- なぜ台風が4個も同時に?18~21号の同時発生は珍しい?過去例と日本への影響を整理
- 台風18~21号が4個同時に存在|8月24日に何が起きた?
- 4個同時はどれくらい珍しい?
- 2024年にも4個同時|「11月として初めて」だった
- 過去には5個同時もあった|1960年の「五輪台風」
- なぜ台風が同時に何個も発生する?
- 複数の台風を生みやすくする「モンスーントラフ」
- 2026年は本当に台風が多い?
- 2026年に台風が多い背景は?
- 「温暖化で台風が4個できた」と言える?
- 4個とも日本へ来るわけではない
- 台風18号は25~27日ごろ南西諸島へ|暴風・高波に警戒
- 台風同士は合体する?「藤原の効果」とは
- 4個あるだけで「藤原の効果」が起きるわけではない
- 「クアッド台風」「クアドラプル台風」は正式用語?
- 予報円が大きいほど巨大な台風、ではない
- 台風の進路から離れていても大雨になることがある
- 次に見るべきなのは「台風が何個あるか」ではない
- まとめ|4個同時は珍しいが、4個全部が日本へ来るわけではない
なぜ台風が4個も同時に?18~21号の同時発生は珍しい?過去例と日本への影響を整理

2026年8月24日午前9時、フィリピンの東にあった熱帯低気圧が台風21号「アッサニー」になりました。
この時点ですでに台風18号、19号、20号が存在していたため、18号から21号まで4個の台風が同時に存在する状態になりました。日本気象協会によると、8月に台風が4個同時に存在したのは1994年以来32年ぶりです。
ニュース画面に台風マークが4つ並ぶと、「4個とも日本へ来るのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、4個の台風が存在することと、4個すべてが日本列島へ接近することは別です。
8月24日夜の時点で、日本への今後の影響として特に警戒が必要なのは非常に強い台風18号です。19号、20号、21号はそれぞれ離れた海域を進み、25~26日にかけて熱帯低気圧へ変わる予想となっています。
そして「4個同時」という状態自体も、観測史上初ではありません。過去には4個同時の例が複数あり、1960年には5個の台風が同時に存在したことさえあります。
では、なぜこれほど多くの台風が同時に存在できるのでしょうか。
台風18~21号が4個同時に存在|8月24日に何が起きた?
「4個同時発生」という言葉から、4個の台風が同じ日に一斉に生まれたように見えるかもしれません。
実際には違います。
台風18号「ソウデル」は8月19日12時に発生し、19号「ナーラ」は22日9時、20号「ケナリ」は同日12時に発生。そして24日9時に21号「アッサニー」が加わったことで、4個が同時に存在する状態になりました。台風番号は毎年1月1日以降に発生した順番で付けられるため、18号が残っている間に19号、20号、21号が次々に発生すれば、連続した番号の台風が同じ天気図に並びます。
したがって、「18号が19号に変化した」「一つの台風が分裂した」という意味でもありません。4つはそれぞれ別の熱帯低気圧から発達した台風です。
8月24日18時ごろの4台風
| 台風 | 位置・状況 | 今後の大まかな見通し |
|---|---|---|
| 18号 ソウデル | 南大東島の東南東側を西北西へ進行。非常に強い勢力 | 25~27日ごろ南西諸島へ接近。暴風・高波などに厳重警戒 |
| 19号 ナーラ | トンキン湾付近 | 25日にかけて進み、26日ごろまでに熱帯低気圧へ |
| 20号 ケナリ | 台湾海峡~華南付近 | 25日にかけて熱帯低気圧へ |
| 21号 アッサニー | フィリピンの東 | 北東~北北東へ進み、25日には熱帯低気圧になる予想 |
位置や進路は数時間単位で変化します。8月24日夕方に気象庁は、台風18号が25~27日ごろに非常に強い勢力または強い勢力で南西諸島へ接近する見込みとして、沖縄地方と奄美地方に暴風やうねりを伴う高波への厳重な警戒を呼びかけています。
4個同時はどれくらい珍しい?
