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『ファイナルファンタジーXI』は、なぜPlayStation 2でMMORPGを始めた?HDD必須の家庭用オンラインRPGに踏み込んだ理由

目次
  1. FF11はなぜPS2でMMORPGを始めた?HDD必須・PlayOnlineの理由
  2. なぜ『FFXI』はPlayStation 2だったのか
  3. 時間を1999年まで戻すと、見え方が変わる
  4. そもそも、なぜFFをオンラインRPGにしようとしたのか
  5. なぜ『FF Online』ではなく、ナンバリングの「XI」だったのか
  6. 『FFX』が成功したからXIをオンライン化したわけではない
  7. PlayOnlineはFFXI専用のランチャーではなかった
  8. MMORPGを家庭用ゲーム機で作るには「書き換えられる場所」が必要だった
  9. 2002年、PS2版FFXIを遊ぶには何が必要だったのか
  10. ブロードバンドでなければ遊べなかった?
  11. 2002年当時、日本の家庭にブロードバンドはどこまで広がっていたのか
  12. 発売当時の料金はいくらだったのか
  13. サービス初日、何が起きたのか
  14. Windows版はPS2版が失敗したから作られたのか
  15. 海外ではWindows版が先になった地域もある
  16. では、Xbox 360版はなぜ存在したのか
  17. PS2の性能で、どうやって長期運営MMORPGを動かしたのか
  18. コントローラーでMMORPGを遊ぶという難題
  19. FFXIは売れなかったのか、それとも成功したのか
  20. PS2版は、なぜ2016年まで14年も続けられたのか
  21. 「PS2が足を引っ張ったから終了」は少し雑
  22. 2016年にFFXIそのものが終了したわけではない
  23. 2026年現在、『FFXI』はまだ終わっていない
  24. 後の『ドラゴンクエストX』と似ているようで、始まり方は違う
  25. よくある誤解を整理
  26. 結局、なぜPS2でMMORPGを始めたのか

FF11はなぜPS2でMMORPGを始めた?HDD必須・PlayOnlineの理由

HDDとネットワーク機器を接続した家庭用ゲーム機からオンラインのファンタジー世界へつながる様子を描いたイラスト

2002年5月16日、『ファイナルファンタジーXI』は日本でサービスを開始した。

対応機種はPlayStation 2。

ただし、いつものFFのように、本体へディスクを入れればすぐ遊べるゲームではなかった。

PlayStation 2本体とは別にハードディスクドライブ(HDD)が必要。インターネットへ接続し、PlayOnlineへ登録し、さらに『FFXI』の利用契約を行う。ソフト代とは別に月額料金もかかった。

現在ならオンライン専用RPGそのものは珍しくない。

だが2002年の日本では、家庭のブロードバンド環境がようやく急速に広がり始めたばかりだった。

しかも『FFXI』は外伝ではない。「XI」という正式なナンバリングを与えられた、シリーズ本編である。

なぜスクウェアは、そこまで導入のハードルが高いMMORPGを、国民的RPGだったFFの本編として、しかもPCではなくPlayStation 2から始めたのだろうか。

先に結論

『FFXI』は「PlayStation 2が大ヒットしたので、そこへ流行のオンラインゲームを載せた」作品ではない。

1999年にはすでに開発チームが動き始め、スクウェアはFFを本格的なオンラインRPGへ進めようとしていた。その構想を家庭用ゲーム機で成立させる大きな条件になったのが、PlayStation 2で予定されていたネットワーク対応と、発売後もゲームを書き換えられるHDDだった。つまり、オンライン環境が完成した後に参入したというより、環境そのものがまだ出来上がっていない時期から作り始めたゲームだった。

なぜ『FFXI』はPlayStation 2だったのか

この疑問に答えるとき、「当時PS2が最も売れていたから」で終わらせると、時系列がおかしくなる。

『FFXI』の開発チームが立ち上がったのは1999年。松井聡彦氏はスクウェア・エニックス公式の20周年企画「WE ARE VANA'DIEL」で、チーム発足時点ですでに「PlayStation 2ではネットワークゲームができるようになる」という前提で開発が始まっていたと振り返っている。

