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漫画は紙より電子が売れている?2025年の売上は約3.2倍|電子コミックが伸びた理由

漫画を読むなら、紙の単行本と電子書籍のどちらを選ぶでしょうか。

書店には現在も数多くの新刊が並び、人気作品の発売日には大きな売り場が作られます。一方、スマートフォンでは漫画アプリや電子書店を通じて、場所や時間を選ばず作品を読めるようになりました。

電子コミックが伸びていることは広く知られています。

しかし、紙の漫画と比べて、実際にどれほど売れているのかまで把握している人は少ないかもしれません。

2025年の国内コミック市場は、推定販売金額で6,925億円でした。

そのうち電子コミックは5,273億円。紙のコミックスとコミック誌を合わせた市場は1,652億円です。

電子コミックの売上は、紙の漫画市場全体の約3.2倍。コミック市場に占める割合も、電子が76.1%、紙が23.9%となりました。

現在の漫画市場は、紙を中心として電子が補完する段階ではありません。

売上金額で見れば、すでに電子コミックが市場の中心となり、紙がその一部を占める構造へ変わっています。

ただし、この数字だけを見て「紙の漫画は間もなくなくなる」と結論づけるのは早計です。

2025年にも紙のコミックスだけで1,260億円の市場が残っています。一方、電子コミックの成長率は以前より鈍化し、紙と電子を合わせたコミック市場全体も前年を下回りました。

電子コミックは、なぜ短期間で紙を大きく上回ったのでしょうか。

そして、電子が市場の4分の3を占める時代にも、紙の漫画はどのような形で残っていくのでしょうか。

この記事では、紙と電子の売上差を最新データから比較するとともに、電子コミックが紙を逆転した時期、漫画で特に電子化が進んだ理由、紙と電子の選び方、漫画市場の今後まで詳しく考察します。

目次
  1. 漫画の売上は紙より電子が多い?2025年は市場の76.1%が電子
  2. 電子コミックはいつ紙を逆転した?
  3. なぜ漫画は電子化が進んだ?
  4. 紙の漫画は今後なくなる?
  5. 漫画は紙と電子のどちらを選ぶべき?
  6. 電子コミックが伸びても市場全体が縮小した理由
  7. まとめ|漫画市場は電子中心へ、それでも紙はなくならない

漫画の売上は紙より電子が多い?2025年は市場の76.1%が電子

2025年1月から12月までの国内コミック市場は、推定販売金額で6,925億円でした。

内訳は次のとおりです。

販売形態2025年の推定販売金額市場全体に占める割合
電子コミック5,273億円76.1%
紙のコミックス1,260億円18.2%
紙のコミック誌392億円5.7%
合計6,925億円100%

