- 「うるう秒」はなぜ廃止へ?2027年5月から何が変わる・時計は1時間ずれる?
- 「うるう秒」は2027年に廃止?まだ正式決定ではない
- そもそも「うるう秒」は何のためにある?
- なぜうるう秒をやめる?「たった1秒」がコンピューターには厄介
- うるう秒で本当にシステム障害は起きた?
- 初めての「負のうるう秒」が問題になっている
- なぜ「2035年」から「2027年」へ早まった?
- 2027年5月20日に時計が1時間ずれるわけではない
- 「うるう時間」が2027年から始まる?
- 数百年後、本当に時計を1時間動かす?
- スマホやパソコンの時計はどうなる?
- 電波時計は買い替える必要がある?
- 日本標準時はUTC+10時間になる?
- 1時間も太陽とずれて大丈夫なの?
- 「うるう年」もなくなる?
- うるう秒はこれまで27回|最後に入ったのはいつ?
- なぜ最近はうるう秒が入っていない?
- 2026年10月の国際会議で何が決まる?
- まとめ|2027年に「1時間時計を動かす」話ではない
「うるう秒」はなぜ廃止へ?2027年5月から何が変わる・時計は1時間ずれる?
「うるう秒」が2027年に事実上廃止される――。2026年8月24日、このニュースが広く報じられました。
さらに「1時間までずれを認める」「うるう時間へ移行」といった説明もあり、
「2027年5月20日に時計を1時間動かすの?」
と受け取った人もいるかもしれません。
最初にここだけははっきりさせておきましょう。
2027年5月20日に、12時が突然13時になったり、日本中の時計を1時間進めたりする話ではありません。
現在は、原子時計を基礎とする協定世界時「UTC」と、地球の自転を基にする時刻「UT1」の差が0.9秒へ近づくと、「うるう秒」を入れて1秒単位で調整しています。
2026年10月の国際会議に提出されている案は、この許容範囲を最大3600秒=1時間まで広げ、UTCを途中で1秒ずつ調整しない「continuous UTC(連続的なUTC)」へ2027年5月20日から移行するというものです。BIPMは、この幅なら数世紀にわたりUTCを連続して運用できるとしています。
ただし、2026年8月25日現在、これはまだ決議案です。
第28回国際度量衡総会(CGPM)は2026年10月13~15日にフランス・ベルサイユで開かれ、そこで正式に採決される予定です。
「うるう秒」は2027年に廃止?まだ正式決定ではない
話が少しややこしいのは、「うるう秒廃止」は2022年にもニュースになっているからです。
2022年の第27回国際度量衡総会では、現在0.9秒となっているUTCとUT1の最大差を2035年までに拡大する方針がすでに決まりました。
その時点では、
「新しい上限を何秒にするのか」
「実際にいつ新制度へ移るのか」
までは確定しておらず、2026年の第28回総会へ具体案を提出することになっていました。
そして2026年に提出された最新のDraft Resolution Cでは、
continuous UTC開始:2027年5月20日
|UT1-UTC|の最大許容差:3600秒(1時間)
という具体案が示されています。
つまり、
2022年:うるう秒による頻繁な調整を終わらせる方向性を決定
2026年:具体的な上限と開始日を採決予定
という二段階です。
「2035年に廃止」と「2027年に廃止」という情報が混在するのは、この経緯があるためです。
そもそも「うるう秒」は何のためにある?
なぜ世界の時計に、わざわざ1秒を加える必要があったのでしょうか。
理由は、原子時計は非常に規則正しいのに、地球はそれほど規則正しく回っていないからです。
現代の「1秒」は、セシウム133原子の性質を基準に定義されています。世界各地の原子時計のデータから国際原子時「TAI」が作られ、それを基礎として世界の標準時となるUTCが作られています。
ところが私たちの「1日」は、もともと地球の自転と太陽の動きに結び付いています。
地球の回転速度はいつも完全に一定ではありません。短期的には大気の運動などによって速くなったり遅くなったりし、長期的には潮汐などの影響も受けます。国立天文台も、地球の自転にはさまざまな周期の変動があり、将来を正確に長期予測することは難しいと説明しています。
そこで、「原子時計が刻む時間」と「地球が実際に回った角度から決める時間」を大きく離さないようにしてきました。
| 用語 | 簡単に言うと |
|---|---|
| TAI | 世界中の原子時計を基に作られる国際原子時 |
| UTC | 世界の標準時の基礎になる協定世界時 |
| UT1 | 地球の自転角から求める時刻 |
| うるう秒 | UTCとUT1の差を小さく保つために行う1秒単位の調整 |
現在のUTCはTAIと同じ速さで進みますが、UT1との差が0.9秒へ近づいたときに1秒を加える、または減らすことで地球の自転との関係を保っています。
これが「うるう秒」です。
なぜうるう秒をやめる?「たった1秒」がコンピューターには厄介
人間にとって1秒は、ごく短い時間です。
しかし、膨大なコンピューターが正確な時刻を共有しながら動く現代社会では、時計が途中で不連続になる1秒は意外に扱いづらい存在です。
普通なら時刻は、
23時59分58秒
→ 23時59分59秒
→ 0時00分00秒
と進みます。
正のうるう秒が入る場合は、
23時59分58秒
→ 23時59分59秒
→ 23時59分60秒
→ 0時00分00秒
となります。
ところが「59分60秒」という時刻を通常想定していないソフトウェアもあります。
さらに世界中のシステムが、うるう秒を同じ方法で処理しているわけでもありません。
あるシステムは1秒をそのまま挿入し、別のシステムは時計の進み方を少しずつ変えて吸収する――いわゆる「leap smear」のような方法を使います。
BIPMは、こうした異なる補正方法が併存するとシステム間の時刻に不整合が生じ得ることも、continuous UTCへ移る理由として挙げています。交通、エネルギー、通信、宇宙分野をはじめ、IoT、スマートグリッド、分散システムなど、正確な時刻同期へ依存する範囲が以前とは比較にならないほど広がったためです。
うるう秒で本当にシステム障害は起きた?
