イースIXとはどんな作品か

アドル・クリスティンの新たな冒険の舞台は、重厚な石造りの監獄都市・バルドゥーク。
本作はシリーズ伝統のスピード感に加え、壁走りや空中滑空といった「異能アクション」で立体的な探索を実現したアクションRPGだ。
ドラマ性の強い群像劇と、ファルコムらしい緻密なマップ設計が融合し、これまでのイースとは一線を画す完成度を見せる。
前作『イースVIII』で築かれたテンポの良さとキャラ演出を受け継ぎつつ、より“内省的”な物語が展開される点が特徴的だ。
作品概要|閉ざされた街で描かれる“監獄”と“異能”の物語
『イースIX -Monstrum Nox-』は、ファルコムが手がけるアクションRPG「イース」シリーズの第9作。
舞台となるのは、監獄都市バルドゥーク──要塞のように巨大な石壁に囲まれ、外界との往来が制限された都市だ。
プレイヤーは冒険家アドル・クリスティンとしてこの街を訪れ、謎の女性アプリリスによって“異能者(モンストルム)”の力を授かることになる。
物語は、脱獄不可能とされる監獄の秘密と、街を覆う“呪い”の正体をめぐって進行。
シリーズ伝統の軽快なアクションに加え、異能を活かした高低差のある探索、都市を中心とした群像劇が融合した新しいイース体験を味わえる。
前作の孤島から一転、今回は都市と監獄という閉鎖空間を舞台に、アドルの“内なる旅”が描かれるのが最大の特徴だ。
物語・キャラクター|“異能者”たちが織りなす監獄都市の群像劇
バルドゥークの地を訪れた冒険家アドルは、突如として囚われの身となり、謎の女・アプリリスによって「異能者(モンストルム)」へと変貌する。
異能者とは、常人離れした特殊能力を持ちながら、街に巣食う“異界の存在”を討伐する使命を背負わされた者たちのこと。
アドルの仲間となるのは、異能を宿す5人の若者たち。
たとえば、正義感と使命感に燃える《白猫》、孤高の騎士《鷹》、礼儀正しくも謎を抱える《人形》など、いずれも強い個性を持つ。
彼らそれぞれの過去と苦悩が、物語を通して少しずつ明かされていく構成は、シリーズ随一のドラマ性を誇る。
ストーリーは“脱獄”と“救済”を軸に展開。
閉ざされた街を舞台に、異能者たちの葛藤と希望が交錯する群像劇は、イースシリーズの中でも特に物語面での完成度が高い作品といえる。
戦闘・探索|異能アクションがもたらす新たな立体感
『イースIX』の戦闘は、前作『イースVIII』の高速アクションをベースに、さらなる自由度を得た進化形だ。
アドルを含む最大3人パーティによるリアルタイム戦闘は健在で、キャラごとの攻撃属性やスキルを使い分けながら、スピーディに敵を殲滅できる。
最大の特徴は、異能(ギフト)と呼ばれる特殊能力。
《鷹》の“空中滑空”、《白猫》の“壁走り”、そして《人形》の“Third Eye(不可視の痕跡や仕掛けを見抜く可視化能力)”など、キャラ固有のスキルを用いることで、街やダンジョンの探索が立体的に広がる。
これにより、地形の高低差を活かした戦略的な戦い方や、隠されたエリア・ギミック発見の楽しみが生まれている。
バルドゥーク市街は複雑な構造を持ち、屋根伝いの移動や異界への転移ポイント探索など、シリーズとしては珍しい“都市型探索”が中心。
戦闘と移動がシームレスに繋がるため、プレイテンポは非常に快適だ。
一方で、操作切り替え時の視点挙動やカメラワークにやや慣れが必要な点も見られるが、慣れればアクション性の高さを存分に体感できる。
ボリュームとプレイ時間の目安
『イースIX -Monstrum Nox-』のメインストーリーを丁寧に追うと、おおよそ30〜35時間前後でエンディングに到達する。
難易度ノーマルの場合、寄り道をほどほどにこなすペースでこの範囲に収まることが多い。
クエストをすべて消化し、仲間キャラとの絆イベントを回収しながら進めると40〜50時間ほど。
さらに、探索率100%や収集要素を意識してプレイする“完全攻略”スタイルなら、50〜60時間近くになるだろう。
前作『イースVIII』のような広大な島ではなく、今回は“都市と監獄”という限られた舞台の中で密度を高めた設計になっている。
そのため、マップ数自体はややコンパクトでも、イベント密度が高く「短く感じない」構成だ。
一章ごとの区切りも明確で、1日1〜2時間ずつでもしっかり進展を感じられるテンポ感が心地よい。
周回プレイについて
本作はクリア後に「引き継ぎ要素ありの周回プレイ」が可能。
装備・スキル・所持金などの基本データは引き継げるが、物語進行系のイベントやキーアイテムはリセットされる。
特定のトロフィーや収集率を100%にするには、少なくとも2周目以降のプレイが前提となる設計だ。
周回時には難易度を変更できるため、1周目ノーマル→2周目ナイトメアという楽しみ方もできる。
異能アクションを使いこなした状態で序盤から高速に駆け抜ける爽快感は、初回とはまったく違うテンポを味わえるはずだ。
また、周回プレイ専用の特典として「強化ボス」「隠し衣装」「図鑑埋め」などの収集系要素が充実しており、
コンプリートを狙うプレイヤーには十分なリプレイ性が用意されている。
ストーリーの伏線やキャラの背景も2周目で見直すと印象が変わるため、
イースシリーズらしい“繰り返し遊んで深まる味わい”を堪能できるだろう。
機種ごとの違い|最適な環境で遊ぶならどれ?
