封印戦争という“語られなかった部分”を、正面から描きにきた作品

『ゼルダ無双 封印戦記』は、『ティアーズ オブ ザ キングダム』で断片的に語られた太古の“封印戦争”を主舞台に、ハイラルの英雄たちと魔王軍の大軍勢が激突する最新作。
シリーズの中でも特に語りが少なかった時代を扱うため、「事実を知りたい」「空白がどう描かれるのかが気になる」人にとっては、テーマの選び方そのものに説得力があります。
本作のアクションは、広い戦場を駆け巡りながら拠点を制圧し、強敵との一騎討ちで突破口を開いていく構成。
その中で、キャラクターごとの技の“伸び”や、戦況がじわっと動いていく感じに無双ならではの気持ちよさがちゃんと存在します。
一方で、視認性・カメラ・戦場情報量の多さなど、慣れが必要な点も見えてきます。
本記事では、良かった部分と気になった部分を丁寧に分けてレビューします。
作品概要
『ゼルダ無双 封印戦記』は、『ゼルダの伝説』シリーズにおける「封印戦争」の時代を扱ったアクション作品。
ハイラル王国が大軍勢と衝突した歴史上の大事件を、プレイヤー自身の操作で追体験する形になっている。
ゲームの基本は、無双シリーズの流れに沿った
「広い戦場での制圧・救援・突破」を中心としたリアルタイムアクション。
複数のキャラクターを切り替えながら、戦線を押し上げるのが主な目的となる。
対応機種は Nintendo Switch 2。
プレイ人数は 1〜2人(ローカル協力プレイ対応)。
世界観は本編シリーズに準拠しつつ、これまで詳細が語られてこなかった時代を補完する位置付け。
ゼルダ無双 封印戦記の良い点
1. 「戦況が変わる手応え」がはっきりある
拠点を落とした瞬間に
味方ラインが前へ押し上がり、敵が退いていく。
自分の操作が戦場全体に影響しているのが視覚的に確認できる。
「倒した数」ではなく、戦況を動かした実感が残るタイプ。
2. キャラクターごとの役割が明確
広範囲制圧型 / 単体特化型 / 機動力で回す型 と役割が分かれるので、
“誰で戦うか”が戦略になる。
ただ技が違うだけではない、“持ち場”が違う設計。
3. 上達がそのまま快適さに繋がる
最初は情報量に戸惑うが、
「どこを先に崩すか」「どう動くか」の判断が見えてくると
一気にテンポが良くなる。
プレイヤーの理解が直接プレイ感に反映されるタイプ。
4. 「作業感の軽減」に意識がある構成
雑兵 → 拠点 → 強敵 の流れが 一筆書きで整理されているため、
「ただ掃除してるだけ」の時間に偏りにくい。
動線がわかりやすい=だれにくい。
ゼルダ無双 封印戦記の気になる点
1. カメラが密集戦で追いつかない場面がある
敵と味方が固まる状況だと、
視点が詰まって状況が一瞬見えなくなる。
ロックオンは便利だが、
「見たい位置」と「カメラが向く方向」がズレることがある。
2. 序盤の画面情報が多く、状況判断に“間”が生まれる
ミニマップ・拠点状況・味方の圧し返し・敵の侵攻。
これらを 一度に把握しようとすると数秒立ち止まる。
テンポが噛む前は、ここが確実に壁になる。
3. 一部の雑兵戦は単調に感じる時間帯がある
戦況が動き出すまでの “掃除パート” が伸びると作業寄りになる。
戦線が落ち着いている時ほど顕著。
ゼルダ無双 過去作からの進化ポイント(比較)

