- 地震でエレベーターに乗っていたら?全階ボタンと閉じ込め時の対処法
- 地震時のエレベーター行動を先に確認
- 「全部の階ボタンを押す」は本当?
- なぜ、すべての行先階ボタンを押すのか
- 今のエレベーターは地震を検知すると自動で止まる
- それなら最新のエレベーターでは全階ボタンを押さなくていい?
- 地震時管制運転は2009年9月から設置が義務化
- 安全装置があるのに、なぜ閉じ込めは起きるのか
- 最初に止まった階では、本当に降りていい?
- 途中で止まって閉じ込められたら、最初に何をする?
- ドアを自分で開けて脱出してはいけない
- 停電するとエレベーターの中は真っ暗になる?
- 閉じ込められると酸素がなくなって窒息する?
- 地震でエレベーターが落下することはある?
- 救助はすぐ来るとは限らない
- 2005年の地震がエレベーター対策を大きく変えた
- 2018年大阪府北部地震でも「安全装置があれば安心」ではなかった
- 地震後に動いているエレベーターなら乗ってもいい?
- 住民や管理人が自分で再起動していい?
- 大地震では「閉じ込め救出」が復旧より優先される
- 高層マンションではエレベーター停止が生活問題になる
- エレベーター内の「防災キャビネット」とは
- 車いす利用者や階段避難が難しい人はどうする?
- 地震とエレベーターでよくある誤解を確認
- 平時に確認しておきたいこと
- まとめ|全部の「行先階」ボタンを押し、自力脱出はしない
地震でエレベーターに乗っていたら?全階ボタンと閉じ込め時の対処法

地震でエレベーターに乗っていたとき、「全部の階のボタンを押す」と聞いたことがある人は多いと思います。
これは昔だけの防災知識ではありません。
2026年現在も、政府広報オンライン、総務省消防庁、日本エレベーター協会はいずれも、揺れを感じたら全ての階、より正確には「すべての行先階ボタン」を押し、最初に停止した階で降りるよう案内しています。
ただし、停止した階に火災や煙など明らかな危険がある場合まで、何も確認せず飛び出すという意味ではありません。停止階の状況を見て、安全に降りられることを確認します。
途中でエレベーターが止まってしまった場合は、非常用呼び出しボタンやインターホンで外部へ連絡し、救助を待ちます。ドアをこじ開けたり、天井から自力で脱出しようとしたりするのは危険です。
そしてもう一つ重要なのが、地震後にエレベーターが動いていても、安全が確認されるまでは避難などに使わないことです。
先に結論
乗車中に揺れを感じたら、可能な範囲ですべての「行先階」ボタンを押します。最初に停止した安全な階で降ります。
閉じ込められた場合は非常用呼び出しボタンやインターホンを使い、自力で脱出しません。地震後も、建物の管理者などが安全を確認するまではエレベーターを利用しないのが基本です。
地震時のエレベーター行動を先に確認
いざ大きく揺れている最中に、長い説明を思い出すのは難しいものです。まずは行動だけを整理しておきます。
| 状況 | やること | 避けること |
|---|---|---|
| 乗車中に揺れを感じた | 可能な範囲ですべての行先階ボタンを押す | 何もせず乗り続ける |
| 最初の階に停止した | 停止階の安全を確認して降りる | 煙や火災を確認せず飛び出す |
| 途中で停止・閉じ込め | 非常用呼び出しボタンやインターホンで外部へ連絡する | ドアをこじ開けて脱出する |
| 停電した | 非常照明の下で落ち着いて救助を待つ | 暗くなると思って慌てて脱出する |
| 地震が収まったあと | 安全確認が終わるまで利用しない | 動いているだけで安全と判断する |
「全部の階ボタンを押す」は本当?
