
小宇宙を燃やして聖衣をまとい、ペガサス流星拳で強敵を倒す。
漫画やテレビアニメで描かれた『聖闘士星矢』の戦いを、1987年のファミコンで表現しようとした作品が『聖闘士星矢 黄金伝説』です。
横スクロールのアクションだけでなく、町や修業地を巡る情報収集、経験値による能力強化、小宇宙の振り分けを行うシミュレーションバトルまで収録。さらに、育てた星矢同士で戦うVSモードも用意されました。
ただし、できることが多い一方で、ゲームの仕組みは非常に複雑です。
経験値を得ても自動では強くならず、小宇宙の使い方を間違えると技を出せない。聖衣を着れば能力は上がるものの、移動中にも小宇宙を消費します。
原作の流れを知っているだけでは攻略できず、ゲーム独自のルールを理解しなければ、序盤の修業や銀河戦争で行き詰まることもあります。
『聖闘士星矢』の世界を再現するために、原作の設定を大胆な数値とシステムへ置き換えた作品。それが『黄金伝説』です。
この記事では、ゲーム内容や難しいといわれる理由、原作との違い、続編『黄金伝説 完結編』との関係まで詳しく紹介します。
『聖闘士星矢 黄金伝説』の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式タイトル | 聖闘士星矢 黄金伝説 |
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ |
| 発売日 | 1987年8月10日 |
| 発売元 | バンダイ |
| 価格 | 5,500円 |
| 主人公 | ペガサス星矢 |
| ゲーム構成 | 横スクロールアクション+シミュレーションバトル |
| プレイ人数 | 通常モード1人・VSモード2人 |
| 記録方式 | パスワード |
『聖闘士星矢 黄金伝説』は、1987年8月10日にバンダイから発売されたファミリーコンピュータ用ソフトです。
星矢を横スクロール画面で操作するアクションと、敵へ挑む前に小宇宙を能力へ振り分けるシミュレーションバトルを組み合わせています。
敵を倒して経験値を集めるRPG的な成長要素や、複数の場所を行き来して情報を得るアドベンチャー要素もあり、一つのジャンルだけでは説明しにくい作品です。
『聖闘士星矢』初のファミコン用ソフト
本作は、『聖闘士星矢』を題材にした最初のファミコン用ソフトです。
漫画の連載開始は1985年、テレビアニメの放送開始は1986年10月。ゲームはアニメ放送開始から約10か月後に登場しました。
当時は原作漫画もテレビアニメも物語の途中であり、黄金聖闘士編の結末まで明らかになっていませんでした。
そのため、ゲームは星矢がギリシアで修業する冒頭から、銀河戦争、暗黒聖闘士、白銀聖闘士との戦いをたどりながら、終盤では当時の原作やアニメとは異なる展開へ進みます。
発売時点で分かっていた物語を可能な限り盛り込みつつ、最後はゲーム独自の結末を用意した作品です。
続編『黄金伝説 完結編』は1988年に発売
1988年5月30日には、続編となる『聖闘士星矢 黄金伝説 完結編』が発売されました。
『完結編』は、アテナに刺さった黄金の矢を抜くため、青銅聖闘士たちが十二宮を駆け上がる黄金聖闘士編に特化しています。
初代『黄金伝説』が星矢の修業から複数の物語を扱うのに対し、『完結編』は十二宮の突破と黄金聖闘士との戦いが中心です。
タイトルだけを見ると『完結編』が初代の続きに見えますが、ゲームシステムや物語の始め方は大きく変わっています。
初代は『聖闘士星矢』の冒険全体を一つの複雑なゲームへまとめた作品、『完結編』は十二宮編をより直接的に遊ばせる作品と考えると、違いが分かりやすいでしょう。
『聖闘士星矢 黄金伝説』はどんなゲーム?

