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ブルーピリオド(1)レビュー|“生きる理由”を見つけるために描き始める青春

発売情報

  • 発売日:2017年6月23日
  • 出版社/レーベル:講談社/アフタヌーンKC
  • 判型:B6判
  • ISBN-13:978-4065108464(1巻初版)
    出典:講談社公式・Amazon商品ページ

どんな物語?(ネタバレなしの導入)

物語の主人公は矢口八虎(やぐち やとら)、高校2年生。成績優秀で周囲ともそつなく付き合い、夜は友達と朝まで飲み歩く“リア充”の優等生。しかし心の奥では虚無感を抱え、「なんのために生きているのか」を見失っていた。
そんな彼が、ある日美術室で見た一枚の絵に心を撃ち抜かれる。今まで知らなかった“表現する快感”。キャンバスに色を塗る行為が、彼にとって初めての“生きる理由”に変わっていく。

本作は、美術を題材にしながら、決して“絵の描き方マニュアル”ではない。青春の迷い、社会との距離感、努力の意味、自己表現の苦しさと喜びを描く、現代青春漫画の代表作だ。

この1巻で掴める“読み味”

1. 「優等生の虚無」をどう壊すか

矢口八虎は“誰からも嫌われない立ち回り”ができる高校生。成績もよく、空気も読める。でも心の中は空っぽ。彼の虚無は特殊ではなく、多くの読者が共感する。「なんとなく順調だけど、自分がない」という状態を破壊するものとして、美術が現れる。

2. 絵を描くことの“暴力的な快感”

初めて本気で描いた絵を見て、八虎は震える。努力や計算ではなく、「描かずにいられない衝動」が彼を突き動かす。汗まみれで描いた結果が認められたときの熱は、読者にとっても追体験となり、表現することの根源的な快感を思い出させる。

3. 美術の厳しさと希望

1巻の時点で描かれるのは「描く楽しさ」だけではない。受験科目としての美術、競争としての美術、才能の差。現実の厳しさがすぐに八虎を待ち受ける。だがその緊張感こそが、青春の物語としての推進力になる。「楽しさ」と「苦しさ」が同じ地平にあることを、物語は隠さない。

参考映像:公式アニメPV

出典:YouTube「月刊アフタヌーン」公式チャンネルより :contentReference[oaicite:1]{index=1}

見どころ(ニュアンスのみ)

  • 美術室で出会う一枚の絵:何気ないシーンなのに、八虎の人生を根こそぎ変える起点。
  • 徹夜で描いた青い絵:タイトルの“ブルー”に込められた心情がここで鮮やかに表現される。
  • 仲間たちとの衝突:理解されない苦しみと、それでも描きたい衝動。

「ブルーピリオド」というタイトルの意味

本作のタイトルは、ピカソの「青の時代(Blue Period)」から取られている。若き日のピカソが、憂鬱や孤独を抱えて制作に没頭した時期。その「青」に八虎の心情を重ねている。1巻の青のモチーフは、「憂鬱」「孤独」「新しい始まり」の全てを同時に象徴しているのだ。

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受験を見据える緊張——「楽しい」だけでは進めない

1巻の終盤で八虎は、「描くのが楽しい」から一歩踏み込んで「うまくなりたい」「評価されたい」へと軸足を移す。ここから教室は“遊び場”ではなく“試合会場”になり、線にも迷いが出る。形を取る・光を置く——技術項目の言葉が増えるほど、快感だけでは前へ進めない現実が顔を出す。だからこそ、徹夜で描いた“青”がページの奥から光り、八虎の決意が読者の胸にも残る。

美術予備校という「臨場」

1巻は、美大予備校の冬期講習までを描く(=“入口のさらに手前”であることが巧い)。課題、講評、模写、石膏デッサン。結果は点数で出るが、「どこを見て、何を選び、何を捨てたか」という判断の積み重ねが本質だと、先生の言葉と画面の構図が何度も確認させる。誰かと同じ正解をなぞるのではなく、観察→選択→説明の回路を自分の中に作ること。八虎がようやく掴みかけた“勉強の仕方”は、読者にとっても仕事や学習の地図になる。紀伊國屋書店

キャラクターが背負う“角度”

  • 八虎:空虚を抱えた優等生が、自分の手で世界を定義し直す物語の核。
  • 鮎川龍二(ユカ):自己表現のあり方をめぐるもう一つの鏡。社会の視線と自意識の軋みを背負い、八虎の“まっすぐさ”に別の角度を足す。
  • 森先輩/先生たち:努力の量と方向を見直させる“外部の目”。甘い励ましではなく、課題を言語化する支援者として機能する。

誰も“説明役”に落ちないのがよい。絵の上達も、人間関係の距離も、全部「途中」として描かれる。だから読者は、八虎と同じように「次のページ」を欲する。

タイトルの“青”が指すもの(補足)

「ブルーピリオド」はもちろんピカソの“青の時代”が由来だ。憂鬱と孤独、しかし制作への没頭が青で塗られた時期。八虎の青は、同じく不安と衝動の混色であり、「まだ何者でもない」ことの痛みと希望を一枚に貼り合わせる。青は悲しみの色にとどまらず、これからを深く見ていくための色として響く。Encyclopedia Britannicaウィキペディア

1巻の読後感——“生き方のヒント”として

読み終えると、八虎の決意が読者の手にも少し移る。「衝動」を見つけたら、手を動かして確かめる。上手い/下手の前に、観察して、選んで、言葉にして、もう一度描く。物語としての爽快感だけでなく、行動の設計図が静かに置かれているのが本作の強みだ。

作品の広がり(背景情報)

本作は2017年に『月刊アフタヌーン』で連載開始、単行本1巻は2017年12月22日発売(224ページ)。以降巻を重ね、2025年5月時点で17巻に到達。2020年にはマンガ大賞と講談社漫画賞(一般部門)を受賞2021年にTVアニメ化2024年には実写映画も公開され、入口が広がった。レビュー的には“1巻の熱”に絞って語っても、背景の厚みが裏打ちになる。講談社「おもしろくて、ためになる」を世界へウィキペディア+1

まとめ——「描く」を始める勇気

『ブルーピリオド(1)』は、「自分の色で世界を定義し直すには、まず手を動かすしかない」という当たり前を、青春の熱と技術の言語化で力強く思い出させてくれる。楽しいだけでは足りない。厳しさだけでも続かない。好きと苦いの両方が、受験という“現実”に触れた瞬間にひとつの線になる。その線が、次のページを引っ張る。

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