- 緊急地震速報の「推定震度4~7」とは?震度7予測ではない理由を解説
- 結論|「推定震度4~7」は今回の予測幅ではない
- 本当に「推定震度4~7」という公式通知があった
- 気象庁は実際に何を予測していたのか
- なぜM5.0から一瞬M6.7まで跳ね上がったのか
- 「M6.7」と「震度7」はまったく別の数字
- 「予報」と「警報」でも、表示される情報が違う
- Jアラートとスマホの警報、自治体メールは全部同じではない
- なぜ自治体資料には「推定震度4~7」と書かれるのか
- 「予測が外れた」=「誤報」ではない
- なぜ予測が下がっても警報を取り消さないのか
- 今回は「特別警報」だったのか
- 緊急地震速報はどうやって数秒で予測している?
- 次に「推定震度4~7」と表示されたら、何を確認すればいい?
- まとめ|「7」は出ていた。しかし震度7を予測したわけではなかった
緊急地震速報の「推定震度4~7」とは?震度7予測ではない理由を解説

2026年8月23日午前2時ごろ、茨城県南部を震源とする地震が発生しました。
気象庁によると、地震の規模はマグニチュード5.9、震源の深さは68km。茨城県、埼玉県、千葉県、東京都の17市区町村で最大震度5弱を観測し、緊急地震速報(警報)も発表されました。いずれも8月23日4時時点の暫定値です。この地震による津波の心配はありませんでした。
その直後、気になる表示がありました。
「【緊急地震速報】推定震度4~7」
石川県珠洲市の公式メール配信履歴には、実際にこの件名の情報が2026年8月23日2時01分に残っています。
文字だけを見れば、
「震度7まで予測されたのに、実際は5弱だったのか」
と思ってしまいそうです。
しかし、今回についてはそうではありません。
気象庁の緊急地震速報全25報を確認しても、震度7を予測した記録はありません。最大だったのは、地震波検知から3.3秒後の第3報で示された「震度5強程度」です。
では、件名にあった「4~7」とは何だったのでしょうか。
結論|「推定震度4~7」は今回の予測幅ではない
先に結論を整理すると、今回の「推定震度4~7」は、
「この地震では震度4から震度7のどこかになる」と気象庁が予測した
という意味ではありません。
珠洲市が公開した通知本文を見ると、最大の予測は茨城県南部などの震度5強。東京都23区は5弱~5強、その他の地域も5弱や4などで、震度6弱・6強・7は一度も登場しません。
気象庁側の正式な緊急地震速報履歴も同じです。
一方、自治体のJアラート関連資料を調べると、「推定震度4~7」というまったく同じ表現が、緊急地震速報の情報区分として以前から使われている例が複数確認できます。
七尾市の地域防災計画では、Jアラート連携の「緊急地震速報」の中分類が「推定震度(震度4~7)」。伊丹市のJアラートメッセージ一覧でも「推定震度4~7」という中分類が設定されています。いの町も、自動放送する情報として「緊急地震速報・推定震度4~7まで」と案内しています。
つまり、「推定震度4~7」という文字列自体が、Jアラートを利用する自治体システムで緊急地震速報の対象範囲・区分をまとめて表すために使われる例があるわけです。
ただし、ここは一段慎重に見る必要があります。
珠洲市は、今回のメール件名がシステム内部のどの項目から自動生成されたのかまでは公表していません。
そのため、
珠洲市の件名はJアラートの「推定震度4~7」という内部区分をそのまま表示した
とまで断定することはできません。
確実に言えるのは、
件名には「推定震度4~7」と表示されたが、通知本文でも気象庁の公式履歴でも最大予測は震度5強であり、「7」は今回の震度7予測を示していなかった
というところまでです。
本当に「推定震度4~7」という公式通知があった
今回の表示は、SNS上のスクリーンショットだけから広まった話ではありません。
珠洲市の公式ホームページと登録制メール配信サービスの双方に、
「【緊急地震速報】推定震度4~7」
という記録が残っています。
珠洲市のメール配信サービスは、気象庁の気象情報や防災行政無線の内容などを登録者へ送る仕組みです。また、市の資料ではJアラート情報もメール配信サービスを通じて伝えることが案内されています。
今回の通知本文には、茨城県南部、千葉県北西部、埼玉県南部など各地域について、予測震度と主要動の到達予測時刻が並んでいます。
最高は震度5強でした。
