
月に代わって、おしおきよ!アクションゲームで甦る“90年代少女漫画”の熱気
1993年、アニメ『美少女戦士セーラームーン』の人気が最高潮に達していた時期、スーパーファミコン向けに登場したのがアクションゲーム版『美少女戦士セーラームーン』です。原作の魅力を活かしつつ、当時大流行していたベルトスクロール型アクションのフォーマットを採用。プレイヤーはセーラー戦士5人の中から1人を選び、アニメ第1期の物語をなぞりながら、クイン・ベリル率いるダーク・キングダムの野望を打ち砕きます。原作のキラキラ感と、アーケードライクな手触りが融合した本作は、少女漫画原作ゲームとしては異例の爽快感を誇りました。
📘 作品概要・原作との関係

スーパーファミコン版『美少女戦士セーラームーン』は、バンダイから1993年8月27日に発売されたベルトスクロール型アクションゲームです。開発はバンプレスト傘下のエンジェル。プレイヤーはセーラームーンをはじめ、マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスの5人から1人を選び、全横スクロール形式のステージを進みながら敵を撃破します。
物語はアニメ第1期(1992年放送)をベースに構成されており、クイン・ベリル率いるダーク・キングダムとの戦いを中心に展開。各ステージの終盤には、原作やアニメに登場した妖魔や四天王がボスとして待ち構えます。随所でキャラクターの必殺技や変身シーンも再現され、当時のファンが夢見た“アニメの世界で戦う感覚”を家庭用ゲーム機で体験できる作品でした。

また、本作はアニメ版のキャラクターデザインや演出を忠実に取り込みつつ、ゲームとしての遊びやすさを優先して一部エピソード順序や演出が再構成されています。そのため、アニメ視聴者にとっては馴染みやすく、ゲームプレイヤーにとってもテンポよく遊べる構成となっていました。
🧩 原作との違いと再構成されたストーリー

スーパーファミコン版『美少女戦士セーラームーン』は、アニメ第1期を忠実に下敷きにしながらも、ゲームテンポに合わせてストーリーを大幅に再構成しています。アニメでは物語が全46話をかけて徐々に展開されましたが、ゲームではわずか5ステージ構成のため、主要エピソードやキャラクターの登場順が大胆に圧縮されているのが特徴です。
例えば、原作では四天王はそれぞれ独立したエピソードや作戦を持って登場しますが、ゲームでは各ステージの中ボス・大ボスとして順番に配置され、戦闘シーンがメインに。さらにアニメでは長い心理戦や会話劇が描かれる場面も、ゲームでは短いカットイン演出やボス前の一言で済ませるなど、プレイヤーがアクションの流れを崩さず楽しめるように調整されています。
また、敵妖魔の種類や配置は、アニメに登場した個体をベースにしつつもゲームオリジナルの構成が多く、特定のエピソードに縛られず「セーラームーン世界の雰囲気」を濃縮している点が魅力です。これは当時のバンダイ製キャラゲーに多く見られるアプローチで、「限られた容量とゲーム性の両立」を目指した結果といえるでしょう。
アニメを知っている人にとっては「あのシーンがこうアレンジされたのか」という発見があり、ゲームから入った人には濃密な“ダーク・キングダム決戦ダイジェスト”として楽しめる構成になっています。
🎮 原作にないゲームオリジナル要素・キャラ

スーパーファミコン版『美少女戦士セーラームーン』には、アニメ第1期には登場しないゲームオリジナルの要素や敵キャラクターが多数盛り込まれています。これは、当時のアクションゲーム制作でよく見られた「プレイ時間と難易度を確保するための追加要素」であり、原作ファンでも新鮮に楽しめるポイントでした。
まず顕著なのが、各ステージに配置された雑魚敵の多くがゲームオリジナルデザインであること。アニメに登場する妖魔の姿を一部参考にしつつも、アクション性を高めるために動きや攻撃パターンが独自に設定されています。例えば、動きの素早い爪攻撃タイプや、飛び道具を放つ遠距離タイプなど、原作では見られないバリエーションが追加されました。
さらに、ステージ構成そのものもオリジナル要素が強く、アニメでは戦闘が行われなかったロケーション(遊園地、港湾エリア、廃ビル内部など)が用意されています。これにより、原作の物語に直接関係しないオリジナル戦いの場面が数多く追加され、プレイヤーはセーラー戦士の世界をより広く冒険できるようになっています。
また、ボス戦の一部は原作キャラの登場順や設定をアレンジしており、ゲームの進行に合わせて戦いやすいよう順番が最適化されています。特に原作では交戦しない組み合わせの戦いが見られるのは、ゲームならではの醍醐味と言えるでしょう。
このようなアレンジや追加要素は、単なる“原作再現”にとどまらず、「ゲーム版セーラームーン」というもう一つの楽しみ方を提供する存在になっています。
💬 原作ファンの満足度と当時の声

