
- FC『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』とは?アンキモ・ゲーム内容を解説
- 『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』の基本情報
- 料理ゲームではなく「コマンド選択式アドベンチャー」
- 「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」とは何なのか
- なぜ警察に捕まれる状況になったのか
- 奇妙な選択肢は「アンキモ」だけではない
- 全3部――ただしゲーム内で「第1章」と明示されるわけではない
- 第1部|フォアグラに勝つ料理はアンキモ
- 第2部|京極万太郎をもう一度もてなす
- 第3部|「究極のラーメン」は完全オリジナルなのか?
- 原作とゲームでいちばん違うのは「山岡に何をさせられるか」
- TVアニメ放送中に発売されたが、ゲームは音声付きアニメゲームではない
- 2007年『美味しんぼ DSレシピ集』はまったく別のソフト
- 2026年現在はどうやって遊べる?
- まとめ|『美味しんぼ』FC版は、料理を題材にした奇妙なコマンドADV
FC『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』とは?アンキモ・ゲーム内容を解説
ファミコンの『美味しんぼ』と聞くと、食材を切ったり、火加減を調節したりして料理を完成させるゲームを想像するかもしれません。
しかし、1989年発売の『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』は料理シミュレーションでも調理アクションでもなく、山岡士郎を主人公に文章を読み、コマンドを選びながら物語を進めていくアドベンチャーゲームです。
そして現在このゲームを調べると、料理そのもの以上によく出てくるのが、
「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」
という奇妙な一場面です。
これは後世に作られたネタでも、原作漫画のセリフでもありません。ゲーム中で警察官に呼び止められた山岡が「じゅもん」を選ぶと本当に唱え、そのまま逮捕されてゲームオーバーになります。
なぜ『美味しんぼ』で「じゅもん」なのか。まずは実際に何をして遊ぶゲームだったのかから整理していきましょう。
※ゲーム内容と一部のゲームオーバーについて触れます。
『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式タイトル | 美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負 |
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ |
| 発売日 | 1989年7月25日 |
| 制作・発売元 | 新正工業株式会社 |
| 販売元 | 株式会社バンダイ |
| ジャンル | アドベンチャー |
| プレイ人数 | 1人 |
| 定価 | 5,800円(税別) |
| ROM容量 | 2Mbit |
| セーブ方式 | パスワード |
| 型番 | SHI-OS |
| JAN | 4902425260310 |
正式タイトルの末尾に「!」は付きません。ファミ通の現行ゲームデータベースでも『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』と表記され、1989年7月25日発売、5,800円、ジャンルはアドベンチャー、メーカーは新正工業となっています。
会社表記は少し複雑です。パッケージ・説明書系資料では、「制作・発売元:新正工業株式会社」「販売元:株式会社バンダイ」と分かれています。そのため「バンダイが発売したゲーム」とだけ書くより、この2社の役割を分けたほうが正確です。型番はSHI-OS、JANコードは4902425260310です。
なお、後年のゲーム資料では開発をトーセとするものが複数ありますが、ゲーム内に一般的なスタッフロールがなく、今回確認できた当時資料から開発会社を直接固定できないため、本文の基本情報には含めていません。
料理ゲームではなく「コマンド選択式アドベンチャー」
本作の基本画面は、グラフィックと文章、そして「みる」「いどう」などのコマンドで構成されています。
説明書では、十字ボタンでコマンドを選択し、Aボタンで実行・会話送り、Bボタンで実行前のコマンドをキャンセル。場面によって人物、場所、物などのサブコマンドが追加され、それらを選びながら情報を集めて先へ進みます。
プレイヤーが繰り返すのは、おおむね、
