- 『レンタヒーロー』はどんなゲーム?レンタル料と電池で戦う異色RPGをレビュー
- 『レンタヒーロー』はどんなゲーム?
- コンバットアーマーは「手に入れる装備」ではなく「維持する契約」
- 仕事で稼いだ報酬は、次の仕事をするための資金になる
- 変身しているだけでも電池は減る
- 特殊武器を撃つと、移動にも使うBTが減る
- 強くなるには「開発費」まで必要になる
- 負けてもゲームオーバーにはならないが、手持ちの半分を失う
- 戦闘に入ってから準備不足へ気づいても遅い
- 生身とレンタヒーローでは、戦える内容そのものが違う
- 戦闘はゲームとして成立しているが、システム全体ほど深くはない
- 「話す」は攻略コマンドだが、住人が全員ヒントをくれるわけではない
- 依頼を受けるだけなら簡単。大変なのは、そのあと自分で動くこと
- 変身すれば移動は楽になる。しかし、その快適さにも値段が付いている
- セーブは自宅から始まり、後に自由度が上がる
- 『ヴァーミリオン』の次に、なぜ現代劇のRPGを作ったのか
- コージャやオートリーの名前にも、スタッフの日常が入っている
- 『アメリカン・ヒーロー』の影響は、スタッフ本人が語っている
- SECAが妙に企業らしいから、金の話がゲームから浮かない
- なぜA Tier・86点なのか
- では、なぜS Tierではないのか
- 『レンタヒーローNo.1』は2000年のリメイク
- 2026年には『RENT A HERO Z』として再始動した
- 2026年現在、1991年版を遊ぶなら?
- 総評|ヒーローの「強さ」ではなく「維持費」まで遊ばせたRPG
『レンタヒーロー』はどんなゲーム?レンタル料と電池で戦う異色RPGをレビュー

ヒーローになれば、あとは悪者を倒せばいい――『レンタヒーロー』は、そんな分かりやすい構図の裏側へ生活費を持ち込みました。
主人公が着るスーパー エナジー コンバットアーマーは、自分のものではありません。SECAから借りているレンタル品です。支払期限までにレンタル料を振り込まなければアーマーは使用不能になり、期限を過ぎてから支払う場合は通常料金の25%増し。銀行口座へ十分な額を預けておけば、自動引き落としも利用できます。
出費はそれだけではありません。コンバットアーマーは着て歩くだけでもBT(電気エネルギー)を消費し、特殊武器を使えば同じBTがさらに減ります。回復や乾電池にも金がかかり、別の町へ向かう交通費も仕事の必要経費。戦闘に負ければ病院へ運ばれ、手元に持っている現金の半分を治療費として失います。
その一方、仕事を成功させれば依頼者から報酬を受け取れます。
稼いだ金で活動を維持し、その活動によって次の報酬を得る。『レンタヒーロー』では、ヒーローになることよりもヒーローを続けることの方がゲームシステムとして深く作られています。
つぶログのメガドライブ全422ソフトTier表では、本作をA Tier・86点・総合90位タイと評価しました。設定とルールの結び付きはかなり強い一方、その仕組みを何度も回すための移動、聞き込み、戦闘にはテンポの重さが残ります。
『レンタヒーロー』はどんなゲーム?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | レンタヒーロー |
| 発売日 | 1991年9月20日 |
| ハード | メガドライブ |
| メーカー | セガ |
| ジャンル | ロールプレイング |
| 価格 | 8,700円 |
| 型番 | G-5508 |
| 容量 | 8M |
| プレイ人数 | 1人 |
| Tier | A |
| スコア | 86点 |
| 総合順位 | 90位タイ |
当時のセガ公式分類は「ロールプレイング」。町を歩いて人と話す探索パートと、敵が現れると横視点へ切り替わるアクション戦闘を組み合わせた作品です。発売日、価格、型番、容量もセガのハード資料で確認できます。