ここが非常に重要です。
件名だけを見れば「4~7」。本文を見れば「最大5強」。
したがって、「4~7」は今回予測された震度の最小値と最大値を示す表現ではありません。
気象庁は実際に何を予測していたのか
今回の緊急地震速報は、地震波を2時00分50.3秒に検知したところから始まります。
気象庁が公開している全25報のうち、変化が分かりやすい段階を抜き出すと次のようになります。
| 段階 | 提供時刻 | 検知から | 推定M | 推定深さ | 最大クラスの予測 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1報 | 2:00:53.4 | 3.1秒 | 5.0 | 30km | 震度4程度 |
| 第3報 | 2:00:53.6 | 3.3秒 | 6.7 | 50km | 震度5強程度 |
| 第6報 | 2:00:55.4 | 5.1秒 | 5.9 | 40km | 震度5弱程度 |
| 第11報 | 2:00:59.5 | 9.2秒 | 6.1 | 70km | 震度5弱程度 |
| 第17報 | 2:01:05.5 | 15.2秒 | 6.6 | 80km | 震度5弱~5強程度 |
| 第25報 | 2:02:48.3 | 118.0秒 | 6.4 | 80km | 震度5弱程度 |
| 地震後の暫定値 | ― | ― | 5.9 | 68km | 観測最大震度5弱 |
緊急地震速報(警報)が発表されたのは予報の第3報です。
この時点では、茨城県南部、千葉県北西部、埼玉県南部などで震度5強程度、東京都23区で震度5弱~5強程度が予測されました。
25報すべてを通して見ても、震度6弱・6強・7の予測は確認できません。
したがって、
「今回、気象庁が震度7を予測して警報を出した」
という説明は事実と合いません。
なぜM5.0から一瞬M6.7まで跳ね上がったのか
もう一つ目立つのが、速報中のマグニチュードの変化です。
第1報はM5.0。
0.2秒後の第3報ではM6.7。
その後M5.9、M6.1、M6.6などへ変化し、地震後に気象庁が発表した暫定値はM5.9となりました。震源の深さも速報中は30~80kmの間で変化し、最終的な暫定値は68kmです。
これは、地震が終わった後に時間をかけて行う精密解析と、緊急地震速報の目的が違うためです。
緊急地震速報では、地震発生直後に得られる少数の観測点のデータから震源位置やマグニチュードを急いで推定します。
その後、より多くの観測点へ地震波が届けば、情報を追加して再計算します。
気象庁自身も、地震発生直後の少ない観測データから推定するため、予測震度には±1階級程度の誤差が生じることがあり、初期段階ほど誤差が大きくなる場合があると説明しています。
今回、なぜ第3報でM6.7という値になったのか、その個別の計算過程までは公表されていません。
そのため「この観測点が原因だった」といった推測はできません。
言えるのは、検知からわずか3.3秒の初期解析でM6.7と推定され、観測データが増える過程で値が更新されたということです。
「M6.7」と「震度7」はまったく別の数字
M6.7という速報値が出たことと、「震度7」という言葉が同時に目に入ると、二つを結び付けたくなるかもしれません。
しかし、マグニチュードと震度は別の指標です。
マグニチュードは地震そのものの規模。
震度はある場所でどれくらい強く揺れたかです。
同じ規模の地震でも、震源の深さや距離、地盤などによって各地の震度は変わります。
今回も、M6.7と推定された第3報での最大予測は震度5強程度でした。
したがって、
M6.7と推定された
= 震度7になると予測された
ではありません。
「予報」と「警報」でも、表示される情報が違う
緊急地震速報には、大きく予報と警報があります。
「緊急地震速報(予報)」では、地域ごとの予測震度や大きな揺れの到達予想時刻など、比較的細かな情報が提供されます。
一方、一般の人がテレビや携帯電話などで受け取ることが多い「緊急地震速報(警報)」は、最大震度5弱以上または最大長周期地震動階級3以上が予想されたときに、強い揺れが予想される地域を知らせる情報です。
警報では、具体的に
「この地域は震度5強」
とは発表しません。
気象庁は、具体的な予測震度には±1階級程度の誤差が伴うことなどから、一般向け警報では震度の数値を直接示さず「強い揺れ」と表現しています。
