- 避難所に行かず家にいてもいい?在宅避難の条件・支援物資・避難指示を解説
- 避難所へ行かず家にいてもいい?最初に見るのは「今いる場所が安全か」
- 「避難=避難所へ行くこと」ではない
- 在宅避難とは何?「普段どおり家にいる」のとは違う
- 「在宅避難」と「屋内安全確保」は同じではない
- 2026年から防災気象情報の名前も変わっている
- 避難指示が出たら、全員が避難所へ行くの?
- 地震のあと家が無事なら、そのまま在宅避難できる?
- 洪水では「マンションの上階なら大丈夫」とは限らない
- 土砂災害では立退き避難が原則
- 津波警報中に「在宅避難」は考えない
- 高潮も洪水とは別のハザードマップを確認する
- 危険が去ったら次は「この家で生活を続けられるか」を見る
- 水と食料は何日分あればいい?
- 断水していても在宅避難できる?トイレが大きな分かれ目になる
- 停電だけなら在宅避難できる?季節と家族の状態で変わる
- 自宅だから体調管理は大丈夫、とは限らない
- 高齢者・乳幼児・持病がある人は「家の方が楽」だけで決めない
- 在宅避難者も水・食料・生活物資の支援対象になる
- 支援物資はどこへ取りに行けばいい?
- 避難所は「寝泊まりする人だけの場所」ではない
- 「在宅避難者向け支援拠点」という考え方もある
- 在宅避難するなら避難者名簿へ登録しないといけない?
- 自分で物資を取りに行けない場合は?
- ペットがいるから避難所へ行けない?
- 一度在宅避難を選んでも、途中から避難所へ移っていい
- 在宅避難と避難所、どちらがいい?
- 保存用|在宅避難を続けられるか確認するチェック表
- よくある疑問
- 主な公的情報
- まとめ|「家にいていいか」は3つに分けて考える
避難所に行かず家にいてもいい?在宅避難の条件・支援物資・避難指示を解説

地震や大雨のあと、自宅に大きな被害が見当たらないと、「避難所へ行かず、このまま家にいてもいいのでは」と考えることがあります。
結論からいうと、自宅で避難生活を送る「在宅避難」が適切な場合はあります。
ただし、「家が壊れていない=在宅避難で大丈夫」とは限りません。
津波や土砂災害、洪水、周辺火災などからその場所自体が安全なのか。停電・断水が続いても、水、食料、トイレ、薬、暑さ・寒さへの対策を維持できるのか。そして、自宅にいながら必要な支援へつながれるのか。この3段階で考える必要があります。
在宅避難を考える前に確認したい3段階
1.今いる場所は、その災害から安全か
津波、洪水、土砂災害、火災、建物倒壊などの危険から逃れることが最優先です。
2.危険が去った後、その家で生活を続けられるか
水、食料、トイレ、薬、電気、暑さ・寒さ、家族の健康状態を確認します。
3.必要な支援につながれるか
在宅避難者も支援対象になり得ます。物資の配布場所や登録方法は自治体の案内を確認します。

「避難所へ行かなかったら水や食料をもらえないのでは」と心配する人もいるでしょう。
内閣府は現在、避難所という「場所」だけではなく、避難している「人」を支援する考え方を示しています。在宅避難者についても、水・食料・生活物資、情報、保健医療、福祉などの支援対象として想定されています。
一方で、全国どこの避難所でも自由に物資を受け取れるという意味ではありません。実際の配布場所、時間、登録方法は災害や自治体によって変わります。
まずは、「避難」と「避難所」を同じ意味だと思わないところから整理していきます。
避難所へ行かず家にいてもいい?最初に見るのは「今いる場所が安全か」
在宅避難を考えるとき、最初から「自宅と避難所のどちらが快適か」を比較してはいけません。
その前に確認することがあります。
今いる自宅が、これから起こり得る災害に対して安全なのか。
例えば地震で家そのものが無事でも、沿岸部で津波警報が出ているなら、家に残ることを前提にはできません。
大雨でマンションの上階に住んでいても、その建物が河川の激しい流れで倒壊するおそれのある区域にあれば、「上の階だから大丈夫」とは言えません。
崖の近くで土砂災害の危険が高まっているときも同様です。
つまり、在宅避難は危険から逃げなくてもよい理由ではありません。
必要な避難行動を取り、命への差し迫った危険がなくなった後に、「その後の避難生活をどこで送るか」という段階で自宅が選択肢になります。
「避難=避難所へ行くこと」ではない
日常会話では「避難する」と「避難所へ行く」がほぼ同じ意味で使われることがありますが、防災上は分けて考えた方が分かりやすくなります。
| 言葉 | 意味 | 主な場面 |
|---|---|---|
