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『さんまの名探偵』レビュー|芸人ゲームを超えて推理ADVとして今遊んでも面白い?

目次
  1. 『さんまの名探偵』FCレビュー|さんまと助手で追う推理ADVは今遊んでも面白い?
  2. 『さんまの名探偵』はどんなゲーム?
  3. プレイヤーは「さんま」ではなく、さんまの相棒
  4. 桂文珍殺害から捜査が始まる
  5. 実在芸人だけの世界ではない
  6. マップを歩き、情報が増えると行き先も増える
  7. 8つのコマンドでさんまへ指示を出す
  8. 「さんま」コマンドはギャグ専用ではない
  9. 「どつく」は普通の聞き込みでは崩せない場面に使う
  10. カニ型カーソルで「どこを調べるか」まで自分で探す
  11. 証拠を「誰に見せるか」で話が進む
  12. 「メモ」は事件情報を見る機能ではなく、パスワード
  13. 本当に推理するゲームなのか?
  14. 同じ人物へもう一度聞きに行く意味もある
  15. ミニゲームが突然始まる
  16. 「ギャラクシガニ」は寄り道なのに意味がある
  17. ボートレースは今遊ぶと評価が分かれる
  18. 間違った行動にもエンディングが用意されている
  19. 実在芸人を事件へ入れると、疑う感覚が少し変わる
  20. ナムコと吉本興業が組んだ1987年の企画
  21. 開発スタッフはゲーム内クレジットにも残っている
  22. 今遊んでも面白いところ
  23. 現在では厳しいところ
  24. 『ファミコン探偵倶楽部』とは何が違う?
  25. 『ナイナイの迷探偵』は直接の続編ではない
  26. 2023年には『あつしの名探偵』というオマージュも登場
  27. 2026年現在、公式復刻版はある?
  28. まとめ|推理はある。ただし「フラグ探し」もかなりある

『さんまの名探偵』FCレビュー|さんまと助手で追う推理ADVは今遊んでも面白い?

『さんまの名探偵』では、プレイヤー自身が明石家さんまになるわけではありません。

ゲーム開始時に自分の名前を入力し、その人物がさんまとコンビを組んで事件を追います。プレイヤーが「聞く」「捜査」「証拠品」といった指示を選び、画面の中にいるさんまがその行動を実行する。つまり、プレイヤーが考え、さんまを動かすという関係です。

事件は、吉本高行の家で開かれたパーティーの最中に桂文珍が殺害されたところから始まります。さらにダイヤ「アフリカの星」の盗難も絡み、さんまと助手は大阪各地を回って関係者の話を聞き、証拠を集めていきます。

実在する芸人が事件の関係者として登場する設定は目立ちますが、ゲームとして見たときにおもしろいのは別のところです。

新しい証言を得ると行ける場所が増える。以前訪ねた場所にも別の人物が現れる。証拠品を誰かに見せると話が変わる。メニューから選ぶだけでは見つからない場所を、カニ型のカーソルで直接探すこともあります。

その一方、「すべての話題を聞く」「同じ場所へ戻る」「画面上の物へ複数の捜査コマンドを試す」といったフラグ探しも多く、2026年に自力で進めると、犯人を推理することより「ゲームが要求している次の一手」を探す方が難しい場面があります。

芸能人の顔ぶれを抜きにしても推理アドベンチャーとして遊べるのか。そこを中心に見ていきます。

『さんまの名探偵』はどんなゲーム?

項目内容
タイトルさんまの名探偵
対象版日本国内ファミリーコンピュータ版
発売日1987年4月2日
発売元・開発ナムコ
価格4,900円
型番/カタログIDNAM-SM-4900
JAN4907892000254
プレイ人数1人
ROM容量1.5Mbit(192KB)
ジャンルコマンド選択式アドベンチャー
バッテリーバックアップなし
再開方法パスワード

発売日、価格、1人用であること、JANは立命館大学ゲーム研究センターの現物資料データでも確認できます。カートリッジ資料ではNAM-SM-4900、PRG 128KB+CHR 64KBの計192KB、バッテリー非搭載です。

