- ゲーム史上初の隠しキャラは誰?ゼビウス以前の謎を検証
- 結論|『ゼビウス』のソル以前にも、秘密のキャラクターは存在した
- 『ゼビウス』のソルは、なぜ「史上初の隠しキャラ」と呼ばれるのか
- 1982年『E.T.』には、説明書に載っていないYarが隠されていた
- 当時の説明書には、本当にYarの存在が書かれていなかったのか
- 『E.T.』は本当に『ゼビウス』より古いのか
- 実は『E.T.』より前にもYarは隠されていた
- 1970年代にも秘密は存在した|イースターエッグとの違い
- 『Yars' Revenge』のGhost of Yarsが最初ではないのか
- 『Mortal Kombat』のリプタイルが「最初」とされる理由
- なぜ日本では『ゼビウス』のソルが「最初」として記憶されているのか
- 隠しキャラとは、結局何を隠していれば成立するのか
- 秘密を発見する楽しさは、ゲームの外にも広がっていった
- 結局、ゲーム史上最初の隠しキャラは誰だったのか
ゲーム史上初の隠しキャラは誰?ゼビウス以前の謎を検証

ゲーム史上、最初の「隠しキャラ」は誰だったのか。
日本のゲーム史では、ナムコの『ゼビウス』に登場する「ソル」が、史上初の隠しキャラクターとして紹介されることがある。何もない地面へ攻撃を仕掛けると、それまで見えなかった構造物が突然現れる。ゲームの中に何かが隠されているという驚きを、多くのプレイヤーに印象付けた存在だ。
ところが、海外のゲーム史をさらに遡ると、別の候補が現れる。
1982年、米国のAtari 2600で発売された『E.T. the Extra-Terrestrial』。この作品には、通常の説明書で存在を知らされていない「Yar(ヤー)」というキャラクターが隠されていた。
しかも後年の噂や偶然発見されたバグではない。開発者のHoward Scott Warshaw(ハワード・スコット・ウォーショー)本人が、意図的に隠したことを証言している。
では、本当にソルより古い隠しキャラが存在したのか。そもそもゲームに隠されたものは、どこから「キャラクター」と呼べるのだろう。
当時の説明書、開発者の証言、発売時期の記録を照らし合わせながら、その起源を探っていく。
結論|『ゼビウス』のソル以前にも、秘密のキャラクターは存在した
まず結論から言うと、『ゼビウス』のソルより前に、開発者が意図的に隠したキャラクターを収録した商用ゲームが存在していた。
今回の調査で特に有力な先行例となったのが、1982年発売の『E.T. the Extra-Terrestrial』に隠されたYarだ。
ただし、「世界初の隠しキャラはYarだった」とまでは断定できない。1970年代にもゲームの秘密要素は存在しており、世界中のアーケードゲームや初期のコンピュータゲームをすべて調査して、それ以前には絶対に存在しなかったと証明することは難しいためだ。
さらに、現在の「隠しキャラ」という言葉と、1980年代初頭に使われていた意味にも違いがある。
| 比較項目 | 『E.T.』のYar | 『ゼビウス』のソル |
|---|---|---|
| 登場時期 | 1982年11月にはプレイ可能だった記録あり | 1982年末~1983年初頭とする記録がある |
| 正体 | 『Yars' Revenge』由来のキャラクター | 地中に隠された構造物 |
| 出現方法 | 特定条件で花を復活させる | 隠れた地点へブラスターを撃つ |
| 秘密の性質 | 説明書で具体的な登場を知らせていない | 画面上に見えない場所を探させる |
| 位置付け | ソル以前の有力な実例 | 日本の隠しキャラ文化を代表する初期例 |
この2つは、どちらも意図的に隠された存在だ。しかし、プレイヤーにどのような発見をさせようとしたのかは異なる。
『ゼビウス』のソルは、なぜ「史上初の隠しキャラ」と呼ばれるのか
ナムコのアーケードゲーム『ゼビウス』では、自機「ソルバルウ」を操作し、空中の敵をザッパー、地上の敵をブラスターで攻撃する。
そして、画面上には見えていない地上物が存在する。それが「ソル」だ。
何もないように見える場所でも、ソルが埋まっている地点に照準を合わせると反応が起きる。そこでブラスターを撃ち込むと、隠されていたソルが姿を現す。さらに攻撃すれば高得点を獲得できる。