| 指定緊急避難場所 | 災害の危険から命を守るため緊急的に逃げる場所 | 洪水、津波、土砂災害などの危険が迫っているとき |
| 指定避難所 | 危険がなくなるまで滞在したり、自宅へ戻れない人が避難生活を送ったりする施設 | 災害発生後の避難生活 |
| 立退き避難 | 危険な場所から安全な場所へ移動すること | 指定緊急避難場所、安全な親戚・知人宅、ホテル等への移動 |
| 屋内安全確保 | 一定の条件を満たした場合に、自宅等の上階など安全な場所へとどまる避難行動 | 主に洪水等・高潮 |
| 緊急安全確保 | すでに安全な立退き避難が難しい状況で、少しでも命が助かる可能性のある行動を取ること | 災害が発生・切迫している段階 |
| 在宅避難 | 災害の影響が続く中、安全を確保できる自宅で避難生活を送ること | 発災後の避難生活 |

指定緊急避難場所と指定避難所は、同じ学校や公共施設が両方に指定されることもあります。そのため見た目では違いが分かりにくいのですが、制度上の役割は異なります。
さらに、避難先は避難所だけではありません。
内閣府の避難情報ガイドラインでは、安全が確認できる親戚・知人宅やホテル・旅館などへの立退き避難も選択肢として示されています。
在宅避難とは何?「普段どおり家にいる」のとは違う
内閣府の「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」では、在宅避難者について、単に災害時に自宅で過ごしている人全員を指すものとはしていません。
災害によって水道やガスなどのインフラが途絶したり、物流が止まったり、住宅に被害が出たりした中で、自宅の備蓄や外部からの支援を利用しながら避難生活を送る人を想定しています。
例えば、地震後も家で寝泊まりできるものの断水していて、自治体の給水や食料配布を利用して暮らしているような状態です。
自宅が安全なら、普段使っている寝具や生活用品を利用でき、プライバシーも保ちやすい場合があります。
その一方で、避難所にいないため、体調悪化や物資不足が周囲から見えにくくなることもあります。
「家にいられる」と「支援なしで生活できる」は同じではありません。
「在宅避難」と「屋内安全確保」は同じではない
ここは特に混同しやすいところです。
在宅避難は、主に災害発生後に「どこで避難生活を送るか」という話です。
屋内安全確保は、洪水等や高潮の危険が迫っている段階で取ることがある「避難行動」です。
2026年3月改定の内閣府「避難情報に関するガイドライン」では、洪水等で屋内安全確保を行うには、少なくとも次の条件を満たす必要があるとしています。
- 自宅・施設が家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない
- 想定される浸水深より高い場所に居室がある
- 一定期間浸水した場合の生活上の支障を許容できる
最後の「生活上の支障」も軽く考えられません。
浸水が長く続けば、外へ出られない間に水や食料、薬が不足するかもしれません。停電、ガス停止、断水によってトイレが使えなくなることもあります。
つまり、マンションの上階にいて「部屋までは水が来ない」としても、それだけで屋内安全確保の条件をすべて満たしたことにはなりません。
2026年から防災気象情報の名前も変わっている
避難判断について古い記事を読むときは、情報名にも注意が必要です。
内閣府は2026年3月に「避難情報に関するガイドライン」を改定し、気象庁は2026年5月29日から新しい防災気象情報の運用を開始しました。
河川氾濫、大雨、高潮などの情報は、警戒レベルとの対応が分かりやすくなるよう体系や名称が整理されています。
市町村が発令する避難情報の基本は次のとおりです。
| 警戒レベル | 市町村の避難情報 | 基本的な行動 |
|---|---|---|
| 3 | 高齢者等避難 | 危険な場所にいる避難に時間がかかる人などは避難を始める |
| 4 | 避難指示 | 危険な場所から避難する |
| 5 | 緊急安全確保 | 災害が発生・切迫。直ちに命を守る行動を取る |
重要なのは、危険な場所にいる人は警戒レベル4までに避難を終えるという考え方です。
警戒レベル5まで待ってから避難を始めるものではありません。
また、2026年から使われている「レベル4氾濫危険警報」などの防災気象情報と、市町村が発令する「警戒レベル4 避難指示」は別の情報です。
気象庁などから出る防災気象情報は、市町村の避難情報が出ていなくても、自分で避難を判断する材料として利用します。
避難指示が出たら、全員が避難所へ行くの?