紙のコミックスとコミック誌を合わせると1,652億円です。

これに対して電子コミックは5,273億円となり、漫画へ支払われた金額の4分の3以上が電子上で動いています。

電子コミックは紙全体の約3.2倍

電子コミック市場5,273億円を、紙の漫画市場1,652億円と比較すると、電子は紙の約3.2倍です。

紙側には単行本だけでなく、週刊・月刊のコミック誌も含まれています。

つまり、紙の単行本と漫画雑誌をすべて合わせても、売上金額は電子コミックの3分の1程度にとどまっています。

書店では紙の単行本が目に入りやすいため、日常生活の中でこの差を実感することは難しいかもしれません。

電子コミックには商品を陳列する売り場がなく、購入も読書もスマートフォンやタブレットの画面内で完結します。

街中からは見えにくい巨大な漫画市場が、デジタル上に形成されているのです。

紙の単行本だけと比べると約4.2倍

紙の市場からコミック誌を除き、紙の単行本だけを電子コミックと比較すると、差はさらに広がります。

紙のコミックスは1,260億円であるため、電子コミック5,273億円は約4.2倍です。

ただし、電子コミック市場には巻単位の販売だけでなく、1話単位の販売や電子コミック誌なども含まれています。

そのため、紙の単行本と電子コミックは、完全に同じ商品形態を比較した数字ではありません。

また、ここでいう売上は販売冊数や読者数ではなく、推定販売金額です。

電子の売上が紙の約3.2倍だからといって、電子で漫画を読む人が紙の読者の3.2倍いるとまでは断定できません。

価格、割引、ポイント還元、話単位の課金など、紙と電子では購入方法が異なるからです。

それでも、漫画へ支払われている金額の大部分が、すでに電子へ移っていることは明確です。

紙は14.0%減、電子は2.9%増

2025年の紙の漫画市場は、前年比14.0%減でした。

内訳を見ると、紙のコミックスが14.4%減、コミック誌が12.7%減となり、どちらも1年間で1割以上縮小しています。

一方、電子コミックは前年比2.9%増となりました。

電子が急激に増加したというより、電子が緩やかに成長する一方で、紙が大幅に減ったことにより、両者の差が広がった形です。

新刊・既刊ともに読者のデジタル移行が進み、紙のコミックス販売が急速に縮小しています。

電子が伸びても漫画市場全体は縮小

電子コミックが前年を上回ったにもかかわらず、2025年のコミック市場全体は前年比1.7%減となりました。

2024年の7,043億円から、2025年は6,925億円へ減少しています。

それまでコミック市場は7年連続で前年を上回っていましたが、電子の2.9%増だけでは、紙の14.0%減を補えませんでした。

この結果から分かるのは、紙から電子への移行と、漫画市場全体の成長は別の問題だということです。

紙を買わなくなった読者が、同じ金額をすべて電子へ移すとは限りません。

電子化が進んでも、漫画へ支払う人や一人あたりの購入額が増えなければ、市場全体は成長しないのです。

2025年は電子コミックが市場の中心であることを改めて示すと同時に、電子市場も成熟期へ入りつつあることを示した年といえるでしょう。

電子コミックはいつ紙を逆転した?

電子コミックが紙を上回ったのは、2020年代に入ってからではありません。

2017年以降の推移を見ると、電子コミックが紙のコミックスとコミック誌の合計を初めて上回ったのは2019年です。

紙と電子の推定販売金額は、次のように変化しています。

紙の漫画市場電子コミック市場全体
2017年2,583億円1,747億円4,330億円
2018年2,412億円2,002億円4,414億円
2019年2,387億円2,593億円4,980億円
2020年2,706億円3,420億円6,126億円
2021年2,645億円4,114億円6,759億円
2022年2,291億円4,479億円6,770億円
2023年2,107億円4,830億円6,937億円
2024年1,921億円5,122億円7,043億円
2025年1,652億円5,273億円6,925億円

