- SS版『忍空』レビュー|ギャグ技と2D格闘はなぜ66点?
- セガサターン版『忍空』はどんなゲーム?
- TVアニメ最終回の22日前に発売された『忍空』ゲーム
- 操作できるのは8人――主人公側だけではない
- 2Dキャラクターと3D背景を組み合わせた画面
- 格闘ゲームとしては、ちゃんと「上・下・間合い」を見る
- スペシャルゲージは、攻めるほど増えていく
- 「ギャグ技」で相手のスペシャルゲージを削る
- 超ギャグ技になると、妨害として無視できない
- キャラクターごとの差も、必殺技の見た目だけではない
- しかし、攻撃を当てた「次」が広がりにくい
- コンボが少ないこと自体が悪いわけではない
- 技の「見た目」と判定の整理にも癖がある
- 一部の技は、逆にかなり強烈
- 1人用はかなり割り切った内容
- 2人対戦になると、ギャグ技の意味がはっきりする
- 初心者向けに必殺技を簡略化する設定もある
- アニメ版キャストをかなりそのまま連れてきた
- オープニングだけで終わらず、短いFMVも入る
- セル画キャラクターは魅力的。でも操作感とは別問題
- 音楽は橋本彦士氏
- 『忍空』を知らなくても対戦する理由はあるか?
- では、『忍空』ファンが遊ぶ理由は残っているか?
- 2026年、ゲーム版も発売から30年
- 2026年現在、どうやって遊ぶ?
- 今遊んでも面白いところ
- 現在では厳しいところ
- なぜD Tierではなく、C Tier・66点なのか
- では、なぜB Tierには届かないのか
- まとめ|ギャグを「ゲージ攻撃」にした発想は残る。でも格闘部分は伸び切らない
SS版『忍空』レビュー|ギャグ技と2D格闘はなぜ66点?

相手の体力を減らすだけなら、格闘ゲームとして珍しいことではありません。
『NINKU -忍空- ~強気な奴等の大激突!~』には、もう一つ減らせるものがあります。
相手のスペシャルゲージです。
風助なら相手を捕まえて舐める。橙次なら屁をかます。赤雷は戦いの最中に眠ってしまう。
見た目だけなら完全にギャグですが、これらは対戦システムの一部。技を当てれば相手のスペシャルゲージを奪い、超必殺技を使えるタイミングを遅らせることができます。さらにゲージが満タンになれば、通常の超必殺技だけでなく「超ギャグ技」も狙える。技によっては相手のゲージを一気に空にするほど強力です。
『忍空』らしいシリアスな戦闘と脱力する笑いを、単なる演出ではなく対戦の駆け引きへ入れようとした。
ここには、このゲームならではの発想があります。
一方で、対戦格闘ゲームの土台へ目を向けると印象は変わります。地上では通常の格闘ゲームのように攻撃を連続してつなぐ余地がかなり乏しく、複数ヒットを想定した技でも一発目のあとにガードできるケースがある。見た目や技名から期待する判定と、実際の挙動が噛み合わない技もあります。
つぶログのセガサターン全ソフトTier表では、C Tier・66点・総合527位タイ。
『忍空』のキャラクターを動かせることだけで残った66点ではありません。
上段と下段、ジャンプ、投げ、飛び道具、スペシャルゲージ、ギャグ技。対戦で考える材料は確かにある。
ただ、それらを支える「攻撃を当てたあと、さらにどう攻めるか」という格闘ゲームの基本部分が十分に広がらない。
『忍空』を知らなくても対戦だけで掘り続けられるか。
格闘部分の粗さを認めても、『忍空』のゲームとして遊ぶ理由は残るか。
66点は、その二つを分けて考えた評価です。
セガサターン版『忍空』はどんなゲーム?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | NINKU -忍空- ~強気な奴等の大激突!~ |
| 対応機種 | セガサターン |
| 発売日 | 1996年2月2日 |
| 発売元 | セガ |
| 開発 | SIMS |
| 公式ジャンル | アクション |
| ゲーム形式 | 1対1の2D対戦格闘 |