場所を移動する → 人と話す・周囲を見る → 必要な情報や食材を得る → 正しい行動や調理方法を選択する
という流れです。
料理を題材にはしていますが、魚を包丁操作で切ったり、鍋の温度をリアルタイムで管理したりするわけではありません。調理も「どう処理するか」という選択肢を正しく選ぶことで進みます。
つまり、『美味しんぼ』の食材探しや料理知識を、1980年代のコマンド選択式ADVへ置き換えたゲームです。
パスワードはSELECTボタンですぐ表示できる
本作にはバッテリーバックアップはなく、途中再開にはパスワードを使用します。
通常のコマンド選択画面でSELECTボタンを押せば、その時点のパスワードを確認できます。タイトル画面でCONTINUEを選び、記録した文字列を入力すれば続きから再開できます。
ただし少し厄介なのが、すでに失敗が確定しているような状態でもパスワードを取得できる場合があることです。
たとえば第1部の制限時間やアンキモの調理手順で、先へ進んでもゲームオーバーを避けられない状態をそのまま記録できるケースがあります。パスワードが必ず「安全なチェックポイント」になるわけではありません。
「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」とは何なのか
本作でもっとも知られている場面のひとつが、第1部のアンキモ探しの途中にあります。
山岡はアンキモについて情報を得るため、小料理屋の様子を外からうかがいます。すると不審に思った警察官に呼び止められ、そこで突然、
- たたかう
- にげる
- じゅもん
という、RPGの戦闘画面を思わせる選択肢が現れます。
そして「じゅもん」を選ぶと、山岡が唱えるのが、
「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」
です。
もちろん警察官には通用しません。そのまま連行され、ゲームオーバーになります。
しかも「たたかう」を選んでも、山岡の攻撃は外れ、警官から反撃を受けて結局ゲームオーバー。「にげる」も簡単には逃げ切れず、何度か選ぶことでようやく脱出できます。
ここで重要なのは、「アンキモ」という単語自体は原作から来ているものの、警察官へ向かって呪文として唱える場面は原作にはないことです。
このゲーム独自の選択肢と展開です。
なぜ警察に捕まれる状況になったのか
そもそも第1部は、原作『美味しんぼ』第1巻の第2話「味で勝負」を下敷きにしています。
小学館公式の第1巻紹介にも、「味で勝負(アンコウの肝)」として収録されています。原作では、食通たちが珍重するフォアグラに対して山岡が異を唱え、よりうまいものとしてアンコウの肝を提示します。
ところがゲームでは、その流れをADVとして成立させるため大きく作り替えています。
山岡は「フォアグラよりうまいもの」を用意すると宣言したあと、何を出すべきか情報を集め始め、やがてアンキモへたどり着きます。つまり、原作では最初から答えを知っていた山岡が、ゲームではプレイヤーと一緒に答えを探す人物へ変更されているわけです。
小料理屋をのぞく場面もその情報収集の一部であり、そこで警察官に見つかった結果として「じゅもん」が登場します。
原作の料理エピソードをそのまま読むのではなく、探索や選択肢を成立させるために山岡の行動まで組み替えたことが、あの奇妙な場面を生む土台になっています。
奇妙な選択肢は「アンキモ」だけではない
本作が後年「バカゲー」と紹介されることがある理由は、「アンキモ」だけではありません。
正しい料理方法を選ぶ場面にも、明らかに選んではいけない行動が混ざっています。
たとえばアンコウを扱う場面では、正しい処理方法とは別に「なぐる」や「すてる」といった選択肢が出てきます。「すてる」を選べば、苦労して入手した食材を山岡自身が捨ててしまい、そのまま失敗へ向かいます。
調理では「めったぎり」「こまぎれにする」といった極端な選択肢も用意され、正解ではないものを選ぶと突然ゲームオーバーになる場面があります。実際のプレイ記録でも、それぞれ独立したバッドエンドを確認できます。
ここで「クソゲー」と「バカゲー」は分けて考えたほうがよいでしょう。
ゲームとしての出来を一括して「悪い」と評価することと、わざと選んでみたくなる異様な選択肢や、原作キャラクターの普段の行動から大きく外れた展開を楽しむ「バカゲー」的な面は同じではありません。
本作について具体的に確認できるのは、選択肢の中に意図的と思えるほど突飛なものがあり、その多くが専用のゲームオーバーへつながることです。
評価語だけを先に置くより、この仕様を見るほうが本作の奇妙さは伝わります。
全3部――ただしゲーム内で「第1章」と明示されるわけではない
『究極のメニュー三本勝負』は、大きく3つの物語に区切ることができます。
