- 緊急地震速報の音は、なぜあんなに怖い?「わざと怖く作った」は本当なのか
- まず知っておきたい|緊急地震速報の「あの音」は一つではない
- 「わざと怖く作った」は半分正しく、半分違う
- テレビの「チャラン」はどうやって作られた?
- それでもNHKチャイムに緊張感があるのはなぜ?
- NHKチャイムは19人による聴取実験まで行われた
- スマホの「ギュイッ」はテレビのチャイムとは別物
- なぜ普通のメロディーにしなかったのか
- なぜ「ギュイッ」が3回鳴る?
- 実は、最初は今よりもっと怖い音だった
- 二つの音に共通していた「ぎりぎりの線」
- では、なぜ今は聞くだけで怖く感じるのか
- 「怖い音だから、もっと優しい音に変えればいい」では済まない
- 緊急地震速報が鳴ったら、音の理由より先に身を守る
- 緊急地震速報の音はわざと怖く作られた?
- テレビとスマホの緊急地震速報音は同じ?
- ゴジラのテーマが緊急地震速報チャイムの元なの?
- スマホの緊急地震速報はなぜ3回鳴る?
- まとめ|怖くするためではなく「気づいて動ける音」を目指していた
緊急地震速報の音は、なぜあんなに怖い?「わざと怖く作った」は本当なのか

スマートフォンから突然、「ギュイッ、ギュイッ、ギュイッ」と聞き慣れた警報音が鳴る。まだ揺れを感じていなくても、その瞬間に身構えてしまう人は少なくないでしょう。
テレビやラジオで流れる「チャラン、チャラン」という独特のチャイムも同じです。ニュース番組の途中で聞こえてくるだけで、「これから大きく揺れるのでは」と緊張します。
あれほど強く注意を引くのだから、最初から人を怖がらせるために不気味な音を作ったのではないか――そう考えたくなります。
ところが、実際の制作記録をたどると少し違う姿が見えてきます。
緊急性を感じさせ、日常の騒音の中でも確実に気付かせることは、確かに意図されています。その一方で、恐怖や不安を必要以上に与えないことも、最初から設計上の条件に入っていました。
しかも、普段まとめて「緊急地震速報の音」と呼んでいるものは一種類ではありません。テレビなどで使われるNHKのチャイムと、スマートフォンから鳴る専用ブザーは別の音で、制作者も設計方法も違います。
「あの音は、わざと怖く作られたのか」。
答えは、単純な「はい」でも「いいえ」でもありません。
まず知っておきたい|緊急地震速報の「あの音」は一つではない
気象庁は、緊急地震速報が発表されたことを内容を読む前に即座に認識できるよう、テレビ、ラジオ、スマートフォンなどで専用の「報知音」が使われていると説明しています。
代表的なのが、次の二つです。
| NHKチャイム | 携帯電話の専用ブザー | |
|---|---|---|
| 主に聞く場所 | テレビ、ラジオ、防災行政無線、受信端末など | スマートフォン、携帯電話 |
| 開発 | NHK | NTTドコモ |
| 制作者 | 伊福部達 | 小久保隆 |
| 音の特徴 | 音楽的なチャイム | 非楽音を使ったスイープ音 |
| 狙い | 緊急性、聞き取りやすさ、不安を過度に与えないこと | 日常のどんな状況でも気付かせ、素早く注意を向けさせること |
このほか、一部の受信端末では「サイン音」と呼ばれる別の報知音も使われています。
気象庁自身が「チャイム音」「ブザー音」「サイン音」を分けて紹介しているため、「緊急地震速報の音を作ったのは誰?」という問いに、一人の名前だけで答えるのは正確ではありません。
テレビで知られるチャイムを手掛けたのが伊福部達氏、携帯電話の専用ブザーを設計したのが小久保隆氏です。
「わざと怖く作った」は半分正しく、半分違う
緊急地震速報は地震予知ではありません。
地震が発生したあと、観測された地震波をできるだけ早く解析し、震源や規模、各地の揺れなどを予測して知らせるものです。速報が出てから強い揺れまでの時間は数秒から長くても数十秒程度しかなく、震源に近い地域では速報そのものが間に合わない場合もあります。
だから報知音には、普通の通知音とは違う役割があります。
画面を読んで「緊急地震速報だ」と理解してから動くのでは遅い可能性があるため、音を聞いた時点で注意を向け、身を守る行動へ移れることが重要なのです。
気象庁も、報知音を覚えておけば速報内容を確認する前から身を守る行動を始められるとしており、誰もが即座に意味を理解できるよう、報知音が統一されていることを重視しています。
その意味では、普通の着信音より緊張感があり、強く注意を引くよう作られているのは事実です。
しかし「恐怖させるほど成功」という音ではありませんでした。
むしろテレビ用チャイムでもスマホ用ブザーでも、設計者は注意を引く強さと、恐怖やパニックを起こさせないことの境界を探っています。
テレビの「チャラン」はどうやって作られた?