プレイヤーは「さんま」ではなく、さんまの相棒

タイトルだけを見ると、明石家さんまを操作して探偵になるゲームに思えます。

実際の構造は少し違います。

開始直後にプレイヤー側の名前を入力し、その人物とさんまがコンビを組みます。原作説明書も、画面上の命令をさんまへ指示して事件を捜査するゲームだと説明しています。名前以外の性別設定などはありません。

ナムコも1999年、『ナイナイの迷探偵』の発表時に本作を振り返り、明石家さんまをプレイヤーのパートナーとした作品だったと説明しています。

この距離感はゲームシステムにも合っています。

プレイヤーは「次はこの人物へ事件について聞こう」「この証拠を見せよう」と考える側で、さんまはその判断を画面内で実行する側です。しかも、ときにはプレイヤーの指示を離れてさんま自身に考えさせる専用コマンドまで用意されています。

主人公と操作キャラクターを完全に同一化するのではなく、二人一組で捜査する形になっています。

桂文珍殺害から捜査が始まる

冒頭で起きるのは、芸能プロデューサーの殺人事件ではありません。

大阪市の会社社長・吉本高行のもとで開かれたパーティーに出席していた桂文珍が殺害される事件です。事件の依頼人となる吉本あやこは文珍の婚約者という設定です。

さらに金庫から巨大なダイヤ「アフリカの星」が消えており、殺人と盗難の二つの謎が捜査へ絡んできます。

ここから先には終盤の真相に直結する情報が多いため、通常のレビューで知っておく必要があるのはここまでで十分です。

誰が殺したのか、ダイヤが何を意味するのかは伏せたままでも、ゲームシステムは評価できます。

実在芸人だけの世界ではない

出演する実在芸人はかなり豪華です。

ゲーム内クレジットでは、

  • 明石家さんま
  • 桂文珍
  • オール阪神
  • オール巨人
  • 太平サブロー
  • 太平シロー
  • 今いくよ
  • 今くるよ
  • 島田紳助
  • 西川のりお
  • 横山やすし

がCASTとして記録されています。

一方、吉本あやこや吉本高行など、事件のために作られた架空人物も登場します。

そのため「実在する芸人全員を容疑者にしたゲーム」というより、実在芸人と架空人物を同じフィクションの事件へ配置したミステリーと考える方が実際に近いでしょう。

ジミー大西は出演しておらず、さんまの助手でもありません。タモリも原作CASTには含まれていません。

マップを歩き、情報が増えると行き先も増える

捜査では「移動」を選ぶとマップ画面へ移ります。

最初からすべての場所へ行けるわけではありません。人から新しい場所の情報を聞くと、その地点がマップへ追加されます。また、一度調べた場所でも時間が経つと別の人物がいる場合があります。原作説明書も、同じ場所へ再び足を運ぶことを攻略上のポイントとして挙げています。

舞台は一つのテレビ局や楽屋だけではありません。

なんば花月、道頓堀、住之江競艇場、有馬温泉、ゲームセンター、探偵事務所、関係者の自宅など、捜査範囲は大阪とその周辺へ広がっていきます。テレビ関係の場所もありますが、数ある訪問先の一部です。

「誰からどの場所を聞いたか」が、そのまま行動範囲の拡大につながるため、聞き込みとマップ移動は分離していません。

証言を得た結果、本当に次の捜査先が増える。この部分は探偵ものとして分かりやすくできています。

8つのコマンドでさんまへ指示を出す

捜査画面で使う基本コマンドは8種類です。

コマンド主な役割
移動マップへ移り、別の場所へ行く
人を呼ぶその場所にいる人物を呼び出す
聞く人物へ質問する
どつく目の前の人物へ特殊な行動を取る
捜査場所や物を細かく調べる
証拠品入手品を調べる・使う・見せる
さんまさんま自身の判断で行動させる
メモ再開用パスワードを表示する