※紙の漫画市場は、紙のコミックスとコミック誌の合計です。

2017年はまだ紙が800億円以上多かった

2017年の紙の漫画市場は2,583億円、電子コミックは1,747億円でした。

紙が電子を836億円上回っており、市場の中心はまだ紙にありました。

一方で、電子コミックもすでに1,700億円を超えています。

紙から電子への変化は、2019年に突然始まったわけではありません。

スマートフォンや漫画アプリの普及により、逆転する前から少しずつ電子で購入する読者が増えていたのです。

2018年には差が半分以下へ縮小

2018年は紙が2,412億円、電子が2,002億円でした。

紙が前年から減少する一方、電子コミックは初めて2,000億円を突破しています。

両者の差は、2017年の836億円から410億円まで縮まりました。

この時点でも紙が首位を維持していましたが、電子への逆転が目前に迫っていたことが分かります。

2019年に電子コミックが紙を逆転

2019年の電子コミック市場は2,593億円、紙は2,387億円でした。

電子が紙を206億円上回り、漫画市場の中心が初めて入れ替わっています。

ただし、この時点では電子が市場を圧倒していたわけではありません。

市場全体に占める電子の割合は約52%で、紙と電子はほぼ同じ規模でした。

その後のわずか6年間で、電子は紙の約3.2倍まで拡大します。

2019年は、現在まで続く電子中心の漫画市場が始まった象徴的な転換点でした。

2020年は紙と電子がともに伸びた

2020年には電子コミックが3,420億円へ拡大しました。

同時に、紙の漫画市場も前年の2,387億円から2,706億円へ増加しています。

これは、電子が紙の需要を一方的に奪ったのではなく、漫画を読む人や購入額そのものが増えた年だったことを示しています。

外出機会の減少に加え、大型ヒット作品の登場なども重なり、紙と電子がそろって市場を押し上げました。

2021年以降に差が急拡大

2021年には電子コミックが4,114億円となり、初めて4,000億円を超えました。

2022年は4,479億円、2023年は4,830億円、2024年には5,122億円へ拡大しています。

一方、紙は2021年の2,645億円から、2024年には1,921億円まで縮小しました。

電子コミックは一時的な需要で終わらず、日常的な購入方法として定着したことになります。

紙から電子へ移った読者だけではなく、無料話から作品を知った人、過去作品をまとめて購入した人、電子限定作品を読んだ人など、新しい需要も市場へ加わりました。

2025年は電子市場の成熟も鮮明に

2025年には電子コミックが5,273億円、紙が1,652億円となり、両者の差は3,621億円まで広がりました。

一方、電子の前年比は2.9%増にとどまっています。

新規利用者の獲得が難しくなり、電子コミック市場も本格的な成熟期を迎えつつあります。

電子が紙をどこまで引き離すかだけでなく、すでに巨大化した電子市場が、今後も新しい読者と購入を生み出せるかが重要な課題になっています。

なぜ漫画は電子化が進んだ?