| プレイ人数 | 1~2人 |
| メディア | CD-ROM 1枚 |
| 価格 | 5,800円 |
| 型番 | GS-9036 |
| Tier | C |
| 評価 | 66点 |
| 総合順位 | 527位タイ |
セガ公式のサターンソフト一覧では、1996年2月2日発売、5,800円、型番GS-9036の「アクション」として掲載されています。開発はSIMS。1人用のCPU戦に加え、2人での対戦に対応します。
原作は桐山光侍氏の漫画『NINKU -忍空-』ですが、このゲームで使われている人物関係や帝国軍側のキャラクター、声優陣などは、1995年から放送されたTVアニメ版を強く基礎にしています。
漫画版とアニメ版を同じ設定として扱わない方がいい作品です。
TVアニメ最終回の22日前に発売された『忍空』ゲーム
TVアニメ『NINKŪ-忍空-』は、1995年1月14日から1996年2月24日までフジテレビ系で放送され、全55話。
スタジオぴえろも、アニメ版について原作漫画とは異なるオリジナル要素が多く盛り込まれていると説明しています。
サターン版の発売日は1996年2月2日。
つまり、アニメが終わって何年も経ってから作られた回顧的なゲームではありません。最終回の22日前、TVシリーズがまだ放送されている時期に店頭へ並んだ作品です。
そのため登場人物の選び方も、アニメ版の流れが色濃い。
主人公側だけでなく、アニメ終盤で重要になる人物まで対戦キャラクターへ入っています。
操作できるのは8人――主人公側だけではない
プレイアブルキャラクターは8人です。
| キャラクター | 戦い方の特徴 |
|---|---|
| 風助 | 風を使う技。小柄な体格と機動的な攻撃 |
| 藍朓 | 高いジャンプ力を生かした空中戦 |
| 橙次 | 地面を使った攻撃と中距離戦 |
| 赤雷 | 炎を使った攻撃と対空系の技 |
| 黄純(バサラ) | 氷と飛び道具を使った遠距離寄りの戦い |
| アジラダ | 雷を使い、近距離とゲージ運用に特徴 |
| メキラ | 幻術系の技と上下を揺さぶる攻撃 |
| コーチン | 飛び道具や特殊な下段攻撃を持つ |
8人という人数だけなら大規模な格闘ゲームではありません。
ただ、単純な必殺技の色違いにはなっていません。
たとえば藍朓は空中専用技が多く、一部の攻撃は立ちガードを要求する。橙次には中距離から地面を使って攻める技があり、下段でしか防げない攻撃もある。黄純は氷を飛ばしながら距離を取る戦いができ、コーチンにも空中対応の飛び道具や下段攻撃があります。
キャラクターの能力を対戦性能へ移そうとした形は見えます。
2Dキャラクターと3D背景を組み合わせた画面
試合そのものは左右方向で戦う2D格闘です。
奥へ走って回避するような3D格闘ではありません。
一方、背景にはポリゴンによる3D表現が使われています。
当時の商品説明でも、「3Dの背景」と「セル画を取り込んだアクション」が特徴として掲げられていました。実際の画面でも、キャラクターはアニメ的な平面表現、ステージはポリゴンという明確な質感差があります。
背景が3Dだから対戦に奥行きが増えるわけではありません。
ステージギミックとして立体空間を利用するゲームでもない。
その役割は主に見せ方です。
キャラクターはTVアニメ側の印象へ寄せながら、背景ではサターン世代らしいポリゴン表現を使う。その二つが同じ画面に並ぶのが本作のビジュアルになっています。
現在見ると、セル調のキャラクターと低ポリゴン背景の質感差はかなり大きい。
ただ、そのちぐはぐさまで含めて1996年初頭らしい画面でもあります。
格闘ゲームとしては、ちゃんと「上・下・間合い」を見る
ゲームの中心は1対1です。
歩く、しゃがむ、ジャンプする、ガードする、投げる。そこへキャラクター固有の必殺技とスペシャルゲージを使った大技が加わります。
とくに面白いのが、ガード方向を意識させる技がきちんと存在することです。