主人公はエアロシティへ引っ越してきた普通の若者です。ある出来事をきっかけにSECAのコンバットアーマーを使用し、その後はレンタヒーローとして一般人から寄せられる仕事を請け負っていきます。
最初から世界を救う使命を与えられるわけではありません。小さな頼まれ事をこなし、報酬を受け取り、活動範囲が広がるにつれて事件も大きくなっていきます。
コンバットアーマーは「手に入れる装備」ではなく「維持する契約」
RPGで強力な装備を手に入れたなら、普通はそこから先ずっと自分のものです。
『レンタヒーロー』ではそうなりません。
コンバットアーマーにはレンタル契約があり、支払期限までに料金を納めなければ使用できなくなります。期限を過ぎた支払いには25%の割増がかかり、口座に十分な預金があれば自動引き落としされます。
この仕様によって所持金には「次の武器を買う」以外の役割が生まれます。
目の前の買い物へ全部使ってしまえば、次のレンタル料に困るかもしれない。逆に銀行へ預けておけば契約の支払いを確保でき、戦闘敗北時にも預金までは失いません。
銀行が町の雰囲気を作るだけの施設ではなく、ヒーロー活動を安定させるための資金管理へ組み込まれています。
なお、レンタル料の具体額や支払周期については攻略資料で細かな数値が知られていますが、セガが公開している原説明書では料金表や一律の「月額」としては示されていません。ゲームの仕組みを説明するうえでは、期限・延滞・自動引き落としまでで十分です。
仕事で稼いだ報酬は、次の仕事をするための資金になる
SECAは一般から仕事を受け、それを主人公へ紹介します。
主人公が依頼を達成すると、報酬は依頼者から直接受け取ります。一方、仕事に必要な経費をSECAが負担してくれるわけではありません。原説明書には、この契約関係がかなりはっきり書かれています。
報酬を得たあとも、金の使い道は残ります。
レンタル料を確保する。乾電池や回復用品を買う。電車で別の町へ向かう。新型アーマーや特殊武器の開発につながる寄付へ回す。敗北して現金を失ったなら、次の仕事に備えて資金を立て直す。
「仕事をして金をもらう」という世界設定が、そのままRPGの進行資源になっています。
敵を倒して経験値をため、レベルアップした数字だけで強くなるタイプのRPGとは、成長の感覚がかなり違います。
変身しているだけでも電池は減る
コンバットアーマーのエネルギーは、ステータス画面のBTで表示されます。
BTは戦闘で技を使ったときだけ減るMPではありません。アーマーを装着して歩いている間にも少しずつ消費され、0になるとコンバットアーマーが作動しなくなります。MBTは最大充電量で、エナジータンクを使うことで増やせます。
この仕様のおかげで、変身は常時オンにしておけば済む能力にはなっていません。
コンバットアーマーを着ていれば生身より有利に動けますが、行動しているだけでBTが減る。節約のために変身を解けば電池を温存できるものの、生身では移動も戦闘能力も不利になります。
快適に行動するために資源を使うか、資源を節約する代わりに時間と危険を受け入れるか。
設定上の「電池で動くヒーロー」が、プレイヤーにとっても実際の判断になります。
特殊武器を撃つと、移動にも使うBTが減る
特殊武器も独立した弾薬やMPを使うわけではありません。
コンバットアーマーを維持しているのと同じBTを消費します。
原説明書では、フラッシュフォースとソニックカッターがBT10、ドラゴンサンダーとバーニングクローがBT20、ギャラクティカキャノンがBT30。新しい特殊武器を受け取れば、それまで装備していたものはSECAへ返却するため、何種類も自由に持ち替える方式でもありません。
強い攻撃で戦闘を短くすれば、HPを守れる可能性があります。
しかし、その攻撃で消費したBTは、戦闘後の移動や次の戦いでも使う資源です。