「捜査」にはさらに、しらべる/たたく/おす/あける/まわす/のむ・たべる/とるの7種類があります。

証拠品も、ただ所持するだけではありません。「つかう」「しらべる」「みせる・わたす」と使い分けます。

選択肢の数はかなり多く、1987年のコマンド式ADVとしても、画面に出た文章を読むだけでは進められません。

その代わり、選べる行動が多いことが後述する総当たり問題にもつながっています。

「さんま」コマンドはギャグ専用ではない

8コマンドの中でも変わっているのが「さんま」です。

これを選ぶと、プレイヤーが具体的な行動を指定するのではなく、さんま自身に考えさせます。

説明書では、ほとんどの場合はギャグを言って終わる頼りない行動として紹介されていますが、使い続けることで役立つ場面も示唆されています。

つまり、ただのお笑いボタンとして置かれているわけではありません。

自分で次の手が思いつかないとき、パートナーへ判断を委ねるという形でゲームの中へ組み込まれています。

プレイヤーとさんまを別人物にした設定が、ここでゲームシステムとして生きています。

「どつく」は普通の聞き込みでは崩せない場面に使う

さらに大胆なのが「どつく」です。

人物へ話を聞くだけでなく、相手をどつくという行動まで独立したコマンドになっています。

もちろん何でもこれで解決するわけではありません。使用頻度も「聞く」や「捜査」ほど高くありませんが、通常の聞き込みでは反応しない人物に対する別の働きかけとして用意されています。説明書にも、相手が白状する可能性を示す説明があります。

『さんまの名探偵』らしい名称ではありますが、笑わせるためだけにメニューへ置いた機能ではなく、捜査手段の一つです。

カニ型カーソルで「どこを調べるか」まで自分で探す

「捜査」で対象を選ぶ際、「そのた」を選ぶとカニ型のカーソルが現れます。

十字キーでカーソルを自由に動かし、背景の好きな場所を指して調べることができます。

コマンド式ADVでは、画面に「机」「ドア」「人物」など候補を用意し、その中から対象を選ばせる方法がよく使われます。

カニカーソルでは、その候補自体をプレイヤーが画面から見つけなければなりません。

これはうまく働けば、文章メニューの総当たりとは違う「現場を見る」感覚を作ります。怪しそうな場所を自分で指して証拠を発見できたときは、捜査した実感があります。

一方、必要な場所を見つけられないと、数ドット単位で画面を探す作業にもなります。

推理とピクセル探しは別物なので、この方式そのものを無条件に高く評価することはできません。それでも、聞き込みだけが続かないよう操作を変える役割は果たしています。

証拠を「誰に見せるか」で話が進む

調査で手に入れた物は証拠品として保管できます。

入手した物について調べたり、道具として使ったり、関係者へ見せたり渡したりすることで新しい情報を引き出します。

ここには推理ADVらしいおもしろさがあります。

証言を聞いたとき、「この人物なら、この品について何か知っているのではないか」と考え、その相手へ持っていく。うまくつながれば、次の人物や場所へ捜査が伸びていきます。

ただし、すべての証拠提示が論理問題になっているわけではありません。

次へ進む反応が見つからなければ、手持ちの品を何人もの人物へ順番に試すこともできます。

証拠から次の行動を推測できる場面と、正しいフラグを探す場面が混在しているのが本作です。

「メモ」は事件情報を見る機能ではなく、パスワード

現在のADVで「捜査メモ」と聞けば、人物相関や証言を自動整理してくれる機能を想像するかもしれません。

『さんまの名探偵』では違います。

「メモ」を選ぶと表示されるのは、ゲームを続きから始めるためのパスワードです。しかも、最初から使用できるわけではなく、ゲーム中でメモ帳を手に入れる必要があります。

カートリッジにバッテリーバックアップはないため、途中再開はこのパスワードを記録し、タイトル画面のCONTINUEから入力する方式です。

2026年の感覚では、これはかなり不便です。

長い文字列を写して、次回また入力する手間があり、さらにメモ帳を取るところまで進めないと利用できません。

本当に推理するゲームなのか?

