
熱き小宇宙(コスモ)を燃やせ!ファミコンで蘇る聖闘士たちの闘い
1987年、少年ジャンプの黄金期を支えた大人気漫画『聖闘士星矢』が、ついにファミコンゲームとして登場──それが『聖闘士星矢 黄金伝説』です。
当時の子供たちにとって、「青銅聖闘士を自分の手で操作できる」というだけで大興奮。しかし、実際にプレイしてみると……アクションとRPGが融合した独自のゲームシステム、謎めいた難易度、そして数々の“伝説”が待ち受けていました。
本記事では、原作との違いやゲームならではの要素、プレイヤーのリアルな声を通して、この“聖闘士星矢ゲームの原点”を徹底解剖していきます。
📘 作品概要・基本情報

『聖闘士星矢 黄金伝説』は、1987年8月10日にバンダイから発売されたファミリーコンピュータ用ソフトです。原作は、車田正美による人気漫画『聖闘士星矢』。週刊少年ジャンプで連載中だったこの作品は、アニメ化を経て社会現象的な人気を博しており、まさに絶頂期でのゲーム化でした。
ゲームのジャンルは、アクション要素とRPG要素が融合した**「アクションRPG」**タイプ。プレイヤーは星矢を操作し、仲間の聖闘士たちを加えながら、強敵とのバトルを繰り広げていきます。戦闘はリアルタイムアクションではなく、コマンドバトル形式を採用し、レベルアップや経験値による成長要素も取り入れられていました。
パッケージには「ファミコンジャンプ以前のキャラゲーの代表格」と言われるにふさわしい、星矢とフェニックス一輝の描き下ろしが使用され、発売当初から少年ファンの心を掴みました。
本作のシナリオは、原作の序盤「銀河戦争編」から「暗黒聖闘士編」、そして「十二宮編」の一部までをカバーしており、ファンにはたまらない展開となっています。ただし後述するように、再構成されたゲーム独自の展開も多く、そこがプレイヤー間で賛否を呼ぶポイントにもなりました。
🧩 原作との違いと再構成されたストーリー

ファミコン版『聖闘士星矢 黄金伝説』は、原作マンガの「銀河戦争編」から「白銀聖闘士編」の一部までをベースにしながらも、ストーリー展開は大きくアレンジされています。
原作では、星矢たち青銅聖闘士が激闘を重ねながら成長していく物語がドラマチックに描かれますが、ゲーム版ではその流れを再現しつつも、各イベントがシンプルなセリフとバトル中心に構成されており、展開も簡略化されています。
また、プレイヤー自身が町を歩き回って情報を集めたり、迷路のようなマップを探索する要素が加えられており、原作にはない「謎解き型RPG」のようなゲーム体験が重視されています。登場順や戦う相手も原作と異なる部分が多く、ファンからすると驚きの展開も。
つまりこの作品は、原作の魅力をベースにしながら、ゲームならではの独自アプローチで再構築された“もうひとつの聖闘士星矢”と言える内容になっています。
🎮 原作にないゲームオリジナル要素・キャラ

『聖闘士星矢 黄金伝説』は、RPG的な要素を取り入れたアクションアドベンチャーゲームであり、原作には存在しない多数の敵キャラクターやイベントが追加されています。
とくに目立つのが、町中やダンジョン内でランダムに出現する謎の一般兵士やザコ敵たち。彼らは名前こそ出てこないものの、原作には一切登場せず、ゲームの進行やレベル上げのために用意されたオリジナルの存在です。
また、物語の進行に関しても、原作にない拠点となる町や探索エリアが複数登場し、プレイヤーが情報を集めながら進めていくという“ゲーム的な体験”が強化されています。こうしたエリアや住民の一部もゲームオリジナルです。
さらに、イベントの順番や演出もアレンジされており、たとえば一輝との戦いや白銀聖闘士たちとの対決も、原作とは異なる配置やセリフで描かれています。
このように、『黄金伝説』は原作を下敷きにしつつも、当時のゲーム設計に合わせて独自の要素を多く盛り込んだ作品となっています。原作ファンにとっては驚きとツッコミどころが満載な内容ですが、それが本作の一つの魅力にもなっています。
💬 原作ファンの満足度と当時の声

