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『ヘルツォーク・ツヴァイ』レビュー|自機で兵器を運び、基地を奪うリアルタイム戦略

ヘルツォーク・ツヴァイはなぜ名作?メガドライブ異色RTSを89点レビュー

戦車を作る。歩兵を作る。敵の基地を奪う。

ここまでなら、戦略ゲームでは珍しい話ではありません。

ところが『ヘルツォーク・ツヴァイ』では、作った兵器が勝手に前線へ向かってくれるわけではありません。プレイヤー自身が戦闘機を飛ばして受け取り、戦場まで運びます。基地を奪うための歩兵も自分で届け、傷ついた戦車を立て直したければ回収しに行く。敵が攻めてくれば、自機で迎撃することもできます。

問題は、それらを同時にはできないことです。

前線で敵を追いかけている間は、完成した次の兵器を運べません。歩兵を敵基地へ届けようとしている最中に本拠地が攻撃されれば、そのまま攻めるか、引き返すかを決める必要があります。

しかも、これだけ重要な自機には敵本拠地を直接破壊する能力がありません。最後に敵本拠地を落とすのは、自分が生産し、運び、配置したAI兵器です。

1989年12月15日にテクノソフトから発売されたメガドライブ用ソフト『ヘルツォーク・ツヴァイ』は、セガが現在も「リアルタイムストラテジーの元祖とも呼ばれる」と紹介している作品です。

ただ、本作がおもしろいのは「1989年なのにRTSを作っていたから」ではありません。

何を作るかだけでなく、自分が今どこへ行くべきかまで考えなければならない。

兵器生産、輸送、基地占領、補給、防衛、自機による戦闘が、この一点を通してつながっていることこそ、本作を現在遊んでもおもしろいと感じる最大の理由です。

つぶログのメガドライブ全422ソフトTier表では、89点・A Tier・総合43位としました。

一方で、仕組みを理解するまでの案内は弱く、理解してからも兵器を一機ずつ運び、必要なら現地まで命令を変えに行かなければなりません。

分かってくるほどおもしろい。でも、分かってからも忙しい。

この両面を含めて89点です。

『ヘルツォーク・ツヴァイ』とは?

今回評価するのは、1989年12月15日に日本国内で発売されたメガドライブ版『ヘルツォーク・ツヴァイ』です。

項目内容
発売日1989年12月15日
メーカーテクノソフト
ジャンルシミュレーション
発売時価格6,800円
型番T-18023
容量4M
プレイ人数1~2人

発売日、メーカー、ジャンル、価格、型番、容量は、セガのメガドライブ公式ソフト一覧でも確認できます。

本作には前身があります。1988年にはPC-8801、PC-9801、X1、MSX2向けに『ヘルツォーク』が登場しており、後年のSEGA AGES版開発インタビューでは、『ヘルツォーク・ツヴァイ』は前作の基本ルールを受け継ぎながらメガドライブ向けに発展させた「リメイク的な続編」と説明されています。

そのため本記事ではPC版『ヘルツォーク』の仕様を混ぜず、1989年のメガドライブ版そのものを評価します。

勝つには自分で戦うだけでは足りない

勝利条件は分かりやすく、敵本拠地の耐久力を先にゼロにすれば勝ちです。

マップの両端に自軍と敵軍の本拠地があり、その途中には複数の中継基地があります。資金で兵器を生産し、中継基地を奪いながら戦線を押し上げ、最終的に敵本拠地へ味方兵器を送り込みます。

ここで本作らしい制限があります。

プレイヤーが直接操作する自機は、敵兵器や敵自機とは戦えます。しかし、敵の基地や本拠地を直接攻撃することはできません。

目の前の敵を自分で蹴散らすことはできても、それだけでは試合が終わらないのです。

敵を排除して味方が進みやすい状況を作り、兵器を前線へ運び、最後はAI兵器に敵本拠地を攻撃させる必要があります。アクションゲームのように自分一人で突破することも、盤面だけを眺めてすべてを遠隔操作することもできません。

自機は「機動歩兵」と「高速型戦闘機」を切り替える

プレイヤー機はAボタンで機動歩兵と高速型戦闘機を切り替えられます。

機動歩兵は移動速度こそ遅いものの、エネルギー消費を抑えながら地上で戦えます。高速型戦闘機なら一気に戦場を移動でき、兵器の空輸も可能ですが、機動歩兵形態の3倍のエネルギーを消費します。