ここは「はい」「いいえ」だけでは答えられません。
警戒レベル4の避難指示が出た場合、危険な場所にいる人は避難する必要があります。
ただし、その「避難」が必ず学校や体育館へ移動することを意味するわけではありません。
災害の種類や自宅の条件によっては、安全な親戚・知人宅などへ移ることもあります。洪水等や高潮では、条件を満たした自宅・施設で屋内安全確保を取れる場合もあります。
これは「避難指示を無視して家に残ってよい」という意味ではありません。
自分が今いる場所が本当に安全なのかを、ハザードマップ、自治体の避難情報、防災気象情報などから確認し、その災害に合った避難行動を取るということです。
地震のあと家が無事なら、そのまま在宅避難できる?
地震では、まず自宅そのものが安全かを確認します。
外から見て倒壊していないだけでは十分ではありません。
建物の傾き、大きな亀裂、余震による倒壊のおそれ、周辺火災、ガス漏れ、電気設備の損傷などがあれば、在宅避難を続けない方がよい場合があります。
さらに、住んでいる場所によっては別の災害が重なります。
沿岸部なら津波、崖や山の近くなら土砂災害、埋立地などでは液状化も確認が必要です。
自治体による被災建築物応急危険度判定が行われている場合は、その結果も確認してください。
応急危険度判定は、余震等による建物倒壊などの二次災害を防ぐための判定です。罹災証明書の「全壊」「半壊」などを決める住家被害認定とは別のものです。
建物と周辺に差し迫った危険がなく、その後の生活も維持できるなら、在宅避難が選択肢になります。
洪水では「マンションの上階なら大丈夫」とは限らない
洪水で屋内安全確保を考えるときは、まずハザードマップを確認します。
見るのは、単に自宅に色が付いているかどうかだけではありません。
- 家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないか
- 想定浸水深はどの程度か
- 浸水しない高さに居室があるか
- 浸水がどのくらい続くと想定されているか
- 孤立している間も生活を維持できるか
例えば10階の部屋まで水が来なくても、停電によってエレベーターや給水ポンプが止まり、長期間水を運べなくなる可能性があります。
マンションでは、自宅の階数に加え、受水槽、給水ポンプ、共用排水管、非常電源など建物全体の設備も生活継続に関係します。
なお、ハザードマップで色が付いていない場所も「絶対に災害が起きない場所」ではありません。
ハザードマップは一定の想定条件をもとに作られています。想定を超える雨、小規模河川、内水氾濫などによって地図の想定とは異なる被害が発生する可能性もあります。
土砂災害では立退き避難が原則
土砂災害は洪水の屋内安全確保と同じ考え方では扱えません。
土石流やがけ崩れは、住宅そのものを大きく壊す力があります。そのため、土砂災害警戒区域など危険な場所では、安全な場所への立退き避難が原則です。
すでに土砂災害が切迫し、屋外へ出ること自体がかえって危険になってしまった場合には、崖から離れた部屋や上階へ移るなど、緊急安全確保を取らざるを得ないことがあります。
しかし、これは最初から「自宅に残る計画」として選ぶ屋内安全確保とは違います。
津波警報中に「在宅避難」は考えない
津波についても、「家が丈夫だから残る」という判断を一般化してはいけません。