1993年にスーパーファミコンで発売された『美少女戦士セーラームーン』は、発売当時から原作ファンの注目を集めました。特にアニメ第1期をベースにした世界観と、5人のセーラー戦士を自由に選んで操作できる点は、ファンにとって大きな魅力となりました。
当時のゲーム誌『ファミコン通信』や『ファミマガ』では、「原作キャラクターの再現度が高く、アニメそのままの必殺技演出がうれしい」「BGMがアニメの雰囲気に近く、ファンなら思わずニヤリ」といった好意的な評価が目立ちました。一方で、「難易度は高めで、アクションに慣れていないプレイヤーには厳しい」という意見もあり、攻略本や友人との情報交換が盛んに行われたのもこの作品の特徴です。
女性プレイヤーの感想としては、「アクションゲームは苦手だけど、セーラームーンだから最後まで頑張れた」「アニメでは見られない戦闘シーンや背景が新鮮だった」という声が多く、原作愛がプレイ意欲を後押ししたことがうかがえます。

また、男児向けタイトルが多かった当時の家庭用アクションゲーム市場において、少女向けアニメを題材にした本格派ベルトスクロールアクションは珍しく、「女の子が主役のアクションでもここまで熱く戦えるのか!」と驚きをもって迎えられたのも印象的でした。
総じて、原作ファンの満足度は高く、セーラームーンゲームシリーズの礎を築いた一作として記憶されています。
📺 90年代キャラゲー史における『美少女戦士セーラームーン』の位置づけ

1990年代前半、家庭用ゲーム市場は『ドラゴンボール』『聖闘士星矢』『北斗の拳』など、少年誌発のアクションや格闘ゲームが主流でした。そんな中、1993年のスーパーファミコン版『美少女戦士セーラームーン』は、少女漫画原作でありながら本格的なベルトスクロールアクションという挑戦的な作りで登場。これは当時としても極めて異例の試みでした。
開発は『くにおくん』シリーズで知られるテクノスジャパンが担当しており、操作感や敵配置、コンボ感覚はアクションゲーマーにも馴染みやすい仕上がりでした。つまり、ただの“ファン向けキャラゲー”ではなく、アクションゲームとしても通用する完成度を持っていたのです。
この作品は、90年代キャラゲー史の中でも「少女向け原作 × 本格アクション」という路線を切り拓き、その後の『美少女戦士セーラームーンR』や『カードキャプターさくら』など、女性向けIPを本格ゲームとして展開する流れの先駆けとなりました。
当時のゲーム誌でも「女の子向けゲームの印象を覆した一本」と評され、男性プレイヤーからも「普通に面白いアクション」として評価を受けたのは、キャラゲーとしては異例。市場の裾野を広げたという意味でも、90年代のキャラクターゲーム史に確かな足跡を残したタイトルです。
🎯 なぜこのジャンルで作ったのか?(ゲームジャンルと原作の相性分析)

『美少女戦士セーラームーン』(アクション版)は、いわゆる「ベルトスクロール型アクション」──『ファイナルファイト』や『熱血硬派くにおくん』の系譜にあるジャンルを採用しています。一見、少女漫画原作との組み合わせは意外ですが、この選択には当時のゲーム市場の動向とターゲット層の拡大戦略が色濃く反映されています。
1990年代前半、アーケード・家庭用問わずベルトスクロールアクションは黄金期を迎えていました。多人数プレイや派手な必殺技、ステージごとに異なる敵キャラのバリエーションは、短時間で爽快感を得られる設計として人気を博していたのです。一方で、『セーラームーン』はアニメ化によって男性ファンも増加しており、ゲーム化にあたっては「少女漫画ファン+アクションゲームファン」という両方の市場を狙える形が求められました。
さらに、このジャンルはキャラクターごとに攻撃モーションや必殺技を差別化しやすく、セーラー戦士それぞれの個性をゲーム内で表現するのに適していました。原作で描かれる敵との肉弾戦や必殺技演出を自然に落とし込めるため、結果としてファンにもゲーマーにも受け入れられるタイトルになったのです。
当時の雑誌インタビューでも、開発スタッフが「セーラー戦士の戦う姿を一番迫力ある形で見せられるジャンル」として、この形式を選んだと語っています。つまり、この“異色”の組み合わせはマーケティングと演出面の両方から導き出された必然だったと言えます。
🌙 まとめ

『美少女戦士セーラームーン』(アクション版)は、単なるアニメのゲーム化ではありません。少女漫画原作という枠を飛び越え、当時もっとも勢いのあったベルトスクロールアクションという舞台に挑んだ、開発陣の勇気と情熱の結晶です。
プレイヤーは、アニメで見たあの必殺技を自らの手で放ち、仲間と共に敵を倒す爽快感を味わえます。少女漫画ファンにとっては憧れのヒーローになれる瞬間が、アクションゲーマーにとっては手応えある戦いがそこにありました。この二つの世界が重なり合った時に生まれる高揚感──それこそが、この作品が今も語り継がれる理由でしょう。
発売から数十年、ドット絵のセーラー戦士たちは、画面の向こうで変わらぬ笑顔と戦う姿を見せてくれます。あの時、画面の前で胸を熱くしたあの気持ちを、今もう一度感じたい人へ──。このゲームは、あなたを再び月の光が導くあの戦場へ連れていってくれるはずです。
月に代わってオシャレにお仕置きよ〜!