珍しい現象ではありますが、史上初ではありません。
日本気象協会は過去の事例を踏まえ、3個の台風が同時に存在する状態は決して極端に珍しくない一方、4個になると**「10年に一度レベル」**と説明しています。
今回にはもう一つ特徴があります。
8月に限れば、4個同時は1994年以来32年ぶりです。1994年には台風17号、18号、19号、20号が同時に存在しました。
一方、「季節を問わず4個」という条件なら、もっと最近にも発生しています。
2024年11月12日には、台風22号から25号までの4個が同時に存在しました。その7年前の2017年7月23日にも4個同時の例があります。
つまり2026年の出来事を、
「観測史上初の4台風」
と紹介するのは誤りです。
2024年にも4個同時|「11月として初めて」だった
2024年の事例は、ときどき「史上初の4台風」と誤解されます。
正しくは、11月に4個の台風が同時に存在したのが統計開始以来初めてでした。
気象庁長官も2024年11月20日の会見で、11月に4つの台風が同時に存在する時期があったことについて「初めての事例」と説明しています。
11月という台風シーズンの終盤に4個が並んだことが異例だったのであって、「4個同時」という現象自体が初めてだったわけではありません。
この違いは、2026年の今回を考えるうえでも重要です。
過去には5個同時もあった|1960年の「五輪台風」
さらに上があります。
1951年の台風統計開始以降、5個の台風が同時に存在した例が1回だけ確認されています。
1960年8月23日15時から24日9時にかけて、台風14号、15号、16号、17号、18号の5個が同時に存在しました。日本気象協会は、ローマオリンピック開幕直前だったことから、この状態が「五輪台風」と呼ばれたと紹介しています。
ただし「五輪台風」は、気象庁がこの5個に付けた正式な台風名称ではありません。
気象庁が名称を定めた気象現象の公式一覧にも「五輪台風」はなく、当時の個々の台風は台風14号~18号として記録されています。
したがって、歴史上の分かりやすい通称として扱うのが適切です。
なぜ台風が同時に何個も発生する?
台風は「一つ発生したら、ほかの台風が生まれなくなる」現象ではありません。
北西太平洋は非常に広く、複数の場所で同時に熱帯低気圧が発達できるだけの空間があります。
気象庁によると、台風は暖かい熱帯の海上で上昇気流が生まれ、次々に発生した積乱雲がまとまりながら渦を形成し、中心付近の気圧が低下して発達していきます。暖かい海から供給される水蒸気が凝結するときに放出する熱が、台風を発達させる重要なエネルギー源です。
ただし、海面水温が高いだけでは足りません。
気象庁も、一般に台風は海面水温26~27℃以上の海域で発生しやすいものの、大気の状態も重要で、海水温が高いだけでは発生・発達につながらないと説明しています。
積乱雲が発達しやすい湿った空気があり、下層に渦や風の収束があり、上空の風が台風の構造を壊しにくい――こうした条件が広い範囲で整えば、離れた場所で複数の熱帯低気圧が相次いで台風まで発達することがあります。
「海が暑いから4個できた」という一言では説明できません。
複数の台風を生みやすくする「モンスーントラフ」
複数の台風発生を考えるときによく登場するのがモンスーントラフです。
簡単に言えば、南シナ海から北西太平洋にかけて伸びる大規模な低圧部です。低緯度からの西風と東側からの風がぶつかる周辺では空気が集まりやすく、雲や低気圧性の渦が発達する場になります。
気象庁気象衛星センターの資料でも、モンスーントラフが南シナ海から北西太平洋南部へ広範囲に数日間持続し、そこから複数の台風が発生する事例が紹介されています。
一つの巨大な台風が4個へ分裂するのではなく、**「台風を作りやすい広い大気の場の中に複数の渦が育つ」**と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、今回の18~21号すべてを「同じモンスーントラフから発生した4兄弟」のように一括りにするのも適切ではありません。
台風19号はトンキン湾、20号は南西諸島付近、18号や21号はさらに東の海域で発生しており、それぞれ発生時の環境は異なります。
2026年は本当に台風が多い?
数字を見る限り、2026年はここまでかなり速いペースで発生しています。
気象庁の速報値では、8月24日現在の発生数は21個です。
月別では、
| 月 | 2026年の発生数 |
|---|---|
| 1月 | 1 |
| 2月 | 1 |
| 3月 | 1 |
| 4月 | 1 |
| 5月 | 2 |
| 6月 | 2 |
| 7月 | 5 |
| 8月 | 8 |
| 合計 | 21 |
となっています。2026年の値は速報値で、後日修正される可能性があります。
気象庁の1991~2020年平年値では、8月の発生数は5.7個、年間では25.1個です。2026年8月は24日の段階ですでに8個なので、月間の平年値を上回りました。
さらに日本気象協会によると、8月までに21個へ達したのは平成以降では2018年と並ぶ最多タイのペースです。1月から8月まで毎月台風が発生した年も、1951年以降では1965年、2015年、2026年の3例しかありません。
とはいえ、2026年が史上最多の台風年になると決まったわけではありません。
統計開始以降の年間最多は1967年の39個。同年は8月までに22個が発生しており、2026年の21個より1個多いペースでした。
「今年は多い」は言えますが、「史上最多ペース」「観測史上最悪」とまで断定する段階ではありません。
2026年に台風が多い背景は?