テレビやラジオなどで広く知られているチャイムを制作したのは、音響工学・福祉工学の研究者である伊福部達氏です。
伊福部氏が2012年の「音の日」記念講演で語った制作記録には、このチャイムが感覚だけで作られた音ではないことが詳しく残されています。
制作条件には「不安感を与えない」が入っていた
NHKから「大地震が来るとき、ラジオやテレビを通じて知らせるチャイム」を作ってほしいと依頼された伊福部氏は、制作にあたって五つの条件を設定しました。
一つは、緊急性を感じさせること。
同時に、不快感や不安感を与えないこと。さらに騒音の中でも聞き取りやすく、軽度の聴覚障害がある人にも聞こえ、既存の警報音などと似ていないことです。
「緊急性」と「不安を与えない」は、一見すると相反する条件です。
優しいだけの音では注意を引けない。しかし怖すぎれば、警報を聞いた人を必要以上に不安にさせてしまいます。
現在のチャイムは、その間を探すところから作られていました。
「ゴジラの音楽」が候補になったのは本当
ここには、意外なエピソードがあります。
伊福部達氏の叔父は、映画『ゴジラ』などの音楽で知られる作曲家の伊福部昭です。
緊急地震速報チャイムを作る過程では、伊福部昭による「ゴジラ音楽」の一部を利用する案も実際に検討されました。
ただし、採用されてはいません。
伊福部達氏は、ゴジラのメロディーがすでに広く知られていたことに加え、恐怖心をあおる面があるとして候補から外したと記しています。
したがって、「緊急地震速報のチャイムはゴジラのテーマから作られた」という説明は正確ではありません。
面白いのはむしろ逆です。
もし本当に「怖ければ怖いほどいい」という設計だったなら、恐怖心をあおることは採用理由になったはずです。実際には、それが候補から外す理由の一つになりました。
元になったのは『シンフォニア・タプカーラ』
最終的に伊福部氏が選んだのは、同じ伊福部昭作品でも、交響曲『シンフォニア・タプカーラ』第3楽章 Vivaceの冒頭部分でした。
原曲をそのまま短く切って放送しているわけではありません。
冒頭の和音をもとに移調し、短時間で音が上がったり下がったりするアルペジオへ変え、半音のトリル、音色、速度などさまざまな組み合わせを試しました。
候補は一時約30種類まで作られ、そこから5種類へ絞り込まれています。
電子音についても検討されましたが、家電製品のアラームなどとして日常生活にあふれているため候補から外され、最終的にはピアノ音と電子音を組み合わせた音が採用されました。
それでもNHKチャイムに緊張感があるのはなぜ?