ここが『さんまの名探偵』を現在評価するときに一番分けて考えたいところです。

事件を考える材料はあります。

人物ごとに証言があり、持ち物や現場を調べ、証拠品を別の人物へ提示し、新しい場所を突き止めていく。ある証言と別の情報を結びつければ、次に調べる相手を予想できる場面もあります。

その意味では、犯人を当てるだけの最後の一問まで何も考えないゲームではありません。

しかし、ゲームを進める難しさは、事件を推理する難しさと同じではありません。

原作説明書自身が、人物にはすべての話題を聞くこと、行ける場所を片っ端から訪ねること、画面上の物へ複数の捜査方法を試すこと、一度行った場所にも戻ることを勧めています。

つまり総当たりは、後世のプレイヤーが勝手に編み出した攻略法ではなく、ゲーム側もかなり想定しています。

「犯人はこの人物ではないか」と考えられても、進行に必要な一つの会話や一つの物調べを済ませていなければ先へ進めない。

逆に、事件の論理を完全に理解していなくても、コマンドを十分に試せばフラグを進められる場面があります。

現在遊ぶと、推理力より根気を要求される瞬間が確実にあるゲームです。

同じ人物へもう一度聞きに行く意味もある

総当たりの一方で、再訪そのものにはおもしろい使い方もあります。

別の場所で情報を得たあとに戻ると、以前とは違う人物がいることがあり、話せる内容も変わります。

このためマップは「一度調べた場所を消していくチェックリスト」にはなりません。

事件が進行すると同じ場所の意味が変わるため、知っている場所へ戻ることも捜査になります。

問題は、その変化が常にプレイヤーへ十分伝わるわけではないことです。

「あの証言を聞いたのだから、あそこへ戻ろう」と自然に推測できる場合もあれば、「進まないので以前の場所をもう一巡する」ことになる場合もあります。

この差が、本作の推理部分とフラグ探索部分の境目になっています。

ミニゲームが突然始まる

聞き込みと調査を続けていると、ゲームの形式そのものが突然変わります。

さんまを直接動かして人を追う追跡モード、横山やすしと競うボートレース、アクション系の場面、神経衰弱、ゲームセンターで遊べるシューティング「ギャラクシガニ」など、複数のミニゲームが組み込まれています。

すべてが同じ重要度ではありません。

ボートレースは先へ進むために勝つ必要があります。一方、エアロビクス系のゲームは失敗しても物語を進められます。「ギャラクシガニ」は本編クリアには必須ではなく、攻略するとその時点の進行に応じたヒントが得られます。