強い技を撃つことと、ヒーロー状態を維持することが同じ残量を取り合う。この結び付きがあるから、BTは名前だけを変えた魔法ポイントではありません。
強くなるには「開発費」まで必要になる
銀行では、預金や引き出しのほかにSECAへの寄付もできます。
寄付は1口1000ゴード単位。SECAはその金を新しいコンバットアーマーや特殊武器の開発へ使い、完成すると主人公へ貸し出します。
敵を延々と倒して経験値を稼げば、すべての能力が自動的に伸びる作品ではありません。
コンバットアーマーが新しくなれば、変身後の攻撃力、防御力、ジャンプ力が上がる。エナジータンクならMBTが増える。特殊武器も開発投資によって増えていく。原説明書のステータス欄にも、一般的な経験値やレベルの表示はありません。
本作では、働いて得た金をヒーロー活動へ再投資することが成長につながります。
「有料ヒーロー」という設定が、ここでもゲームの中心から外れていません。
負けてもゲームオーバーにはならないが、手持ちの半分を失う
戦闘に負けると、主人公はコージャの病院へ運ばれます。
そこで自動的にHPが回復し、ゲーム自体は続行できます。
代償として支払うのが、その時点で持っている現金の半分です。一部の戦闘には例外がありますが、通常の敗北ではこれが治療費になります。
ここは前稿から特に精度を上げた部分です。
治療費が銀行預金から自動的に引かれるわけではありません。原説明書は、敗北で手持ちが半分になっても銀行の預金は減らないと明記しています。
そのため、現金を持つことにもリスクがあります。
必要な買い物へすぐ使える金を手元に残すのか、それとも敗北時の損失を避けるため預けておくのか。銀行に入れた金なら、レンタル料の自動引き落としにも使える。
敗北を「前のセーブへ戻される失敗」にせず、経済的な損失へ変えたことで、銀行と契約の仕組みまで戦闘につながっています。
戦闘に入ってから準備不足へ気づいても遅い
町を歩いている最中に敵が現れると、画面は横視点の戦闘シーンへ切り替わります。
一度戦闘へ入ると逃げることはできず、戦闘中はHPもBTも回復できません。
残りHPは十分か。
BTを使い切らずに戦えるか。
特殊武器を何回使えるか。
こうした確認は、戦闘が始まる前に済ませておく必要があります。
買い物や電池補充が戦闘とは別の作業ではなく、次の戦いの準備になります。
生身とレンタヒーローでは、戦える内容そのものが違う
戦闘操作はシンプルです。
Bボタンでパンチ、Cボタンでジャンプ。ジャンプ中にBを押せばキック、B+Cでは低い軌道のショートキックを出せます。特殊武器はAボタンです。
ただし、生身ではパンチしか使えません。
キックやショートキック、特殊武器を使えるのは、コンバットアーマーを装着したレンタヒーロー状態です。レンタル料を払えなかったり、BTが0になったりすれば、単に見た目が普段着へ戻るだけではなく、戦闘の選択肢まで減ります。
契約と電池管理に失敗した結果が、ちゃんとプレイヤーの戦闘能力へ返ってくるわけです。
戦闘はゲームとして成立しているが、システム全体ほど深くはない
横視点の戦闘では、敵との距離を見ながらパンチやキックを当て、必要に応じて特殊武器を使います。
パンチだけで殴り続ければいい場面ばかりではなく、接近の仕方、ジャンプ攻撃、消費BTと残りHPを考える余地はあります。
ただ、本作を進めるほど戦闘だけが大きく発展し、別物のように奥深くなっていくわけではありません。
街を歩いていると敵が現れ、横画面へ切り替わって戦い、終われば探索画面へ戻る。この流れを何度も繰り返します。
経済システムには「今ここでBTを使うか」「現金を預けるか」「開発へ投資するか」といった判断がありますが、通常戦闘では同じ種類の攻防を繰り返す比重が高くなります。
A Tier・86点からさらに上へ行かなかった理由の一つがここです。