結論からいえば、本当です。
政府広報オンラインは、地震でエレベーターに乗っていた場合について、全ての階のボタンを押し、最初に停止した階で降りることを原則としています。
総務省消防庁の地震防災マニュアルにも同じ案内があり、日本エレベーター協会はさらに具体的に、「行先階のボタンをすべて押す」と説明しています。
ここで少し注意したいのが「全部のボタン」という言い方です。
押す対象は、1階、2階、3階……といった行先階を指定するボタンです。
「開」「閉」や非常用呼び出しボタンまで含めて、操作盤にあるものを手当たり次第に押すという意味ではありません。
たとえば30階建てのエレベーターであれば、手が届き、安全に操作できる範囲で行先階ボタンを押します。強い揺れで立っていること自体が危険な状況なら、ボタン操作に固執して転倒するより、まず自分の身体を守ることが優先です。
なぜ、すべての行先階ボタンを押すのか
目的は、「エレベーターを自由に操作して好きな階へ逃げる」ことではありません。
できるだけ早く停止可能な階でエレベーターから降りる機会をつくるためです。
大きな地震では、揺れそのものだけでなく、停電や安全装置の作動、機器の異常などによってエレベーターが途中で停止する可能性があります。
そのため、まだ正常に走行できているうちに行先階を登録し、最初に停止した階で降りるという行動が現在も案内されています。
ただし、「全部押せば必ず一番近い階に止まる」という意味ではありません。
現代のエレベーターには地震を検知して自動制御する装置があり、状況によっては人が入力した行先階より安全装置の制御が優先されます。
つまり「全階ボタン」と「地震時の自動制御」は、どちらか一方だけが必要という話ではありません。
今のエレベーターは地震を検知すると自動で止まる
比較的新しいエレベーターでは、「地震時管制運転装置」が大きな役割を果たしています。
代表的な仕組みでは、地震の強い揺れであるS波が到達する前の初期微動、いわゆるP波を検知すると、エレベーターを最寄りの停止可能階へ向かわせます。
そこで着床できればドアを開き、乗客を降ろします。
さらに強い揺れを検知した場合には、安全のため運転を休止し、一定条件では専門技術者の点検が終わるまで通常運転へ戻らない仕組みがあります。
弱い地震で主要な揺れを検知しなかった場合などに、一定時間後に自動復帰する機種もあります。
ただし、これは機種や設置時期、感震器、設定などによって動きが異なります。「震度○なら必ずこの動作をする」と一律には考えられません。
それなら最新のエレベーターでは全階ボタンを押さなくていい?
ここが最も誤解しやすいところです。
地震時管制運転装置が普及した現在でも、日本エレベーター協会は利用者に対して、揺れを感じたらすべての行先階ボタンを押すよう案内しています。
政府広報も、自動停止する安全装置が付いたエレベーターがあることを説明したうえで、利用者自身も全ての階のボタンを押すよう案内しています。
したがって、
「自動で止まるから、今のエレベーターでは何もしなくていい」
という理解はできません。
安全装置があるからこそ何もしなくてよい、ではなく、安全装置による制御と利用者側の基本行動の両方が想定されています。
地震時管制運転は2009年9月から設置が義務化
現在のエレベーター地震対策を理解するうえで大きな節目になったのが、2009年です。
建築基準法施行令の改正により、2009年9月28日から、対象となるエレベーターについて地震時管制運転装置の設置が義務付けられました。
日本エレベーター協会も、2009年9月の改正以降に設置された乗用・寝台用エレベーターの大半には、地震を感知して最寄り階で止まる装置が義務付けられたと案内しています。
ここから、「2009年以降のエレベーターなら全部同じ最新仕様」と考えるのは早計です。
対象となる設備には条件があり、建物の着工時期やエレベーターの種類、更新・改修の履歴も違います。
また、2009年9月28日以前から使われているエレベーターの中には、現在の基準と同じ地震時管制運転装置を備えていないものもあります。
古いエレベーターは違法なのか
現行基準と同じ設備が付いていない古いエレベーターが、すべて違法という意味ではありません。
設置当時の法令には適合していたものの、その後に基準が強化され、現在の規定には合わなくなった設備は「既存不適格」と呼ばれることがあります。
京都市も2026年の案内で、2009年9月28日以前に設置され、地震時管制運転装置が未設置のエレベーターについて、この考え方を示しています。
古いマンションやビルでは、「建物が古いから危険」と決めつけるのではなく、どの安全装置が付いているのかを管理会社や保守会社へ確認する方が確実です。
安全装置があるのに、なぜ閉じ込めは起きるのか
「地震を検知したら最寄り階まで行くなら、閉じ込めは起きないのでは?」
そう思うのも自然です。
ところが実際の大地震では、地震時管制運転装置が付いているエレベーターでも閉じ込めが発生しています。
大きな理由の一つが、最寄り階へ着く前に強い揺れが到達してしまうことです。
2018年6月18日の大阪府北部地震について、国土交通省は閉じ込めの原因を詳しく分析しています。
震源に近い場所では、初期微動のP波を検知して地震時管制運転を始めても、その直後に強いS波が到達します。
最寄り階へ向かっている途中で大きな加速度を検知したり、ドア関係など別の安全装置が作動したりすれば、エレベーターは安全のためその場で停止することがあります。
大阪府北部地震では、P波から強い揺れまでの時間が短い地点で、最寄り階へ到着する時間が足りなかったケースが確認されました。
つまり、安全装置が「失敗したから止まった」と単純に考えるのではありません。
乗客を階まで運ぶ制御より、その瞬間の異常に対して停止させる安全制御が優先されることがあるため、結果として階と階の途中で閉じ込められる場合があります。
最初に止まった階では、本当に降りていい?