バンダイナムコエンターテインメントの公式作品紹介でも、ソルは「隠しキャラクター」と説明されている。
『ゼビウス』には、ほかにも隠された「スペシャルフラッグ」がある。ただし、こちらはソルと違い、照準を合わせても点滅しない。両者は同じ発見方法ではない点に注意したい。
何もない地面を疑わせるという発明
ソルの面白さは、単なるボーナス得点ではない。
普通のシューティングゲームなら、画面に現れた敵を撃つ。しかしソルは、最初から姿を見せているわけではない。プレイヤーは照準の変化を手掛かりに、見えないものを探し出さなければならない。
「この場所には何かあるのではないか」と疑い、試してみる。そして今まで見えなかったものが現れる。
敵の出現パターンを覚えるのとは違う。ゲーム画面そのものを探索対象にしたところに、ソルの面白さがある。
なお、ソルは現在の対戦ゲームで言う「条件を満たすと選択できるキャラクター」ではない。あくまで地中に隠れた構造物だ。
それでも、当時のゲーム文化や後年の公式資料では、こうした隠されたオブジェクトも「隠しキャラ」と呼ばれていた。現代の意味だけで「ソルはキャラクターではない」と切り捨てるのは適切ではないだろう。
『ゼビウス』は1984年にファミコンへも移植された。家庭用ゲームの作品としての評価や、同時代のゲームとの比較については、つぶログのファミコン全ソフトTier表でも取り上げている。
当時の『ゼビウス』を公式紹介動画で確認
『ゼビウス』の画面や基本的なゲーム内容は、アーケード版を配信したD4エンタープライズの公式紹介動画でも確認できる。ソルが隠されていた時代のゲーム画面を知る資料として見ておきたい。
この動画はアーケード版『ゼビウス』の紹介であり、史上初の隠しキャラを証明する映像ではない。年代や「世界初」の判断については、別途当時の資料を確認する必要がある。
1982年『E.T.』には、説明書に載っていないYarが隠されていた
『ゼビウス』より古い有力候補として登場するのが、Atari 2600用の『E.T. the Extra-Terrestrial』だ。
映画『E.T.』を題材とした作品で、プレイヤーはE.T.を操作し、宇宙船と連絡するための部品を集めながら地球からの帰還を目指す。
このゲームは後年、評価の低さや米国ゲーム市場の混乱と結び付けて語られることも多くなった。しかし、今回注目するのはゲームの評判ではない。
ゲーム中に、映画の登場人物とは関係のないキャラクターが秘密裏に登場する仕掛けが存在したことだ。
井戸の底の花が、突然Yarに変わる
『E.T.』には、井戸の底にある枯れた花をE.T.が復活させる仕組みがある。
花を復活させることで、E.T.が倒れた際にElliottが救助できる回数を増やせる。これは説明書にも載っている通常のゲーム要素だ。
ところが、特定の条件を満たした状態で花を復活させると、思いも寄らないことが起こる。
花がYarという別作品のキャラクターに変化し、そのまま井戸から飛び去るのだ。
Yarは、開発者Howard Scott Warshawが手掛けた1982年のAtari 2600用ゲーム『Yars' Revenge』に由来する。
映画『E.T.』の物語に直接関係する存在ではない。開発者が自分の別作品を、こっそり忍ばせていたわけだ。
しかも、秘密は一度きりではない。次のラウンドで条件を満たすと、今度はIndiana Jonesが現れ、さらに続けると開発者自身のイニシャルが表示される。
何の変哲もない花が、別作品のキャラクターや開発者の署名へ変化していく。通常の進行とは別に用意された、かなり凝った仕掛けだ。
開発者が、自分で隠したことを認めている
この秘密が単なる噂ではないと判断できる理由は、開発者本人の証言にある。
Howard Scott Warshawは、Atari専門サイト「Atari Compendium」のインタビューで、自分のゲームにはイースターエッグを入れており、過去作品のキャラクターを別のゲームへ忍ばせていたと説明している。
『E.T.』では井戸に入る機会が多いため、そこに普段とは違うものを見つけられたら面白いと考えたという。