「話す」は攻略コマンドだが、住人が全員ヒントをくれるわけではない
原説明書は「はなす」を、本作でもっともよく使うコマンドと言えるほど重要だと説明しています。
依頼を受けた後、現代のRPGのように目的地へ巨大なマーカーが表示されるわけではありません。
仕事の文章を読み、町へ出て、人を探し、話を聞きながら次の行動を絞っていきます。
ところが、話しかけた人物が必ず攻略情報を教えてくれるわけでもありません。
シナリオを担当した蟻川とんぼ氏は後年、攻略にほとんど関係のないくだらない会話を大量に入れたことを振り返っています。必要な情報を尋ねているのに、まったく関係のない返事が返ってくるようなNPCまで配置しました。
その無駄話が街の住人をおもしろくしています。
一方、進行に必要な人物を探しているときには、どの会話が手掛かりなのか自分で見分けなければなりません。
会話のおもしろさと情報収集のもどかしさも、同じ設計から生まれています。
依頼を受けるだけなら簡単。大変なのは、そのあと自分で動くこと
SECAから紹介される仕事は、主人公の自宅にあるオテラドライブなどを通して確認します。
依頼内容を読んだ後は、目的地まで自動で移動してくれるわけではありません。
家から出て駅へ向かい、必要なら別の町へ移り、建物へ入り、人へ話しかけ、さらに別の場所を指示されたらまた移動する。依頼によっては、目的を達成した後に報酬を受け取るため依頼者のところへ戻る必要もあります。
町と仕事が生活圏としてつながっている点は、本作らしさの一部です。
ただ、何をすべきか分かった後にも移動そのものが長く残る場面があります。
変身すれば移動は楽になる。しかし、その快適さにも値段が付いている
生身の状態で歩けばBTを節約できます。
その代わり移動は遅くなり、戦闘になったときも使える行動が少ない。
コンバットアーマーを着れば移動しやすく、戦闘にも備えられますが、歩いているだけでBTが減っていきます。
この構造は非常によくできています。
ゲーム内の金や電池を節約すると、プレイヤー自身が長い移動時間を引き受けることになる。快適さを優先するなら乾電池代を払う必要がある。
「便利な高速移動をアンロックしたから、以後ずっと使えばいい」という設計ではありません。
しかし、これは同時に現在遊ぶ際の弱点でもあります。
資源管理の意味を成立させるために、生身の遅さや往復移動をプレイヤーへ実際に体験させるからです。
仕組みとして意味があることと、その繰り返しが快適であることは別です。
『レンタヒーロー』の86点を考えるとき、この違いはかなり大きいです。
セーブは自宅から始まり、後に自由度が上がる
原作には通常のゲーム内セーブがあります。
序盤は主人公の家の2階にあるパソコンを使い、3つのデータへ保存できます。ゲームを進めてRHブレスレットを手に入れると、外出先からでもセーブできるようになります。
最初からいつでも保存できるわけではありませんが、進行に合わせて利便性が上がっていく構成です。
2019年のメガドライブミニには、本体側の中断セーブもあります。こちらは1991年版のRHブレスレットとは別の復刻ハード側機能なので、原作仕様とは分けて考える必要があります。メガドライブミニには日本版『レンタヒーロー』が正式収録されています。
『ヴァーミリオン』の次に、なぜ現代劇のRPGを作ったのか
『レンタヒーロー』の現代的な世界は、前作と無関係に突然生まれたわけではありません。
蟻川とんぼ氏によれば、基本設定を考えたのは『ヴァーミリオン』を作っていたAM2研のスタッフで、次回作では「中世風ではないもの」を作ろうという発想から現代劇へ転換しました。別のメガドライブミニ関連インタビューでも、AM2研が『ヴァーミリオン』で得た開発経験が『レンタヒーロー』へ生かされたと説明されています。
『ヴァーミリオン』では町、3D迷宮、見下ろし型戦闘、横視点ボス戦と複数の形式を組み合わせました。