基本は、最初に停止した階で降ります。
ただし、政府広報と消防庁はどちらも「停止した階の状況を見る」ことを重視しています。
たとえばドアが開いた先で、
- 火や大量の煙が見える
- 床や壁が大きく壊れている
- 水が大量に流れ込んでいる
- 明らかにその階へ出ること自体が危険
といった場合にまで、機械的に飛び出すという意味ではありません。
一方、「怖いからそのままエレベーターに乗っていれば安全」という意味でもありません。
安全に降りられる階であれば、そこでエレベーターを離れる。
これが基本です。
途中で止まって閉じ込められたら、最初に何をする?
途中でエレベーターが停止し、ドアも開かない。
このとき最初にするのは、自力脱出ではありません。
操作盤にある非常用呼び出しボタンやインターホンで、外部へ連絡します。
外部につながったら、分かる範囲で人数、負傷者や体調不良者の有無、現在の状況を伝えます。
非常用呼び出しの接続先は、建物によって同じではありません。
管理人室、防災センター、建物内のインターホン、保守会社の監視センターなど、設備や契約内容によって変わります。
そのため、「非常ボタンを押せば直接消防につながる」とは考えない方がよいでしょう。
非常ボタンは長押し?1回押す?
操作方法も機種によって異なります。
数秒押す仕様、押して応答を待つ仕様などがあるため、「必ず○秒長押し」と一律には言えません。
操作盤に案内が表示されている場合は、その説明に従ってください。
応答がない場合でも、慌ててドアを開けようとせず、設備の案内に従って再度通報を試みます。携帯電話が使える場合は、補助的な連絡手段として利用できます。
119番はいつ使う?
通常の閉じ込めでは、まずエレベーターに備えられた非常用通報設備を利用するのが基本です。
一方で、けが人がいる、急病人がいる、火災や煙が発生しているなど、生命や身体に関わる緊急事態で携帯電話などが使える場合には、119番通報が必要になることがあります。
「閉じ込めなら必ず119」「エレベーターの閉じ込めでは119を使ってはいけない」と一律に決めるのではなく、状況に応じて判断します。
ドアを自分で開けて脱出してはいけない
閉じ込められたときに最も避けたいのが、自分でドアをこじ開けて外へ出ようとすることです。
エレベーターが階と階の途中に停止している場合、内側のドアを開けても、その先に乗り場の床があるとは限りません。
隙間の先がそのまま昇降路になっていれば、転落する危険があります。
また、停止していたエレベーターが何らかの理由で動き出せば、さらに重大な事故につながりかねません。
日本エレベーター協会やメーカー各社も、閉じ込め時に無理な自力脱出をしないよう案内しています。
ドアをこじ開ける方法や、工具を使った脱出方法を覚える必要はありません。
非常用通報設備で現在地を知らせ、専門の救助を待ちます。
映画のように天井から逃げられる?
天井部分に救出口のような構造があるエレベーターもありますが、乗客が映画のように自分で開けて昇降路へ出ることを前提にした避難方法ではありません。
閉じ込め時は天井からの脱出も試みず、外部と連絡を取って救助を待ってください。
停電するとエレベーターの中は真っ暗になる?