1999年といえば、PlayStation 2の日本発売より前である。

そして2000年1月29日。スクウェアは「SQUARE MILLENNIUM」で『FINAL FANTASY IX』『FINAL FANTASY X』とともに、『FINAL FANTASY XI』を正式発表した。

PlayStation 2が日本で発売されたのは、それより後の2000年3月4日だ。

つまり、「PS2が市場で圧倒的に売れた結果を確認し、それからFFXIを企画した」という説明は成立しない。

もちろん、発売時点では状況が変わっている。SCEによると、2002年5月にはPS2の世界累計生産出荷台数が3000万台へ到達していた。『FFXI』が実際にサービスを始めるころには、PS2は巨大なユーザー基盤を持つハードになっていた。

ただし、それは発売時の追い風であって、1999年の企画開始理由とは分けて考える必要がある。

時間を1999年まで戻すと、見え方が変わる

時期出来事
1999年『FFXI』開発チームが立ち上がる。PS2でネットワークゲームが可能になることを想定して開発が進む
2000年1月29日FFIX・FFX・FFXI、PlayOnline構想を「SQUARE MILLENNIUM」で発表
2000年3月4日PlayStation 2が日本発売
2000年6月8日SCEがPS2専用大容量HDDユニット構想を一般向けに正式発表
2001年7月19日『FINAL FANTASY X』発売。すでにFFXIの映像も公開されていた
2001年12月17日FFXIクローズドβテスト開始
2001年12月22日Windows版FFXIの画面を一般公開
2002年5月16日日本でPS2版発売・正式サービス開始
2002年11月7日日本でWindows版発売

こう並べると、『FFXI』は「FFXの次に急にオンライン化したゲーム」でも、「PS2が売れてからオンライン市場へ参入したゲーム」でもないことが分かる。

PS2本体、HDD、家庭のブロードバンド環境、PlayOnline。後にFFXIを支えることになる要素の多くは、開発開始時にはまだ完成していなかった。

そもそも、なぜFFをオンラインRPGにしようとしたのか

開発の背景を語るうえで外せないゲームが『EverQuest』だ。

坂口博信氏が『EverQuest』をプレイし、田中弘道氏ら開発スタッフも実際に長期間遊んだことは、後年の公式インタビューで本人たちが明らかにしている。

田中氏によれば、開発予定のメンバーへ数か月にわたり『EverQuest』をプレイさせたこともあったという。

だからといって、「EverQuestをFFに置き換えたものがFFXI」と考えるのは単純すぎる。

田中氏自身は、PlayStationからPlayStation 2へ世代が移るころ、これからのRPGはオンラインへ進むだろうと考えていたと振り返っている。

そこへ、実際に大勢のプレイヤーが一つの世界で生活する『EverQuest』の体験が重なった。

『EverQuest』はFFXIの企画を一から生んだ唯一の原因というより、オンラインRPGとは何なのかを開発陣が具体的に共有する強烈な参考例だったと見る方が自然だ。

なお、坂口氏が『EverQuest』へ深く入った正確な時期については、田中氏自身も後年の回想で「2000年ごろ」と幅を持たせている。FFXIチーム自体は1999年に立ち上がっているため、「EverQuestを遊んだその日からFFXI企画が始まった」とまで一本の因果関係にすることはできない。