『レンタヒーロー』では舞台を現代へ移し、町で話を聞くRPGと横視点の戦闘を残しながら、そこへ仕事、銀行、交通、契約という生活の仕組みを加えています。
前作と同じ世界や物語ではありません。
RPGをどんな日常へ置き換えるかという開発上の次の試みとしてつながっています。
コージャやオートリーの名前にも、スタッフの日常が入っている
エアロシティには、コージャ、オートリー、マカタ、ダハネなど独特な地名が登場します。
蟻川氏はこれらについて、身近だった京急線沿線の地名を題材にしたと説明しています。糀谷、大鳥居、蒲田、羽田といった実在地名をもじったものです。
さらに、駅と駅の間を移動するときに表示されるマップ画面を、当時若手だった名越稔洋氏が担当したことも同じインタビューで語られています。
この事実を後の作品へ無理に結び付ける必要はありません。
『レンタヒーロー』の街そのものが、当時の制作スタッフに身近な景色や言葉遊びから組み立てられていたことが分かれば十分です。
『アメリカン・ヒーロー』の影響は、スタッフ本人が語っている
蟻川氏は、当時アメリカのテレビドラマ『アメリカン・ヒーロー』などが好きで、そのテイストを意識したことも振り返っています。
ただし、『レンタヒーロー』が同作をそのままゲーム化したわけではありません。
普通の青年がヒーローになること、日常と活躍の距離が近いこと、シリアス一辺倒ではない雰囲気などを作る際の影響源の一つとして見るのが妥当です。
日本的なパロディやダジャレが増えたため、予定されていた海外販売が実現しなかったという回想も残っています。これも「海外で売れなかった作品」という結果だけではなく、作品の会話や街名へどれほどローカルな笑いを入れたのかを示す話として興味深いところです。
SECAが妙に企業らしいから、金の話がゲームから浮かない
主人公へコンバットアーマーを貸し出すのはSECAエンタープライゼスです。
説明書の契約ページは、仕事の紹介、報酬、必要経費、レンタル料、延滞料金、開発費の寄付まで、まるでサービス利用規約のように書かれています。
正義を守る組織なのに、契約条件はかなり現実的です。
この企業的な世界観があるから、レンタル料や銀行振込をゲームへ入れても単なるギャグで終わりません。
ヒーロー活動が生活から切り離されていない。
それが『レンタヒーロー』の世界を支えています。
なぜA Tier・86点なのか
つぶログのメガドライブTierでA Tierに置いた理由は、設定の珍しさではなく、その設定がゲームを遊ぶ判断へ変換されているからです。
依頼を受けると報酬が入る。
報酬はレンタル料、乾電池、回復、交通、開発へ回る。
変身すると強く、移動も楽になるがBTが減る。
特殊武器も同じBTを消費する。
現金を持って戦えば、敗北時に半分を失う。
銀行へ預ければ守れるうえ、レンタル料の自動引き落としにも使える。
これらがバラバラの小ネタではなく、一つの循環になっています。
RPGとしてかなり強い設計です。
では、なぜS Tierではないのか
問題は、この循環を実際に何度も回したときのテンポです。
仕事を確認する。
町へ向かう。
人へ話しかける。
別の場所を教えられる。
駅まで戻る。
別の町へ行く。
敵が現れると戦闘画面へ切り替わる。
戦いが終わると探索へ戻り、また依頼を追う。
会話は楽しく、街を歩く意味もあります。しかし必要な情報が分かった後の移動まで短くなるわけではありません。
生身で歩けばBTは節約できますが遅い。アーマーを着れば快適ですがBTを使う。戦闘も、本作独自の金銭システムほど大きく判断が広がり続けるわけではありません。
ここで、作品の長所と弱点が同時に見えてきます。
経済システムは、繰り返すほど「このゲームらしい」と感じられる。
一方、その経済活動を成立させるための往復や戦闘切り替えも、繰り返すほど重く感じやすい。