藍朓には空中から入り、立ちガードを要求する技がある。
橙次には下段で受ける必要がある中距離攻撃がある。
アジラダにも上段への意識を要求する攻撃があり、コーチンは逆に下段を崩す技を持っています。
飛び道具を持つキャラクターもいるので、
遠距離で撃つ。
飛び越える。
着地を狙う。
近付いて投げる。
上下を揺さぶる。
という対戦格闘らしい読み合いの骨組みはあります。
だから「キャラクターを表示して必殺技を出せるだけ」のゲームではありません。
スペシャルゲージは、攻めるほど増えていく
画面にはスペシャルゲージがあります。
ゲージは相手を攻撃したり、必殺技を使ったりすることで増え、L+Rによる挑発でも蓄積できます。
最大になるとゲージが点滅し、超必殺技などゲージを使った大技を狙える状態になります。
ここまでは比較的オーソドックスです。
普通なら、
ゲージをためる
→大ダメージの技へ使う
という流れになります。
『忍空』はそこへ、妙な選択肢を入れました。
「ギャグ技」で相手のスペシャルゲージを削る
それがギャグ技です。
相手を笑わせるためだけのモーションではありません。
技を当てると、相手のスペシャルゲージを減らします。ガードされた場合でも削れる量は小さくなるものの、ゲージへ干渉します。
風助は相手を舐める。
橙次は屁を使う。
赤雷は居眠り。
黄純は頭の形をした氷塊などを落とす。
メキラは靴を蹴り飛ばす。
やっていることは完全にコミカルですが、対戦上は
「相手がためた大技用リソースを奪う」
という妨害です。
この発想はかなり本作らしい。
『忍空』には激しい戦闘の途中へ急に脱力するギャグが入る。その性格を、ゲームでは相手の攻撃能力を下げるルールにしています。
キャラクター再現と対戦システムが、珍しくきれいにつながっている部分です。
超ギャグ技になると、妨害として無視できない
ゲージが満タンになると、超必殺技だけでなく超ギャグ技も使えます。
通常のギャグ技より効果が大きく、技によっては相手がためたスペシャルゲージをほぼ丸ごと、あるいはすべて失わせます。
橙次ならヒロユキまで現れて、さらに強烈な屁。
赤雷なら居眠りから炎を発生。
黄純はピアノを落とす。
コーチンになると、相手を小さな姿へ変えてガード不能の状態へするという特殊なものまであります。
ここでは、
自分のゲージを直接ダメージへ変えるか。
相手のゲージを奪って次の大技を封じるか。
という判断が生まれます。
ギャグ技が本作の個性として評価できるのは、笑えるからではありません。
相手の選択肢を減らすという格闘ゲーム上の意味を持っているからです。
キャラクターごとの差も、必殺技の見た目だけではない
8人の性能にはかなり癖があります。
藍朓は、ジャンプ力というアニメ側の個性をそのまま空中攻撃の多さへつなげています。飛び込み方向を変えられる技があり、空中から複数回入力する超必殺技も持つ。
橙次は中距離が得意で、地面を使った飛び道具や長いリーチを持つ。
赤雷は炎の対空技に無敵時間を持つ攻撃があり、近距離で大ダメージを狙える超必殺技もある。
黄純は氷による飛び道具と上段系の崩しが多く、距離を取った戦いへ寄せやすい。
コーチンは飛び道具を置きながら動ける技を持つなど、相手を近寄らせない戦い方ができます。
少なくとも8人を選んでも、必殺技の色だけ違う同じキャラクターを操作している感覚にはなりません。
このキャラクター差は、C Tierまで評価を残した理由の一つです。
しかし、攻撃を当てた「次」が広がりにくい
格闘ゲームとして大きく引っ掛かるのはここです。
現在公開されている詳細な技検証では、地上に立っている相手へ通常の意味でコンボを組み立てることがほぼできないとされています。
連続攻撃に見える必殺技でも、最初の一発を受けたあとに残りをガードできるものが複数あります。
藍朓の連続攻撃は初段後に防御可能。
橙次の高速連打も、当たったあと途中からガードできる。
赤雷やメキラにも、連続攻撃の見た目に反して一連の攻撃がそのままつながらない技があります。
