番号スプーフィングとは?知人の番号が表示される理由と対策

スマートフォンに電話がかかってきて、画面には家族や知人の名前が表示されている。ところが、後から本人に確認すると「電話なんてかけていない」と言われる。
そんな不可解な現象を引き起こす手口の一つが、番号スプーフィング(発信者番号偽装)です。
実際に警察署や家族の電話番号を偽装した事件が確認されており、2025年には国内の特定の通信事業者を経由した偽装発信が約197万件に上っていたことも明らかになりました。
番号スプーフィングの厄介なところは、知らない番号を警戒するだけでは防ぎきれない点です。電話帳に登録している人の名前が表示されることもあり、番号をインターネットで検索しても、実在する警察署や企業が見つかる場合があります。
最も大切なのは、着信画面に表示された電話番号を、相手が本人であることの証明として扱わないことです。不審な電話はいったん切り、以前から把握している連絡先や公式サイトなどで正規の番号を確認してから連絡します。
この記事では、番号が偽装される仕組み、知人の名前まで表示される理由、電話に出てしまった場合の対応、自分の番号が悪用された場合の確認方法、スマートフォンで利用できる対策まで整理します。
番号スプーフィングとは?知っている番号から別人の電話が来る理由
番号スプーフィングとは、電話をかける側が本来とは異なる発信者番号を通知し、相手の着信画面に別の電話番号を表示させる行為です。
スプーフィング(spoofing)は、情報通信の分野で、別の人物や機器、組織などになりすます行為を指します。電話の場合は、相手に通知される発信者番号を偽装することが問題になります。
例えば、実際には第三者が電話をかけているのに、受信者のスマートフォンには家族の携帯電話番号が表示されるケースです。警察署や企業の代表番号を装うこともあります。
番号を偽装すること自体が目的というより、本物の相手から電話が来たと思わせ、話を信用させるために悪用される点が危険です。
なぜ電話帳に登録した名前まで表示されるのか
この問題で特に不思議なのが、電話番号だけでなく、電話帳に登録している名前まで表示されることです。
実は、犯人が電話帳を書き換えなくても、この現象は起こり得ます。
スマートフォンは、着信時に通知された電話番号と、端末に保存されている連絡先などの情報を照合します。一致する番号があれば、その番号に登録された名前を表示する仕組みがあります。
例えば、自分のスマートフォンに「母」という名前で登録してある番号が偽装された場合、実際の発信者が母親でなくても、画面には「母」と表示される可能性があります。
AppleやGoogleも、発信者の識別に連絡先情報などを利用する仕組みを公式に説明しています。
つまり、電話帳に登録した名前が表示されることと、電話をかけている人物が本人であることは別問題なのです。
なお、表示方法は機種、OS、通信事業者、発信者識別サービスによって異なります。すべてのスマートフォンで必ず同じ名前が表示されるわけではありません。
番号を偽装されたらスマホが乗っ取られている?
自分の番号から勝手に電話がかけられているように見えると、スマートフォンの乗っ取りを疑うかもしれません。
しかし、番号スプーフィングと端末への不正アクセスは異なる問題です。
番号スプーフィングでは、通信経路で通知される発信者番号を偽装することで、番号の持ち主のスマートフォンを操作せずに、別の端末へその番号を表示させる場合があります。
2025年に国内で発覚した大規模な番号偽装事件でも、問題となったのは通信事業者側のシステム設定でした。
したがって、自分の番号が偽装されたという情報だけで、電話帳の流出やスマートフォンの乗っ取りまで確定したことにはなりません。ただし、実際の回線やアカウントが不正利用されている可能性は別途確認する必要があります。
怪しい電話の見抜き方と安全な折り返し方法
番号スプーフィングに対して、着信画面の表示だけで確実に相手を見分ける方法はありません。
番号が実在すること、電話帳に名前があること、インターネットで検索して正しい組織名が表示されることは、いずれも発信者本人の証明にはならないからです。
そのため、番号そのものよりも、電話の内容と確認方法に注意する必要があります。
不審な電話で特に警戒したい内容
- 突然、事件や事故に巻き込まれたと告げられる
- 警察官などを名乗り、捜査や逮捕の話をされる
- 資金調査や安全確認を理由に送金を求められる
- 銀行口座、パスワード、認証コードを聞き出そうとする
- LINEなど別の連絡手段へ移るよう指示される
- 家族や周囲の人に相談しないよう口止めされる
- すぐに対応しなければ重大な不利益があると急かされる
こうした内容は、警察官や家族、企業を名乗る詐欺で使われることがあります。
ただし、どれか一つに該当しなければ安全というわけではありません。最初は普通の連絡を装い、会話が進んでから金銭や情報の提供を求めることも考えられます。
着信履歴から折り返しても大丈夫?