なぜ『FF Online』ではなく、ナンバリングの「XI」だったのか

オンラインゲームにするだけなら、『FINAL FANTASY ONLINE』のような外伝タイトルでもよかったはずだ。

実際、そうした方向は検討されていた。

ところが坂口氏は、FFXIを正式なナンバリング作品にすることへ強くこだわったと田中氏が証言している。

理由は、別タイトルにしてしまえば「最新のFF本編」ではなく、派生作品として見られてしまうからだった。

これは小さな違いではない。

従来のFFは、ソフトを買えば一人で最後まで遊べた。

それに対してXIは、HDDもインターネットも必要で、月額料金も発生する。すべてのFFファンが同じ条件で遊べる作品ではなかった。

そのため後には、経営側から「ナンバリングから外した方がよいのではないか」という話も出たという。

それでも田中氏は「XI」を維持する方向で当時の和田洋一氏を説得したと振り返っている。

つまり「XI」という番号は単なる順番ではない。

オンラインRPGをFFの番外編へ逃がさず、本編そのものとして扱う。

そこに、この作品の立ち位置が表れている。

『FFX』が成功したからXIをオンライン化したわけではない

『FFX』は2001年7月19日にPS2で発売された。

一方、『FFXI』はその1年半近く前、2000年1月29日の時点ですでに正式発表されている。

さらに開発チームは1999年に動き始めていた。

したがって、

「FFXがヒットしたので、その次のXIをオンラインにした」

という説明は時系列上成立しない。

FFIX、FFX、FFXIは、一本が完成してから次を始めたのではなく、別の開発ラインとして時期を重ねながら進んでいた。

FFXIには『クロノ・クロス』『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』『パラサイト・イヴ2』など、スクウェア内の複数チームからスタッフが集められている。

FFXからXIへ一本道でチームが移動したわけでもない。

PS2で一人用RPGとして映像表現を大きく進めた『FFX』については、つぶログの『ファイナルファンタジーX』25周年の記事でも詳しく振り返っている。同じPS2世代で、XとXIがまったく違う方向へ進んだことを並べて見ると、この時期のFFがどれだけ大きく変化していたかが分かりやすい。

PlayOnlineはFFXI専用のランチャーではなかった

現在の感覚でPlayOnlineを見ると、FFXIを起動するための古いランチャーのように見える。

だが2000年当時の構想は、もっと大きかった。

スクウェアが発表していたPlayOnlineには、ゲームだけでなく、メール、チャット、ニュース、音楽、漫画、ショッピングなどをまとめた総合的なオンラインサービスという構想があった。

NTTコミュニケーションズとの協力も発表され、FFXIだけではない「インターネット上のスクウェアの入口」を作ろうとしていた。

後年、PlayOnlineの開発に関わったスタッフも、ゲーム、コミュニケーション、コンテンツ配信などを統合するポータルとして計画されていたことを振り返っている。

FFXIはその中核に置かれた巨大コンテンツだった。

したがって、

「FFXIのログイン画面を作るためにPlayOnlineが生まれた」

と説明するのは歴史を逆から見すぎている。

実際には、PlayOnlineというより大きなオンライン事業構想と、オンラインFFの計画が並行して進んでいた。

MMORPGを家庭用ゲーム機で作るには「書き換えられる場所」が必要だった

ここでHDDが重要になる。

一般的なPS2ソフトは、完成したプログラムやデータをDVD-ROMなどから読み込む。

しかしMMORPGは発売して終わりではない。

不具合を修正する。ゲームバランスを変更する。新しいアイテムや敵を追加する。新エリアや機能も増えていく。

つまり発売後もクライアント側のデータを書き換え続ける必要がある。

田中氏は、SCEがPS2向けHDDを用意するという話を聞き、これならオンラインRPGを家庭用ゲーム機で成立させられると考えた経緯を語っている。

重要なのは順番だ。

一般向けに『FFXI』が発表されたのは2000年1月29日。

SCEが「PlayStation 2専用 大容量HDDユニット」を一般向けに正式発表したのは、同年6月8日だった。

つまり「2000年6月のHDD発表を見てFFXIを企画した」のではない。

開発側では一般発表より早い段階からHDD構想を聞いており、それが技術的な前提になっていたと考えるのが、現在確認できる証言に最も合っている。

HDDはFFXI専用に作られたわけではない

「PS2のHDDはFFXIを動かすためにソニーが作った」という説明も見かけるが、裏付けはない。

SCEが公表したHDD構想は、ネットワークからデジタルコンテンツを取得して保存することなどを含む、PS2全体のネットワーク戦略の一部だった。

後には『信長の野望 Online』など、FFXI以外のタイトルでもHDDが利用されている。

一方でFFXIがPS2 HDD活用の非常に重要なタイトルだったことは間違いない。

SIEでPS2やBB Unitの開発に関わった島田宗毅氏は、FFXIの開発チームとファイルシステム、TCP/IP、パッチによる更新などを何度も協議したと振り返っている。