ADVの途中にアクションを置くことで、長く続く会話と調査をいったん切る効果はあります。

ただ、推理ができているのにボタン連打で先へ進めない場面まであるため、現在なら好みが分かれるでしょう。

「ギャラクシガニ」は寄り道なのに意味がある

ゲームセンターでは「ギャラクシガニ」というシューティングを遊べます。

Aボタンで弾を撃ち、カニ型の敵を倒していく内容で、名称も構成もナムコの『ギャラクシアン』を意識したミニゲームです。クリア自体は事件解決の必須条件ではありません。

おもしろいのは、ただスコアを競うだけのオマケではなく、クリアすると本編の進行状況に応じたヒントをもらえることです。

詰まっているプレイヤーがADVとは違う遊びへ寄り道し、その結果として捜査へ戻るための手掛かりを得る。

現在の親切なヒント機能とはかなり違う形ですが、ミニゲームを本編と完全に切り離さない工夫になっています。

ボートレースは今遊ぶと評価が分かれる

対してボートレースは、本編進行へ直接関わります。

横山やすしを相手に、AボタンとBボタンを交互に連打して先にゴールする方式で、勝たなければ捜査を先へ進められません。

事件の証拠を見抜けるかどうかとは何の関係もありません。

そのため、ADVの途中で操作を切り替える変化としてはおもしろくても、「推理したいのに連打で止められる」という欠点にもなっています。

ミニゲームを全部まとめて「楽しいアクセント」と評価するのは難しいところです。

任意で遊べるものと、突破を要求されるものでは意味が違います。

間違った行動にもエンディングが用意されている

本作には通常の結末とは別に、3種類のバッドエンドがあり、合計4系統のエンディングが存在します。

具体的な条件を書くと事件の後半をかなり明かしてしまうため、ここでは触れません。

ただ、一部の判断や行動、終盤のミニゲームの結果が単なる「もう一度選び直してください」では済まず、そのまま別の結末へつながる点は本作の特徴です。

プレイヤーが選んだ間違った捜査にも、ゲーム側が一つの結果を返す。

一本道の事件を追う作品でありながら、最後まで完全に一本道というわけではありません。

実在芸人を事件へ入れると、疑う感覚が少し変わる

出演者を知っていれば、画面に出てくる名前そのものに既視感があります。

しかし、ゲーム中の人物はあくまでフィクションの登場人物です。説明書にも、作品がフィクションであり実在の団体や事件とは関係しないことが明記されています。

現実の芸人本人の性格から「この人なら犯人ではない」と推理するゲームではありません。

おもしろいのはむしろ、普段なら殺人ミステリーの登場人物として見ない名前が、容疑を向けたり向けられたりする側へ置かれている違和感です。

テキストは関西弁を基調とし、会話にはギャグも入ります。それでも事件そのものは進行し、証言や証拠を集める捜査ADVとしての骨格があります。

笑わせる場面と殺人事件の捜査が、同じ画面の中で切り替わっていくゲームです。

ナムコと吉本興業が組んだ1987年の企画

本作はナムコが開発・発売し、吉本興業との協業で制作されました。

ナムコは1999年の公式発表でも、1987年に吉本興業と組んで『さんまの名探偵』を発売したことを、自社と吉本興業の過去の共同企画として振り返っています。

ここから先を、当時の許諾や出演料の話へ想像で広げる必要はありません。

ゲーム内クレジットと公式資料から確実に分かるのは、ナムコがゲームを制作し、吉本興業の実在芸人を登場人物として使用した作品だったというところまでです。

開発スタッフはゲーム内クレジットにも残っている

スタッフクレジットにはハンドルネームを交えながら、担当が記録されています。

シナリオはMENTAKO HYODO(兵藤岳史)、音楽監督はHIROKUN KAWADA(川田宏行)、作曲はRETURN OF KEINO(慶野由利子)、音楽アシストはZUNKO ODAWA(小沢純子)、プログラムはSAKUSAKU FUKAWA(普川隆志)です。

キャラクターデザインはSKELETON HIE SAN、CGデザインはBAHOON KUNCHAN、タイトルデザインはGACHAN TAKIGAMIと表示されています。

「21世紀になってROM解析で初めてスタッフが発見された」「引き抜きを防ぐため名前を隠した」といった開発ドラマを足さなくても、製品内に残るクレジットだけで十分です。

今遊んでも面白いところ

現在でも評価しやすいのは、捜査方法を一種類に絞らなかったことです。

人物へ質問するだけでなく、新しい場所を発見してマップを広げ、物を調べ、証拠品を別の人物へ見せ、必要ならカニカーソルで画面を直接探します。

「どつく」と「さんま」という作品固有のコマンドもあり、途中ではアクションやシューティングまで入ります。

特に、証言を得たことで新しい場所が生まれ、そこで得た証拠を別の人物へ持っていく流れは、探偵として事件を追っている感覚につながっています。

また、実在芸人が登場することを知らなくても、ゲームの基本構造自体は成立しています。

現在では厳しいところ

最大の弱点は、次に何をすればフラグが立つのか分からなくなる場面です。

会話には複数の質問項目があり、捜査には7種類の行動があり、カニカーソルで特定位置を探す必要もあります。一度訪れた場所に戻らなければならない場面まであります。

ヒントから自然に次の行動を考えられる場面なら問題ありません。

しかし手掛かりが薄いと、「聞けることを全部聞く」「持ち物を全部見せる」「過去の場所を全部回る」といった確認作業になりやすい。

このときプレイヤーが解いているのは殺人事件ではなく、ゲーム内部の進行条件です。

さらにパスワード式の再開、必須の連打系ミニゲームなど、現在なら快適性の面で改善したくなる部分もあります。

犯人を推理する難しさより、そこへたどり着く操作手順の方が難しく感じられる可能性があります。

『ファミコン探偵倶楽部』とは何が違う?