電子書籍には、小説、実用書、雑誌、写真集なども含まれます。

しかし、市場を実際に支えているのは漫画です。

2025年度の電子書籍市場6,846億円のうち、電子コミックは6,010億円でした。

電子書籍市場全体に占める割合は87.8%です。文字ものなどは615億円、電子雑誌は221億円となっています。

なお、この数字は年度単位で、調査対象や算出方法も、前章までに使用したコミック市場の統計とは異なります。

そのため、両者の金額を直接足したり比較したりはできません。

それでも、異なる調査から見ても、電子書籍市場の約9割を漫画が占めていることが分かります。

スマートフォンだけですぐ読める

電子コミックの大きな強みは、漫画を読むための物を別に持ち歩かなくてよいことです。

普段使っているスマートフォンの中に、何十巻、何百巻もの作品を入れられます。

通勤や通学の途中、休憩時間、就寝前など、少しの空き時間でも続きから読み始められます。

小説もスマートフォンで読めますが、漫画は1話や数ページ単位で区切りやすく、短時間でも読み進めやすい形式です。

専用の電子書籍端末ではなく、多くの人が毎日使うスマートフォンが漫画売り場になったことが、急速な普及につながりました。

無料で作品を試せる

紙の単行本では、購入前に読める範囲が限られます。

電子コミックでは、最初の数話や複数巻を無料公開し、気に入った読者が続きを購入する方法が定着しました。

購入するか迷っている作品でも、まず内容を確かめられます。

作品名を知らなかった人も、広告や無料公開から読み始められます。

無料話は単なる値引きではなく、作品と読者を出会わせる広告であり、購入前の不安を減らす試し読みでもあります。

先に面白さを確認し、続きが気になった段階で支払えることが、電子コミックの入口を大きく広げました。

続きが気になった瞬間に購入できる

漫画は、各話や各巻の終わりに続きを読みたくなる場面が置かれることの多い娯楽です。

紙の場合、次の巻を持っていなければ、書店へ行くか、通販で届くのを待たなければなりません。

電子なら、読み終えた画面から次の話や巻を選び、その場ですぐ購入できます。

作品を知る、無料で試す、続きが気になる、購入するという流れが、一つの画面内で途切れません。

漫画特有の「続きが読みたい」という感情と、即座に購入できる電子販売は非常に相性がよかったと考えられます。

1話単位でも販売できる

電子コミックは、紙と同じように1巻単位で売るだけではありません。

作品によっては1話ずつ購入したり、一定時間待つことで続きを無料で読んだりできます。

紙では、ある程度の話数がたまらなければ単行本を作れません。

電子なら連載中の作品を細かく配信し、読者も一冊分の価格を最初から支払わずに読み始められます。

紙の単行本をそのままデータ化しただけではなく、漫画を分割し、少額から販売できる仕組みが独自の市場を作ったのです。

セールやポイント還元を行いやすい

紙の書籍や雑誌は、再販売価格維持制度の対象です。

一方、電子書籍は紙の本と同じ形では扱われないため、電子書店が初回クーポン、期間限定セール、複数巻無料、ポイント還元などを実施しやすくなっています。

同じ漫画でも、通常価格だけを見れば紙と電子に大きな差がない場合があります。

電子の価格面での強みは、定価そのものより、キャンペーンを利用した場合の実質的な負担額にあります。

ただし、割引やポイント還元への依存が強くなれば、通常価格で購入してもらいにくくなる問題もあります。

過去作品を販売し続けやすい

紙の書店には売り場と在庫の限界があります。

新刊や話題作が優先されるため、完結から時間が経過した作品や長編作品を、全巻並べ続けることは簡単ではありません。

電子書店には物理的な棚がなく、過去作品も検索結果やキャンペーンを通じて販売できます。

アニメ化や実写化をきっかけに原作へ興味を持った人が、第1巻からすぐ読み始めることも可能です。

紙では店頭から姿を消した作品でも、電子なら新しい読者に見つけてもらえる可能性があります。

新刊発売時だけでなく、膨大な既刊を継続して販売できることが、電子市場の規模を支えています。

電子で生まれる漫画が増えた

現在の電子コミックは、紙で発売された作品を読むためだけの場所ではありません。

漫画アプリや電子書店では、最初からデジタル上で連載される作品、独占・先行配信作品、電子だけで販売される作品が増えています。

従来は、紙の漫画雑誌で連載し、人気を得た作品が単行本になる流れが中心でした。

現在はアプリで連載し、閲覧数や読者の反応を集めたあと、紙の単行本化や映像化へ進む作品もあります。

電子は紙の代用品から、新しい漫画を生み出す連載媒体へ変化しました。

縦読み漫画はスマートフォン向けに作られている

従来の漫画は、紙のページや見開きを前提に制作されています。

電子版でも、そのページを画面上で再現して左右へめくる形式が一般的です。

一方、スマートフォンを縦に持ち、上から下へスクロールして読む作品も増えました。

画面の形に合わせてコマを配置できるため、細かな拡大操作をせずに読みやすくなります。

コマとコマの間隔を広く取り、スクロールする時間を演出へ利用することも可能です。

すべての漫画が縦読みへ変わるわけではありませんが、紙の漫画を画面へ移すだけでなく、最初からスマートフォンで読むための作品が作られるようになったことは大きな変化です。

長編でも保管場所を必要としない

漫画は、小説や実用書よりも巻数が多くなりやすい商品です。

数十巻に及ぶ作品を紙でそろえると、本棚の大部分を使用します。

電子なら、巻数が増えても物理的な保管場所は変わりません。

すでに何十巻も刊行されている作品を新しく読み始める場合も、収納場所を気にせず購入できます。

長編作品ほど保管場所を必要としない利点が大きくなるため、漫画は電子化の恩恵を受けやすいジャンルです。

紙の漫画は今後なくなる?