理論上の心配だけではありません。
Googleは、自社システムが2005年のうるう秒で問題を経験したことを公表しており、その後は1秒を一度に挿入せず、長い時間に分散して吸収する「leap smear」を採用しました。Google自身も、イベントの順番を厳密に管理する分散システムでは、同じ時刻が繰り返されたり時計が戻ったように見えたりすることが問題になると説明しています。
2017年1月のうるう秒ではCloudflareのDNSシステムでも障害が発生しました。Cloudflareによると、一部のDNS問い合わせに失敗が生じ、原因には時刻が後戻りしないことを前提にした処理とうるう秒が関係していました。
もちろん、うるう秒を入れるたびに世界中のコンピューターが止まるわけではありません。
問題なのは、世界の社会インフラが時刻同期へ深く依存するようになったことで、わずか1秒の例外処理のために多数のシステムが備え続けなければならないことです。
初めての「負のうるう秒」が問題になっている
2027年への前倒し案で特に重要なのが、負のうるう秒です。
1972年に現在の方式が始まって以来、実施された27回のうるう秒はすべて「1秒追加する」正のうるう秒でした。UTCから1秒を削除する負のうるう秒は、一度も実施されたことがありません。
もし負のうるう秒を入れる場合、IERSが示す方式では、
23時59分58秒
→ 0時00分00秒
となり、「59秒」が飛びます。
コンピューターにとっては、これまで世界規模で本番運用されたことのない処理です。
2025年にBIPMとIERSが地球自転の専門家を集めて検討した結果、今後10年間に負のうるう秒が必要になる確率は約30%、正のうるう秒が必要になる確率は約50%と推定されました。
これは「2035年までに30%の確率で必ず問題が起きる」という意味ではありません。
しかしBIPM側は、未経験の負のうるう秒へ対応するために世界中のインフラへ大きな投資を求めるより、その前にUTCを連続化した方が合理的だと判断し、2027年までの移行を提案しています。
なぜ「2035年」から「2027年」へ早まった?
2022年の決議では、UTCとUT1の差の上限を広げる時期を「2035年まで」としていました。
ところが、その後の地球自転の動向から、初めての負のうるう秒が2035年より前に必要になる可能性が無視できなくなりました。
2025年の専門家検討では負のうるう秒が今後10年で必要になる確率を約30%と推定し、通信業界などからも、十分に試されていない負のうるう秒を実施するリスクを避けるよう求める意見が寄せられました。
そこで2026年の決議案は、2035年まで待つのではなく、
2027年5月20日にcontinuous UTCへ移行する
という具体的な日程を提示しています。
「うるう秒をやめる方向そのものが突然2026年に決まった」のではなく、すでに決まっていた移行を前倒しする案が出てきたと理解すると分かりやすいでしょう。
2027年5月20日に時計が1時間ずれるわけではない
今回のニュースで最も誤解しやすいのが、この「1時間」です。
現在は、
|UT1-UTC| < 約0.9秒
となるようにうるう秒で調整しています。
2026年の決議案では、その最大値を、
|UT1-UTC| ≤ 3600秒=1時間
へ広げます。
ここで変わるのは許容範囲です。

2027年5月20日の瞬間にUTCとUT1の差を1時間にするわけではありません。
イメージすると、
現在
地球の自転による時刻
↕
UTC
0.9秒近くずれたら1秒調整
から、
新制度案
地球の自転による時刻
↕
UTC
差が最大3600秒になるまで1秒調整をしない
へ変わります。
移行直後の差が突然3600秒へ飛ぶのではなく、地球の自転と原子時計の時間の違いが長い年月をかけて少しずつ蓄積するのを許すわけです。
CCTFは1時間という許容幅について、UTCを数世紀にわたって連続運用できるとしています。検討段階では「およそ千年」に相当する選択肢としても評価されましたが、地球の自転を長期に正確に予測することはできないため、正式な決議案では「several centuries」と表現されています。
「うるう時間」が2027年から始まる?