ここは誤解されやすい部分です。
例えば、犯人が実在する警察署の正しい代表番号を偽装していた場合、その番号へ改めて電話すれば、本物の警察署につながることがあります。
実際に警察庁が公表した事件でも、被害者が着信画面に表示されていた愛知県警察本部の代表番号へ電話し、詐欺だったと判明しています。
しかし、表示された番号が正しい連絡先とは限りません。犯人側が管理する番号や、別の無関係な番号が表示されている可能性もあります。
したがって、着信履歴からの折り返しが必ず危険というわけでも、必ず安全というわけでもありません。
大切なのは、電話番号を手入力するかどうかではなく、その番号が正規の連絡先だと何によって確認したかです。
家族なら以前から使っている連絡先や別の家族への確認、企業や金融機関なら公式アプリ、契約書、公式サイトなどを利用します。電話の相手から教えられた確認先や、送られてきたリンクだけを頼りにしないことが重要です。
警察庁も、警察官を名乗る不審な電話について、相手から教えられた番号には折り返さないよう注意を呼びかけています。
番号を検索して実在する企業が出てきたら本物?
これも本人確認にはなりません。
検索によって分かるのは、その電話番号が実在する企業や施設で使用されている可能性があるということです。現在電話をかけている人物が、その組織に所属していると証明されたわけではありません。
特に、実在する企業の代表番号を偽装されていた場合、番号検索では本物の企業情報が表示されるため、かえって信用してしまう危険があります。
また、偽の公式サイトが検索結果に紛れ込む可能性もあります。金融機関や公的機関に確認するときは、以前から使用している公式アプリや正規の案内資料なども利用してください。
電話に出てしまった場合はどうする?被害状況別の対処法
不審な電話に出てしまったからといって、その時点ですべての個人情報が盗まれたり、直ちにスマートフォンが乗っ取られたりするわけではありません。
重要なのは、通話中に何を伝え、どのような操作をしたかです。
| 状況 | まず行うこと |
|---|---|
| 不審な電話に出ただけ | 通話を終了し、必要なら正規の連絡先へ確認する |
| 氏名・住所などを伝えた | 伝えた情報を記録し、追加のなりすまし連絡に警戒する |
| パスワードや認証コードを伝えた | 該当サービスの公式窓口へ連絡し、認証情報を変更・保護する |
| 不審なアプリを入れた | 追加操作を中止し、端末やアカウントの安全確認を行う |
| 銀行口座へ振り込んだ | 直ちに警察と振込先の金融機関へ連絡する |
| 暗号資産を送った | 警察と利用した暗号資産交換業者へ速やかに相談する |
通話に出ただけで、情報を伝えたり、不審な操作をしたりしていなければ、直ちに金銭被害が発生したと考える必要はありません。ただし、相手が何を知っていたか、どのような要求をしたかは、可能な範囲で記録しておくとよいでしょう。
パスワードや認証コードを教えた場合は対応が変わります。関係するサービスの公式窓口からアカウントを保護し、不審なログインや登録情報の変更がないか確認してください。
氏名・住所・電話番号などの情報を伝えた場合と、認証情報を渡してしまった場合では必要な対応が異なります。詳しくは、つぶログの個人情報が流出した場合の対処法でも情報の種類別に整理しています。
お金を振り込んでしまった場合
銀行口座へ振り込んでしまった場合は、できるだけ早く警察と振込先の金融機関に連絡してください。
金融庁は、振り込め詐欺救済法に基づき、犯罪に利用された預金口座などに残っている資金から被害者へ分配金が支払われる場合があると案内しています。
ただし、犯人がすでにお金を引き出している場合など、返金を受けられないこともあります。全額が戻ると保証される制度ではありません。
詳しい手続きは金融庁の被害者向け案内で確認できます。
暗号資産を直接送付した場合は、銀行口座への振込を対象とする救済制度と同じ扱いにはなりません。警察と利用した暗号資産交換業者へ速やかに相談してください。
相談先は#9110と110のどちら?