プレイヤーはペガサス星矢となり、ギリシアの聖域でペガサスの聖衣を手に入れるところから冒険を始めます。
その後、日本へ戻って銀河戦争へ参加し、紫龍、氷河、瞬、一輝たちと戦いながら仲間を増やしていきます。
ゲームの進行は、決められたステージを順番にクリアするだけではありません。
移動先を選び、横スクロール画面で敵を倒し、人物と会話して情報を集め、必要な条件を満たすと次の場所が開かれます。
横スクロールの移動モード

町、病院、修業地、洞窟などを移動すると、星矢を直接操作する横スクロール画面に切り替わります。
十字ボタンで左右へ移動し、上入力や扉の前で建物へ入り、Aボタンでジャンプ、Bボタンでパンチを繰り出します。
Aボタンと十字ボタンの組み合わせによるジャンプキックや、Bボタンを連続して入力する衝撃波も使用できます。
敵を倒すと経験値や小宇宙を獲得できますが、強敵に敗れると星矢のダメージが増えます。
横スクロールアクションとして見ると操作は簡単ですが、ジャンプの高さ、攻撃の届く範囲、敵との接触判定には慣れが必要です。
シミュレーションバトルでは小宇宙を振り分ける
重要な敵や聖闘士と出会うと、シミュレーションバトルへ移ります。
戦闘が始まる前に、現在持っている小宇宙を4種類の能力へ振り分けます。
| 能力 | 主な役割 |
|---|---|
| A Pow | 攻撃の威力に影響 |
| M Pow | 攻撃速度や回避に影響 |
| D Pow | 敵の攻撃を防ぐ力に影響 |
| H Pow | 使用できる技の強さに影響 |
すべてを攻撃へ振り分ければ強くなるわけではありません。
攻撃力が高くても、M Powが低ければ相手へ技を当てにくくなります。防御を軽視すると、一度の攻撃で大きなダメージを受けます。
さらに、振り分けた小宇宙は戦闘で消費されます。
強力な技を使って一気に倒そうとすると、小宇宙が尽きて反撃できなくなることもあります。
相手の能力を見ながら、小宇宙をどこへ配分するのか。戦闘前の数値調整が、実際の技選択と同じくらい重要です。
「たたかう」だけでは勝てない
シミュレーションバトルでは、「たたかう」「にげる」「はなす」「なかま」などのコマンドを選びます。
「たたかう」を選べば、振り分けた小宇宙に応じてパンチ、キック、ペガサス流星拳、ペガサス彗星拳などが発動します。
「はなす」は単なる会話ではありません。
相手によっては、話しかけることで戦いの理由や攻略の手掛かりを得られます。戦う必要のない人物や、会話によって展開が変わる場面もあります。
仲間を呼び出して敵と戦わせることもできるため、星矢一人の能力だけで進むゲームではありません。
強敵を力だけで倒そうとせず、会話や仲間を使うことが『聖闘士星矢』らしい攻略法になっています。
生年月日で星矢の初期能力が変わる
ゲームを最初から始めると、星矢の生年月日を入力します。
入力した星座によって、A Pow、M Pow、D Pow、H Pow、AS、CP、JPなどの初期値が変化します。
どの星座を選んでも小宇宙とダメージの初期値は同じですが、攻撃、防御、移動、技、聖衣、ジャンプに関する能力配分は異なります。
説明書には12星座の数値表が掲載されており、2月29日を入力した場合は魚座として扱われます。
星座によって得意分野が変化
たとえば、攻撃に関わる能力が高い星座もあれば、防御やジャンプに優れた星座もあります。
ゲーム開始時には、各能力がなぜ高いのか、どの星座が有利なのかは詳しく説明されません。
自分の誕生日を素直に入力したプレイヤーと、能力を確認して別の日付を入力したプレイヤーでは、序盤の操作感が異なります。
星占いのような遊びを取り入れながら、実際のゲームバランスにも影響を与える仕組みです。
ただし、初期値が低い能力も経験値を使って成長させられるため、特定の星座でなければクリアできないわけではありません。
経験値を集めても自動では強くならない
敵を倒すと「EX」と呼ばれる経験値を獲得します。
一般的なRPGでは、一定の経験値を得れば自動的にレベルが上がりますが、本作は異なります。
能力表示画面を開き、獲得したEXを自分で各能力へ振り分けなければなりません。