2026年8月の日本語報道では「うるう時間」という言葉も使われています。
ただし、これは注意して受け取る必要があります。
BIPMの決議案が定めようとしている中心概念は、
continuous UTC
|UT1-UTC|の最大値3600秒
です。
「2027年5月20日に1時間追加する新制度を始める」とは書かれていません。
また、将来UTCとUT1の差が1時間へ近づいたとき、
「必ず1時間を一度に追加する」
「59分の次にもう一度1時間繰り返す」
「世界中で時刻を1時間変更する」
といった具体的な調整方式まで、2026年の決議案で決められているわけでもありません。
「うるう時間」という言葉から、サマータイムのように時計を1時間切り替える制度を想像すると、今回の決議案とは違うものになります。
数百年後、本当に時計を1時間動かす?
現時点では、そこまで決まっていません。
3600秒は「UTCとUT1をどこまで離してよいか」という最大値です。
この幅なら数世紀にわたりUTCへ調整を加えずに済むと見込まれています。その頃になってどんな技術が使われているか、社会が時刻をどのように扱っているかも分かりません。
BIPMの決議案も、UT1-UTCの推移をIERSが監視し、BIPMが継続して状況を報告することを求めています。
したがって、
「うるう秒をやめ、代わりに何百年かごとに必ず1時間を足す制度へ移る」
と理解するのは早すぎます。
今回決めようとしているのは、まず1秒単位の頻繁なUTC調整から離れることです。
スマホやパソコンの時計はどうなる?
一般利用者にとって、2027年5月20日にすることは基本的にありません。
スマートフォンやパソコンの時計を1時間進めたり、タイムゾーンを変更したりする必要はありません。
今回変わるのはUTCの国際的な運用ルールです。
むしろcontinuous UTCへの移行は、世界中のコンピューターが「たまに現れる特殊な1秒」に対応し続けなければならない状況を減らすことが目的の一つです。
もちろん、時刻配信サービス、通信設備、NTP、業務システムなどを管理する側では、制度変更に合わせた仕様確認や更新が必要になる場合があります。
しかし、それと一般利用者が自宅のスマホを手動で1時間直すことはまったく別です。
電波時計は買い替える必要がある?
こちらも、2027年5月20日に1時間直すために電波時計を買い替えるような制度変更ではありません。
日本の標準電波JJYは、NICTが維持する日本標準時を電波時計などへ伝えています。現在の日本標準時はUTCを基礎にしています。
continuous UTCへの移行に伴う標準電波の細かな運用・情報伝送方式については、今後のNICTなどの案内を見る必要があります。
少なくとも今回の「3600秒」という数字だけを見て、
「今の電波時計が2027年に1時間狂う」
と心配する必要はありません。
日本標準時はUTC+10時間になる?
なりません。
日本標準時(JST)は、協定世界時UTCを9時間進めた時刻を基礎としています。NICTもこの関係を明記しています。
今回の制度変更は、
UTC+9 → UTC+10
へ日本のタイムゾーンを変える話ではありません。
日本と海外の時差を一斉に変更するものでもありません。
2027年5月20日になって、日本だけ突然時計を1時間動かすこともありません。
1時間も太陽とずれて大丈夫なの?
「地球の回転と時計が1時間ずれてしまったら、昼と夜がおかしくならないのか」と感じるかもしれません。
ここで覚えておきたいのは、私たちが普段使っている時計の正午と、その土地で太陽が最も高くなる時刻は、現在でも必ず一致しているわけではないということです。
同じタイムゾーンの中でも経度が違えば太陽の位置は変わります。国境や行政上の都合で、一つの標準時が広い地域に使われている国もあります。サマータイムを採用する国では、時計そのものを1時間動かすこともあります。
BIPMの決議案も、国によって法定時と太陽時に1時間を超える差がすでに存在する場合があり、夏時間では1時間の変更が一般的に行われていることを考慮しています。
ただし、天文学や測地学、宇宙分野などでは地球が実際にどの角度まで回ったかが重要です。
そのためUT1自体がなくなるわけではありません。決議案では、GNSSやIERSのインターネットサービスなどを通じてUT1-UTCの情報を引き続き利用できることも前提とされています。
世界中が「地球の回転を気にしなくなる」という話ではないのです。
「うるう年」もなくなる?