当時はSCE側にとっても、家庭用ゲーム機でHDDへゲームをインストールし、ネットワーク経由でゲーム本体を更新していくのは未知の領域だった。

完成済みのオンライン基盤へFFXIが乗ったというより、FFXIを本当に動かす過程でPS2側のオンライン技術も実用段階へ持っていったという方が近い。

2002年、PS2版FFXIを遊ぶには何が必要だったのか

従来のナンバリングFFとの差が一番分かりやすいのが、ゲームを始めるまでの準備だ。

必要なもの2002年PS2版での位置づけ
PlayStation 2本体必須
『FINAL FANTASY XI』ソフト必須。PlayOnline用ディスクも同梱
PS2用HDD必須。インストールや更新データの保存に使用
インターネット接続用機器必須。PS2本体型番や接続方式によって構成が異なった
インターネット回線・ISP契約必須
PlayOnlineへの登録必須
FFXIの利用契約必須。月額料金が発生
USBキーボードゲーム起動そのものの必須条件ではない。文字チャットでは非常に有用

本体とソフトを買って終わりではない。

PS2へHDDを接続し、ネットにつなぎ、PlayOnlineへ登録し、ゲームをインストールし、必要なアップデートを済ませて初めてヴァナ・ディールへ入れる。

従来のFFしか知らない人にとっては、明らかに大きな変化だった。

PlayStation BB UnitとHDDは完全な同義語ではない

ここも混同されやすい。

PS2向けHDDの構想そのものはPlayStation BB Unitという名称が定着する前から存在している。

本体型番によって、外付けHDDを利用する初期構成と、本体背面のExpansion BayへHDDとネットワークアダプターを装着する構成にも違いがあった。

その後、HDDやネットワーク機能などをまとめた環境としてPlayStation BB Unitが展開される。

そのため記事上では「HDD」「ネットワークアダプター」「PlayStation BB Unit」を全部同じものとして扱わない方が分かりやすい。

ブロードバンドでなければ遊べなかった?

これも現在から振り返ると誤解しやすい。

PS2版FFXIは、技術上「ADSL以上でなければ接続できないゲーム」ではなかった。

PlayOnline向けには56Kbpsのアナログモデムも用意され、公式のアップデート所要時間案内でも、56Kbps、ISDN、ADSLなど複数の接続環境が想定されている。

つまり、

「ブロードバンド必須」ではない。

ただし、だからといってアナログ回線で快適だったという意味でもない。

アップデート内容によっては通信に長い時間が必要になる。継続的に大量のデータを書き換えるMMORPGとブロードバンドの相性が良かったことに変わりはない。

2002年当時、日本の家庭にブロードバンドはどこまで広がっていたのか

現在の感覚を2002年へ持ち込まないことも重要だ。

総務省統計局の2002年調査では、携帯電話などからの直接接続を除いて家庭からインターネットを利用していた世帯は26.0%。

最もよく利用する接続回線では、アナログ電話回線が9.4%、ISDNが6.8%だった。

さらにFFXIが発売された2002年4~6月期に、xDSLを主な接続回線としていた世帯は3.8%。同年1~3月の2.4%から、10~12月には7.6%へ伸びている。