翌1988年には、ディスクシステムで『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』が登場しました。

どちらも人物へ話を聞きながら事件を追う作品ですが、『さんまの名探偵』は実在芸人をフィクションの事件へ配置し、マップ移動、カニカーソル、「どつく」「さんま」、複数のミニゲームまで混ぜています。

『ファミコン探偵倶楽部』は架空の登場人物によるシリアスな事件を軸に、聞き込みと調査、物語の展開をより前面へ出した作品です。

同じ「ファミコン時代の推理ADV」でも、目指している遊びの手触りはかなり違います。

『さんまの名探偵』の賑やかな捜査と比較してみると、ジャンルが短期間に別方向へ広がっていったことも見えてきます。

『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』レビューはこちら

『ナイナイの迷探偵』は直接の続編ではない

1999年には、ナムコと吉本興業が再び組み、PlayStation用『ナイナイの迷探偵』を発売しています。

公式ストーリーでは、ナインティナインの矢部浩之が、先輩の明石家さんまが以前『さんまの名探偵』に出ていたことを知って探偵に憧れる、という形で過去作へ触れています。

ただし、1987年の事件をそのまま続ける物語上の続編ではありません。

実在芸人を推理アドベンチャーへ登場させる発想を再び使った、別作品と考えるのが適切です。

2023年には『あつしの名探偵』というオマージュも登場

2023年12月31日には、『クイズ☆正解は一年後 presents あつしの名探偵』がNintendo Switch向けに配信されました。

TBSは「往年のファミコンゲームにインスパイア」された作品と説明しており、ファミ通でもFC時代のゲームを強く意識したオマージュ作品として紹介されています。

もちろん『さんまの名探偵』の公式続編ではありません。

それでも、実在する芸能人を使ったレトロ調のコマンド式推理ADVという形式が、36年後に再び意識された例として興味深い作品です。

2026年現在、公式復刻版はある?

2026年8月現在、『さんまの名探偵』はファミリーコンピュータ Nintendo Classicsには収録されていません

任天堂の現行配信タイトル一覧にも掲載がなく、Nintendo Switch向けに展開された『NAMCOT COLLECTION』の公式ラインナップにも本作は含まれていません。

PlayStation、Xbox、Steam、スマートフォン向けを含めても、1987年FC版そのものを現行機で購入できる公式復刻版は提供されていません。

したがって、2026年現在にオリジナル版へ正規の物理環境で触れるなら、FC本体と中古のオリジナルカートリッジを用意する方法が基本になります。

復刻されていない理由について、公式発表はありません。

出演者が多いことから権利関係を推測することはできますが、それを事実として説明する根拠にはなりません。「肖像権の問題で復刻できない」と断定するのは避けるべきでしょう。

まとめ|推理はある。ただし「フラグ探し」もかなりある

『さんまの名探偵』は、明石家さんま本人になって事件を解くゲームではありません。

名前を付けたプレイヤーが考え、その指示をパートナーのさんまが実行します。

マップを移動し、人物へ質問し、証拠品を集め、別の人物へ見せる。新しい証言から次の場所を見つけ、ときにはカニカーソルで現場そのものを探す。

こうした流れには、現在でも推理アドベンチャーとして通用する部分があります。

実在芸人を登場させた企画がなくても、「情報を拾って次の捜査先へつなげる」という遊びは残ります。

一方で、自力攻略ではコマンド総当たりの比重も無視できません。

進まなくなったとき、事件について考えるより、以前の場所を再訪したり、同じ人物へ別の項目を聞いたり、画面上の物へ何種類もの行動を試したりする時間が増えます。

さらにボートレースのように、推理とは別の操作能力で進行を止められる場面もあります。

だから、「芸能人が出てくるからおもしろい」だけでも、「よくできた本格推理ADVだからおもしろい」だけでもありません。

証言と証拠から次の一手を読めたときは探偵になれる。でも、ときには正解フラグを探す作業になる。

その両方を含んだゲームです。

1987年の『さんまの名探偵』を現在遊び直すなら、芸人の顔ぶれ以上に、この捜査の自由さと不親切さが同居した作りこそ、最も評価が分かれるところでしょう。

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