「停電した瞬間、完全な暗闇に閉じ込められる」というイメージがありますが、通常はそうではありません。
乗用・寝台用エレベーターには、停電時にもかご内を照らす非常用照明が備えられています。
日本エレベーター協会によると、停電時には非常用バッテリーによって非常照明が点灯し、法令では床面で1ルクス以上の照度を確保できる照明について、30分間以上点灯できることが求められています。
したがって、
「停電=すぐ完全な暗闇」
ではありません。
ただし非常照明には電源の限界があります。長時間閉じ込められても永遠に点灯し続けるという意味ではありません。
閉じ込められると酸素がなくなって窒息する?
これもよくある不安ですが、一般的なエレベーターのかごは完全な密閉空間ではありません。
メーカーも、換気用の開口部などがあり、閉じ込められたことによって酸素がなくなり窒息する構造ではないと説明しています。
ただし、「窒息しない=何時間閉じ込められても問題ない」という話ではありません。
長時間化すれば、暑さや寒さ、脱水、持病、急病、強い不安、トイレなど、別の問題が大きくなります。
だからこそ、閉じ込めが発生したことをできるだけ早く外部へ知らせることが重要です。
地震でエレベーターが落下することはある?
地震というと、「ワイヤーが切れて、そのままエレベーターが落ちるのでは」と心配する人もいます。
現代のエレベーターには、ブレーキや速度を監視する装置、異常時にかごを止める非常止めなど、複数の安全対策があります。
そのため「地震が来れば簡単に自由落下する」というイメージは、実際の安全設計とは異なります。
一方で、機械である以上「どんな状況でも絶対に事故は起こらない」と言い切る必要もありません。
利用者が覚えておくべきなのは、落下を恐れて自力脱出を試みることではなく、停止した場合は非常通報を行い、専門の救助を待つという行動です。
救助はすぐ来るとは限らない
大きな地震では、一つの建物だけで閉じ込めが起こるわけではありません。
広い地域で多数のエレベーターが一斉に停止し、道路渋滞や通信障害も発生します。
そのため、保守員や消防がすぐ到着できるとは限りません。
過去の実例を見ると、このことがよく分かります。
| 地震 | エレベーターの状況 | 閉じ込め | 救出時間 |
|---|---|---|---|
| 2005年 千葉県北西部地震 | 約6万4000台が停止 | 78件 | 平均約50分弱、最大170分 |
| 2018年 大阪府北部地震 | 後の整理で約6万3000台が運転休止 | 346台 | 初期集計339件の分析では平均約80分、最大約320分 |
| 2021年 千葉県北西部地震 | 首都圏を中心に多数停止 | 後の国交省整理で25台 | 全件3時間以内に救出 |
数字を見る際は注意が必要です。
大地震の直後には速報値が出され、その後の精査で台数が修正されることがあります。
たとえば2018年大阪府北部地震は、初期資料では閉じ込め339件とされていましたが、後の国土交通省資料では346台に整理されています。
救出時間の「平均約80分、最大約320分」は、初期集計339件を基にした分析値です。
この実績を「地震では平均80分で必ず救助される」と読むこともできません。
地震の規模、発生地域、交通状況、同時に発生した閉じ込め件数、通信状況などで救出時間は大きく変わります。
覚えておきたいのは、大地震では数分で助けが来るとは限らないということです。
2005年の地震がエレベーター対策を大きく変えた
現在の地震対策を語るうえで重要なのが、2005年7月23日の千葉県北西部地震です。
この地震では、関東地区で約6万4000台のエレベーターが停止し、78件の閉じ込めが発生しました。
しかも78件のうち73件は、地震時管制運転装置が付いたエレベーターでした。
当時の国土交通省資料では、最寄り階へ向かう制御より、ドアの異常を検知する緊急停止装置が優先して作動したことなどが原因として考えられていました。
この地震を受けて、国は閉じ込め防止や早期復旧の対策を検討し、その後の基準強化につながっていきます。
2009年の地震時管制運転装置の義務化も、こうした大地震の経験と無関係ではありません。
2018年大阪府北部地震でも「安全装置があれば安心」ではなかった
2009年以降に安全対策が進んでも、閉じ込めがなくなったわけではありません。
2018年大阪府北部地震では、後の国交省整理で346台の閉じ込めが確認されています。
そのうち332台には地震時管制運転装置がありました。
これは地震時管制運転装置が無意味だった、という話ではありません。
震源に近い場所ではP波を検知してから強いS波が来るまでの時間が非常に短く、最寄り階へ到着する前に別の安全装置が働いて停止するケースがあったためです。
この事例を見ると、2026年現在も「全部の行先階ボタンを押す」という利用者側の基本行動が残っていることにも納得しやすくなります。
地震後に動いているエレベーターなら乗ってもいい?