まさに普及の途中だった。

田中氏も、FFXIがサービスを開始するころにADSLが広がり始めたという趣旨の振り返りをしている。

だからFFXIの歴史は、

「ブロードバンドが普及したのでオンラインFFを作った」

という順序ではない。

ゲームを作っている数年間に、家庭の通信環境の方が急速に追いついてきたのである。

発売当時の料金はいくらだったのか

2002年2月に公表された日本PS2版の料金は次の通りだった。

項目2002年サービス開始時
PS2版ソフト7,800円
PlayOnline基本サービス無料
FINAL FANTASY XI月額1,280円
追加キャラクター1キャラクターにつき月100円
テトラマスター月100円

PlayOnlineそのものの基本サービスは無料だが、FFXIを遊ぶには月額料金を払う。

決済方法にはVISA、Mastercard、JCBなどのクレジットカード、WebMoneyに加え、OCNペイオンや@niftyの決済サービスも用意された。

また通常の無料期間は、後年の「30日間無料」と同じ仕組みではない。サービス開始時は、最初に有料コンテンツを購入した日からその月末まで無料という扱いだった。

ただし発売直後に大規模な接続障害が発生したため、スクウェアは2002年5月16日から6月30日までにPlayOnlineへ入会したユーザーを対象に、その期間のFFXIなどの利用料金を無料とする補償を行っている。