電子コミックが市場の76.1%を占めるようになると、「紙の漫画はいずれなくなるのではないか」と考える人もいるでしょう。

結論からいえば、紙が再び市場の中心へ戻る可能性は低いものの、短期間でなくなる可能性も低いと考えられます。

紙は読むための標準形式から、所有・保存・収集するために選ばれる商品へ役割を変えつつあるからです。

紙だけで1,260億円の単行本市場がある

紙のコミックスは急速に縮小していますが、2025年にも1,260億円の市場があります。

コミック誌を合わせれば1,652億円です。

電子との差は大きいものの、紙だけでも独立した市場として十分な規模が残っています。

電子だけで読む人、紙だけを買う人、作品によって使い分ける人が共存しているため、電子が多数派になったことと、紙の需要がなくなることは同じではありません。

読むための購入と残すための購入は違う

漫画を購入する目的は、内容を読むことだけではありません。

新刊や連載の続きを電子ですぐ読み、特に気に入った作品だけを紙でも購入する人がいます。

すでに電子版で読んだ作品でも、完結後に全巻を紙でそろえたり、好きな巻だけ手元に残したりすることがあります。

この場合、紙の単行本は情報を受け取る媒体ではなく、作品への愛着を形にする商品です。

内容へ早くアクセスする役割が電子へ移っても、好きな作品を物として所有したい需要まではなくなりません。

表紙や装丁も作品の一部になる

電子版でも表紙を見ることはできます。

しかし紙の単行本では、表紙、裏表紙、背表紙、帯、カバー下、紙質まで含めて一つの商品になります。

本棚へ並べると絵柄がつながる背表紙や、カバーを外した場所に漫画やイラストを収録する作品もあります。

本の厚さや重さ、ページをめくる感触も、画面では再現できません。

物語を理解するために必要な要素ではありませんが、読む体験と商品を眺める楽しさを一つにできることは、紙に残る固有の価値です。

見開きの迫力をそのまま受け取れる

漫画では、左右のページを一つの大きな画面として使用する見開きがあります。

大規模な戦闘、広い風景、重要人物の登場など、強い印象を与えたい場面で使われる表現です。

タブレットを横向きにすれば電子でも見開きを表示できますが、スマートフォンでは一ページずつ表示されたり、文字や絵を見るために拡大が必要になったりします。

紙面全体を前提に描かれた構図を、そのまま一度に受け取れることは紙の強みです。

縦読み漫画とは、優劣ではなく想定している画面と演出方法が異なります。

特装版や限定版は紙と相性がよい

人気漫画では、冊子、イラストカード、ポストカードなどを付属した特装版が発売されることがあります。

電子でもデジタル特典は付けられますが、複数の物をケースへまとめた商品は紙の方が作りやすく、購入者にも所有感を与えます。

紙の市場が縮小すれば、すべての作品を同じ部数で大量印刷することは難しくなります。

その代わり、熱心な読者へ向けた保存版、豪華版、限定版として紙の価値が高まる可能性があります。

人へ渡したり中古で売ったりできる

紙の漫画は、家族や友人へ貸したり、贈り物として渡したりできます。

読み終えたあとは、中古店やフリマサービスで売却することも可能です。

電子書籍は購入アカウントと結びつき、一冊だけを他人へ自由に譲渡したり、中古品として売却したりすることは一般にできません。

同じ一冊を別の人へ手渡し、作品との出会いを作れることも、紙にしかない特徴です。

紙は標準形式から選択商品へ変わる

今後も紙の漫画は残ると考えられますが、すべての作品が紙で刊行され続けるとは限りません。

販売数が期待できる作品は紙と電子の両方で発売し、熱心なファンが多い作品には限定版を用意する。

一方、読者数を予測しにくい作品や電子発の作品は、まず電子で販売し、反響が大きければ紙でも刊行する形が増える可能性があります。

紙はすべての漫画に用意される標準形式から、需要や作品の性質に応じて選ばれる形式へ変わっていくのでしょう。

漫画は紙と電子のどちらを選ぶべき?

電子コミックが売上で紙を大きく上回っていても、すべての読者に電子が最適とは限りません。

安く読みたいのか、すぐ読みたいのか、長く保存したいのか、読み終えたあとに売りたいのか。

重視する条件によって適した形式は変わります。

比較項目紙の漫画電子コミック
購入後現物を所有サービス上の閲覧権が中心
購入速度店舗・配送が必要すぐ読める
保管場所必要ほぼ不要
割引新品は限定的セール・還元が多い
中古売買可能原則できない
貸し借りしやすい制限がある
装丁・特典楽しめるデジタル特典が中心
サービス依存なしアカウントやアプリに依存
見開き見やすい端末サイズに左右される
長編の一括保管場所を取る管理しやすい