「不安感を与えない」が条件なら、なぜ実際のチャイムはあれほど落ち着かない響きなのでしょうか。
ここは「怖い周波数が人間の本能を刺激する」といった話ではありません。
伊福部氏自身の説明では、『シンフォニア・タプカーラ』第3楽章の冒頭に使われている和音に、適度な緊張感とインパクトを感じたことが採用理由になっています。
その和音には「テンション・ノート」と呼ばれる音が含まれていました。
警報音には余計な不安を起こさせてはいけない一方、ある程度の緊張感は必要です。そこで、この特徴を残しながらチャイムへ加工していきました。
最終的に選ばれたのは、音が上昇し、2回目では半音高くなり、速く繰り返されるタイプです。
耳に入った瞬間、「いつもの番組の音ではない」と感じる程度の違和感と緊張感は、偶然生まれたものではありません。
ただし、それを「人間が本能的に恐怖する不協和音」とまで一般化する根拠はありません。
設計者が目指していたのは、あくまで余計な不安ではなく、行動につながる適度な緊張感でした。
NHKチャイムは19人による聴取実験まで行われた
このチャイムは、作った本人とNHKスタッフだけで「これなら目立つ」と決めたわけでもありません。
NHK渋谷放送センターのスタジオで、子ども6人と成人13人、合計19人による聴取実験が行われました。その中には先天性の重度難聴がある子どもや、加齢性難聴の成人も含まれていました。
評価されたのは、緊急性を感じるか、不快感や不安感が強すぎないか、どこかで聞いたことがある音ではないか、騒音の中で聞き取りやすいか、速度は適切か、といった項目です。
さらに、スタジオで候補を決めた後にも、繁華街、デパート、屋外の警報スピーカーなどで、どの程度聞こえるかが確認されています。
現在では数秒しか鳴らない短いチャイムですが、その背景には、かなり地道な設計と検証がありました。
スマホの「ギュイッ」はテレビのチャイムとは別物
一方、スマートフォンから聞こえる「ギュイッ、ギュイッ、ギュイッ」という専用ブザーは、NHKチャイムとは別に開発されました。
気象庁によると、このブザーを開発したのはNTTドコモ。音を手掛けたのは環境音楽家・音環境デザイナーの小久保隆氏です。
2026年2月には、小久保氏本人がその制作過程を詳しく語る『音でデザインする 「緊急地震速報音」は、なぜ緊張するのか?』も講談社から刊行されました。
同年7月の本人インタビューでも、その設計思想が詳しく語られています。
求められたのは「眠っていても絶対に気づく音」
小久保氏がNTTドコモから受けた依頼は、非常に明快でした。
眠っている人でも気付くほどの音を作ることです。
ただ、携帯電話が使われる環境は自宅の寝室だけではありません。
電車の中で眠っているかもしれず、騒がしい商業施設にいるかもしれません。端末が手元ではなく、バッグやポケットの中に入っている場合もあります。
そうした状況でも埋もれず、「いつもの携帯電話の音とは違う」と瞬間的に分からなければならない。
そこで小久保氏は、一般的なメロディーではなく非楽音を使う方向へ進みました。
なぜ普通のメロディーにしなかったのか
メロディーには、それまでに聞いた音と似てしまう可能性があります。
着信音、ゲーム音、テレビ、家電、音楽。普段の生活はすでに大量の「音楽的な音」に囲まれています。
そこで小久保氏が採用したのが、音の高さが短時間のうちに連続的に動くスイープ音です。
現在の「ギュイッ」は、低い側から高い側へ急激に周波数が変わります。
サイレンなどにも見られるような音の動きで、穏やかなメロディーとは明らかに違います。
だから突然スマートフォンから鳴ると、日常の音の中でかなり目立ちます。
これは「不気味な曲を作った」のではなく、そもそも曲として聞き流されにくい音を選んだということです。
なぜ「ギュイッ」が3回鳴る?