本人が説明したYarの出現手順は、ElliottへReese's Piecesをちょうど7個渡し、電話機の部品をすべて集めてから枯れた花を復活させるというものだった。
ただし、後年の技術的な調査では、すべての電話機の部品を集める必要はないとされている。Yarの場合は「H」、Indiana Jonesの場合は「S」、開発者のイニシャルの場合は「W」に対応する部品が条件となる。
開発者が後年説明した手順と、ゲーム内部で必要となる最小条件には違いがある。それでも、特定の条件で別作品のキャラクターが現れる仕掛けを意図的に実装していたことは変わらない。
開発者の直接証言は、Atari Compendiumのインタビューで確認できる。
当時の説明書には、本当にYarの存在が書かれていなかったのか
今回のテーマで特に重要なのは、プレイヤーがそのキャラクターの存在を知らされていたかどうかだ。
たとえば説明書に「秘密のキャラクターが隠れている」と書かれていれば、出現条件は秘密でも、存在そのものは予告されていたことになる。
そこで1982年のAtari 2600版『E.T.』の説明書を確認すると、枯れた花については説明がある。
井戸の底に花が存在すること、復活させると救助の機会が増えることなど、通常のゲームプレイに必要な情報は載っている。
しかし、確認した説明書本文には、花がYarへ変化することも、Indiana Jonesが現れることも書かれていない。
説明書には予想外の発見があるかもしれないという趣旨の記述は存在する。それでも、Yarという名前や、別作品のキャラクターが登場することを具体的に知らせているわけではない。
つまり、秘密なのは花の存在ではなく、花が別のキャラクターへ変化するという仕掛けそのものだった。
当時の説明書はAtariAgeの説明書アーカイブで確認できる。
「説明書に書かれていない」と「当時誰も知らなかった」は違う
ここには注意点もある。
説明書に記載されていないことは確認できても、1982年当時のすべてのプレイヤーがYarの存在を知らなかったとは言えない。
ゲームの秘密は、誰かが偶然発見し、口コミで広がる場合もある。開発者から関係者へ伝わることもあるだろう。
後年の雑誌で取り上げられた日付が、その秘密を初めて誰かが発見した日とも限らない。
『E.T.』のYarについては、最初の発見者や発見日時を確定できる資料までは確認できなかった。
したがって今回確認できたのは、「1982年に登場したゲームに、説明書で具体的な存在を知らせていないキャラクターが実装されていた」という事実だ。「1982年に世界で初めて発見された」という意味ではない。
『E.T.』は本当に『ゼビウス』より古いのか
隠しキャラの存在が確認できても、年代が逆ならソル以前の例にはならない。
そこで、両作品が実際に遊べる状態になった時期を確認してみよう。
『E.T.』は遅くとも1982年11月には存在していた
『E.T. the Extra-Terrestrial』は1982年発売の作品として記録されている。
さらに、その年代を裏付ける当時の資料が残っている。1982年11月19日付の米国新聞『Chicago Tribune』に掲載されたレビューだ。
記事では、筆者が『E.T.』を実際に3時間プレイした経験を記している。
ゲーム史資料の保存・研究に取り組むVideo Game History Foundationが、当時のレビューを集めた記事で紹介している。
新聞の掲載日だけで正確な一般発売日まで確定できるわけではない。しかし、遅くとも1982年11月19日には、実際に遊べる『E.T.』が存在していたことを示す証拠にはなる。
出典:Video Game History Foundationによる当時の『E.T.』レビュー検証
『ゼビウス』は1982年?1983年?資料によって表記が違う
『ゼビウス』の登場時期を調べると、1982年と1983年という2つの年が出てくる。
バンダイナムコエンターテインメントのWiiバーチャルコンソールアーケード向け公式紹介では、原作の発売年が「1982年」と記載されている。