電子が必ず定価から安いわけではない

電子版は印刷や配送を必要としないため、紙より大幅に安いと思われがちです。

しかし、同じ作品の紙版と電子版を比べても、通常価格に大きな差がない場合があります。

電子の価格面での利点は、クーポン、期間限定セール、ポイント還元などを利用しやすいことです。

長編作品のまとめ買いでは、キャンペーンによって実質的な負担を大きく減らせることもあります。

一方、中古購入や読み終えたあとの売却まで含めると、紙の方が安く読める場合もあります。

新品の通常価格だけでなく、割引・中古・売却まで含めて判断する必要があります。

電子書籍はサービス上の閲覧権として提供される

紙の漫画を購入すると、その一冊は購入者の所有物になります。

電子書籍は一般に、購入したストアが定めた条件のもとで作品を閲覧する権利として提供されます。

画面上では紙と同じように「購入」と表示されますが、自由に複製、譲渡、転売できるわけではありません。

紙の所有と電子の利用許諾は、同じ買い物ではないことを理解しておく必要があります。

電子はアカウントとサービスへ依存する

電子書籍は、購入したストアのアカウントと結びつきます。

端末を買い替えても、同じアカウントへログインできれば購入作品を利用できるのが一般的です。

一方、アカウントを失ったり、利用しているサービスや対応アプリの状況が変わったりすれば、閲覧へ影響する可能性があります。

端末へダウンロードしてオフラインで読める場合でも、一般的な画像ファイルのように、サービスから完全に独立して保管できるとは限りません。

電子の本棚を長く利用するには、端末以上にアカウントを適切に管理することが重要です。

日常的に読むなら電子が便利

多くの作品を読む人や、長編作品を一度にそろえたい人には電子が向いています。

購入後すぐに読め、保管場所を取らず、外出先でも全巻へアクセスできます。

新刊の発売日に書店へ行けない人や、店頭で購入することに抵抗がある作品を読みたい人にも便利です。

セールや無料話を使い、知らなかった作品を試しやすいことも強みです。

好きな作品を残すなら紙が向いている

サービスやアカウントに依存せず、長期間手元に残したい作品には紙が向いています。

装丁、特典、本棚へ並べる楽しさを重視する場合も、紙で購入する意味があります。

電子で読んで気に入った作品だけを紙でも買う方法や、連載中は電子で追い、完結後に紙でそろえる方法もあります。

日常的に多く読む作品は電子、特に好きな作品は紙という使い分けが、現在の市場には最も合っています。

電子コミックが伸びても市場全体が縮小した理由

2025年のコミック市場は、電子が前年を上回ったにもかかわらず、全体では減少しました。

最大の理由は、電子の増加額よりも紙の減少額が大きかったことです。

しかし、背景には電子市場の成熟や無料利用の定着など、より長期的な課題もあります。

紙から離れた売上がすべて電子へ移るわけではない

紙を買わなくなった人が、同じ作品を電子で買い続けるなら、市場全体の売上は維持されます。

実際には、電子へ完全に移行する人もいれば、漫画への支出自体を減らす人もいます。

無料話だけを読む、映像化作品だけを見る、定額サービスの対象作品を中心に読むといった選択肢も増えました。

電子化は購入方法を変えますが、それだけで一人あたりの支出が増えるわけではありません。

電子コミックも急成長期を終えた

電子書籍市場は、爆発的な急成長期から、年数%程度の緩やかな拡大を続ける成熟期へ移行しています。

電子コミックは衰退しているのではありません。

すでに巨大な市場へ成長したため、以前と同じ成長率を維持するには、毎年さらに大きな売上を上積みしなければならなくなりました。

スマートフォンで漫画を読む習慣も広く普及し、新規利用者だけで市場を伸ばすことは難しくなっています。

無料で読む人を有料購入へつなげる必要がある

無料話や期間限定公開は、新しい作品を知ってもらうために欠かせない仕組みです。

しかし、無料で読む人が増えても、その全員が続きを購入するわけではありません。

無料部分だけで満足する人や、複数のサービスの無料話を渡り歩く人もいます。

今後の電子コミック市場では、無料利用者の数を増やすだけでなく、気に入った作品へ継続的に支払いたいと思ってもらえるかが重要になります。

割引だけでは安定した市場を作れない

電子書店は、クーポンやポイント還元によって利用者を獲得してきました。

一方、読者が大型キャンペーンを待つようになれば、通常価格での購入が伸びにくくなる可能性があります。