あのブザーは、一つの短い音を3回繰り返します。
これも偶然ではありません。
小久保氏は2026年のインタビューで、1回では聞き間違いとして処理される可能性があり、2回より3回の方が異常や緊急性を感じさせやすいという考えから、3回の反復を採用したことを説明しています。
ここで注意したいのは、「人間の脳は科学的に3回鳴れば必ず危険を認識する」という一般法則が証明された、という話ではないことです。
ドアのノックなど日常の音も参考にしながら、短時間で異常だと認識させるために制作者が選んだ設計と考えるのが適切です。
実は、最初は今よりもっと怖い音だった
「緊急地震速報はわざと怖く作ったのか」という疑問に対し、スマホのブザー開発には非常に象徴的なエピソードがあります。
小久保氏が最初に制作した試作音は、現在使われているものより注意喚起の度合いが強いものでした。
ところがNTTドコモで試聴された際、問題になったのが多数の携帯電話から一斉に鳴った場合のパニックです。
電車内などで何十台もの端末が同時に鳴ったとき、この強さでは人を必要以上に恐怖させる可能性があるとして、注意喚起の度合いを下げるよう求められました。
小久保氏には「それでは緊急地震速報の意味が薄れるのでは」という葛藤もあったといいます。
しかし、最終的には強さが調整され、現在のブザーになりました。
この経緯は、今回の疑問へのかなり明確な答えになります。
注意を強く引くことは狙っていた。しかし「もっと怖くしよう」と追求したのではなく、怖すぎる音はむしろ採用されなかった。
NHKチャイムとスマホブザーは別々に作られていますが、この点では驚くほど似た思想に行き着いています。
二つの音に共通していた「ぎりぎりの線」
NHKのチャイムでは、
「緊急性を感じさせる」
と同時に、
「不快感や不安感を与えない」
ことが条件でした。
スマートフォンのブザーでは、
「眠っていても気付く」
ほどの強さが求められる一方で、
「恐怖やパニックを起こさせない」
ことも考えられています。
設計方法はまったく違います。
NHKチャイムは音楽作品の和音から出発し、アルペジオなどを利用して作られました。スマホのブザーはメロディーから離れ、非楽音とスイープ音を使っています。
それでも両者が解こうとしていた問題はよく似ています。
優しすぎれば気付かれない。
強すぎれば恐怖や混乱を生む。
地震の強い揺れが来るまで数秒しかないかもしれない中で、人の意識を瞬時にこちらへ向け、それでも行動不能になるほど怖がらせない音を探していたのです。
では、なぜ今は聞くだけで怖く感じるのか
ここまでの設計思想だけでは、現在多くの人が感じる「怖さ」を完全には説明できません。
一つ考えなければならないのが、音が使われ続けるうちに、その音へ何が結び付いていったのかです。
伊福部達氏は東日本大震災後、興味深いことを書き残しています。
チャイムを完成させた当初は、「緊急性は感じさせるが不安感は与えない」音にできたという自信があったといいます。
しかし2011年の東日本大震災以降、緊急地震速報が頻繁に流れるなかで、チャイムから悲劇を連想する人が増えていることに驚いたと記しています。
これは、「この音を聞けば誰でも心理学的にトラウマ反応を起こす」と証明した話ではありません。
ただ、音の意味が、制作した瞬間の設計だけで決まるとは限らないことは分かります。
最初にチャイムを聞いたときには何の思い出もなかった人でも、その後に大きな地震、揺れる室内、ニュース映像、避難、余震などと何度も同じ音を経験すれば、「この音のあとには危険がある」という意味を強く感じるようになることは不自然ではありません。
スマートフォンのブザーについても、小久保氏は東日本大震災後、想定を超えて頻繁に音が使われたことへの葛藤を語っています。
私たちが現在感じている怖さには、最初から音に組み込まれた緊張感と、その後の経験によって音へ重なった意味の両方があると見る方が、実際の制作経緯には合っています。
「怖い音だから、もっと優しい音に変えればいい」では済まない
では、不安になる人がいるなら、もっと穏やかなメロディーに変えればいいのでしょうか。
ここには難しい問題があります。
緊急地震速報は、一般の通知とは違います。
地震発生後、強い揺れが届くまでに残された時間はごくわずかです。気象庁によれば、速報から強い揺れまでは数秒から長くても数十秒程度で、震源に近ければ間に合わないこともあります。
スマートフォンを見る。
通知文を読む。
意味を理解する。
それから動き始める。
この順番では間に合わないことがあるからこそ、「あの音を聞いたら緊急地震速報」と一瞬で分かることに意味があります。
気象庁も、誰もがどこでも即座に理解できるよう報知音が統一されていることを重要視しており、テレビやラジオ、防災行政無線などではNHKのチャイムを強く推奨しています。
聞き慣れたこと自体が、現在では防災機能の一部になっているのです。
もちろん、将来にわたって音が絶対に変更されないという意味ではありません。
ただ、「怖いから普通の優しい着信音にする」というだけでは、速報の目的そのものを弱める可能性があります。
緊急地震速報が鳴ったら、音の理由より先に身を守る
「あの音はなぜ怖いのか」を知ることは面白いテーマですが、実際に鳴った瞬間だけは分析を後回しにする必要があります。
気象庁が示している基本は、周囲の状況に応じて、あわてずに身の安全を確保することです。
報知音の役割も、まさにそこにあります。
テレビ画面を眺め続けたり、スマートフォンの詳細を読み込んだりする前に、落下物や倒れやすい家具などから身を守る。
この数秒を生み出すために、テレビのチャイムもスマートフォンのブザーも作られました。
緊急地震速報の音はわざと怖く作られた?