気象庁は、大津波警報・津波警報が発表された地域の沿岸部や川沿いにいる場合、高台や津波避難ビルなど安全な場所へ速やかに避難するよう案内しています。
強い揺れ、または弱くても長い揺れを感じた場合も、警報を待たずに避難を始めることが重要です。
「海が引いていないからまだ逃げなくていい」という判断もできません。津波は必ず引き潮から始まるわけではありません。
この点は、「津波は海が引いてから来る?『引き潮を確認してから逃げる』が危険な理由」で詳しく整理しています。
津波の危険から安全を確保した後、自宅へ戻って在宅避難できるかどうかは、その後あらためて判断する話です。
高潮も洪水とは別のハザードマップを確認する
高潮でも、条件を満たせば屋内安全確保が可能な場合があります。
ただし、洪水ハザードマップだけを見て判断するのではなく、高潮浸水想定区域や自治体の避難情報を確認します。
海岸部では洪水、高潮、津波で危険区域が異なる場合があるため、平時から災害種別ごとのハザードマップを確認しておくと判断しやすくなります。
危険が去ったら次は「この家で生活を続けられるか」を見る
周囲の災害から安全でも、それだけで在宅避難を続けられるとは限りません。
避難生活として最低限維持できるかを見ます。
在宅避難を続けるときに確認したいもの
- 飲料水
- 食料
- 安全に使えるトイレ
- 常用薬・必要な医療
- 照明やスマートフォンなどに必要な電源
- 暑さ・寒さをしのげる環境
- 衛生用品
- 災害情報を得る手段
- 必要な支援拠点へつながる手段
- 家族全員の健康を維持できる環境
これらは国が定めた「在宅避難の合格条件」ではありません。
実際の災害では、地域の被害、家族構成、季節、持病、住宅設備などによって必要なものが変わります。
水と食料は何日分あればいい?
2026年度の内閣府の防災週間資料などでは、食料、飲料水、携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパーなどについて、最低でも3日、できれば1週間程度の備蓄が推奨されています。
ただし、これは「1週間分なければ在宅避難をしてはいけない」という資格条件ではありません。
大規模災害では物流やライフラインの復旧に時間がかかる可能性があるため、平時から余裕を持って備えるための目安です。
備蓄を揃える場合は、水や食料だけでなく、携帯トイレ、常用薬、照明、モバイルバッテリー、カセットコンロ、衛生用品なども一緒に考えます。
家庭で備えておきたい基本的な用品は、「大地震に備える防災グッズ10選|まず揃えたい必需品と非常持ち出し袋の作り方」でも整理しています。
断水していても在宅避難できる?トイレが大きな分かれ目になる
断水だけを理由に、必ず自宅から出なければならないわけではありません。
給水支援や備蓄によって飲料水を確保でき、安全なトイレも用意できるなら、自宅で生活を続けられる場合があります。
ただし、水道が止まったときに見落としやすいのがトイレです。
特に地震後は、風呂の水が残っていても、その水を便器へ流してよいとは限りません。
下水道や建物内の排水管が壊れていれば、汚水漏れや逆流につながる可能性があります。
排水設備の安全が確認できない場合は携帯トイレ等へ切り替え、自治体や管理会社などから使用再開の案内が出るまで水洗を避ける方が安全です。
詳しくは、「断水したらトイレはどうする?『水を流せば使える』とは限らない理由と正しい対処」で、断水と排水設備を分けて解説しています。