サービス初日、何が起きたのか

2002年5月16日。

発売と同時に多くのユーザーがPlayOnlineへアクセスしたことで、ID発行などの入口部分に大きな負荷がかかった。

当時のGAME Watchは、アクセス集中によってID発行サーバーへ接続できない問題が発生したと報じている。

後年の公式周年企画でも、開発スタッフがサービス開始後にユーザー数がほとんど増えず、調査してみると認証・会員登録側がボトルネックになっていたと振り返っている。

ここは「FFXIのゲームサーバーが全部壊れて誰も遊べなかった」とまとめない方が正確だ。

問題の中心は、ゲーム世界へ入る前のPlayOnlineへの入会・ID発行・認証だった。

その後もメンテナンスを挟みながら復旧作業が続いた。

家庭用ゲーム機向けの大規模オンラインサービスを立ち上げること自体が、スクウェアにとっても初めての挑戦だったことがよく分かる出来事でもある。

Windows版はPS2版が失敗したから作られたのか

違う。

Windows版FFXIは、PS2版の売れ行きを見て急きょ作られたものではない。

2001年12月22日に開催された「SQUARE ONLINE PARTY 2002」で、すでにWindows版の画面が一般公開されている。

PS2版発売は2002年5月16日なので、それより約5か月早い。

日本のWindows版は2002年11月7日に発売された。

したがって、

「PS2版が失敗したのでPCへ逃げた」

という説明は時系列だけで否定できる。

ただし、1999年のプロジェクト開始時点からWindows版の発売まで完全に決定していた、と断定できる資料までは確認できない。

確実に言えるのは、PS2版が発売される前にはWindows展開がすでに公表されていたことだ。

海外ではWindows版が先になった地域もある

FFXIが世界中で「まずPS2から始まった」わけでもない。

北米では2003年10月28日にWindows版がサービスを開始し、PS2版は2004年3月23日からだった。

北米PS2版では40GB HDDを利用する形で展開されている。

つまり日本ではPS2→Windowsだったが、北米ではWindows→PS2という順番になった。

日本の家庭用ゲーム市場を入口にして始まったFFXIは、サービス拡大の中でPCを含む複数プラットフォームへ広がっていった。

では、Xbox 360版はなぜ存在したのか

2006年にはXbox 360版もサービスを開始する。

田中氏は当時のインタビューで、特に欧州のコンシューマ市場へFFXIを届けることを理由の一つとして説明している。

欧州ではPS2用HDDが展開されなかったため、日本や北米と同じ形でPS2版FFXIを売ることができなかった。

Microsoftとは初代Xboxの時代から話し合いがあったものの、HDDの扱いやオンライン方針などで条件がまとまらず、Xbox 360になって実現したという。

これも「PS2版が失敗したので別ハードへ移った」話ではない。

PS2、Windows、Xbox 360という複数の入口から、同じ長期運営型サービスへユーザーを呼び込む方向へ広がっていったのである。

PS2の性能で、どうやって長期運営MMORPGを動かしたのか

FFXIのHDDは、単なる「容量の大きいメモリーカード」ではなかった。

田中氏は、必要なグラフィックリソースをHDDから読み込み、不要になったものを捨てながら動かす設計について語っている。

限られた本体メモリだけですべてを抱えるのではなく、HDDを大きなデータ供給源として使った。

さらにHDDにはパッチや追加データを蓄積できる。

普通のPS2ソフトなら、発売日のディスク内容は基本的に固定される。

FFXIは違った。

発売後もゲームそのものが更新され続ける。

現在では家庭用ゲームでも当たり前になった「本体ストレージへインストールし、インターネットからパッチを当てる」という遊び方を、PS2時代の早い段階で大規模に実践した作品だった。

SIEの島田氏も、FFXIがPS2タイトルにおけるHDDインストールやゲームアプリケーションへのパッチ更新の大きな転換点になったと振り返っている。

コントローラーでMMORPGを遊ぶという難題

PC向けMMORPGなら、キーボードとマウスを前提に作ることができる。

しかしFFXIの最初の入口は家庭用ゲーム機だった。

移動、メニュー操作、ターゲット選択、戦闘、マクロなどを、PS2のゲームパッドを軸に成立させなければならない。

文字入力にはUSBキーボードが有用だったが、ゲームの基本操作そのものをキーボード専用にはできない。

FFXIは「PCのMMORPGをそのままPS2へ移植したゲーム」ではない。

テレビの前でコントローラーを持つ従来の家庭用RPGユーザーを、オンライン世界へどう入れるかまで含めて設計する必要があった。

この点も、PS2を最初の主要プラットフォームにした意味の一つだ。

FFXIは売れなかったのか、それとも成功したのか

パッケージ販売だけを見ると、従来のナンバリングFFとはまったく違うスタートだった。

スクウェア・エニックスは2012年の決算説明会で、FFXIの2002年当時の初期出荷を約12万本と振り返っている。

当時のFFシリーズは、200万本を超えて初めて成功作と見られるほどの規模だった。

12万本だけを見れば、小さく感じる。

ところがMMORPGは、パッケージを一度売って終わるビジネスではない。

有料会員を積み重ね、長期間サービスを続けることで収益構造が変わる。

同じ2012年の会社説明によると、FFXIは有料会員50万人へ到達するまで約24か月かかった。

そしてサービス開始から10年間で、開発費だけでなくサーバーや運営スタッフなどのコストを含めても、累積営業利益は約400億円に達したという。

会社は当時、単一タイトルとして「貢献度トップ」と評価している。

数字を混同しないためのポイント

約12万本=2002年当時の初期出荷。

50万人=有料会員数が到達した規模。

約400億円=2012年時点までの累積営業利益。

これらはすべて違う数字だ。

「12万本しか売れなかったから失敗」でもなければ、「400億円分のパッケージが売れた」という意味でもない。

FFXIは、売り切り型だった従来FFとは別の時間軸で収益を積み重ねたゲームだった。

なお「歴代FFで史上最も儲かった」と現在まで無条件に延長して断定するのは避けたい。確認できるのは、2012年時点でスクウェア・エニックス自身が、累積営業利益約400億円、単一タイトルとして貢献度トップと説明していたという事実だ。

PS2版は、なぜ2016年まで14年も続けられたのか

むしろ不思議なのは、終了したことより、PS2版が2016年まで生き残ったことかもしれない。

2002年から約14年間。

その間、FFXIには何度も拡張・バージョンアップが行われ、必要なデータは増え続けた。

2012年にはPS2版で必要とするHDD領域を、従来の10GB、環境によっては8GBから19GBへ拡張する対応まで行われている。

松井氏によれば、PS2版の終盤には本来1タイトルで利用できるHDD容量の制限をSCE側に緩和してもらい、それでも足りなくなると、さらに広い領域を利用できるよう協力を受けたという。

