写真が舞い上がる捜査イメージ。事件情報を再検証する様子を描いた象徴的なイラスト

未解決事件は、時間が経つほど「もう動かない」と思われがちです。しかし実際には、捜査が継続されている事件があり、制度として情報提供の窓口も維持されています。警察庁の捜査特別報奨金制度は、重大事件について解決に結びつく情報を広く募る仕組みで、対象事件は毎年の募集期間とともに公表されています。

そして、長期間止まって見えた事件でも、出頭や供述、証拠の再検証、科学捜査の進歩、第三者の記憶といった要因が重なったときに状況が変わることがあります。2025年には、1999年の名古屋市西区の主婦殺害事件が約26年を経て動いたことが報じられ、未解決事件が「過去の出来事」で終わらない現実が改めて注目されました。

本記事で紹介した10件はいずれも、公式に情報提供が呼びかけられている事件です。もし当時の出来事に心当たりがある、現場付近で不審な人物や車を見た記憶がある、突然連絡が取れなくなった人を思い出した――そうした断片が、照合の材料になる可能性があります。未解決事件は「誰かが特別な情報を持っている」場合だけが動くのではなく、時間を経た今だからこそ意味を持つ記憶によって動き出すこともあります。

出典・参考資料(公式情報)

  • 警察庁「捜査特別報奨金制度」公式ページ
  • 警視庁・各道府県警察が公表する懸賞広告・事件概要
  • 法務省「公訴時効制度の改正について」
  • 各事件に関する報道(NHK・全国紙などの一次報道)

※本記事は、上記の公的機関および一次報道に基づき作成しています。

あわせて読みたい|これまでにつぶログで取り上げた未解決事件

-サブカル文化史アーカイブ, 連載/特集
-, , , ,