停電だけなら在宅避難できる?季節と家族の状態で変わる
停電しているから即座に在宅避難できない、というわけではありません。
しかし、真夏や真冬では停電の意味が大きく変わります。
冷房を使えない室内で熱中症の危険が高まる。暖房を使えず室温が大きく下がる。マンションの給水ポンプが止まって断水する。スマートフォンを充電できず情報を受け取れなくなる。
さらに、人工呼吸器や在宅酸素関連機器など電源が必要な医療機器を利用している家庭では、停電が直接生命に関わる場合があります。
「あと何時間停電するか」だけではなく、今の環境で家族の健康を維持できるかを基準にしてください。
自宅だから体調管理は大丈夫、とは限らない
在宅避難には、避難所の集団生活を避けられるメリットがある一方、体調悪化が周囲から見えにくいという問題があります。
特に注意したいのは、暑さ・寒さ、脱水、持病の悪化、服薬中断、運動不足、食事や衛生環境の悪化などです。
水や食料を節約しようとして水分摂取を減らすのも危険です。
避難所であれば保健師や医療・福祉関係者による巡回が行われる場合がありますが、自宅では自分や家族から支援につながる必要が出ることがあります。
「避難所へ行くほどではない」と我慢しているうちに体調を崩さないよう、健康状態も在宅避難を続けるかどうかの判断材料にしてください。
高齢者・乳幼児・持病がある人は「家の方が楽」だけで決めない
高齢者や乳幼児、障害がある人、妊産婦、持病がある人などにとって、慣れた自宅で過ごせることには大きな意味があります。
一方で、災害時には普段利用している医療・介護サービスそのものが止まることがあります。
特に確認したいのは、次のようなケースです。
- 人工呼吸器など継続的な電源が必要
- 在宅酸素療法を利用している
- 透析など定期的な医療が必要
- 常用薬を切らすと健康に重大な影響がある
- 排泄・移動・食事などに介助が必要
- 乳幼児のミルク、離乳食、おむつなどを確保できない
自宅で必要な医療・介護を維持できない場合は、一般の指定避難所だけでなく、福祉避難所、医療機関、自治体が案内する別の避難先が必要になることがあります。
ただし、福祉避難所は「高齢者なら誰でも直接行ける場所」ではありません。
自治体によって対象者、開設場所、直接避難の仕組み、事前調整の方法などが異なります。平時から市区町村の福祉避難所や個別避難計画の案内を確認しておくことが大切です。
在宅避難者も水・食料・生活物資の支援対象になる
「避難所に泊まっていないと、支援物資を受け取れないのでは」と心配する必要はありません。
内閣府の「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」では、災害発生時には避難所内の避難者だけでなく、在宅の避難者にも必要な支援を行うことが求められています。
想定されている支援には、例えば次のようなものがあります。
- 飲料水
- 食料
- 携帯トイレなど生活物資
- 災害・生活支援情報
- 健康相談
- 保健医療支援
- 福祉支援
- 各種行政手続きに関する情報
支援の内容は災害の規模や自治体の体制によって変わります。
「在宅避難者なら必ず希望する物を自宅まで届けてもらえる」という制度ではありませんが、避難所に寝泊まりしていないことだけを理由に支援対象外になる、という考え方でもありません。

支援物資はどこへ取りに行けばいい?