さらに兵器を運んでいる最中は、通常の高速型戦闘機よりエネルギー消費が大きくなります。遠くの前線へ戦車や歩兵を送り届けること自体が、自機の活動時間を削っていくわけです。

エネルギーがゼロになれば自機は爆発し、本拠地から復帰します。高速で飛べるからといって、好きなだけ戦場を往復できるわけではありません。

急いで前線へ向かうのか、途中の基地で補給するのか、消耗を抑えるため地上形態を使うのか。移動そのものにも考える余地があります。

兵器は作っただけでは戦ってくれない

本作を初めて遊んだとき、最も戸惑いやすいのが兵器の生産です。

Cボタンでウインドウを開き、兵器の種類と指令を選んで購入します。ところが、生産が終わっても兵器は自動的に前線へ出ません。

自軍本拠地または占領済みの中継基地まで高速型戦闘機で向かい、完成した兵器を受け取り、自分で目的地まで運んで降ろします。そこでようやくAI兵器として動き始めます。

さらに重要なのが、完成した兵器を受け取るまで次の兵器を生産できないことです。

敵との戦闘に夢中になって前線へ居座れば、後方では完成済みの兵器が待ち続けます。その間、新しい戦車も歩兵も作れません。

つまり兵器輸送は、単に「作った戦力を前へ届ける作業」ではありません。自分が取りに戻らないと、次の生産まで止まってしまいます。

このひと手間が面倒である一方、本作独特の忙しさを生み出しています。

基地を奪えるのは歩兵だけ。しかも4人必要

8種類ある兵器の中で、歩兵は500と最も安価です。戦闘力も高くありません。

しかし、中継基地を占領できるのは歩兵だけです。

中立または敵の基地へ歩兵4人を送り込むことで占領でき、一度奪った基地でも敵歩兵を入れられれば取り返されます。

このルールがあるため、高価な戦車だけを大量に作ればいいゲームにはなりません。

戦車は敵部隊を倒せても基地を奪えず、対空車両を並べても領土は広がりません。戦線を前へ進めるには、戦闘力の低い歩兵を目的地まで生きて届ける必要があります。

そこで、歩兵を運ぶ前に自機で敵を排除するのか、護衛用の戦車を置くのか、正面とは別の基地へ歩兵を送って相手の守備を散らすのかといった選択が生まれます。

一番強い兵器ではなく、一番弱い歩兵が領土を動かす。この役割分担はよくできています。

基地を一つ取るだけで、次の攻撃が楽になる

中継基地は、マップ上の色を増やすだけの陣取りポイントではありません。

自軍の基地では自機のエネルギーや弾薬を補給できます。傷ついた兵器を基地へ持ち帰れば耐久力を含めて回復でき、生産済みの兵器を受け取る場所としても利用できます。

完成した兵器は本拠地だけでなく自軍の中継基地からも受け取れるため、前線に近い基地を持っているほど輸送距離を短くできます。

さらに占領済み基地からは、兵器生産に使う資金Gも時間とともに入ります。

つまり基地を一つ奪うと、補給地点が前へ出て、兵器を受け取る場所も前へ進み、輸送時間が短くなり、収入まで増えます。

前線近くの基地を奪った瞬間、次の攻撃が明らかにやりやすくなる。この感触があるため、基地争奪には単なる得点争い以上の意味があります。

8種類の兵器は、値段ではなく役割で選ぶ

生産できる兵器は8種類。それぞれ価格だけでなく、移動方法、攻撃対象、速度、耐久力、用途が異なります。

兵器価格主な役割
装甲車1,300比較的安価な地上戦力。数をそろえたい場面で使いやすい
戦車3,200攻撃力と耐久力に優れた地上戦の主力
対空車両4,300敵プレイヤー機への対空攻撃を担当
ボート3,400水上を移動できる地形対応兵器
補給車1,500周囲の味方兵器へエネルギーと弾薬を補給
固定砲台15,000移動できない代わりに高い攻撃力を持つ防衛兵器
歩兵500戦闘力は低いが中継基地を占領できる
バイク950耐久力は低いが移動速度に優れる