ここは対戦格闘としてかなり大きい。
通常技を当てた。
そこから必殺技へつなぐ。
相手の受け身やガードを読んで、さらに次の攻めを組み立てる。
そうした「ヒット後の広がり」が弱いからです。
結果として、一回一回の攻撃を当てる読み合いへ戻りやすくなります。
コンボが少ないこと自体が悪いわけではない
ここは分けて考えたいところです。
コンボ数が多いほど格闘ゲームとして優秀、ではありません。
一発一発の差し合いを重視するゲームもあります。
『忍空』にも、
飛び道具を避ける。
上下を読む。
ジャンプを落とす。
投げを狙う。
ゲージを管理する。
という駆け引きがあります。
問題は、コンボを抑えた代わりに、その余白を別の深い攻防で埋め切れているかどうかです。
本作の場合、ギャグ技やキャラクター固有能力という面白い材料はありますが、通常攻撃を軸にした近距離戦の選択肢が十分には膨らまない。
これが専門的な対戦格闘と比べたときの差になります。
技の「見た目」と判定の整理にも癖がある
もう一つ気になるのが、技の分類と実際の挙動です。
たとえば風助には、マニュアル上では投げとして説明されている近距離技があります。
ところが実際にはガードでき、しゃがんでいる相手には成立しません。
メキラにも投げとして扱われている技がありますが、実際の挙動は高速の上段攻撃に近く、離れた位置からでも出せます。
これは単純に「当たり判定が全部おかしい」という話ではありません。
ただ、
見た目や技の分類からプレイヤーが予想する挙動と、実際のルールが一致しない場面がある
ということです。
対戦格闘では、この小さなズレが効いてきます。
何が確定するのか。
どこまで近付けば投げになるのか。
立ちとしゃがみのどちらで防ぐのか。
繰り返して覚えれば対応できますが、ゲーム側のルールが最初から気持ちよく理解できる設計ではありません。
一部の技は、逆にかなり強烈
対戦バランスも均一ではありません。
藍朓にはガードしづらい空中攻撃に加え、検証上ガード不能として扱われる技もある。
アジラダは自分のスペシャルゲージを急速にためる能力を持ち、超ギャグ技には広範囲かつ非常に回避しにくい性能があります。
コーチンには、超ギャグ技を受けた相手を小さくしてガードできなくする特殊効果まで存在します。
こういう無茶な技があること自体は、『忍空』のキャラクターゲームとして見ると楽しい部分でもあります。
しかし競技性の高い格闘ゲームとして見ると、別の評価になります。
キャラクターらしい派手さと、対戦ルールとしての整理が同じ方向を向いているとは限らない。
66点の中には、この粗さも入っています。
1人用はかなり割り切った内容
ゲームモードも大規模ではありません。
基本は1人用のアーケード形式と、2人用の対戦モード。
近年公開された英語化プロジェクトでも、「Arcade ModeとVersus Modeだけのかなりシンプルな内容」と説明されています。
キャラクターごとに大きく分岐するストーリーモードがあるわけではありません。
詳細な攻略検証では、誰を使ってCPU戦を進めても最終的なエンディングは共通とされています。
そのため一人で全キャラクターを使い込み、
「次はこのキャラクターの物語を見よう」
という遊び方には向きません。
8人の技やギャグを見る楽しさはある。
しかし一人用ゲームとして長く遊ばせる内容量は薄い。
ここもB Tierへ届かない理由です。
2人対戦になると、ギャグ技の意味がはっきりする
一方、人間同士で遊ぶとギャグ技はCPU戦より面白くなります。
相手のスペシャルゲージがあと少しで最大になる。
そこへ普通なら攻撃して体力を取りに行く。
『忍空』では、あえてギャグ技を狙ってゲージを削ることもできます。
ゲージを奪われた側は大技を使えなくなり、もう一度ため直さなければならない。
相手もそれを嫌ってギャグ技を警戒する。
ここにはちゃんと対人戦の読みがあります。