一方、ファミ通は1983年1月29日をアーケード版が稼働開始したと思われる日として紹介している。この日付の根拠は、1984年発売のゲーム音楽アルバム『ビデオ・ゲーム・ミュージック』のライナーノーツだ。
また、1982年12月22日を記載する海外データベースも存在する。ただし、その日を確定した初稼働日として採用できるだけの一次資料は確認できなかった。
メーカー公式の発売年表記と、後年の資料を基にした推定稼働日には違いがある。そのため本記事では、『ゼビウス』を1982年末から1983年初頭に登場した作品として扱う。
今回確認した記録の範囲では、1982年11月時点で遊ばれていた『E.T.』が先行する。ただし、比較しているのはゲームの企画開始日やプログラムの完成日ではなく、市場に登場した時期だ。
なお、アーケードゲームの初期稼働には、場所や時期による違いが生じることもある。どの資料の年月日を指して「発売」と呼ぶかによって、表記が揺れる可能性にも留意したい。
実は『E.T.』より前にもYarは隠されていた
ここまで読むと、Yarが最初だったと言いたくなる。しかし、同じ1982年に発売された別のゲームにもYarが登場していた。
それがAtari 2600用『Raiders of the Lost Ark』だ。
映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を題材にした作品で、こちらもHoward Scott Warshawが開発を担当している。
このゲームにはFlying Saucer Mesaという場所があり、特定条件でYarが姿を現す。つまり『E.T.』以前にも、Warshawは自分の過去作品のキャラクターを別作品に忍ばせていた。
『Raiders of the Lost Ark』も1982年の作品であり、登場時期と秘密キャラクターの存在だけで比べるなら、こちらも最初期の有力候補となる。
ただし『レイダース』は説明書で存在をほのめかしていた
両作品の違いは説明書にある。
『Raiders of the Lost Ark』の説明書には、Flying Saucer Mesaの付近を地球外生命体YARが飛んでいるという未確認情報が記載されている。
つまり出現方法は秘密でも、Yarという存在については手掛かりが示されていたことになる。
一方、『E.T.』の説明書には、Yarという具体的な名前は登場しない。
今回の「存在そのものを知らされていないキャラクター」という条件には、『E.T.』のYarの方がよく合っている。
ただし、説明書にヒントが載っているから隠しキャラではない、という一般的な決まりがあるわけではない。『Raiders』のYarも十分に秘密キャラクターと呼べる。両作品の違いは、何をどこまで隠していたかにある。
当時の説明書はAtariAgeのアーカイブで確認できる。
1970年代にも秘密は存在した|イースターエッグとの違い
1982年より前のゲームにも、秘密がなかったわけではない。
むしろ、開発者がゲームの中にメッセージや特別な場所を隠す文化は、さらに古い時代まで遡る。
ただし、秘密の場所や文字が現れることと、秘密のキャラクターが登場することは区別しなければならない。
| 時期 | 作品 | 秘密の内容 | 分類 |
|---|---|---|---|
| 1973年 | Moonlander | 月面にマクドナルドが隠されている | 秘密の場所・演出 |
| 1977年 | Starship 1 | 開発者へのメッセージが現れる | 隠しメッセージ |
| 1979~1980年頃 | Adventure | 秘密の部屋に開発者名が表示される | 開発者署名 |
| 1982年 | Yars' Revenge | Ghost of Yarsと開発者の署名 | 説明書にGhostの存在が記載されている |
| 1982年 | Raiders of the Lost Ark | 特定条件でYarが出現 | 説明書にヒントあり |
| 1982年 | E.T. the Extra-Terrestrial | YarとIndiana Jonesが登場 | 具体的な存在は説明書に記載なし |
1973年『Moonlander』には、月面のマクドナルドがあった
古い例として有名なのが、1973年の『Moonlander』だ。