専用の開発機材についても、SCE側が長期間保存・提供を続けていた。

つまり14年間のサービスは、2000年代初頭の家庭用ゲーム機を、そのまま何の問題もなく使い続けられたから実現したわけではない。

ハードの制約を回避し、古い開発環境を維持し、メーカー側の協力を受けながら延命していた。

「PS2が足を引っ張ったから終了」は少し雑

PS2版とXbox 360版のサービス終了は2015年3月に発表され、2016年3月31日23時をもって終了した。

もちろん、PS2のメモリやHDD容量といったハード上の制約は長期運営で重くなっていた。

しかし理由を単純に「PS2の性能が低すぎたから」とするのは正確ではない。

十数年前の専用開発環境を維持し続けること。

古い開発機材を確保し続けること。

増え続けるゲームデータを限られたPS2環境へ収めること。

そしてWindows版を含む今後の開発を続けること。

こうした複数の問題が積み重なっていた。

PS2版終了は、単に「性能の低いハードを切った」のではなく、2002年の技術基盤を2016年まで維持してきた長期運営が限界へ達したと見る方が実態に近い。

2016年にFFXIそのものが終了したわけではない

2016年3月31日に終了したのは、PS2版とXbox 360版だ。

FFXIそのものではない。

公式は、PS2やXbox 360で利用していたユーザーがWindows版へ移行できるよう案内している。

スクウェア・エニックス アカウントやPlayOnline IDを引き継ぎ、同じサービス上で冒険を続けることができた。

一方、PS2やXbox 360本体側に保存されていたスクリーンショット、マクロ、装備セット、マップマーカーなどは、サービス終了後に本体から取り出せなくなった。

これが「キャラクターデータも全部消えた」と混同されることがある。

キャラクターのサーバー側データと、ゲーム機本体へ保存されていた設定・画像などは別物だ。

2026年現在、『FFXI』はまだ終わっていない

2026年10月2日現在、『FINAL FANTASY XI』はWindows版で正式サービスが続いている。

2026年9月10日にも通常のバージョンアップが実施された。

さらに9月30日には、Windows版フリートライアルの期間制限そのものが撤廃された。

現在は一部の機能・コンテンツに制限があるものの、レベル75まで期間を気にせず無料で遊ぶことができ、作成したキャラクターも製品版へ引き継げる。

公式の推奨環境ではWindows 11が案内されている。

そして2026年になった今も、クライアントの導入手順にはPlayOnline Viewerが残っている。

現在のWindows版を正式に利用する場合、PlayOnline ViewerとFFXI本体をインストールする構成になっている。

ただし、「技術的に古すぎて外せないから残っている」などと内部事情まで断定できる公式資料は確認できない。

確実なのは、2000年に巨大なオンラインポータルとして構想されたPlayOnlineが、役割を大きく変えながらも、2026年のFFXIへまだ組み込まれていることだ。

現在の通常利用料金

2026年10月2日現在、公式料金表ではサービス基本料金が30日1,298円、キャラクター利用料金が1キャラクター30日110円。

通常の1キャラクターで遊ぶ場合は、合計1,408円/30日となる。

2002年の「FFXI月額1,280円」とは料金体系そのものが変わっているため、当時料金と現在料金は分けて考える必要がある。

後の『ドラゴンクエストX』と似ているようで、始まり方は違う

日本を代表するRPGシリーズが、ナンバリング本編でオンライン専用へ踏み込んだという点では、2012年の『ドラゴンクエストX』を思い出す人もいるだろう。

ただ、二つの作品は「有名RPGをMMORPGにした」という結果だけを並べると、開発経緯を取り違えやすい。

『DQX』がなぜWii末期に発売され、なぜナンバリング本編をオンライン化したのかについては、つぶログの『ドラゴンクエストX』は、なぜWii末期に発売された?の記事で別に検証している。