「ファン同士なら盛り上がる」と感情を創作する必要はありません。
相手の体力だけでなく、次に使える技まで奪い合える。
それ自体が2人対戦を成立させる材料になっています。
初心者向けに必殺技を簡略化する設定もある
格闘ゲームに慣れていない人への配慮もあります。
操作設定を「BEGINNER」にすると、X・Y・Zボタンへ一部の必殺技が割り当てられ、複雑な方向入力をせずワンボタンで出せます。
これはキャラクターゲームとして理にかなっています。
『忍空』が好きだからゲームを買った人すべてが、格闘ゲームのコマンド入力に慣れているとは限りません。
好きなキャラクターの必殺技を簡単に出せる入口を用意する。
高度な対戦システムではありませんが、商品としての対象を考えた工夫です。
アニメ版キャストをかなりそのまま連れてきた
キャラクターゲームとして評価しやすいのが音声です。
ゲーム版では、
- 風助:松本梨香
- 藍朓:真殿光昭
- 橙次:小杉十郎太
- 赤雷:石田彰
- 黄純:松本保典
- アジラダ:西村知道
- メキラ:平松晶子
- コーチン:谷口節
- 里穂子:林原めぐみ
- ナレーション:大滝進矢
がクレジットされています。
スタジオぴえろのTVアニメ公式資料でも、風助=松本梨香氏、藍朓=真殿光昭氏、橙次=小杉十郎太氏、里穂子=林原めぐみ氏が確認できます。
ただし里穂子は音声出演していても、8人のプレイアブルキャラクターには入りません。
出演していることと、操作できることは別です。
ゲーム中では必殺技、勝利時の演出、ムービーなどで声が使われます。全編を会話で進めるフルボイス作品ではありませんが、キャラクターの印象をアニメ版へ寄せる材料としては十分機能しています。
オープニングだけで終わらず、短いFMVも入る
CD-ROM作品らしく動画素材もあります。
現在の英語翻訳プロジェクトでは、字幕を入れる対象として
オープニングムービー
ゲームオーバー
各キャラクターの勝利コメントFMV
が明記されています。
つまり「アニメ映像が一本入って終わり」ではありません。
ただ、長編アニメパートが何度も挟まるゲームでもない。
対戦の節目に短い映像と声を置くことで、キャラクターゲームとしての雰囲気を補っています。
ここも過大評価は必要ありません。
ムービーの量そのものより、試合の外側まで『忍空』の人物で固めようとしたことに意味があります。
セル画キャラクターは魅力的。でも操作感とは別問題
セル画を取り込んだキャラクター表現は、本作を見たときに分かりやすい特徴です。
風助たちはポリゴンモデルではなく、TVアニメに近い平面的な絵として動きます。背景だけが3Dなので、人物がステージから浮いて見える場面もありますが、顔やポーズは認識しやすい。
ただ、絵が多く動くことと格闘ゲームのレスポンスがいいことは同じではありません。
対戦では、
技がいつ出るか。
どこまで届くか。
当たったあと何ができるか。
どの姿勢でガードすべきか。
という部分の方が重要になります。
本作はキャラクターを「それらしく見せる」ところには力が入っている一方、動いている絵を格闘ゲームのルールへ落とし込む部分には整理不足が残る。
その差が評価へ響いています。
音楽は橋本彦士氏
ゲームの音楽と効果音を担当したのは橋本彦士氏です。
スタッフクレジットでは「Music Composer & Sound Effects」として記録されています。プロデューサーは麻生宏氏、ディレクターは高津彰氏、テクニカルディレクターは片木秀一氏ら。開発はSIMSが担当しました。
『忍空』という版権名だけを使ってセガ社内で作られたというより、SIMSが実開発を担ったセガ発売作品です。
なお、TVアニメの主題歌『輝きは君の中に』については、アニメで使用されたこととゲームへの収録を混同しない方が安全です。ゲーム独自の音楽も存在するため、「アニメ主題歌がそのままゲームBGMになっている」と単純化はしません。
『忍空』を知らなくても対戦する理由はあるか?