割引は新しい読者の入口として有効ですが、割引率だけで競争を続けても、作者、出版社、電子書店へ十分な利益が戻らなければ、安定した市場にはなりません。

「安いから読む」だけでなく、「この作品だから買う」と思える漫画を生み出せるかが重要です。

新しい作品と出会う仕組みが必要

電子書店では膨大な新作と既刊を販売できます。

しかし、作品数が増えるほど、一作品あたりが読者へ見つけてもらうことは難しくなります。

ランキングや広告で目立つ作品へ購入が集中し、知られていない作品は販売ページが存在しても読者へ届かない可能性があります。

紙の漫画雑誌や書店が縮小するなか、アプリ、SNS、動画、口コミなどを使い、新作と読者を結びつける仕組みが必要です。

配信できる作品を増やす段階から、数多くの作品の中から読者に見つけてもらう段階へ課題が移っています。

IP展開と海外展開も成長の鍵になる

電子書籍市場が成熟するなかで、出版社や電子書店は、オリジナル作品や独占配信だけでなく、アニメ、実写、ゲーム、グッズ、イベントなどへの展開も重視しています。

デジタル配信は、紙を国ごとに印刷して輸送する方法より、海外へ作品を届けやすい利点もあります。

ただし、すべての作品を大型IPにできるわけではありません。

翻訳、宣伝、権利処理、現地の読書文化への対応も必要です。

漫画そのものの売上を大切にしながら、作品の魅力を別の形や地域へ広げられるかが、次の成長を左右します。

この時代に本を売るにはどうすればいいのか (星海社 e-SHINSHO)

『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』は、出版市場の縮小を単純な読書離れとして片づけず、本を読むことと購入することの違いから分析した一冊です。デジタルコミックが成長した理由や出版DX、ウェブ小説、書店の今後も取り上げており、紙から電子へ移行する出版市場をさらに詳しく知りたい人に適しています。

価格・在庫・仕様や版の違いなどは変動します。購入の際は各ショップの商品ページで最新情報をご確認ください。

まとめ|漫画市場は電子中心へ、それでも紙はなくならない

2025年の国内コミック市場では、電子コミックが5,273億円、紙の漫画が1,652億円となりました。

電子は紙の約3.2倍で、市場全体の76.1%を占めています。

電子コミックが紙を逆転したのは2019年です。

そこからスマートフォン、無料話、即時購入、話単位の販売、ポイント還元、過去作品、アプリ独自作品などが重なり、漫画の読み方と売り方は大きく変わりました。

電子書籍市場の約9割をコミックが占めていることからも、漫画とデジタル販売の相性のよさが分かります。

現在の電子書籍市場は、紙の本が均等にデジタルへ置き換わった市場ではありません。

漫画に最適化された巨大なデジタル市場が形成されたと考える方が実態に近いでしょう。

一方、紙の漫画がすぐになくなるわけではありません。

表紙や装丁、見開き、特装版、本棚へ並べる楽しさ、人へ渡せること、中古で売買できることなど、紙には電子では置き換えにくい価値があります。

今後、紙は「漫画を読むために必ず必要な形式」から、好きな作品を所有し、長く残すために選ばれる形式へ変化していく可能性があります。

読者も、紙か電子のどちらか一方へ統一する必要はありません。

多くの作品や長編は電子で読み、特に好きな作品や限定版は紙で購入する。

電子で読んで気に入った作品を、あとから紙でもそろえる。

自分がどのように読み、どのくらい長く残したいかによって使い分けることが、最も現実的です。

そして、今後の漫画市場で重要になるのは、紙と電子のどちらが勝つかではありません。

2025年は電子が伸びても、紙の減少を補えず、市場全体が縮小しました。

電子の割合がさらに上がっても、漫画へお金を支払う読者が増えなければ、市場は成長しません。

読者が新しい作品と出会い、面白いと感じ、その続きを読みたいと思うこと。

無料で読み始めた人が、気に入った作品へ対価を支払うこと。

その売上が作者、出版社、書店、電子書店へ戻り、次の作品が生み出されること。

漫画市場の未来を決めるのは、紙か電子かという形式ではなく、魅力ある作品と読者を結びつけ、継続的に対価が循環する仕組みを維持できるかどうかです。

市場の中心は、すでに電子へ移りました。

それでも紙には紙の役割が残り、電子にも次の課題があります。

漫画市場は紙から電子へ置き換わって終わるのではなく、両者の特徴を生かしながら、作品をどのように読者へ届け続けるかを考える新しい段階へ入っています。

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