戦車は強力ですが、戦車だけでは基地を奪えません。歩兵だけを送り込めば簡単に倒されますし、敵自機の介入を防ぎたいなら対空車両が欲しくなります。

長く前線を維持するなら補給車も重要です。水域によって進軍ルートが分かれるマップではボートの価値も上がります。

15,000という高額な固定砲台を置けば守りは固くなりますが、その資金があれば別の場所へ複数の兵器を送り込むこともできます。

値段の高い順に買えばいいのではなく、今の戦場で何が足りないのかを見て兵器を選ぶことが大切です。

戦車も補給なしでは止まる

プレイヤー機だけでなく、AI兵器にもエネルギーと弾薬があります。

高価な戦車を前線へ送り込んでも、長く戦えばエネルギーや弾薬を消費します。消耗した兵器の近くへ補給車を配置すれば、エネルギーと弾薬を補給できます。

ただし補給車では、受けたダメージそのものまで修理できません。

傷ついた兵器を完全に立て直したいなら、自機で拾い上げ、自軍本拠地か中継基地まで持ち帰る必要があります。

ここでも悩ましい選択が生まれます。

高価な戦車を失いたくないから回収したい。しかし、その戦車を取りに行っている間は歩兵を運べず、別の場所で敵が進軍していても対応が遅れます。

前へ戦力を出すだけではなく、どうやって戦わせ続けるかまで考えなければならない。基地や補給車が重要になる理由はここにあります。

AI兵器には行動パターンを与えてから配置する

生産した兵器をプレイヤーが直接動かすことはできません。

兵器には生産時に「指令ユニット」を設定し、その命令に従ってAIが行動します。日本版説明書には7種類の指令が掲載されており、配置地点を守る、周囲を巡回して攻撃する、中継基地へ向かう、敵を迎撃して戻る、敵基地や敵本拠地へ進む、補給車として味方を支援するなど、それぞれ役割が異なります。

指令にも資金が必要です。

現在のRTSのように、部隊を選択して「今度はここへ行け」と次々に命令を送り直す方式ではありません。

守らせたいのか、前へ進ませたいのか。その兵器をどこに降ろし、何をさせるのかを先に考えておく必要があります。

守備のつもりで置いた兵器に進軍系の指令を与えれば、その場に留まってくれません。反対に守備命令ばかりでは、せっかく有利になっても部隊が前へ進まない。

兵器選びと同じくらい、その兵器に何をさせるかが重要です。

命令を変えたくなっても、その場では変えられない

この指令システムは本作の戦略性を支える一方、現在遊ぶとかなり手間を感じる部分でもあります。

前線に置いた兵器の命令を途中で変更したくなっても、離れた場所から新しい指示を送ることはできません。

自機でその兵器の場所まで行き、いったん回収し、空輸状態で別の指令を購入して、再び戦場へ降ろします。

一機ならまだしも、複数の兵器を切り替えたければ同じ作業を繰り返します。

簡単に命令を書き換えられないからこそ、最初の配置や指令をよく考える意味はあります。それでも、戦況が変わるたびに現地へ飛んで回収する手間まで含めて楽しめるかは別問題です。

この部分は、本作らしい制約であると同時に、S Tierへ届かなかった理由の一つでもあります。

戦っている時間には、兵器を運べない

プレイヤー機は射撃できるため、アクションゲームとしての腕前も勝敗へ影響します。

敵兵器が味方の進軍を止めているなら、自機で飛び込んで排除した方が早い場面があります。敵側には対空車両もいるため、何も考えず飛び回ればこちらも大きな被害を受けます。

この直接戦闘がおもしろい一方で、敵を追い回している時間はそのまま別の仕事が止まっている時間でもあります。

敵を撃っている間は次の戦車を運べません。歩兵を基地へ届けている間は、遠くにいる部隊の命令を変えられません。傷ついた兵器を回収している間にも、敵軍は別の場所で動いています。

たとえば敵基地を奪うまで歩兵あと一人というところで、自軍本拠地へ敵が接近したとします。

そのまま歩兵を運べば重要な基地を奪えるかもしれません。しかし帰還が遅れれば本拠地が削られる。急いで戻れば守れますが、あと一歩だった前線を立て直される可能性があります。