今回、珠洲市のページに地域別の震度や到達予測時刻まで載っているのは、一般向け警報そのものの表示と、自治体側で配信される詳細情報が同じではないことを示す例でもあります。
Jアラートとスマホの警報、自治体メールは全部同じではない
ここも混乱しやすい部分です。
Jアラートは「全国瞬時警報システム」のことで、緊急地震速報や津波警報、弾道ミサイル情報など、時間的余裕のない情報を国から自治体等へ瞬時に伝え、防災行政無線などを自動起動させる仕組みです。
ただし、利用者が最終的に目にする文面まで全国で完全に同じとは限りません。
消防庁自身も、自治体によって放送内容が異なる場合があると案内しています。Jアラートの業務規程でも、緊急地震速報の標準的な音声は定めつつ、自治体の実情に応じた変更を妨げない仕組みになっています。
さらに、携帯電話会社が提供する緊急地震速報、自治体の登録制メール、防災行政無線、民間の防災アプリでは、それぞれ情報の受け取り方や表示方法が異なることがあります。
そのため、
ある画面で見た文言=気象庁がそのまま発表した文章
とは限りません。
今回の「推定震度4~7」は、その違いを理解するのに非常に分かりやすい事例です。
なぜ自治体資料には「推定震度4~7」と書かれるのか
では、なぜ複数の自治体資料で「推定震度4~7」という表現が使われているのでしょうか。
七尾市の資料では、
大分類:緊急地震速報
中小分類:推定震度(震度4~7)
と整理されています。
伊丹市でも、
案件大分類:緊急地震速報
中分類:推定震度4~7
という形です。
東大和市の資料を見ると、さらに細かく、
推定震度4、5弱、5強、6弱、6強、7
が個別の小分類として並んでいます。
こうした資料から分かるのは、「4~7」という表記が、一つの地震について4から7までの幅を予測したという文章ではなく、システムで扱う複数の推定震度区分をまとめた名称として使われる場合があるということです。
ただし繰り返しになりますが、珠洲市は今回のメール件名生成ロジックそのものを公表していません。
したがって、
「珠洲市メールも確実にこの中分類をそのまま件名へ流用した」
とまでは書けません。
記事として重要なのはそこではなく、件名の「7」を今回の予測震度として読むことができないという点です。
「予測が外れた」=「誤報」ではない
今回、緊急地震速報では一時的に震度5強程度が予測されました。
実際の最大震度は5弱です。
この差を見て「誤報だったのでは?」と感じる人もいるでしょう。
しかし、気象庁がいう緊急地震速報の誤報とは意味が違います。
気象庁は、落雷など地震以外の現象を地震と誤認して緊急地震速報を発信した場合などについて、速報を取り消すと説明しています。
反対に、一度震度5弱と予測した地域について、その後の解析で震度3以下へ下がったとしても、通常は警報を取り消しません。
今回は実際に地震が発生し、4都県で最大震度5弱を観測しました。
したがって今回を、
存在しない地震について出された誤報
とするのは適切ではありません。
初期の少ない観測データから求めた予測が、解析の進行とともに変化したケースです。
なぜ予測が下がっても警報を取り消さないのか
緊急地震速報(警報)は、いったん発表した後に予測が弱まったからといって、原則として取り消す仕組みにはなっていません。
気象庁は、警報後の解析で、それまで対象でなかった地域に新たに震度5弱以上などが予想された場合には続報を発表します。
一方、予測が下方修正された場合の取り消しは行わず、地震以外の現象を地震と誤認した場合などに限って取り消すとしています。
緊急地震速報は「最終的な震度を正確に確定する情報」ではありません。
強い揺れが来る可能性を、地震発生からわずかな時間で知らせるための情報です。
その役割と、地震後に発表される確定度の高い震度情報は分けて考える必要があります。
今回は「特別警報」だったのか
地震の緊急地震速報には、法律上「特別警報」に位置付けられるケースもあります。
現在は、震度6弱以上または長周期地震動階級4が予想される緊急地震速報を特別警報として扱います。
ただし、一般向けには通常の「緊急地震速報(警報)」と名前を分けて発表するわけではありません。
今回の最大予測は震度5強程度、長周期地震動階級も最大2程度でした。
したがって今回の警報を、
「震度7を想定した特別警報だった」
と説明することもできません。
緊急地震速報はどうやって数秒で予測している?