ファミコン版『聖闘士星矢 黄金伝説』が発売された1987年当時、ジャンプ黄金期の真っ只中。人気絶頂の『聖闘士星矢』がゲーム化されるということで、多くの原作ファンが大きな期待を寄せていました。
しかし、発売後の評価は賛否が分かれました。とくに当時のファミコン少年たちの間では──
「聖矢のアクションが重すぎて思うように動かない…」
「敵が強すぎて、原作のかっこよさが再現されてない…」
「謎解きが難しすぎて詰んだ」
といった声が多く、ゲームバランスの厳しさや操作性に不満を抱くプレイヤーも少なくありませんでした。
一方で、
「BGMが神がかっていて何度もリピートした」
「セリフや演出がちゃんと原作を意識していて嬉しい」
「一輝とのバトルはめちゃくちゃ燃えた」
といったポジティブな評価も多く、特に作品愛を感じる演出面や、熱いBGM、原作再現に努力した構成には一定の評価が集まりました。
ゲーム雑誌『ファミコン通信』(当時)などでも評価はやや厳しめでしたが、「ジャンプ原作ゲームの先駆け」として取り上げられることもありました。
総じて言えば、原作ファンの期待には応えきれなかった面もあるが、愛ゆえに最後までプレイし続けたプレイヤーも多かった──そんな一本です。
📺 ジャンプ原作ゲームとしての歴史的位置づけ
『聖闘士星矢 黄金伝説』(1987年)は、週刊少年ジャンプ作品のファミコンゲーム化としては初期の代表作のひとつに数えられます。前年の1986年に『キン肉マン マッスルタッグマッチ』が登場し、以降『ドラゴンボール 神龍の謎』(1986年)などジャンプ原作ゲームが次々と登場する中で、本作はジャンプ黄金期を象徴するビッグタイトルのひとつとして大きな注目を集めました。
原作のストーリーを大胆に再構成したアドベンチャー+アクションというジャンルの組み合わせは、他のジャンプ作品とは一線を画す構成であり、アニメと連動した演出やBGMの完成度も高く評価されました。
また、『黄金伝説』は原作のキャラクター同士のバトルをゲームとしてどう再現するかという点で、後のジャンプゲーム開発にも大きな影響を与えたと考えられます。特に、ステージクリア型ではなく探索や成長要素、謎解きなどを盛り込んだゲームデザインは、後年の『ファミコンジャンプ』シリーズや『幽☆遊☆白書』などの作品にも通じる試みでした。
さらに、本作のヒットを受けて翌年には『聖闘士星矢 黄金伝説 完結編』が発売されるなど、シリーズ化が行われた数少ないジャンプ原作ゲームとしても重要な存在です。
こうした点から、『聖闘士星矢 黄金伝説』は、ジャンプ原作ゲーム黎明期における“挑戦的な意欲作”としての歴史的価値を持っていると言えるでしょう。
🏁 まとめ:ジャンプ原作ゲームの夜明けを飾った意欲作

『聖闘士星矢 黄金伝説』は、ただのキャラゲーではありませんでした。
当時のジャンプ黄金期を背景に、ファミコンで“聖闘士たちの小宇宙(コスモ)”をどう再現するか──その挑戦が詰まった1本です。
原作を忠実に再現するだけでなく、ゲームならではの成長要素・謎解き・アクションを融合し、今なお記憶に残る独特のゲーム体験を生み出しました。
「原作にないけど、なぜか印象深い」──そんな敵や演出に戸惑いながらも、当時の子どもたちは熱中し、何度も何度もアンドロメダ島をさまよったのです。
完成度でいえば荒削りな部分もあります。けれどそこにこそ、“最初の星矢ゲーム”としての価値とロマンがある。
後に登場する多くのジャンプゲームたちに、確かな火種を灯した――
『聖闘士星矢 黄金伝説』は、まさにジャンプ原作ゲームの伝説のはじまりだったのです。
黄金聖闘士よりも強敵だったのは、ジャンプ力と当たり判定だったりして…?