まったくない、とは言えません。
ギャグ技によるゲージ妨害は面白い。
キャラクターによって遠近、上下、空中戦の比重が違う。
投げと飛び道具もある。
ゲージがたまれば、体力を奪う大技へ使うか、相手のゲージを壊す超ギャグ技へ使うかを考えられる。
二人で遊べば、最低限の読み合いは成立します。
ただし『忍空』という題材をすべて外し、純粋な対戦格闘だけとして長期間研究したくなるかというと、そこまでは届きません。
地上コンボの幅。
技を当てた後の攻め。
判定の分かりやすさ。
キャラクター間のルール整理。
一人用の内容。
このあたりが薄い。
独自ルールを試してみる面白さはあるが、対戦システムそのものを何十時間も掘る厚みは弱い。
これが最初の問いへの答えです。
では、『忍空』ファンが遊ぶ理由は残っているか?
こちらは、かなり分かりやすく残っています。
8人を選べる。
風助たちの能力が必殺技になっている。
藍朓は空中で強い。
橙次は地面を使う。
赤雷は炎。
黄純は氷。
アニメ版と同じ声が聞こえる。
勝利時には映像も入る。
そして真面目に戦っていたはずなのに、突然屁や居眠りや落下物で相手のゲージを削る。
このギャグ技は、とくに大きい。
『忍空』のコミカルな部分を「面白いモーションを再生しました」で終わらせず、相手の超必殺技を封じる戦術へ変えたからです。
格闘ゲームとして粗い部分を全部許せるほどではない。
それでも「なぜ『忍空』でこのゲームを作ったのか」は、技と声とギャグシステムから伝わってきます。
だからD Tierには下げていません。
2026年、ゲーム版も発売から30年
『NINKU -忍空- ~強気な奴等の大激突!~』は、2026年2月2日で発売30周年を迎えました。
ゲーム自体に大規模な30周年復刻企画が行われたわけではありません。
一方、TVアニメ側では2025年に公式30周年企画が展開され、西尾鉄也氏による描き下ろしビジュアルを使った商品が発売。スタジオぴえろ公式YouTubeでは『NINKŪ-忍空- 30th Anniversary PV』も公開されています。
ここからゲームの復刻予定を読み取る理由はありません。
ただ、アニメ30周年の翌年にゲームも30年という時期を迎えたことで、1996年の『忍空』ゲームを改めて振り返るにはちょうどいいタイミングになっています。
2026年現在、どうやって遊ぶ?
2026年8月現在、『NINKU -忍空- ~強気な奴等の大激突!~』は、Nintendo Switch/Nintendo Switch 2、PlayStation、Xbox、Steamなどへ移植された現行販売タイトルではありません。
サターントリビュートなどの現行復刻シリーズにも収録されていません。
そのため、1996年の国内版セガサターンディスクと対応する実機環境で遊ぶ方法が基本になります。
海外では2026年にコミュニティによる英語翻訳パッチも公開されていますが、これは公式英語版でも公式復刻でもありません。現在の正規販売手段としては扱えません。
復刻されていない理由を版権事情だと決めつける根拠もないため、そこは作品評価から切り離します。
今遊んでも面白いところ
現在遊んでも目を引くのは、ギャグ技をゲージ攻防へ組み込んだところです。
普通に攻撃してダメージを取る。
必殺技でゲージをためる。
相手も大技を狙っている。
そこで自分はダメージではなく、相手のゲージを奪いにいく。
格闘ゲームとして考えても成立する選択です。
8人にも性能差があり、藍朓なら空中、橙次なら中距離、黄純なら飛び道具、とキャラクターを替えた意味を感じられる。
アニメ版キャストの音声、セル画取り込みのキャラクター、3D背景という画面も、この時期のキャラクターゲームとして見どころがあります。
「キャラを選んで必殺技を見るだけ」で終わらなかったところは、66点でもきちんと評価したい部分です。