どちらも間違いではありません。

やるべきことが二つあるのに、自機は一機しかいない。

『ヘルツォーク・ツヴァイ』の忙しさがおもしろさにつながっているのは、単純に操作量が多いからではなく、こうした選択を何度も迫られるからです。

「自機がどこにいるか」が戦況を変える

メガドライブ版の操作は、方向ボタンとA・B・Cの3ボタンへまとめられています。

後年のPC向けRTSのように画面上のカーソルを動かして各地へ命令を飛ばすのではなく、プレイヤー自身が戦場を移動し、兵器や基地へ直接アクセスします。

開発者が「自機をカーソルとして設計した」と説明した一次資料が確認できるわけではないため、それを開発意図として断定はできません。

ただ、実際に遊ぶと自機は戦闘機であり、輸送機であり、偵察役であり、同時に「次にどこへ手を入れるか」を決める存在にもなっています。

目の前の戦闘へ自分が向かえば、そこには強く介入できます。しかし遠くの場所へは手を出せません。

この物理的な距離が、ゲームパッドでリアルタイム戦略を成立させるうえで本作ならではの個性になっています。

8マップで有効な兵器も変わる

マップはABGRUND、VULKAN、LOCH、STRAND、STADT、EISFREI、WALDUNG、OASEの8種類です。

背景が違うだけではなく、地形によって進軍ルートや兵器の使い方が変化します。

島が点在するSTRANDでは水上兵器であるボートが役立ち、EISFREIでは雪上で滑るため自機を思い通りに動かしにくくなります。VULKANには溶岩地帯があり、STADTでは市街地の障害物が進路へ影響します。

基地同士の距離や地形が変われば、兵器を空輸する時間も変わります。地上兵器をどこから進ませるか、どの基地を先に奪うか、普段なら使わない兵器へ資金を回すべきか。

同じ戦い方を8回繰り返せば済む構成にはなっていません。

1人でも遊べるが、2人対戦では自機の位置まで読み合いになる

オリジナル版はCPUとの1人プレイと2人対戦に対応しています。

1人用では8マップから選べるほか、CPU側をTYPE A~Dで設定できます。説明書ではA、B、C、Dの順に難しくなるとされ、高難度ではCPU側にあらかじめ兵器が配置されるため、序盤から厳しい状況で戦うことになります。

全8マップへ連続して挑むCONTモードでは、試合終了時に表示されるパスワードで進行を引き継ぎます。試合の途中を自由に保存する方式ではありません。

CPU相手でも、基地をどの順番で奪うか、いつ歩兵を運ぶか、どこへ防衛戦力を置くかといった本作の中心は十分に味わえます。

一方、2人対戦では画面を左右に分割して戦います。

人間同士になると、兵器配置だけでなく相手の自機が今どこにいるかまで重要になります。

相手が前線の右側で戦っているなら、反対側への対応は遅れるかもしれない。歩兵を見せて一つの基地へ注意を向けさせ、その間に別ルートから戦力を送ることもできます。

盤面の外から全軍を動かすゲームではなく、プレイヤー自身も戦場の一か所に存在している。その特徴が、対人戦ではさらに分かりやすく表れます。

最大の弱点は、最初に何をすればいいのか分かりにくいこと

ここまで仕組みを順番に説明すれば、何をするゲームなのかは見えてきます。

しかし1989年のオリジナル版を最初から遊ぶと、この関係を理解するまでがかなり大変です。

兵器は買っただけでは使えず、自分で受け取らなければならない。基地を取るには歩兵が4人必要。兵器にもエネルギーと弾薬があり、補給車で回復できるものと基地へ持ち帰らなければ直せないものがある。さらに指令ごとの行動も覚えなければなりません。

一つひとつを見れば極端に難しいルールではありません。ただ、それぞれが最初からつながっています。

歩兵が基地を奪えると知っても、空輸方法を知らなければ目的地へ届きません。輸送を覚えても、基地を奪うことで兵器の受取地点まで前進することを知らなければ、なぜ拠点争奪が重要なのか分かりにくい。戦車を並べても、指令の違いを理解していなければ期待した方向へ動いてくれません。

2020年のSEGA AGES版開発インタビューでも、オリジナル版の取っつきにくさは課題として語られています。

本作の難しさは、単純に敵が強いことだけではありません。おもしろさへたどり着く前に、まずルール同士のつながりを理解しなければならないところにあります。

分かってくると、それまでの知識が全部つながる

ただし、本作は「面倒なルールを暗記した先に、ようやく別のおもしろさが始まる」タイプではありません。

覚えたことが、そのまま次の戦い方につながります。

最初は基地を奪えずに戸惑い、歩兵4人が必要だと知る。すると今度は歩兵をどう安全に届けるかを考えるようになります。護衛を用意し、自機で敵を排除し、前線が遠くなれば補給を考える。