ただし、攻略資料などでよく使われる「アンキモ編」「京極編」「ラーメン編」という名称や「第1話・第2話・第3話」という番号は、ゲーム内の正式な章タイトルではありません。ゲーム自体には明確な話数表示がないため、ここでも内容を分かりやすくするため便宜上3部に分けます。
| 区分 | 中心となる内容 | 原作との関係 |
|---|---|---|
| 第1部 | フォアグラに対抗する料理を探す | 第1巻「味で勝負」が下敷き |
| 第2部 | 京極万太郎を料理でもてなす | 第1巻「平凡の非凡」が中心 |
| 第3部 | 「究極のラーメン」を作る | ゲーム独自の筋立てが中心 |
第1部|フォアグラに勝つ料理はアンキモ
第1部の核になっているのは、先ほど触れた第1巻第2話「味で勝負」です。
食通たちがフォアグラをありがたがることに山岡が反発し、それ以上の味としてアンコウの肝を提示する――この基本構図は原作と共通しています。
しかしゲームでは、プレイヤーに情報収集をさせるため、山岡がアンキモの入手場所や調理方法を調べる工程が追加されています。
アンコウを手に入れれば終わりではなく、扱い方を間違えれば失敗するため、正しい情報を先に得ておく必要もあります。
この「原作では山岡が知っていることを、ゲームではプレイヤー自身が調査する」置き換えが、本作のADVとしての基本構造です。
第2部|京極万太郎をもう一度もてなす
第2部では、京都の食通・京極万太郎が中心になります。
核となる原作エピソードは、第1巻第4話「平凡の非凡」です。小学館公式でも、ご飯、味噌汁、イワシの丸干しを扱う話として収録が確認できます。
ゲームでは、京極を満足させる料理を用意し、彼が所有するルノワールの絵を借りることが目的になります。
途中では複数の場所を訪れ、人から情報を聞き、必要な料理へ近づいていくため、原作の一話をそのまま画面に移したものではありません。最終的な「豪華な料理ではなく、ご飯・味噌汁・魚という一見平凡な料理の質で京極を納得させる」という核を利用しつつ、ADV用に経路やイベントを膨らませています。
つまり、第1部も第2部も原作エピソードの完全再現ではなく、原作の料理と結論を軸にゲーム用の探索を追加した再構成です。
第3部|「究極のラーメン」は完全オリジナルなのか?
第3部では、山岡が「究極のラーメン」作りに挑みます。
後年のゲーム資料ではこの部分を「ゲームオリジナル」とする説明が広く使われています。実際、第1部や第2部のように「原作第○巻のこの一話を直接ゲーム化した」と一本に対応させられる構成ではありません。
さらに当時のパッケージには、
「原作者・雁屋先生書き下しのオリジナルストーリー」
を売りにする記載があります。
ただし、この一文だけから、
「雁屋哲がゲーム全編のシナリオを書いた」
あるいは、
「第3部の全シナリオを雁屋哲が執筆した」
とまでは断定できません。パッケージは「書き下ろしのオリジナルストーリー」が含まれることを示していますが、その担当範囲までは説明していないからです。
もうひとつ注意したいのは、『美味しんぼ』原作にもゲーム発売前から麺を掘り下げた話が存在することです。
小学館公式によれば、第8巻には「スープと麺」という前・中・後編があり、究極の冷し中華を追求する物語が収録されています。
したがって第3部については、
ゲーム独自の「究極のラーメン」という筋立てを持つ一方、『美味しんぼ』に麺料理を探究する原作エピソード自体がなかったわけではない
と整理するのが安全です。
旧記事のように「完全なゲームオリジナルで、原作にない食材や料理を大量に追加した」とまで広げる必要はありません。
原作とゲームでいちばん違うのは「山岡に何をさせられるか」
原作との差はストーリーの短縮だけではありません。
ゲームではプレイヤーに選択肢を与える必要があるため、原作の山岡ならまず選ばない行動まで操作可能になっています。
警察官へ「じゅもん」を唱える。アンコウを殴ろうとする。せっかく手に入れた食材を捨てる。
これらを選ばなければ物語は比較的真面目に進みますが、あえて誤ったコマンドを選ぶと原作から大きく外れた山岡が現れ、その結果専用のゲームオーバーが表示されます。
後年「バカゲー」として語られやすくなった理由のひとつは、この真面目なグルメ漫画と、ゲーム側が用意した突飛な選択肢との落差にあると考えれば理解しやすいでしょう。
一方で、通常ルートには山岡、栗田、海原雄山、京極万太郎、岡星、中松警部など原作人物が多数登場し、料理や食材についての説明も盛り込まれています。
「原作を無視したギャグゲーム」だけでもなく、「忠実な原作追体験」だけでもない。その二つが同じソフトの中に並んでいることが、本作の独特なところです。
TVアニメ放送中に発売されたが、ゲームは音声付きアニメゲームではない