ここには全国共通の答えがありません。
内閣府の手引きでは、在宅避難者等が利用する支援拠点として、指定避難所だけでなく、公民館、自治会館、公園、商業・行政・教育施設、寺社など、地域の状況に応じたさまざまな場所を想定しています。
車両を使った移動型の支援も例として示されています。
つまり、実際の災害時には、
- 指定避難所
- 在宅避難者向け支援拠点
- 地域の集会所や自治会館
- 自治体が設けた臨時配布場所
などで配布される可能性があります。
逆にいえば、「最寄りの避難所へ行けば必ずもらえる」と決めつけない方がよいということです。
配布場所、対象地域、時間、数量、必要な登録などは、次の情報から確認します。
- 市区町村公式サイト
- 自治体の防災アプリ
- 自治体公式SNS
- 防災行政無線
- 避難所・支援拠点の掲示
- 自治会・自主防災組織からの案内
大規模災害では情報が頻繁に変わるため、古いSNS投稿や非公式の転送情報だけで配布場所へ向かわない方が安全です。
避難所は「寝泊まりする人だけの場所」ではない
内閣府は、避難所について、地域の在宅避難者に対して物資や情報を提供する支援拠点としての役割も想定しています。
そのため、避難所に泊まっていない人が、支援情報を確認したり、物資を受け取ったりするケースがあります。
ただし、避難所ごとに提供できる機能は同じではありません。
トイレ、携帯電話の充電、Wi-Fi、入浴、洗濯、炊き出し、健康相談などが行われる場合もありますが、設備、物資、被災状況によって利用できないこともあります。
「避難所だから何でも利用できる」ではなく、開設している避難所・支援拠点の案内を確認するのが基本です。
「在宅避難者向け支援拠点」という考え方もある
在宅避難者が多い地域では、避難所とは別に支援拠点を設ける考え方も内閣府の手引きに盛り込まれています。
例えば小規模な拠点では、水、食料、物資、トイレ、支援情報などを提供することが考えられています。
より広い地域を担当する支援拠点では、物資配布だけでなく、相談窓口や行政手続きに関する窓口を設けることも想定されています。
ここで大切なのは、国の資料に「こうした拠点を設ける考え方がある」ことと、自分の地域で実際にその拠点が開設されているかは別という点です。
発災後は自治体から発表される最新情報を確認してください。
在宅避難するなら避難者名簿へ登録しないといけない?
「在宅避難をする人は、必ず最寄りの避難所へ行って名簿登録しなければならない」という全国一律のルールは確認できません。
一方で、自治体が在宅避難者の人数や必要な支援を把握することは非常に重要です。
内閣府の手引きでは、支援拠点の利用者について、氏名、住所、人数、住宅やライフラインの状況、必要な支援などを確認する仕組みが想定されています。
把握方法も一つではありません。
支援拠点での登録、戸別訪問、自治会や自主防災組織からの情報、アプリ等による自己登録など、自治体によってさまざまな方法が考えられます。
そのため記事としての答えは、
「全国一律の名簿登録義務ではない。ただし、自治体が在宅避難者の登録・状況把握を行っている場合は、その案内に従い、自分たちが在宅避難していることを伝える」
となります。
特に、水や薬、介護用品など継続して必要な支援がある場合は、早めに自治体や支援拠点につながっておいた方が支援ニーズを伝えやすくなります。
自分で物資を取りに行けない場合は?
高齢者、障害がある人、負傷者、乳幼児を抱える家庭などでは、支援拠点が開設されても自力で物資を取りに行けないことがあります。
内閣府は、在宅避難者の状況把握や支援について、行政だけでなく、保健師、福祉関係者、自治会・自主防災組織、民生委員、NPOなどとの連携や戸別訪問も想定しています。
ただし、発災すればすべての家へ自動的に物資が届くわけではありません。
災害規模が大きければ、自治体側もすべての在宅避難者をすぐに把握できないことがあります。
自力で支援拠点へ行けない場合は、そのこと自体を自治体の災害相談窓口、地域の支援拠点、普段利用している福祉・介護サービスなどへ伝えてください。
ペットがいるから避難所へ行けない?