さらに基地を奪うと、そこから兵器を受け取れることに気付きます。輸送距離が短くなれば次の基地を狙いやすくなり、収入も増える。やがて敵兵器だけでなく、敵自機の位置や本拠地へ残す防衛戦力まで見るようになります。

知識が増えるたび、同じマップの見え方が変わっていきます。

この感覚があるから、導入の分かりにくさだけを理由に大きく評価を落とすこともできません。

AI兵器は完全には思い通りに動かない

もう一つ、現在遊ぶと気になりやすいのがAI兵器の扱いです。

部隊は与えられた指令に従って自律的に動くため、プレイヤーが細かな経路を指定することはできません。

地形や指令によっては期待したルートを通らず、特に補給車などを狙った場所へ置き続けたいときには、配置の工夫が必要になります。

これをすべて「AIが悪い」と片付けるのも違います。細かな直接操作をさせず、あらかじめ行動を決めて部隊を送り出すこと自体が本作のルールだからです。

とはいえ、今遊べば「もう少し直接動かしたい」「ここで命令だけ変えたい」と思う場面はあります。

この不自由さを計画性として楽しめる部分と、単純に扱いにくい部分の両方があります。

「RTSの元祖」はどこまで言っていい?

『ヘルツォーク・ツヴァイ』を紹介するときによく使われるのが、「RTSの元祖」という言葉です。

セガ公式も本作を「リアルタイムストラテジーの元祖とも呼ばれる」作品として紹介しています。

ただし、「世界初のRTS」「史上初のRTS」「RTSを発明したゲーム」とまで断定するのは避けた方がいいでしょう。

本作以前にもリアルタイムで進行する戦略ゲームは存在し、テクノソフト自身も1988年にPC向け『ヘルツォーク』を発売しています。SEGA AGES版の開発インタビューでも、前作は国内におけるRTSの先駆けとなった作品の一つとして扱われています。

それでも1989年の家庭用ゲーム機で、兵器生産、資金、AI部隊への指令、基地争奪、補給、リアルタイムの攻防、自機による直接介入まで一つにまとめていたことは十分に注目できます。

何番目のRTSだったのかを決めなくても、本作の価値は揺らぎません。

なぜA Tier・89点なのか

『ヘルツォーク・ツヴァイ』を89点とした最大の理由は、それぞれの仕組みが単独で存在していないことです。

基地を奪えば、単に領土が増えるだけではありません。補給地点が前へ出て、完成した兵器を受け取る場所も前進し、輸送距離が短くなります。収入も増えるため、次の戦力を用意しやすくなります。

その基地を奪うには歩兵が必要ですが、歩兵は弱い。だから戦車や自機で援護したくなる。しかし敵を排除するため前線で戦い続ければ、今度は完成した次の兵器を取りに戻れません。

前へ出た兵器はやがて弾薬やエネルギーを消耗し、補給が必要になります。傷つけば回収するか、そのまま戦わせるかを決めなければなりません。

どれも別々のシステムではなく、一つの戦況の中でつながっています。

しかも、それらの多くを動かすにはプレイヤー自身が現地へ行かなければなりません。

この仕組みが1989年の珍しさだけで終わらず、現在遊んでも判断のおもしろさとして残っています。

評価項目判定
TierA Tier
スコア89 / 100
メガドライブ全422作品中43位
高評価の中心生産・輸送・基地占領・補給・直接戦闘が一つにつながる独自のゲーム設計
S Tierへ届かない主な理由導入の分かりにくさ、一機ずつの輸送と命令変更、AI兵器の扱い、情報表示

89点でもS Tierにしなかった理由

90点台へ入れなかった理由は、戦略が浅いからではありません。

一番大きいのは、そのおもしろさを理解するまでの導線と、理解してからも残る操作の重さです。

兵器の種類、指令、基地占領、空輸、エネルギー、弾薬、補給まで把握する前は、なぜ自軍がうまく動かないのかさえ分かりにくい。オリジナル版の画面から得られる情報も、現在の戦略ゲームほど整理されていません。

そしてルールを覚えても、一機ずつ兵器を運ぶ作業は最後まで残ります。配置済みの兵器へ新しい命令を出したければ現地まで行って回収し、AIの進路を細かく修正することもできません。