月面着陸を題材とするコンピュータゲームで、通常とは違う場所へ進むと、マクドナルドの店舗が現れる仕掛けが存在した。
その付近へ着陸すると宇宙飛行士が店へ向かう演出もあり、非常に早い時期のイースターエッグとして知られている。
しかし、秘密の中心は店舗という場所と、そこに結び付いた演出だ。宇宙飛行士が秘密の場所で初めて存在を明かされるキャラクターだったわけではない。
今回探しているものとは、少し性質が異なる。
『Adventure』で隠されていたのは開発者の名前
Atari 2600用『Adventure』にも、ゲーム史に残る有名な秘密がある。
特別な条件を満たすことで隠された部屋へ入り、開発者Warren Robinettの名前を発見できる仕掛けだ。
イースターエッグの歴史を語る際には必ずと言っていいほど登場する例だが、ここで隠されているのは人物型のキャラクターではなく、開発者による署名である。
さらに、隠しメッセージそのものは『Adventure』以前にも存在していた。
つまり「最初のイースターエッグ」と「最初の隠しキャラ」は、最初から同じ記録として扱えないのだ。
『Yars' Revenge』のGhost of Yarsが最初ではないのか
1982年の『Yars' Revenge』まで遡ると、さらに判断の難しい候補が現れる。
それが「Ghost of Yars」だ。
この作品には、特定の条件で開発者のイニシャルを表示させる仕掛けがある。その過程で関係するのがGhost of Yarsと呼ばれる現象だ。
ただし、当時の説明書にはGhost of Yarsの存在が記載されている。
隠されていたのは特殊な挙動や開発者の署名につながる条件であり、Ghostという名前の存在自体が完全に伏せられていたわけではない。
また、Ghost of Yarsを独立したキャラクターとして扱うべきか、ゲーム内の特殊な現象と捉えるべきかという問題もある。
したがって、今回の「存在を知らされていないキャラクター」という条件で最初と断定するのは避けたい。ただし『E.T.』より古い重要な秘密要素であることは確かだ。
『Mortal Kombat』のリプタイルが「最初」とされる理由
隠しキャラの歴史を調べると、1992年の『Mortal Kombat』に登場するReptile(リプタイル)の名前も出てくる。
リプタイルは、特定の条件を満たすことで戦える秘密のキャラクターとして知られている。
ギネス世界記録にも登録されているが、認定されているのは「対戦格闘ゲームにおける最初の隠しキャラクター」だ。
ゲーム全体の歴史を通じて最初だったという意味ではない。
ゲーム史上初、対戦格闘ゲーム初、操作可能な隠しキャラ初。これらはそれぞれ別の問いであり、一つの答えでまとめてしまうと誤解を招く。
なぜ日本では『ゼビウス』のソルが「最初」として記憶されているのか
ここまで確認すると、少なくとも年代だけを根拠にソルを世界初と断定することは難しい。
それでも、ソルが日本の隠しキャラ文化で特別な位置を占めていることには理由がある。
『E.T.』のYarは、開発者が自分の過去作品を忍ばせたイースターエッグという性格が強い。知らなくてもゲームを進められる、いわば開発者からの秘密の贈り物だ。
一方、ソルは『ゼビウス』の得点システムに組み込まれている。プレイヤーが場所を探し出し、攻撃することで得点を獲得できる。
秘密を見つける行動そのものが、攻略の一部になっているのだ。
何もない地面を調べ、照準の反応を覚え、次のプレイでは狙って出現させる。知っているプレイヤーは、その知識を使って高得点を目指せる。
そして、自分が見つけた秘密を友達に教える。知らない人が見れば、何もない地面から突然構造物が出てきたように見えるだろう。
秘密の知識が攻略情報として価値を持ち、人から人へ伝わっていく。そこには、後のファミコン時代の裏技文化にも通じる面白さがある。
もちろん、ソルがその後のすべての隠し要素へ直接影響を与えたとまでは証明できない。それでも、日本のアーケードゲームで「何かが隠されている場所を探す」という遊びを象徴する存在だったとは言えるだろう。