2026年春からはエルニーニョ現象が続いていると気象庁が判断しています。
7月は太平洋赤道域の日付変更線付近で対流活動が平年よりかなり活発になり、中部太平洋赤道域では下層の東風も平年よりかなり弱い状態でした。気象庁は、この大気と海洋の状態についてエルニーニョ現象時の特徴が強まっているとしています。
日本気象協会は、エルニーニョ時には台風の発生位置が平常時より南東へずれる傾向があり、暖かい海上を長く移動することで秋以降に発達した台風が日本へ近づく可能性があると解説しています。
ただし、ここにも線引きが必要です。
エルニーニョがあるから8月24日に4個並んだ、と一対一で説明できるわけではありません。
台風の発生数や位置は、海面水温だけでなく、大規模な大気循環、対流活動、モンスーントラフ、風の鉛直構造など多くの要素が組み合わさって決まります。
「温暖化で台風が4個できた」と言える?
現段階では、そう断定できません。
2024年11月に4台風が同時に存在した際、気象庁長官は、台風が発生した海域の海面水温が高かったことや、温暖化などが背景として影響している可能性には触れています。
一方で、個別の4台風同時発生が温暖化の影響なのかまで答えることは難しいとも明確に説明しました。
2026年の今回についても同じです。
長期的な気候変動と台風の性質を考える研究と、「8月24日に4個並んだ直接原因」を同じものとして扱うことはできません。
4個とも日本へ来るわけではない
「台風が4個」という数だけを見ると、日本が4方向から囲まれているような印象を受けます。
実際には、それぞれの位置も進路も大きく異なります。
8月24日夕方以降の見通しでは、19号はトンキン湾から華南方面、20号も華南方面へ進み、21号はフィリピンの東で短期間のうちに熱帯低気圧へ変わる予想です。
日本への今後の影響で最も重要なのは台風18号です。
4個同時だから危険度が4倍になるのではありません。
日本から遠い弱い台風が複数存在する場合より、非常に強い台風1個が人口の多い地域へ接近する方がはるかに大きな災害につながることもあります。
見るべきなのは「台風はいくつあるか」より、自分の地域に影響する台風がどこを通り、どの程度の雨・風・波が予想されているかです。
台風18号は25~27日ごろ南西諸島へ|暴風・高波に警戒
8月24日15時時点の台風18号は非常に強い勢力で、中心気圧940hPa、中心付近の最大風速45m/sと解析されました。
気象庁は24日17時台、25~27日ごろに非常に強い勢力または強い勢力で南西諸島へ接近する見込みとして、沖縄地方と奄美地方では25~26日にかけて暴風やうねりを伴う高波へ厳重に警戒するよう呼びかけています。土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水、高潮にも注意・警戒が必要です。
日本気象協会の24日夕方の解説では、25日に大東島地方を通過したあと、沖縄本島地方、奄美地方、先島諸島へ接近する見込みで、進行速度が次第に遅くなるため影響が長引く可能性も指摘されています。
「沖縄直撃が確定した」と考えるのではなく、予報円と最新の防災情報を継続して見る必要があります。
台風同士は合体する?「藤原の効果」とは
複数の台風が並ぶと、必ず話題になるのが「台風同士が合体するのでは?」という疑問です。
2個の台風がぶつかって単純に一つの巨大台風へ変身する、という理解は正確ではありません。
一方、近い場所に複数の台風が存在すると、互いの循環によって進路へ影響を与えることはあります。
気象庁の用語集では「藤原の効果」を、
2つ以上の台風が接近して存在するとき、互いの進路へ影響を及ぼす現象
として定義しています。相対的に低気圧性の回転運動をするなど、特徴的な動きを示す場合があります。
ただし気象庁は、この言葉を実際の気象解説には用いないとしています。
台風の進路は別の台風だけでなく、高気圧、気圧の谷、偏西風などからも影響を受けるため、「どこまでが台風同士の相互作用なのか」を個々の事例で明確に切り分けるのが難しいからです。
4個あるだけで「藤原の効果」が起きるわけではない
今回、18号から21号まで4個が存在するからといって、4個すべてが互いを引っ張り合っているわけではありません。
台風19号はトンキン湾、18号や21号ははるか東側など、かなり離れた位置にあります。
したがって、
「クアドラプル台風だから藤原の効果で進路が読めない」
と一括りにするのは不正確です。
複数存在していることと、互いの循環が進路を強く変えるほど接近していることは別の条件です。
「クアッド台風」「クアドラプル台風」は正式用語?