能力には最大20までのレベルがあり、レベルを上げることで最大値が増えます。
レベルと現在値は別に管理される
本作では、それぞれの能力に「レベル」と「現在値」があります。
経験値を使ってレベルを上げると能力の最大値は高くなりますが、現在値まで自動的に最大になるわけではありません。
説明書の能力表示画面では、Aボタンで能力レベルとダメージ回復量を上げ、Bボタンで能力レベルを下げて回復量を減らす操作が示されています。
一度伸ばした能力を下げ、別の能力へ経験値を回すこともできます。
自由度の高い仕組みですが、数値の意味を理解しないまま操作すると、必要な能力を下げたり、経験値を有効に使えなかったりします。
聖衣を着れば強くなるが小宇宙を消費する
ペガサスの聖衣を身に着けると、星矢の能力は上昇します。
強敵と戦うときには欠かせませんが、聖衣を着ている間は小宇宙の消費量も多くなります。
横スクロール画面を移動しているだけでも影響があるため、常に装着していればよいわけではありません。
説明書にも、移動中は聖衣を脱いで小宇宙の消費を抑える方が有利と記されています。
原作の設定を資源管理へ置き換えた
原作では、聖闘士が聖衣をまとえば戦闘力や防御力が高まります。
ゲームでは、その設定を能力上昇として再現する一方、装着中に小宇宙を消費する欠点を加えました。
危険な敵と戦う直前に聖衣を着て、移動や情報収集では外す。装着する場面を考える必要があります。
ただし、聖衣の着脱はメニュー画面から行うため、忘れたまま強敵との戦いへ入ることもあります。
聖衣を着ずに戦えば本来の能力を発揮できず、着たまま迷えば小宇宙を失う。
原作では頼もしい聖衣が、ゲームでは管理すべき重要な装備になっています。
育てた星矢同士で戦うVSモード
通常の物語とは別に、2人で対戦できるVSモードも収録されています。
それぞれが通常モードで育てた星矢のパスワードを入力し、その能力を使ってシミュレーションバトルを行います。
プレイヤー1はペガサス星矢、プレイヤー2はブラックペガサスとして戦います。
通常モードで経験値を集め、能力を上げた成果を友人との対戦へ持ち込める仕組みです。
『聖闘士星矢 黄金伝説』はなぜ難しい?

本作の難しさは、横スクロールアクションの操作性だけではありません。
小宇宙、DAMAGE、EX、7種類の能力値、聖衣の着脱、情報収集、移動先の解放など、複数の仕組みを同時に理解する必要があります。
しかも、ゲーム内では最適な育て方や小宇宙の振り分け方を詳しく教えてくれません。
原作の知識があっても、『黄金伝説』独自の数値と進行条件を知らなければ先へ進めないことが、難しさの中心です。
小宇宙の振り分けが複雑
強敵とのシミュレーションバトルでは、戦闘前に小宇宙をA Pow、M Pow、D Pow、H Powへ振り分けます。
A Powだけを高くしても、M Powが不足すれば攻撃を当てにくくなります。D Powを削れば相手の技を防げず、H Powが低ければ強力な必殺技を使えません。
4種類をすべて最大に近づければ強くなりますが、攻撃に使った能力レベルの合計に応じて小宇宙も消費します。
一度の攻撃へ大量の小宇宙を使い、相手を倒せなければ、次の行動に必要な力が残らないこともあります。
敵の能力を確認している間にも小宇宙が減る
戦闘中にセレクトボタンを押すと、相手の能力を確認できます。
敵の攻撃力や防御力を見てから小宇宙を配分できる便利な機能ですが、能力画面を長く見ている間にも星矢の小宇宙は減っていきます。
数値の意味を考え、最適な配分を決めようとしているだけで、戦うための力を失ってしまいます。
現在のゲームなら、戦闘メニューを開いている間は時間や資源が止まることが一般的です。
本作では、敵を分析する時間まで消耗の対象になるため、迷わず判断することが求められます。
小宇宙が0になると攻撃できない
DAMAGEが残っていても、小宇宙が0になると相手を攻撃できません。
戦闘前の配分で使いすぎたり、聖衣を着たまま長時間移動したりすると、体力はあるのに戦えない状態になります。
反対に小宇宙を温存しすぎれば、攻撃力や防御力が足りず、相手から大きなDAMAGEを受けます。