TVアニメ『美味しんぼ』は1988年10月から1992年3月まで日本テレビ系で放送されており、本作が発売された1989年7月は放送期間中にあたります。シンエイ動画の公式記録では全136話です。
ゲームの権利表記にも雁屋哲・花咲アキラ、小学館に加え、シンエイやNTVに関係する表記が確認できます。
ただし、ファミコン版にTVアニメの声優ボイスが収録されているわけではありません。
基本は文字と静止画で進行するADVなので、「アニメの声や映像を再現したゲーム」と説明するより、アニメ放送期に発売された『美味しんぼ』のファミコンゲームと整理するほうが実態に合います。
2007年『美味しんぼ DSレシピ集』はまったく別のソフト
『美味しんぼ』の家庭用ゲームは、このファミコン版だけではありません。
2007年3月8日には、ニンテンドーDS用『美味しんぼ DSレシピ集』がバンダイナムコゲームスから発売されています。
ただし内容はFC版とは大きく異なります。
『DSレシピ集』は原作に登場した料理から100種類以上のレシピを収録し、材料、調理方法、ジャンル、難易度、所要時間などから検索できるソフトです。原作ストーリー紹介、料理辞典、クイズも収録されています。
つまり、
1989年FC版=ストーリーを進めるコマンド選択式ADV
2007年DS版=レシピや食の情報を調べる実用・データベース寄りソフト
です。
「美味しんぼの料理ゲーム」とひとまとめにすると、この2本もまったく違う内容になります。
2026年現在はどうやって遊べる?
2026年8月26日時点で、FC『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』は、Nintendo Switch 2/Nintendo Switchの「ファミリーコンピュータ Nintendo Classics」には収録されていません。
任天堂の現行Nintendo Classicsタイトル一覧にも本作は掲載されておらず、PlayStation、Xbox、Steamなどにも本作そのものを購入できる現行公式版は確認できません。
検索時に少し紛らわしいのが、2024年発売のNintendo Switch用『ゲームセンターCX 有野の挑戦状 1+2 REPLAY バンダイナムコスペシャル』です。
限定版DVDには、番組で有野晋哉が『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』へ挑戦した映像が収録されています。
しかし、これはFC版『美味しんぼ』がSwitchへ移植されたという意味ではありません。収録されているのは挑戦番組の映像であり、Switch上で『美味しんぼ』そのものをプレイできるわけではありません。
そのため現在このゲームを遊ぶ基本的な方法は、中古のFCカートリッジを入手し、ファミリーコンピュータ用ソフトを利用できる対応環境でプレイすることです。
中古品は価格だけでなく、箱・説明書の有無やカートリッジ状態も個体ごとに異なるため、固定価格として考えるべきではありません。
まとめ|『美味しんぼ』FC版は、料理を題材にした奇妙なコマンドADV
『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』は、1989年7月25日に新正工業が制作・発売し、バンダイが販売したファミリーコンピュータ用アドベンチャーゲームです。
プレイヤーが行うのは、料理をリアルタイムで作ることではありません。山岡士郎を主人公に、「みる」「いどう」などのコマンドを選び、人から話を聞き、食材や料理の情報を集め、正しい選択肢を積み重ねて3つの物語を進めます。
第1部と第2部には原作初期の「味で勝負」「平凡の非凡」が強く反映され、第3部では「究極のラーメン」というゲーム独自色の強い物語が展開します。
そして、この真面目なグルメADVの途中に突然現れるのが、
「たたかう」「にげる」「じゅもん」
という場違いな選択肢です。
「じゅもん」を選んだ山岡が、
「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」
と唱えて警察に連行される場面は、ゲーム本編に実在します。
本作が現在まで話題にされる理由を知るなら、「料理漫画をゲームにした珍作」という説明だけでは足りません。
原作の料理エピソードをコマンドADVへ変換した真面目な部分と、選んだ瞬間に山岡の行動が大きく脱線する奇妙なバッドエンドが、同じゲームの中に共存している。
そこまで分かると、『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』がどんなゲームだったのかが、かなり正確に見えてきます。