FFXIから約10年後に登場したDQXを見ると、家庭用ゲーム機で本格MMORPGを運営するという考え方が、日本のゲーム市場でどう変化したのかも見えてくる。

よくある誤解を整理

よくある説明確認結果
PS2が一番売れていたからFFXIをPS2にした発売時の巨大な普及台数は重要な背景。ただし開発開始はPS2発売前なので、それだけを企画理由にはできない
PS2 HDDはFFXI専用に作られた誤り。HDDはSCEの広いPS2ネットワーク構想の一部。FFXIはその重要な活用タイトルだった
FFXが成功したのでXIをオンラインにした誤り。XIはFFX発売よりかなり前から開発・発表されている
『ファンタシースターオンライン』成功を見て作った時系列上成立しない。FFXIはPSO発売より前の2000年1月に正式発表済み
EverQuestをそのままFF化した過剰な説明。開発陣が強い影響を受け、研究したことは本人証言で確認できる
PlayOnlineはFFXI専用サービスだった誤り。当初はゲーム以外も含む総合オンラインサービス構想だった
ブロードバンド回線が必須だった誤り。56Kbpsのアナログ接続も想定されていた。ただし更新などでは高速回線の恩恵が大きかった
キーボードがないと遊べなかったゲームの基本操作はコントローラー主体。USBキーボードはチャットで非常に有用だった
PS2版が失敗したのでWindows版を作った誤り。PS2版発売より前にWindows版は一般公開されている
映画『ファイナルファンタジー』の赤字を埋めるためFFXIを作った企画・発表の方が映画公開や損失問題より早く、誕生理由としては成立しない
2016年にFFXIがサービス終了した誤り。終了したのはPS2版とXbox 360版。Windows版は現在も継続
2026年もPS2で遊べる遊べない。現在の正式サービスはWindows版

結局、なぜPS2でMMORPGを始めたのか

2002年5月16日という発売日だけを見ると、答えは簡単に見える。

PS2は売れていた。

インターネットも広がり始めていた。

だからスクウェアが人気ハードへオンラインFFを出した。

だが時間を1999年まで戻すと、その説明では足りない。

PS2はまだ発売されていない。

家庭のADSLも一般的ではない。

PlayOnlineも完成していない。

PS2用HDDも一般には発表されていない。

それでも、FFXIのチームは動き始めていた。

スクウェアが先に考えていたのは、FFというRPGそのものを、長く続くオンライン世界へ進めることだった。

その構想を家庭用ゲーム機へ持ち込むには、発売後もゲームを書き換えられるストレージが必要だった。

SCEが進めていたHDDとネットワークの構想が、そこでかみ合った。

さらにPlayOnlineという総合オンラインサービスを立ち上げ、ゲーム機を家庭のインターネットへ接続し、月額課金と継続アップデートを組み合わせる。

従来のFFとは、入口からしてまったく違う。

しかもスクウェアは、それを外伝へ逃がさなかった。

「XI」という番号を付け、本編として発売した。

結果だけを見れば「PS2で発売されたMMORPG」だが、実際には、まだ家庭用オンラインゲームの仕組みそのものが固まり切っていない時期に、HDD、ネットワーク、アカウント、月額課金、パッチ更新という仕組みをまとめて家庭用RPGへ持ち込もうとした巨大な実験だった。

そしてその実験はPS2だけでは終わらなかった。

Windows、海外、Xbox 360へ広がり、PS2版終了後も世界そのものは残った。

2026年。

最初のPS2版サービス開始から24年以上が過ぎても、『FINAL FANTASY XI』はまだ動いている。

むしろ同年9月には、フリートライアルの期間制限まで撤廃された。

2002年当時、「HDDまで買って、PS2をネットへつないで、月額料金を払って遊ぶFF」は、シリーズの中でも相当に異質だった。

その異質さこそが、後から振り返ると重要だったのかもしれない。

FFXIは、オンライン環境が完成した時代に安全に乗ったゲームではない。

家庭用ゲーム機でオンラインRPGを当たり前にするための環境がまだ揃っていない時代に、その環境ごと作りながら始まったFFだった。

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