小宇宙は必殺技だけに使うMPではなく、攻撃、防御、回避、精神力のすべてを支える資源です。
DAMAGEと小宇宙のどちらか一方だけを守っても勝てないことが、一般的なアクションゲームとは異なる厳しさを生んでいます。
情報を集めなければ次の目的地が分からない
町や修業地には、会話できる人物や建物があります。
人と話すことで小宇宙が増えるだけでなく、次に向かう場所や敵を倒すための情報を得られる場合があります。
入口が目立たない場所や、開いていない門もあり、横スクロール画面を端まで進むだけでは目的地へ到達できません。
必要な人物と話さずに移動を繰り返しても、新しい展開が始まらないことがあります。
原作の物語を知っていても、ゲーム内のフラグや移動条件までは分からないため、画面内の人物や入口を一つずつ確かめる必要があります。
生年月日によってアクションの操作感まで変わる
ゲーム開始時に入力した生年月日は、戦闘用の能力だけでなく、ASとJPの初期値にも影響します。
ASは攻撃の命中率に加え、移動画面での動きにも関係します。JPはジャンプ力や攻撃をかわす能力へ影響します。
星座によって低い数値から始まると、パンチを当てにくい、ジャンプで敵を避けにくいと感じる場合があります。
自分の誕生日を入れただけで序盤の難易度が変わりますが、最初にその差を実感するのは簡単ではありません。
操作が難しい原因がプレイヤーの腕なのか、能力値なのか判断しにくいことも、本作を分かりにくくしています。
アクション部分の当たり判定も厳しい
横スクロール画面では、パンチ、ジャンプキック、衝撃波を使って雑兵を倒します。
しかし、パンチの届く距離は短く、敵へ接近すると相手の攻撃や接触によってDAMAGEを受けやすくなります。
ジャンプには独特の感覚があり、足場や敵を越えるつもりが、思った位置へ着地できないこともあります。
能力を上げれば攻撃やジャンプは改善しますが、序盤は数値が低く、経験値も十分にありません。
RPGとして育成が必要なのに、育成するための敵を倒すアクション自体が難しいという構造です。
長いパスワードを書き間違える危険がある
途中から再開するには、城戸沙織から教えられるパスワードを記録します。
ひらがなを並べた長いパスワードで、文字を一つ間違えるだけでも続きから始められません。
紙に書き写すときの見間違いに加え、再開時の入力にも時間がかかります。
能力値や物語の進行状況を記録する必要があるため、パスワードは短くできませんでした。
現在のような自動保存がない時代とはいえ、育てた星矢を失う可能性があることは、ゲーム本編とは別の緊張を生みました。
原作漫画・テレビアニメとの違い

『黄金伝説』は、星矢が聖域で修業するところから始まり、銀河戦争、暗黒聖闘士、白銀聖闘士との戦いを経て、十二宮へ進みます。
大きな流れは原作漫画やテレビアニメをもとにしていますが、すべての戦いや人物を順番に再現した作品ではありません。
発売された1987年8月の時点では、原作とテレビアニメの十二宮編も進行中でした。
そのため、ゲームの終盤には、当時まだ結末が明らかになっていなかった物語を補う独自展開が加えられています。
原作の長い物語を一つのゲームへ圧縮
序盤では、マリンの修業を受け、カシオスとの決定戦を制してペガサスの聖衣を手に入れます。
日本へ戻った後は銀河戦争へ参加し、紫龍、氷河、瞬、一輝との戦いへ進みます。
さらに暗黒聖闘士や白銀聖闘士が登場し、終盤では黄金聖闘士が待つ十二宮へ向かいます。
原作では多くの話数をかけて描かれた内容を、町の移動、会話、横スクロールアクション、シミュレーションバトルへ置き換えました。
人物や戦いの省略はありますが、星矢が仲間を得ながら聖域へ近づく流れは保たれています。
主に操作するのは星矢一人
原作では、星矢、紫龍、氷河、瞬、一輝がそれぞれ重要な戦いを担当します。
初代『黄金伝説』の移動画面で直接操作するのは、基本的に星矢です。
仲間たちは会話やシミュレーションバトルで登場し、必要に応じて呼び出して戦わせますが、自由に操作キャラクターを切り替えて冒険する作品ではありません。
そのため、原作で紫龍や氷河が中心となった場面も、ゲームでは星矢を軸に再構成されています。