ニュースや気象解説では、
- ダブル台風
- トリプル台風
- クアッド台風
- クアドラプル台風
といった表現を見かけます。
日本気象協会も今回を「クアドラプル台風」と表現しています。
ただし、これは台風の個数を分かりやすく表現した呼び方で、気象庁が「4個同時ならクアドラプル台風」という正式な気象分類を設けているわけではありません。
気象庁の台風用語では、「台風」「台風番号」「予報円」「暴風域」「藤原の効果」などは定義されていますが、「クアッド台風」「クアドラプル台風」という分類は設けられていません。
記事やニュースでは、**「4個の台風が同時に存在」**と書くのが最も誤解の少ない表現です。
予報円が大きいほど巨大な台風、ではない
台風が複数あると進路図も複雑になり、予報円の大きさが気になるかもしれません。
ここにもよくある誤解があります。
予報円は台風本体の大きさではありません。
気象庁では、予報円を「予報した時刻に台風の中心が入ると予想される範囲」と定義し、その中へ中心が入る確率はおよそ70%としています。
先の予報になるほど進路の不確実性が大きければ、予報円も大きくなります。
台風が巨大化していることを表しているわけではありません。
また、中心が必ず予報円の中央を結んだ線に沿って進むわけでもありません。
台風の進路から離れていても大雨になることがある
「自分の県は予報円から外れているから大丈夫」とも限りません。
気象庁によると、日本付近に前線が停滞している場合、台風から流れ込む暖かく湿った空気によって前線の活動が活発になり、台風本体から離れた地域で大雨になることがあります。
大雨の危険度は、台風の中心位置だけで判断できません。
つぶログで取り上げた「令和8年8月千葉豪雨で何が起きた?」も、台風が千葉県を直撃したことで起きた豪雨ではありません。暖かく湿った空気や大気の不安定な状態などが重なれば、台風の中心が近くになくても道路冠水や浸水、土砂災害につながる雨になることがあります。
台風進路図とあわせて、雨雲の動き、警報・注意報、自治体の避難情報、気象庁の「キキクル」で現在の危険度を見ることが重要です。
次に見るべきなのは「台風が何個あるか」ではない
4個同時というニュースは目を引きます。
ただ、防災のために確認したい情報の優先順位は別です。
まず、自分の地域へ接近する可能性のある台風の最新進路を見る。そのうえで暴風域に入る確率や警報・注意報、大雨の危険度、自治体からの情報を確認します。
特に大雨が始まった後は「何ミリ降ったか」だけでなく、土砂災害、浸水、洪水の危険度がどこまで高まっているかを見る必要があります。
気象庁の主な確認先は、
です。
台風の数そのものより、自分がいる場所で何が起きる可能性があるのかを見る方が、防災にははるかに重要です。
まとめ|4個同時は珍しいが、4個全部が日本へ来るわけではない
2026年8月24日、台風21号が発生したことで、台風18号から21号まで4個が同時に存在する状態になりました。
8月に4個同時となったのは1994年以来32年ぶり。4個同時そのものは過去にもあり、2024年11月や2017年7月にも確認されています。さらに1960年には、統計開始以降唯一となる5個同時の事例もありました。
複数の台風が存在できるのは、広大な北西太平洋の複数地点で台風が発生・発達する条件が整うことがあるためです。モンスーントラフのように複数の熱帯擾乱が育ちやすい広い大気場が形成される場合もありますが、海面水温だけで決まるわけではありません。
2026年は8月24日時点ですでに21個、8月だけでも8個と発生数が多くなっています。ただし、年間最多が確定したわけではなく、今回の4個同時発生を地球温暖化やエルニーニョだけで直接説明することもできません。
そして何より、4個同時だから危険度が4倍になるわけでも、4個すべてが日本へ来るわけでもありません。
8月24日夜の時点で日本への影響として特に警戒が必要なのは台風18号です。
台風が何個並んでいるかという数字に驚くより、一つ一つの進路と勢力、雨・風・波の情報を分けて確認すること。それが「4個同時」という珍しい状況を、防災上正しく受け止めるために最も大切です。