緊急地震速報の速さは、地震波の性質を利用しています。
地震が起きると、まず比較的速く伝わるP波が届き、その後に強い揺れをもたらすS波が届きます。
気象庁は地震計が地震波を検知すると、すぐに震源位置やマグニチュードを推定し、まだ強い揺れが届いていない地域の揺れを計算します。
ただし、その時点で使えるデータはまだ少数です。
だからこそ数秒で知らせられる一方、初期の震源やマグニチュード、予測震度には誤差が生じることがあります。
現在は、従来の震源とマグニチュードから予測する方法に加え、近くの観測点で実際に強い揺れが観測されたことを利用して周辺の揺れを予測するPLUM法も使われています。
専門的な計算方法を知らなくても、
最初は少ない情報で急いで予測し、データが増えるにつれて更新する
と理解しておけば、今回の数字の変化はかなり分かりやすくなります。
次に「推定震度4~7」と表示されたら、何を確認すればいい?
今回の事例から覚えておきたいのは、表示に「7」が含まれているだけで「震度7が予測された」と判断しないことです。
最初に確認したいのは情報の出所です。
気象庁の緊急地震速報なのか、自治体の登録制メールなのか、防災行政無線なのか、携帯電話の緊急速報なのか、民間アプリなのか。
そして、
予測震度と観測震度を分けること。
今回なら、
| 情報 | 内容 |
|---|---|
| 珠洲市メールの件名 | 「推定震度4~7」 |
| 気象庁の最大予測 | 震度5強程度 |
| 実際の最大観測震度 | 震度5弱 |
という三つの数字・表現があり、それぞれ意味が違いました。
地震直後は複数の数字が短時間に流れます。
その数字が、
今回の地震そのものの規模なのか。
ある地域の予測震度なのか。
実際に観測された震度なのか。
システム上の情報区分なのか。
を切り分けるだけでも、かなり誤解を減らせます。
まとめ|「7」は出ていた。しかし震度7を予測したわけではなかった
2026年8月23日の茨城県南部地震では、珠洲市の公式メール配信サービスに、
「【緊急地震速報】推定震度4~7」
という件名が実際に残っています。
したがって、「そんな表示は存在しなかった」という説明も正しくありません。
しかし、件名の「7」を今回の震度予測と読むこともできません。
通知本文の最大予測は震度5強。
気象庁が公開している全25報でも、最大予測は震度5強程度で、震度6弱・6強・7の予測は一度もありません。
一方、「推定震度4~7」という同じ表現は、複数自治体のJアラート関連資料で、緊急地震速報の情報区分として使われています。
珠洲市が今回どの内部項目から件名を生成したのかまでは公開されていないため、そこを断定することはできません。
それでも結論は変わりません。
今回表示された「推定震度4~7」の「7」は、茨城県南部地震で気象庁が震度7を予測したことを示す数字ではありませんでした。
そして、一時M6.7から最終的なM5.9へ数字が変化したことも、震度5強程度の予測と実際の震度5弱に差が出たことも、「震度7の大誤報」という一言では説明できません。
緊急地震速報は、わずか数秒のデータから強い揺れを早く知らせるための情報です。
次に似た表示を見たときには、数字そのものだけではなく、誰が出した情報なのか、予測なのか観測なのかまで確認すると、意味をずっと正確に読み取れます。
地震速報の意味を理解したあと、実際の備えも見直したい場合は、つぶログの防災記事で家庭備蓄と非常持ち出し品を整理しています。