複数の青銅聖闘士を選んで十二宮を進む仕組みは、翌年の『黄金伝説 完結編』で本格的に採用されました。
教皇アーレスはテレビアニメ版の設定
公式説明書では、聖域を支配する敵が「教皇アーレス」と記されています。
アーレスは当時のテレビアニメで使われていた名称で、原作漫画の設定と完全に同じではありません。
ゲームには原作漫画の物語だけでなく、アニメで広げられた世界観や名称も取り入れられています。
キャラクターの色や外見もテレビアニメを思わせる表現が多く、原作とアニメのどちらか一方だけを再現した作品ではありません。
1987年時点で広く知られていた『聖闘士星矢』の要素を組み合わせたゲームと考えるのが分かりやすいでしょう。
十二宮のすべては登場しない
初代『黄金伝説』には十二宮での戦いがありますが、12人すべての黄金聖闘士と順番に戦うわけではありません。
アルデバラン、双子座の聖闘士、デスマスク、アイオリア、シャカ、ミロなど、十二宮編の一部が収録されています。
原作やテレビアニメの結末まで描くには、発売時期が早すぎました。
そのため、最後は本物の教皇や双子座サガとの決着ではなく、ゲームオリジナルの敵との戦いへ進みます。
タイトルに「黄金伝説」とありながら、黄金聖闘士編の全体を収録していないことが、後の『完結編』につながりました。
ゲームオリジナルのラスボス「シャドウクロス」
十二宮の奥で待っているのは、教皇本人ではありません。
教皇の姿を装った影武者が正体を現し、シャドウクロスをまとって星矢に戦いを挑みます。
シャドウクロスは原作漫画にもテレビアニメにも登場しない、ファミコン版だけの敵です。
デザインは「週刊少年ジャンプ」で行われた読者公募から選ばれた案をもとに誕生しました。
原作の結末が分からない時期に生まれた敵
『黄金伝説』が発売された1987年8月には、十二宮編の結末はまだゲームへ収録できる状態ではありませんでした。
教皇の正体や最終決戦を勝手に作れば、その後の原作と大きく矛盾する可能性があります。
そこでゲームは、教皇本人ではなく影武者を最後の敵にする構成を選びました。
シャドウクロスを倒しても、教皇アーレスとの本当の戦いが終わったわけではありません。
物語を完結させず、原作の続きへつなげられるラスボスとして作られたことが分かります。
本物の教皇との決着は描かれない
シャドウクロスとの戦いに勝利すると、星矢は影武者を倒したことを知ります。
しかし、本物の教皇アーレスの正体や行方は明らかにならず、十二宮編は完全には終わりません。
当時のプレイヤーにとっては、苦労して最終地点へ到達したのに、物語の核心が残されたまま終わる結末でした。
一方、この未完の構成があったからこそ、原作の展開が進んだ翌年に『黄金伝説 完結編』を制作できました。
初代は十二宮編を先取りした作品であると同時に、完結させることができなかった時代の記録でもあります。
34年後にゲームへ再登場
シャドウクロスは長い間、ファミコン版だけの人物でした。
2021年にはスマートフォンゲーム『聖闘士星矢 ゾディアック ブレイブ』へ登場し、杉田智和が声を担当しました。
ファミコン版を再現したイベントやアレンジBGMも用意され、1987年のゲームオリジナルキャラクターが34年後に再び扱われています。
『ゾディアック ブレイブ』は2022年にサービスを終了しましたが、シャドウクロスが一度きりの没設定ではなく、公式ゲームの歴史に残る存在となった出来事でした。
『黄金伝説 完結編』との違い
1988年5月30日に発売された『聖闘士星矢 黄金伝説 完結編』は、十二宮編を最後まで描く続編です。
ただし、初代と同じシステムのまま物語だけを追加した作品ではありません。
冒険の範囲を十二宮へ絞り、操作できる青銅聖闘士を増やし、能力と戦闘の仕組みも分かりやすく整理しています。
| 比較項目 | 黄金伝説 | 黄金伝説 完結編 |
|---|---|---|
| 発売日 | 1987年8月10日 | 1988年5月30日 |
| 主な物語 | 修業から十二宮編途中まで | 十二宮編を最後まで |
| 主な操作人物 | 星矢 | 星矢・紫龍・氷河・瞬 |
| 移動 | 複数の町や修業地を選ぶ | 十二宮を順番に進む |