「恐怖そのものを与えるために作られた」という意味なら、違います。
一方で、緊急性を感じさせ、日常の音に埋もれず、一瞬で注意を向けてもらうための緊張感は意図的に設計されています。
NHKチャイムでは「不快感や不安感を与えない」が制作条件に入り、スマホブザーでも初期の強すぎる案はパニックへの懸念から調整されました。
テレビとスマホの緊急地震速報音は同じ?
違います。
テレビ・ラジオなどで広く使われるNHKチャイムと、スマートフォン・携帯電話で使われる専用ブザーは別に開発されています。
NHKチャイムを制作したのは伊福部達氏、携帯電話のブザーを設計したのは小久保隆氏です。
ゴジラのテーマが緊急地震速報チャイムの元なの?
その説明は正確ではありません。
伊福部達氏は制作時に叔父・伊福部昭のゴジラ音楽を利用する案を検討しましたが、広く知られており、恐怖心をあおる面があるとして候補から外しています。
採用されたチャイムのもとになったのは、伊福部昭作曲の交響曲『シンフォニア・タプカーラ』第3楽章です。
スマホの緊急地震速報はなぜ3回鳴る?
小久保隆氏は、短いスイープ音を3回繰り返すことも注意を向けるための設計の一部だったと説明しています。
1回では聞き間違いとして処理される可能性などを考え、短時間で「普段とは違う」と感じてもらうため3回が選ばれました。
これは「人間は必ず3回で恐怖する」という一般的な心理法則ではなく、小久保氏による音デザイン上の判断です。
まとめ|怖くするためではなく「気づいて動ける音」を目指していた
緊急地震速報の報知音は、偶然あの響きになったわけではありません。
テレビなどで使われるNHKチャイムには適度な緊張感を生む和音や速いアルペジオが使われ、騒音の中や難聴者にも聞こえるかを含めた聴取実験まで行われました。
スマートフォンの専用ブザーも、眠っているときや人混み、バッグの中などでも気付かせるため、普通のメロディーとは違う非楽音とスイープ音が選ばれ、短い音を3回繰り返す形になりました。
どちらにも「確実に気付いてもらう」という強い意図があります。
しかし同時に、NHKチャイムでは不安や不快を与えないことが条件となり、スマホブザーでは初期の強すぎる案がパニックを招きかねないとして調整されています。
「あの音は怖がらせるために作られた」という説明だけでは、設計者が実際に悩んだ部分が抜け落ちてしまいます。
目指していたのは、恐怖そのものではありません。
強い揺れまで数秒しかないかもしれない状況で、確実に意識を向けさせ、それでも恐怖で動けなくならない――そのぎりぎりの緊張感です。
そして完成後、実際の地震とともに何度も聞かれるようになったことで、そこへ私たち自身の経験や記憶も重なってきました。
次にあの音を聞いて緊張することがあっても、その役割は変わりません。音の理由を考えるのは安全を確保したあとでいい。まず身を守るために注意を向けてもらうことこそ、あの短い音に与えられた仕事なのです。