現在では厳しいところ
一方、対戦格闘として掘り下げるほど弱点も見えてきます。
地上の連続技を組み立てにくい。
複数ヒットするように見えて、途中からガードできる技がある。
技の分類と実際の判定が分かりにくいものもある。
一部の特殊技は性能差がかなり大きい。
1人用は基本的にCPU戦を進めるだけで、キャラクターごとの長いシナリオや固有エンディングを集めるタイプではありません。
そして8人というキャラクター数も、短く対戦するには十分でも、長期的に組み合わせを研究するには選択肢が広いとは言えません。
ここを「1996年だから」で全部許すことはできません。
同じ時期のサターンには、すでに対戦格闘を専門に磨いた作品が存在していました。
『忍空』はキャラクターゲームとしての工夫を優先した結果、格闘部分の完成度では一段譲ります。
なぜD Tierではなく、C Tier・66点なのか
つぶログでは本作をC Tier・66点・総合527位タイとしています。
D Tierへ落とさない理由は、「忍空ファン向けだから」ではありません。
ゲームとして残るものがあります。
上下を使い分ける技。
飛び道具。
投げ。
空中戦。
8人それぞれの性能差。
スペシャルゲージ。
超必殺技。
そして相手ゲージへ干渉するギャグ技。
2人で向かい合ったとき、どこから攻めるか、ゲージを何へ使うかという選択は成立しています。
技の表現にも、キャラクター設定をゲームへ落とそうとした形がある。
だから「キャラクターが表示されるだけの低品質な格闘ゲーム」としてDへ落とすのは違います。
では、なぜB Tierには届かないのか
B Tierへ上げるには、対戦そのものをもう一段掘れる必要があります。
通常攻撃を当てる。
そこから次の技へつなぐ。
相手の対応を読んで攻めを継続する。
キャラクターごとに複数の攻め方を組み立てる。
そうした格闘ゲームの繰り返しに、『忍空』は十分な厚みを作れていません。
ギャグ技という面白いルールがある。
しかし、その外側にある通常の攻防は比較的単純です。
技によって判定やガード可否の整理にも癖があり、対戦を深く研究したときに「このキャラクターなら、さらにこんなことができる」という発見が次々増えていくタイプではありません。
キャラクターゲームとして遊ぶ目的は明確。
対戦格闘だけを目的に選び続ける理由は弱い。
この境界が66点です。
まとめ|ギャグを「ゲージ攻撃」にした発想は残る。でも格闘部分は伸び切らない
『NINKU -忍空- ~強気な奴等の大激突!~』には、1996年のアニメ原作ゲームらしい魅力があります。
風助たちがセル画調で動く。
アニメ版と同じ声が聞こえる。
必殺技を出す。
超必殺技を狙う。
敵側の人物まで選んで2人で戦える。
ただ、それだけなら「好きなキャラクターを動かせるゲーム」で終わっていたでしょう。
本作にはギャグ技があります。
笑わせるための演出を、相手のスペシャルゲージを奪う攻撃へ変えた。
超必殺技を撃って体力を削るか。
超ギャグ技で相手の大技そのものを遅らせるか。
ここには、『忍空』の作風と対戦ゲームのルールを結び付けた面白さがあります。
その一方、地上戦では攻撃後の展開が広がりにくく、技の判定やガード可否にも整理不足が残る。一人用の内容も薄く、8人の対戦を長期間掘り続けるには底が浅い。
だから、キャラクターゲームとしての工夫を無視してD Tierにはしない。
しかし、ギャグ技一つで格闘ゲーム全体の粗さを救済してB Tierにもしない。
C Tier・66点。
セガサターン版『忍空』は、格闘ゲームとして完成度を突き詰めた作品ではありません。
それでも、『忍空』の「強さ」と「くだらなさ」の両方を、同じ対戦ルールの中へ入れようとしたゲームとして、見るべきところが残っています。