| 成長 | EXを複数の能力へ配分 | セブンセンシズをLIFEとCOSMOへ配分 |
| 戦闘 | 4能力へ小宇宙を振り分ける | 奥義を選ぶ3Dシミュレーション |
| 最終局面 | シャドウクロスとの戦い | 十二宮と教皇の間まで描く |
| 記録方式 | パスワード | パスワード |
『完結編』は十二宮攻略に集中
『完結編』は、沙織の胸に黄金の矢が刺さったところから始まります。
12時間以内に教皇の間へ到達し、矢を抜かなければなりません。
町や修業地を自由に行き来する初代とは異なり、白羊宮から教皇の間までを順番に進む構成です。
各宮へ向かう横スクロールアクションと、黄金聖闘士とのシミュレーションバトルを繰り返します。
扱う物語を十二宮編に限定したことで、初代よりも目的が明確になりました。
星矢・紫龍・氷河・瞬を選んで戦える
各宮では、星矢、紫龍、氷河、瞬の4人から戦う青銅聖闘士を選びます。
原作で特定の人物と深い関係を持つ黄金聖闘士には、その人物を選ぶことで会話や展開が変化します。
一人が戦闘不能になっても、ほかの青銅聖闘士へ交代できます。
初代では仲間を呼び出す形でしたが、『完結編』では誰を戦わせるかが攻略の中心になりました。
原作の十二宮編が複数の青銅聖闘士を同時に描いた物語であることを、ゲームシステムにも反映しています。
複雑な4能力への振り分けを廃止
初代では、小宇宙をA Pow、M Pow、D Pow、H Powへ細かく分ける必要がありました。
『完結編』では、獲得したセブンセンシズをLIFEとCOSMOへ振り分ける形へ簡略化されています。
COSMOが多ければ攻撃力が上がり、移動画面でのパンチが届く距離も伸びます。
初代ほど細かな数値を調整する必要がなく、誰を戦わせるか、どの奥義を使うか、「はなす」で状況を変えられるかが重要です。
原作の設定を数値化する発想は残しながら、初代より理解しやすい戦闘へ作り直されています。
初代をクリアしなくても遊べる
『完結編』は初代の物語を説明書で振り返り、十二宮編から新しく始まります。
初代のパスワードや育てた能力を引き継ぐ仕組みはありません。
最初から4人の青銅聖闘士を使い、独立したゲームとして進められます。
初代を遊んでいれば銀河戦争や暗黒聖闘士との戦いから続く物語として楽しめますが、『完結編』だけでも十二宮攻略の目的は理解できます。
続編でありながら、初代の複雑な成長システムに縛られず、別の遊び方を採用した作品です。
2026年現在『黄金伝説』を遊ぶ方法
2026年8月時点で、初代『聖闘士星矢 黄金伝説』をNintendo SwitchやNintendo Switch 2向けの単体ダウンロードソフトとして購入する方法は確認できません。
正規に遊べる主な方法は、ファミコン用カセットと、2018年に発売された週刊少年ジャンプ版ミニファミコンです。
ファミコン本体と中古カセット
当時と同じ環境で遊ぶなら、ファミコン本体または対応する互換環境と中古カセットを使用します。
本作にはバッテリーバックアップがなく、進行状況はパスワードで記録します。そのため、中古カセット内の電池切れを気にする必要はありません。
一方、端子の汚れやカセットの経年劣化により、正常に起動しない場合があります。
箱や説明書が付属する商品は価格が上がりやすいため、実際に遊ぶだけなら、動作確認されたカセット単体を選ぶ方法もあります。
週刊少年ジャンプ版ミニファミコン
2018年7月7日に発売された「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ 週刊少年ジャンプ創刊50周年記念バージョン」には、初代と『完結編』の両方が収録されています。
HDMI接続で現在のテレビへ映せるほか、中断ポイントを保存できます。
長いパスワードを書き写さなくても途中から再開できるため、初代の複雑なゲームシステムを確かめるには最も遊びやすい環境です。
本体はすでに生産を終了しており、現在は中古品や未使用品を探す必要があります。
購入時には、本体、コントローラー、HDMIケーブル、USBケーブルなどの付属品を確認してください。
現在遊んでも面白い?