設定とルールの融合は非常に強い。しかし、そのルールを何時間も操作するテンポまで同じ水準には達していない。
86点は、その差を反映しています。
『レンタヒーローNo.1』は2000年のリメイク
2000年5月25日にはドリームキャストで『レンタヒーローNo.1』が発売されました。
現在のSEGA UNIVERSEでも、2000年作品は初代『レンタヒーロー』のリメイクと位置付けられています。
3D化を含めて内容が再構築された作品なので、1991年メガドライブ版と同じゲームではありません。
今回の86点評価は、あくまで1991年9月20日の日本国内メガドライブ版に対するものです。
2026年には『RENT A HERO Z』として再始動した
シリーズ名は2026年にも使われています。
LINE NEXTは2026年6月18日、『RENT A HERO Z』をオーストラリア、カナダ、インドでiOS/Android向けに正式サービス開始しました。開発はTHE JAEMI Inc.、パブリッシャーはLINE NEXT Inc.で、セガIPのライセンスを受けた作品です。
公式発表は、1991年の作品をモバイル向けに再構築した新作と説明しています。
初代メガドライブ版の移植でも、『レンタヒーローNo.1』の移植でもありません。
2026年8月24日時点で公式発表に記載されているサービス地域はオーストラリア、カナダ、インドで、日本は含まれていません。
2026年現在、1991年版を遊ぶなら?
1991年版は過去にWiiバーチャルコンソールで公式配信されましたが、現在の新規購入手段ではありません。
公式復刻として確実なのは、2019年発売の日本版メガドライブミニです。『レンタヒーロー』が正式収録されており、本体側の中断セーブも利用できます。これは専用ハードに内蔵された復刻版で、現在のデジタルストアから『レンタヒーロー』だけを購入する商品ではありません。
Nintendo Switch 2/Nintendo Switch向けの「セガ メガドライブ for Nintendo Switch Online」自体は現在も提供されていますが、任天堂の現行公式ページで『レンタヒーロー』の配信は確認できません。Steam、PlayStation、Xboxなど主要現行ストアでも、1991年版の単体商品は確認できませんでした。
初代そのものへ確実に触れる方法は、メガドライブミニを所有している場合はその収録版を利用するか、オリジナルカートリッジと対応実機を用意する形が中心です。
総評|ヒーローの「強さ」ではなく「維持費」まで遊ばせたRPG
『レンタヒーロー』のおもしろさは、ヒーロースーツを借りるという設定だけでは説明できません。
借りた以上は料金を払わなければならない。
アーマーを動かせばBTが減る。
強い特殊武器を使えば、さらにBTを消費する。
別の町へ行けば交通費が必要になる。
仕事で失敗して戦闘に負ければ、手持ちの現金を半分失う。
そこで銀行を使い、次のレンタル料を確保し、仕事を成功させて新たな報酬を得る。
ヒーロー活動を続けるための収支が、RPGの進行そのものになっています。
一方、会話から手掛かりを探し、町を往復し、敵が出るたび横視点戦闘へ切り替わる構成には重さがあります。電池を節約すれば移動が遅くなり、快適に動けば資源を消費するという仕組みも、判断としておもしろい反面、プレイ時間の長さとして返ってきます。
だから90点台ではありません。
それでも、ゲームの設定と実際に押すボタン、減っていく数字、財布の中身がここまで同じ方向を向いている作品は強い。
『レンタヒーロー』は「ヒーローになるRPG」というより、働いて稼ぎ、支払いを済ませながらヒーローを続けるRPGです。
その生活感がゲームのルールとして最後まで機能しているからこそ、A Tier・86点という評価になります。