「動いている=安全確認済み」とは限りません。
日本エレベーター協会は、地震発生時の避難にエレベーターを利用しないこと、地震後も建物等の管理者が安全を確認するまで利用しないことを案内しています。
一部のエレベーターには、弱い揺れで異常がなければ一定時間後に自動復帰する機能があります。
一方で、強い揺れを検知すれば、専門技術者の点検まで運転を休止する機種もあります。
利用者から見て「今動いた」という事実だけでは、その建物のエレベーターがどの状態なのか判断できません。
余震や停電、地震で受けた機器の損傷によって、再び停止する可能性もあります。
避難するために地震直後のエレベーターへ乗り込むのは避け、建物の避難計画や管理者の案内に従います。
住民や管理人が自分で再起動していい?
地震後に停止したエレベーターを、一般の住民がブレーカーや機械室の設備を操作して復旧させるものではありません。
地震で運転休止した場合には、安全装置の作動状況や機器の損傷などを確認する必要があります。
専門知識のない人が「電源を入れ直せば動くだろう」と操作するのは避けてください。
管理人であっても、設備ごとに定められた手順や保守会社との連携を無視して自己判断で復旧させるものではありません。
大地震では「閉じ込め救出」が復旧より優先される
多数のエレベーターが同時に停止した場合、保守会社はすべての建物へ一斉に行くことができません。
国土交通省は、大規模地震時には閉じ込められた人の救出を最優先とし、そのうえで病院など災害弱者が利用する施設や、災害対策本部が置かれるような公共性の高い建物を優先して復旧する方針を示しています。
このため、自分の建物の復旧が遅れていても、「忘れられている」とは限りません。
別の場所で閉じ込め救出や、より緊急性の高い施設への対応が進められている可能性があります。
複数台あっても全部を一度に復旧しない「1ビル1台復旧」
大規模地震時には、「1ビル1台復旧」という考え方があります。
同じ建物に何台もエレベーターがある場合、まず1台を復旧させたあと、保守員は別の建物へ移動します。
一つのビルの全エレベーターを完全復旧してから次へ向かうより、広い地域で少なくとも1台ずつ使える建物を増やした方が、全体として早く移動手段を取り戻せるためです。
そのため、3台あるマンションで1台だけ先に復旧し、残り2台が止まったままという状況もあり得ます。
高層マンションではエレベーター停止が生活問題になる
高層マンションでは、エレベーターが止まると単なる「移動が不便」という話では済みません。
高層階へ水や食料を運ぶ、高齢者や歩行が難しい人が移動する、けが人を搬送するといったことが難しくなります。
停電によって給水設備まで止まれば、エレベーター停止と断水が同時に起きることもあります。
だからといって、高層マンションが必ず他の建物より最優先で復旧されるわけではありません。
大規模災害時には、まず閉じ込め救出や病院など緊急度の高い施設への対応があります。
高層住宅に住んでいる場合は、「エレベーターが戻れば備蓄を買いに行けばいい」ではなく、数日間は階段だけでも生活を維持できるよう、水、食料、携帯トイレなどを平時から準備しておくことが重要です。
建物そのものが安全でも、停電・断水やエレベーター停止が長引けば生活を続けられない場合があります。自宅にとどまれる条件と、避難所へ移る判断の境目は、「在宅避難」ができる条件でまとめています。
エレベーター内の「防災キャビネット」とは
マンションによっては、エレベーターのかご内に小さな防災キャビネットが設置されていることがあります。
中には飲料水、携帯トイレなど、長時間閉じ込められたときに使う防災用品が入っています。
東京消防庁もマンション防災対策として、エレベーター内に水や携帯トイレを備えた防災キャビネットを備えることを紹介しています。
ただし、すべてのエレベーターに設置されているわけではありません。
全国一律で「必ず置かなければならない」という設備でもないため、自宅マンションにあるとは限りません。
マンション住民であれば、管理組合や管理会社の防災計画と合わせて、エレベーター内に備蓄があるか一度確認しておく価値があります。
車いす利用者や階段避難が難しい人はどうする?