CONTモードの進行管理がパスワード式なのも、現在遊ぶうえでは不便です。

さらにメガドライブ版では、両軍の兵器が増えて大規模な戦闘になると処理落ちが発生する場合があります。後のSEGA AGES版では、この処理落ちを軽減する機能も加えられました。

これらを「1989年だから仕方がない」と評価から外すことはしません。

古さを理由に欠点だけを強調するのでもなく、現在遊んでもおもしろい部分は評価し、現在遊んで不便な部分も同じように見る。その結果がA Tier・89点です。

SEGA AGES版では弱点だった「分かりにくさ」が改善された

2020年8月27日には、Nintendo Switch向け『SEGA AGES ヘルツォーク ツヴァイ』が配信されました。ジャンルはリアルタイムストラテジー、プレイ人数は1~2人、セガ公式の価格は999円(税込)です。

SEGA AGES版には、1989年版を再現した遊びを基本としながら、現在遊ぶためのさまざまな機能が追加されています。

とくに大きいのが、12種類のレクチャーでルールを学べる「ヘルツォークアカデミー」です。

さらに、基地、自機、兵器、指令などの情報をゲーム画面の左右へ表示する機能、本拠地や自機などの条件を調整できるヘルパー、ネットワーク対戦、リプレイ保存・再生、パスワードの自動保存、各種画面設定などが加わっています。

オンライン対戦でも、オリジナル版と同じ左右分割画面が採用されています。

これらは1989年版にはなかった機能です。

とくにチュートリアルと追加情報表示によって、「最初に何をすればいいのか分からない」というオリジナル版最大の弱点はかなり入りやすくなっています。

ただし、本記事で付けた89点はあくまで1989年の日本国内メガドライブ版への評価です。後年版の改善点まで原作の得点へ加えてはいません。

今から遊ぶならSEGA AGES版という選択肢がある

オリジナルのメガドライブ版をそのまま遊びたいのであれば、実機とカートリッジを用意する方法があります。

一方、作品そのものを現在体験したい場合は、Nintendo Switch向け『SEGA AGES ヘルツォーク ツヴァイ』があります。

原稿確認時点ではダウンロード版の販売継続を確認しており、ヘルツォークアカデミーや追加情報表示も収録されています。

初めて本作へ触れる人にとっては、オリジナル版のルールを手探りだけで覚えるより、SEGA AGES版の方が仕組みを理解しやすいでしょう。

遊びやすくしたからといって、本作ならではの生産、輸送、基地争奪そのものが別物になったわけではありません。まずゲームの仕組みを知りたい人にとって、現実的な選択肢です。

総評|自分がどこへ行くかまで戦略になる

『ヘルツォーク・ツヴァイ』では、司令官だけが安全な場所にいることはできません。

戦車を作ったら取りに行く。基地を奪いたければ歩兵を運ぶ。傷ついた兵器を助けたければ回収しに向かう。敵が味方部隊を止めていれば、自分で戦うこともできます。

ただし、一つの仕事を始めれば別の仕事は遅れます。

前線へ出れば本拠地へ戻るのに時間がかかり、遠くへ兵器を運べばエネルギーを消費します。基地を取れば次の輸送は短くなり、攻撃に夢中になれば生産済みの兵器が後方で待つことになります。

しかも自機だけでは敵本拠地を倒せません。

自分で戦えても、最後に勝つためには兵器を作り、運び、正しい場所へ置かなければならない。この制限があるから、アクションの腕前だけでゲーム全体を壊すこともありません。

導入は分かりにくく、一機ずつ兵器を扱う手間もあります。命令変更やAI兵器の扱いには、今遊んでも不便さを感じます。

それでも、ルールを理解した後に見えてくる戦場は単純ではありません。

敵と戦うか、兵器を運ぶか。前線を押し上げるか、本拠地へ戻るか。高価な戦車を買うか、基地占領のため歩兵を増やすか。傷ついた兵器を救うか、新しい戦力を作るか。

その答えをメニューの中だけで決めるのではなく、自分で戦場を飛び回りながら実行していきます。

「どの兵器をどこへ送るか」と「自分が今どこへ行くか」が切り離せない。

このおもしろさは、1989年という発売年を考慮しなくても残っています。

A Tier・89点。

『ヘルツォーク・ツヴァイ』は、後のRTSを先取りしていたから高く評価する作品ではありません。

兵器を動かすだけでなく、司令官である自分自身まで戦場の一部にしてしまった。その独特な戦いが、今遊んでもおもしろいから89点です。

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