『イースIX』はもともとPS4向けに開発されたタイトルだが、のちにPS5/Switch/PC(Steam)へと移植された。
ベースとなるゲーム体験はどの機種でも共通しているが、解像度やフレームレート、ロード時間などに明確な差がある。
PS5版は全体的にロードが短く、描画も安定。UIの応答性も向上しており、シリーズ初プレイにもおすすめできる完成度だ。
PS4/Pro版はオリジナル体験に最も近く、安定した60fps前後を維持。ロードも十分短く、バランスが良い。
Switch版は携帯モードで遊べる点が最大の魅力で、TV出力時でも解像度は控えめながら安定した30fpsをキープする。
Steam版は設定次第でWQHD〜4K表示や高fps動作も可能で、マシンスペック次第で最も美しいバルドゥークを体験できる。
いずれの環境でも大きな不具合はなく、どの機種を選んでも快適に遊べるが、
「映像表現を重視するならPS5・PC」「手軽さを求めるならSwitch」「シリーズの王道体験を味わいたいならPS4」がそれぞれの最適解となる。
| 機種 | 解像度の目安 | フレームレートの目安 | ロード体感 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| PS5(ネイティブ) | 最大4K表示 | 60fps安定 | 非常に短い | 高解像度・高fpsで安定/DLC同梱版 |
| PS4 / PS4 Pro | 1080p(Proはやや高精細) | 60fpsターゲット(市街地で可変) | 十分短い | オリジナル環境に最も近い挙動 |
| Nintendo Switch | ダイナミック解像度(携帯/TV最適化) | 30fpsベース(状況で変動) | 実用範囲 | 携帯プレイが最大の強み |
| PC(Steam) | WQHD〜4K以上も可(環境依存) | 60/120/144fps対応(設定可) | NVMe環境で最短クラス | 画質・fps・操作を細かく最適化可能 |
※数値は公称・主要レビュー整合の一般的目安。表示機器・設定で変動します。
よかった点/気になった点
よかった点
- 異能アクションによる立体的な移動が気持ちよく、壁や屋根を駆け回る探索が爽快。
- 監獄都市という閉ざされた舞台設定が物語のテーマとしっかり噛み合っている。
- 異能者たちの過去が少しずつ明かされていく構成がドラマ性を高めている。
- スキルや属性切替のテンポが良く、ボス戦・雑魚戦ともに操作感が軽快。
- BGMは場面転換に寄り添い、街歩きから戦闘までの流れを気持ちよくつないでくれる。
- PS5/PCではロードがほぼ皆無で、テンポよく冒険を続けられる快適さがある。
気になった点
- カメラの追従に慣れるまでやや時間がかかり、狭いエリアでは視界を失いやすい。
- ダンジョン構造が似通っており、後半にかけて新鮮味が薄く感じる部分もある。
- “クリムワルドの夜”は演出の変化が少なく、繰り返し感が出やすい。
- UIデザインが一部旧世代的で、初見では目的の項目を探しづらい箇所がある。
- Switch版は場面によって解像度・fpsが安定せず、滑らかさに欠ける瞬間も。
- 収集系サブ要素は報酬とのバランスがやや弱く、モチベーション維持が難しい。
/10
異能アクションの爽快さと群像劇の完成度が光る一作。 操作面のクセはあるものの、シリーズの成熟を感じられる堅実な進化作。
| 評価項目 | スコア | コメント |
|---|---|---|
| ストーリー | 8.5 | 群像劇としての完成度が高く、終盤の展開はシリーズ屈指の余韻を残す。 |
| キャラクター | 8.0 | 個性が際立つ異能者たちの成長と絆描写が魅力。ボイス演出も自然。 |
| アクション性 | 8.0 | 軽快で反応の良い操作感。異能の切替が戦略性を生む。 |
| 探索・構成 | 7.5 | 都市型マップの構造は秀逸だが、後半のダンジョンに単調さが残る。 |
| サウンド | 8.5 | 静と動のコントラストが鮮明。戦闘曲の疾走感はシリーズ屈指。 |
| 快適性 | 8.0 | ロード短・UI応答良好。カメラ挙動に慣れが必要だが全体は快適。 |
まとめ|誰におすすめか/今遊ぶ理由

『イースIX -Monstrum Nox-』は、シリーズの中でも物語性と立体的な探索が際立つ一本だ。
前作『イースVIII』でアクションRPGとしての完成度を確立し、本作では「都市」という新しい舞台を通して、その枠をさらに広げている。
キャラクターの内面に踏み込むストーリーや、異能を駆使した探索要素は、ファルコム作品の中でも成熟した印象を与える。
アクションのテンポ感やBGMの熱量はそのままに、プレイヤーが“世界を駆け抜ける感覚”をしっかりと味わえるのが魅力だ。
シリーズ初体験の人にはもちろん、「イースVIIIが好きだった」というファンにも強く勧めたい。
派手すぎず、着実に進化を遂げた作品として、今改めて遊ぶ価値がある。