ペットがいる家庭でも、「避難所へ行きにくいから危険な自宅に残る」と決めないことが重要です。
災害時には、ペットと一緒に安全な場所まで避難する「同行避難」が基本的な考え方になります。
ただし、避難所で飼い主とペットが同じ部屋で過ごせることを意味するわけではありません。
ペットの受入場所や飼育方法は自治体・避難所によって異なります。
自宅が危険なら、まず人とペットの安全を確保し、その後の飼育方法を自治体の案内に従って考えます。
一度在宅避難を選んでも、途中から避難所へ移っていい
在宅避難は、一度選んだら最後まで自宅にいなければならないものではありません。
最初は問題なく生活できても、時間の経過とともに状況が変わります。
例えば、
- 余震で建物に新たな損傷が出た
- 周囲の火災や土砂災害の危険が高まった
- 停電が長期化し、暑さや寒さに耐えられない
- 水や食料が尽きた
- トイレを確保できなくなった
- 常用薬が不足した
- 家族の体調が悪化した
- 必要な介護・医療を受けられなくなった
といった状況になれば、避難所や別の安全な場所への移動を再検討します。
反対に、避難所から自宅へ戻って在宅避難へ切り替える場合も、自宅と周辺の安全が確認できていることが前提です。
大雨では、雨がやんだ後に川の水位が上がる場合もあります。台風が通過した、雨音が弱くなったというだけで勝手に帰宅せず、自治体の避難情報や河川情報を確認してください。
在宅避難と避難所、どちらがいい?
どちらかが常に優れているわけではありません。
比較すると、違いが分かりやすくなります。
| 項目 | 在宅避難 | 指定避難所 |
|---|---|---|
| 生活場所 | 自宅 | 学校・公民館等 |
| 安全の前提 | 自宅と周囲が安全であること | その災害に対応する施設か、開設状況を確認 |
| プライバシー | 普段の生活空間を維持しやすい | 共同生活になる場合が多い |
| 水・食料 | 家庭の備蓄+地域支援 | 避難所の備蓄・支援物資。量や時期は状況による |
| トイレ | 自宅設備または携帯トイレ等 | 施設設備・災害用トイレ等 |
| 電気 | 自宅地域の停電状況に左右される | 非常電源等の有無は施設による |
| 情報 | 自分から自治体情報へつながる必要がある | 支援・行政情報が集まりやすい場合がある |
| 医療・福祉 | 必要に応じて自分から支援へつながる | 巡回・相談支援等が行われる場合がある |
| 健康面 | 孤立や体調悪化の見落としに注意 | 共同生活特有の衛生・睡眠等の課題もある |
| 向いている状況 | 家と周囲が安全で、生活を維持できる | 自宅で安全・健康な生活を続けるのが難しい |
比較して分かるのは、「自宅の方が快適」「避難所の方が安心」と一律には決められないことです。
災害の状況と家族の状態によって、適切な場所は変わります。
保存用|在宅避難を続けられるか確認するチェック表
これは行政による在宅避難の「合否判定表」ではありません。
自宅にとどまる判断をした後も、安全と生活を維持できるか確認するために使ってください。
□ 自治体の最新の避難情報を確認した
□ 自宅に倒壊・傾きなどの危険がない
□ 周囲に火災・ガス漏れなどの危険がない
□ 津波・土砂災害などから安全な場所にいる
□ 洪水・高潮なら屋内安全確保の条件を確認した
□ 飲料水を確保できる
□ 食料を確保できる
□ 安全なトイレを確保できる
□ 常用薬や必要な医療を維持できる
□ 暑さ・寒さをしのげる
□ スマートフォン・ラジオ等で情報を受け取れる
□ 必要な物資・医療・福祉支援へつながれる
□ 家族全員の健康を維持できる
一つでも当てはまらなければ自動的に「避難所へ行く」という意味ではありません。
例えば自宅に水がなくても、近くの給水拠点を安全に利用できれば補える場合があります。
反対に、複数の条件を満たしていても、新たな避難指示や建物被害が発生すれば判断を変える必要があります。
よくある疑問
避難所へ行かず家にいてもいい?
自宅と周囲が災害から安全で、その後の生活を維持できる場合は在宅避難が選択肢になります。自宅が壊れていないことだけでは判断できません。
避難指示が出ても家にいられる場合はある?
洪水等・高潮では、内閣府が示す屋内安全確保の条件を満たす場合があります。ただし「避難指示を無視する」という意味ではありません。危険な場所にいる人は警戒レベル4までに適切な避難行動を取ることが基本です。
マンションの高層階なら洪水でも安全?