こうした秘密の発見が、後にゲーム雑誌や口コミを通じて広がった歴史については、関連記事「「裏技」は誰が最初に広めた?メーカーが隠したものを雑誌が暴く文化は、どう始まったのか」でも詳しく検証している。
隠しキャラとは、結局何を隠していれば成立するのか
こうして古い作品を並べると、ひとつの疑問が浮かぶ。
秘密とは、何が知られていない状態を指すのだろうか。
『Raiders of the Lost Ark』では、Yarという存在自体は説明書でほのめかされていた。しかし、どうすれば出会えるのかは簡単には分からない。
『ゼビウス』のソルは、画面上に姿を見せず、隠された場所を探して攻撃しなければ現れない。
『E.T.』のYarは、説明書で具体的な存在が明かされず、特殊な条件で突然別作品から姿を現す。
いずれも秘密ではある。しかし、隠されている情報は異なる。
出現場所なのか。出現条件なのか。それとも存在そのものなのか。
ゲーム史上最初の隠しキャラをひとつに決めることが難しいのは、異なる種類の秘密が、後年まとめて「隠しキャラ」という言葉で語られるようになったことにも理由がある。
現在でも、特定条件で仲間になる人物、特別な操作で対戦できる相手、背景に一瞬だけ現れるゲストなど、隠しキャラの範囲は広い。
今回の調査では、その中でも「通常の説明書などで存在を具体的に知らされていないキャラクター」に注目した。その条件で確認できた有力な初期例が、1982年『E.T.』のYarだったというわけだ。
秘密を発見する楽しさは、ゲームの外にも広がっていった
昔のゲームの秘密を調べていると、開発者が隠した時点では、まだプレイヤーの誰もそれを知らない場合があることに気付く。
プログラムの中には存在する。しかし誰かが条件を見つけなければ、画面には現れない。発見されても、その情報がすぐに広がるとは限らない。
『E.T.』のYarも、開発者が仕込んだことは確認できるが、最初に発見した人物や時期までは分かっていない。
一方、『ゼビウス』のソルは、見つけた場所を覚えておけば、次のプレイで狙って出現させられる。
秘密の知識が繰り返し使えるものになり、プレイヤー同士で交換する情報にもなった。
こうした文化は、その後の家庭用ゲームにも受け継がれる。雑誌で裏技を知り、実際に試し、成功すれば友達に教える。
現在では検索や動画で秘密をすぐに確認できるようになったが、かつては噂を頼りに何時間も試すことがあった。
その変化については、つぶログの「ゲームの裏技文化はなぜ消えたのか?コナミコマンドからバグ技・ガセネタまで振り返る」でも取り上げている。
隠しキャラの歴史は、秘密を仕込む開発者と、それを探すプレイヤーの両方によって形作られてきた。
結局、ゲーム史上最初の隠しキャラは誰だったのか
今回調べた範囲では、「世界中のすべてのゲームで最初に隠されたキャラクター」をひとつに確定することはできなかった。
ただし、いくつかの事実は確認できた。
- 『ゼビウス』のソルは、メーカー公式資料でも隠しキャラクターと紹介されている。
- 1982年の『E.T.』には、通常の説明書で存在を具体的に知らせていないYarが実装されていた。
- Yarの仕掛けは、開発者Howard Scott Warshaw本人が意図的に作ったものだった。
- 『E.T.』は遅くとも1982年11月には遊ばれており、今回確認した『ゼビウス』の登場時期より先行する。
- 1970年代には、秘密の場所や隠しメッセージなど、別の種類のイースターエッグがすでに存在していた。
したがって、「世界で最初の隠しキャラは『ゼビウス』のソルだった」という説明を、全ゲームに共通する確定した記録として扱うことは難しい。
存在そのものを伏せられたキャラクターという条件では、『E.T.』のYarはソル以前の重要な実例となる。
しかし、それでソルの価値が失われるわけではない。
『E.T.』のYarが開発者の遊び心から生まれた秘密だとすれば、『ゼビウス』のソルは、秘密を探し出す行為そのものにゲームとしての意味を与えた存在だった。
ゲームの中には、まだ知らない何かが隠されている。
今では当たり前になったその感覚が、40年以上前のゲームにも息づいていた。
「最初の隠しキャラ」という単純そうな疑問を調べていくと、そこには秘密を作る人と、それを見つける人の長い歴史があった。