現在の基準で見ると、『黄金伝説』は完成度の高いアクションRPGとは言いにくい作品です。
数値の意味が分かりにくく、移動や会話の条件も不親切。横スクロールアクションの操作感にも癖があります。
何も知らずに始めると、なぜ攻撃が当たらないのか、なぜ小宇宙がなくなったのか、次にどこへ行くのか分からないまま行き詰まる可能性があります。
それでも、本作にしかない魅力は失われていません。
小宇宙を数値へ変えた発想は独創的
原作の小宇宙は、単なる必殺技の使用回数ではありません。
攻撃、防御、速度、精神力を支え、限界を超えた力を引き出す存在です。
本作はその設定を、4種類の能力へ自由に配分するシステムで表現しました。
遊びやすさよりも、原作の概念をゲームへ移すことを優先した大胆な仕組みです。
現在では複雑で不親切に感じますが、小宇宙をどうゲームにするかを真剣に考えた結果の難しさでもあります。
原作とアニメの進行途中だからこその面白さ
現在の『聖闘士星矢』ゲームでは、教皇の正体や十二宮編の結末を正確に再現できます。
初代『黄金伝説』が作られた時点では、その物語がまだ完成していませんでした。
教皇アーレス、途中までの黄金聖闘士、読者公募のシャドウクロスという構成は、1987年にしか生まれ得なかったものです。
原作と違うから価値が低いのではなく、連載中の作品を同時進行でゲーム化した時代の空気が残っていることが、現在遊ぶ大きな理由になります。
攻略情報があれば印象は変わる
能力の意味、小宇宙の配分、聖衣を着る場面、必要な会話や移動先を知れば、何も分からない状態より大幅に進めやすくなります。
病院で回復し、雑兵からEXを集め、敵の能力に合わせて数値を配分するという流れが分かると、無秩序なゲームではないことも見えてきます。
ただし、正しい手順を知ってもアクションの癖や長い移動は残ります。
現在遊ぶなら、中断ポイントを利用できるミニファミコン版で、試行錯誤そのものを楽しむのが向いています。
まとめ

『聖闘士星矢 黄金伝説』は、1987年8月10日に発売された、『聖闘士星矢』初のファミコン用ソフトです。
星矢の修業、銀河戦争、暗黒聖闘士、白銀聖闘士、十二宮の一部までを、横スクロールアクションとシミュレーションバトルで描いています。
難しい最大の理由は、操作性だけではありません。
小宇宙を4種類の能力へ振り分け、EXで能力を育て、聖衣の着脱で消費を抑え、会話や移動条件を探す必要があります。
小宇宙がなくなればDAMAGEが残っていても攻撃できず、敵の能力を確認している間にも力を失います。
原作やアニメの十二宮編が完結する前に発売されたため、最後には読者公募から生まれたゲームオリジナルのシャドウクロスが登場しました。
翌年の『黄金伝説 完結編』では、物語を十二宮編へ絞り、4人の青銅聖闘士を選べる分かりやすいシステムへ変更されています。
初代『黄金伝説』は、洗練された名作というより、小宇宙、聖衣、仲間、修業という原作の要素を、できる限りファミコンの中へ詰め込んだ実験的な一本です。
分かりにくさや不便さまで含めて、連載とアニメが進行していた1987年の『聖闘士星矢』を記録しています。
完成された十二宮編を追体験したいなら『完結編』、作品が広がる途中で生まれた独創的なゲームを確かめたいなら初代。
二つを続けて遊ぶことで、『聖闘士星矢』ゲームがわずか1年でどのように変化したのかも見えてきます。