階数だけでは判断できません。家屋倒壊等氾濫想定区域、想定浸水深、浸水継続時間に加え、停電・断水・トイレ・孤立への備えも確認します。
津波警報が出ていても丈夫な家なら残っていい?
沿岸部や川沿いなど津波の危険がある場所では、高台や津波避難ビルなど安全な場所への速やかな避難が基本です。在宅避難を検討する段階ではありません。
停電していても在宅避難できる?
一律には決まりません。照明・通信だけでなく、冷暖房、マンションの給水設備、医療機器などへの影響を含め、健康を維持できるか判断します。
在宅避難者も水や食料をもらえる?
在宅避難者も支援対象として想定されています。ただし配布場所、時間、対象、登録方法は自治体や災害ごとに異なります。
避難所へ行けば必ず物資をもらえる?
在宅避難者への物資配布拠点になる場合がありますが、すべての避難所でいつでも同じ支援を受けられるわけではありません。自治体が発表する配布情報を確認してください。
避難者名簿への登録は必須?
在宅避難者全員に「最寄りの避難所で名簿登録する」という全国一律の義務は確認できません。一方、自治体が利用者登録や在宅避難者の状況把握を行っている場合は、その方法に従ってください。
避難所のトイレや充電設備だけ利用できる?
利用できる場合はありますが、避難所ごとの設備や運営状況によります。充電、Wi-Fi、入浴、炊き出しなども全国一律のサービスではありません。
途中から避難所へ移ってもいい?
状況が悪化したら避難先を変えて構いません。水・食料・薬・トイレが確保できなくなった、体調が悪化した、建物の安全に不安が出たときなどは在宅避難を続ける前提を見直します。
避難所から自宅へ戻って在宅避難へ切り替えてもいい?
自宅と周囲の安全が確認され、自治体から避難情報の解除など必要な情報が出ていることを確認してから判断します。雨がやんだ、地震の揺れが止まったという理由だけで急いで戻らないでください。
何日分の備蓄があれば在宅避難できる?
政府は最低3日、できれば1週間程度の備蓄を推奨しています。ただし、これは在宅避難の許可条件ではありません。災害規模や家族構成に応じて必要量は変わります。
主な公的情報
- 内閣府「避難情報に関するガイドラインの改定(令和8年3月)」
- 気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」
- 内閣府「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」
- 内閣府「避難所の生活環境対策」
- 内閣府「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン」
- 内閣府「令和8年版 防災白書|指定緊急避難場所と指定避難所の確保」
- 内閣府「令和8年度 防災週間」
- 気象庁「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について」
- 厚生労働省「災害時における健康管理」
まとめ|「家にいていいか」は3つに分けて考える
避難所へ行かず、自宅で避難生活を送れる場合はあります。
ただし、判断する順番を逆にしないことが大切です。
最初に確認するのは、今いる自宅が、その災害から本当に安全なのかです。
津波、土砂災害、洪水、火災、建物倒壊などの危険があれば、まず命を守るための避難行動を取ります。
危険が去った後は、水、食料、トイレ、薬、電気、暑さ・寒さなどを含め、その家で避難生活を維持できるかを考えます。
そしてもう一つ忘れたくないのが、必要な支援につながれているかです。
在宅避難者も、水・食料・生活物資、情報、医療・福祉などの支援対象として想定されています。避難所も、泊まる人だけではなく地域の支援拠点として機能する場合があります。
ただし、物資をどこで配るのか、登録が必要なのか、どの支援を受けられるのかは自治体や災害によって変わります。
「避難所へ行かなかったら支援を受けられない」と思い込む必要はありませんが、「家にいれば何とかなる」と孤立するのも避けたいところです。
今いる場所は安全か。
自宅で生活を続けられるか。
必要な支援につながれているか。
この3つを、その時々の状況に合わせて確認してください。在宅避難は一度決めたら変えられない選択ではありません。状況が変われば、避難する場所も変えて構いません。