地震時の一般的な避難で、通常の乗用エレベーターを使わないという原則はあります。
ただし、高齢者や車いす利用者、歩行が難しい人に「とにかく階段で降りればよい」と一律に言えるものでもありません。
建物によっては一時待機場所や支援体制が決められている場合があります。
また、通常の乗用エレベーターと、消防活動などを想定した非常用エレベーターは同じものではありません。
要配慮者がいる家庭では、災害が起きてから方法を考えるのではなく、建物の防災計画、避難経路、管理者の支援体制を平時に確認しておく方が現実的です。
地震とエレベーターでよくある誤解を確認
| よくある話 | 判定 | 実際は |
|---|---|---|
| 地震では全部の階ボタンを押す | ○ | 正確にはすべての「行先階ボタン」 |
| 今のエレベーターなら押さなくていい | × | 2026年現在も公的機関・業界団体が案内 |
| 地震時管制運転があれば絶対閉じ込められない | × | 装置付きでも閉じ込め実績がある |
| 最初に止まったら何があっても飛び出す | × | 停止階の安全状況も確認する |
| 閉じ込められたらドアを開ける | × | 転落などの危険があるため自力脱出しない |
| 天井ハッチから脱出する | × | 利用者が勝手に脱出する方法として使わない |
| 停電すると完全に真っ暗になる | × | 非常用照明が点灯する |
| 閉じ込められると酸欠になる | × | 一般的なかごは完全密閉ではない |
| スマホがあれば非常ボタンは不要 | × | まず設備の非常通報を利用する |
| 救助は数分で来る | × | 大地震では数時間かかった例もある |
| 地震後、動いていれば乗ってよい | × | 安全確認までは利用しない |
| 高層マンションなら必ず最優先で復旧する | × | 閉じ込め救出や病院などが優先される |
| 2009年以降なら全部同じ最新仕様 | × | 設備の種類や設置・改修時期で異なる |
| 地震で簡単に自由落下する | ×に近い誤解 | 複数の安全装置を備えている |
平時に確認しておきたいこと
エレベーターで地震に遭ったときの行動はシンプルですが、平時に一度確認しておくと迷いにくくなります。
- 自宅や勤務先のエレベーターで非常用呼び出しボタンがどこにあるか
- 地震時管制運転装置などの安全対策がどの程度導入されているか
- 管理会社や防災センターへの連絡方法
- マンションの地震時避難ルール
- エレベーター内に防災キャビネットがあるか
- エレベーター停止中でも生活できる水・食料・携帯トイレが自宅にあるか
特に高層階に住んでいる場合、エレベーターが数時間ではなく、より長く使えなくなる可能性まで想定しておく必要があります。
「地震が来たら全部の階を押す」という一つの知識だけではなく、その後エレベーターが使えなくても生活できる備えまで考えておくと安心です。
まとめ|全部の「行先階」ボタンを押し、自力脱出はしない
地震でエレベーターに乗っていた場合、「全部の階ボタンを押す」という防災知識は2026年現在も有効です。
より正確には、すべての行先階ボタンを押し、最初に停止した安全な階で降ります。
現代のエレベーターには、地震を検知して最寄り階へ停止させる地震時管制運転装置があります。それでも、強い揺れが早く到達したり、別の安全装置が作動したり、停電や機器の異常が起きたりすることで、閉じ込めを完全になくすことはできません。
途中で停止した場合は、非常用呼び出しボタンやインターホンで外部へ連絡します。
ドアをこじ開けたり、天井から自力で脱出したりしてはいけません。
そして地震が収まったあとも、「動いているから大丈夫」と自己判断せず、建物側で安全が確認されるまでは利用を控えます。
最後に覚えておきたい5つ
① 揺れを感じたら、すべての行先階ボタンを押す。
② 最初に停止した安全な階で降りる。
③ 閉じ込められたら非常用呼び出しで外部へ連絡する。
④ ドアや天井から自力脱出しない。
⑤ 地震後は安全確認が終わるまで利用しない。