- 世界設定の焦点が明確
前作「厄災の黙示録」はBotW直結の“100年前”でしたが、本作はTotK世界の“太古の封印戦争”を正面から描写。ラウルやゼルダが魔王軍と対峙する時代に軸足を置き、群像と大規模戦の必然性が増しました。物語の位置づけがはっきりしたぶん、シリーズ外伝ではなく“ゼルダ年表の空白”を埋める一本としての納得感が強いです。 - アクションの核が“シンクストライク+ゾナウギア”に刷新
連携フィニッシュの「シンクストライク」と、ゾナウ文明のガジェットを戦術に組み込む設計で、従来の無双コンボに“仕掛けで崩す”面白さが加点。TotKの遊び心を無双文法へ移植したのが今回の個性です。 - 協力プレイの実用度アップ
ローカル分割プレイに加え、Switch 2世代前提での描画・処理の余裕があり、雑魚殲滅の爽快感と視認性が良好。GameShare相当の共有プレイにも対応と報じられ、気軽に“二人無双”しやすい設計です。 - セーブ連動と長期運用の示唆
TotK/厄災のセーブ連動特典があり、発売後に無料アプデを2回予定と公式発表。発売時点での土台に、武器・ミッション追加で厚みを出す拡張計画が見えます。 - 過去作と比べた手触り
Wii U期の初代は“クロスオーバーお祭り感”、厄災の黙示録は“BotW物理×無双”の橋渡し。本作は“TotK要素の再解釈(ゾナウギア・古代戦記)”が主役。シリーズ経験者ほど「同じ気持ち良さ、違う勝ち筋」を体感できます。公式情報ベースでも、設計思想の違いが明確です。 - 注意点(初期版インプレの傾向)
カメラ追従やステージ構成の単調さを指摘する声も一部で見られます。大型アプデでの調整次第で評価が動く可能性は留意。
他の無双シリーズとの比較
- ゲーム進行のテンポ
拠点→戦況変化→増援…といった“お約束”は踏襲しつつ、メインは長め・サブは短尺でテンポ良く周回できる作り。従来作(真・三國無双/戦国無双系)よりも「寄り道の回転」が速い。 - アクションの厚み(シリーズ的な違い)
本作独自の“チェンジアクション”などで操作の単調さを崩す方向。無双既存の爽快感はそのまま、操作の切り替えと演出で“見栄えの更新”があるのが他シリーズとの差。 - フレームレート体験
旧世代機で目立った処理落ちが話題になった作品(例:厄災の黙示録)と比べ、Switch 2 世代の本作は動作面の不満が少ないレビュー傾向。大量撃破の“処理感”が素直に爽快へ直結しやすい。 - 世界観ギミックの強さ
“ゼルダ”側の要素(ゾナウ系のガジェット等)を無双流に翻訳。一般的な無双の武将スキル/兵科差よりも、ギミック運用で戦い方が変わる設計が目立つ。 - 周回と育成の導線
マップハブで育成・解放・素材集めを回すスタイルはFE無双や最近のコエテク系と同系統だが、本作はサブの消化が軽く、育成サイクルが詰まりにくい。 - 協力プレイの扱い
おすそわけ(ローカル)で2人協力に対応。シリーズ標準の分割プレイをきちんと押さえつつ、Switch Online前提のモードもある点は現行世代仕様。 - 発売後の拡張前提
無料アップデートが複数回予定と公表。従来の無双DLC運用に近いが、最初から“追い足し”が明示されているのは、遊びの厚みを段階的に伸ばす近年のトレンド。 - 物語の位置づけ
単なる外伝ではなく、ティアキン過去時代を掘る“接続作”。無双の“IF”色が強いスピンオフ群と比べ、原作補完の重みが前面に出る。 - 総括(他シリーズから見た本作)
無双の基本はそのままに、テンポ・演出・世代性能で“いま遊ぶ理由”を用意。処理負荷→爽快の阻害、単調化という弱点に対して、現行機スペックと追加要素で手当てした進化系という立ち位置。
総評(忖度なし)

手数の多いギミックと、短時間でも「1戦=1章」感を味わえる設計は魅力。ただし“無双的な快感曲線(面で薙ぎ払う高密度の爽快感)”よりも、“状況処理とリスク管理”に軸足が寄っているため、シリーズの豪快さだけを期待すると物足りなく感じる場面もある。
買うべき人
- 原作(ゼルダ)の世界観や“仕掛けを解く遊び”が好き
- タイムアタック気味に最短手順を詰めるのが楽しい
- 1ミッション30分前後で区切れるテンポを重視
見送った方がいい人
- 画面全体を巻き込む超高密度の“草刈り感”を最優先
- 思考停止で無双できる難度を期待
- 細かなギミック/弱点管理がストレス
ここが決め手
- “面制圧”より“状況攻略”の味付けがハマるかどうか
- 手触りはシリーズの文法内にありつつ、遊びの主眼は明確にシフト
- 価格に対して「やり込み導線」(高難度・タイム短縮・ビルドの幅)がどこまで刺さるかで評価が割れる
忖度なしスコア(総合レビュー)
| 評価項目 | スコア | コメント |
|---|---|---|
| グラフィック/演出 | 8.2 | 色彩と発光演出で空気感を強化。カットシーンは丁寧だが、山場の“驚き”は控えめ。 |
| 快適性 | 8.6 | ロード短縮とUIの整理でテンポが軽快。雑魚密度が高い状況でも処理は概ね安定。 |
| ストーリー/キャラクター | 8.8 | 会話テンポや掛け合いが自然で、ゼルダ文脈に寄り添う展開。関係性の描き分けが良い。 |
| 戦闘システム | 8.1 | ギミック活用で単調さを軽減。ボス設計は良いが、終盤のバリエーションはあと一歩。 |
| ボリューム/やり込み | 8.3 | 本編+育成+収集の循環で満足度が高い。周回導線が明快でダレにくい。 |
| コスパ | 8.4 | 可処分時間と満足感のバランスが良好。追加要素の透明性も好印象。 |
| 総合スコア | 8.3 /10 | 爽快感とギミックを丁寧に両立させた堅実な良作。シリーズ入門にも向く。 |
・ゼルダらしいギミックと無双の爽快感がきちんと噛み合い、周回しても飽きにくい骨太さ。
・拠点制圧の導線に小さな謎解きや弱点露出の仕掛けが混ざり、作業感を抑える工夫が効く。
・一方でカメラ/ロックオンは混戦時に視認性が落ちる場面があり、ボス戦が冗長化することも。
・ビルド作りと英傑連携で“押すだけ”にならない厚みが出て、スコアアタックの余地も十分。
・物語は外伝として手堅い満足度。RPG的収集と攻略の積み上げを好む人に強く刺さる。
まとめ
「ゼルダ無双 封印戦記」は、無双特有の一騎当千の爽快感に加え、ギミック対応や弱点露出など、遊びの“リズム”を意識した作りが光る作品でした。
ストーリー面ではキャラクター同士の距離感が丁寧に描かれ、会話テンポや感情の流し方が自然で、シリーズ文脈に寄り添う余韻のある構成が印象的です。
一方で、終盤の敵バリエーションや演出の山場は、もう一段強さがあればより記憶に残る体験になったとも感じます。
それでも、爽快と繊細を無理なく両立させた“堅実な良作”であることは間違いありません。
無双シリーズ未経験でも入りやすく、ゼルダ世界をもう一歩深く味わいたい人にとって、十分に選択肢となる一本です。
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