うるう年はなくなりません。
名前が似ているだけで、うるう秒とはまったく別の仕組みです。
| うるう秒 | うるう年 | |
|---|---|---|
| 調整するもの | 時計の時刻 | 暦 |
| 原因 | 地球自転と原子時計のずれ | 地球の公転周期と暦のずれ |
| 調整単位 | 1秒 | 1日 |
| 現在の方法 | 必要に応じて実施 | 原則4年ごとなど暦の規則で実施 |
| 今回の変更対象 | ○ | × |
地球が太陽の周りを1周する時間は365日ちょうどではないため、暦と季節を合わせるために2月29日を設ける仕組みは今後も必要です。
2027年のUTC制度変更によって、2月29日がなくなることはありません。
うるう秒はこれまで27回|最後に入ったのはいつ?
現在の方式は1972年に始まりました。
NICTの一覧では、これまでに実施されたうるう秒は27回。すべてプラス1秒の調整です。
最後に行われたのは、日本標準時では、
2017年1月1日 午前8時59分59秒と9時00分00秒の間
でした。
このとき、
8時59分59秒
→ 8時59分60秒
→ 9時00分00秒
という1秒が入りました。
それ以来、うるう秒は実施されていません。
またNICTはすでに、
2027年1月1日のうるう秒調整はありません
と発表しています。
したがって、「制度終了の直前だから2026年末に最後の1秒が追加される」という話でもありません。
2027年5月の制度変更案が採択されれば、現在のところ2017年1月1日が最後の実施となる可能性は高まりますが、2026年8月時点では10月の正式採決前なので、「2017年が永遠に最後」とまで確定させる段階ではありません。
なぜ最近はうるう秒が入っていない?
「昔は何度もあったのに、なぜ2017年から一度もないのか」という疑問もあります。
うるう秒は4年ごと、10年ごとと決められている制度ではありません。
地球の自転を観測し、UTCとの差が必要な基準へ近づいたときだけ実施されます。
近年は地球の自転が比較的速い期間もあり、UT1とUTCの差が正のうるう秒を必要とする方向へ進んでいません。
NICTが公表するDUT1も、2026年4月以降は+0.0秒として提供されています。
ただし、これを「地球はこれから永遠に速く回り続ける」という意味にはできません。
地球の自転には短期的・長期的なさまざまな変動が重なっており、将来を正確に予測できないことこそ、うるう秒の日程が規則化できなかった理由でもあります。
2026年10月の国際会議で何が決まる?
第28回国際度量衡総会は、
2026年10月13日~15日
フランス・ベルサイユ
で開催されます。
提出されているDraft Resolution Cが採択されれば、
2027年5月20日からcontinuous UTCへ移行
UT1とUTCの最大許容差を3600秒へ拡大
という運用になります。
ここで正式に決まれば、50年以上続いてきた「地球の回転へ合わせるため、UTCを1秒単位で止めたり飛ばしたりする」という仕組みは、実用上大きな転換点を迎えることになります。
ただ、人間が太陽や地球の回転を基準に時を考えることをやめるわけではありません。
UT1はこれからも測定され、その情報を必要とする分野では利用され続けます。
変わるのは、世界中の社会インフラが共有するUTCへ、そのずれを1秒ごとに直接反映させ続ける必要があるのかという部分です。
まとめ|2027年に「1時間時計を動かす」話ではない
今回のうるう秒をめぐるニュースで最も重要なのは、
2027年5月20日に世界中の時計を1時間変更するわけではない
ということです。
現在のUTCは、地球の自転から求めるUT1との差が0.9秒へ近づくたび、必要に応じて1秒を調整しています。
2026年10月の国際度量衡総会へ提出されている案では、この許容差を最大3600秒まで広げ、2027年5月20日からUTCを途中で1秒ずつ調整しないcontinuous UTCへ移行します。
背景には、通信、交通、電力、宇宙、IoTなど、正確で連続した時刻へ依存するデジタル社会の拡大があります。
さらに、これまで一度も経験していない「負のうるう秒」が今後10年で必要になる可能性が約30%と推定されたことで、2035年までとしていた移行を前倒しする理由も強まりました。
スマートフォンを1時間直す必要はありません。日本標準時がUTC+10になるわけでも、うるう年がなくなるわけでもありません。
変わろうとしているのは、私たちの「1秒」の長さではなく、原子時計で刻む規則正しい時間と、少し不規則に回る地球を、どの頻度で合わせ直すのかというルールです。
地球の自転に時計を1秒ずつ合わせ続けてきた50年以上の仕組みから、世界のデジタルシステムが扱いやすい連続した時刻へ。
それが、2027年に予定されている「うるう秒の事実上の廃止」の正体です。