警察への相談では、緊急性に応じて窓口を使い分けます。
- #9110:不審な電話や詐欺の疑いなど、緊急性のない警察相談
- 110:犯罪が進行している、身の危険が差し迫っているなど、緊急の通報
- 188:消費者トラブルについて、消費生活センターなどへ相談したい場合
#9110の受付時間は地域によって異なります。通話がつながらない場合は、最寄りの警察署などの正規窓口も確認してください。
自分の電話番号を偽装された場合はどうなる?
番号スプーフィングでは、不審な電話を受ける側だけでなく、電話番号を無断で使われた側にも問題が生じます。
例えば、本人は誰にも電話をかけていないのに、知人や仕事関係者から「さっき電話をくれましたか?」と問い合わせが届く場合です。
番号の持ち主が発信した覚えがなく、発信履歴にも該当する通話が残っていなければ、第三者による番号偽装の可能性が考えられます。
ただし、発信履歴に残っていないという事実だけで、原因が番号スプーフィングだと確定するわけではありません。実際の回線やアカウントが不正利用されている可能性なども、状況に応じて確認する必要があります。
勝手に電話された分の通話料金を請求される?
電気通信事業者協会(TCA)は、本人の電話番号が偽装表示されただけであれば、その番号の持ち主に偽装通話の料金が発生することはないと説明しています。
つまり、他人の着信画面に自分の番号が表示されたからといって、自分の回線から実際に発信されたことにはなりません。
ただし、この説明はあくまで発信者番号の偽装表示についてです。SIMや通信アカウントそのものを不正利用された場合まで、料金トラブルが起きないと保証するものではありません。
自分の番号から不審な電話がかけられている疑いがある場合は、契約先の通信事業者へ相談し、発信履歴、請求内容、契約情報に異常がないか確認してください。
自分の電話番号を変更する必要はある?
番号を偽装された疑いがあるからといって、直ちに電話番号を変更しなければならないわけではありません。
通知番号が偽装されただけなのか、実際に自分の回線が不正利用されているのかによって対応は変わります。まずは通信事業者に相談し、何が起きているかを確認することが先決です。
また、知人から不審な電話について問い合わせがあった場合は、自分が発信していないことを伝え、電話の内容によっては金銭要求や個人情報の提供に応じないよう注意を促すことも考えられます。
電話番号はどうやって偽装される?仕組みと正当な番号通知の違い
電話をかけると、通信事業者の設備などを通じて相手に接続されます。その際、着信側へ発信者番号を通知する仕組みがあります。
番号スプーフィングは、この通知情報に本来とは異なる番号を含ませることで、着信画面に別の電話番号を表示させるものです。
IP電話などを利用した通信サービスでは、複数の設備や事業者を経由して通話が接続される場合があります。発信者番号の設定や確認が適切に行われなければ、不正な番号通知を防げないことがあります。
ただし、IP電話そのものが危険というわけではありません。問題は、番号を適切に管理・検証する仕組みが悪用されたり、正常に機能しなかったりすることです。
会社の代表番号が表示されるのも番号スプーフィング?
ここは不正な番号偽装との違いを理解するうえで重要です。
企業では、複数の電話回線から発信するときに、共通の代表番号を相手へ通知することがあります。また、電話転送サービスなどでも、実際の発信回線と通知される電話番号が異なる場合があります。
こうした利用は、正当な番号利用権限や運用上の条件を満たしていれば認められる場合があります。
電気通信事業者協会が2025年10月24日に改定したガイドラインでも、通常とは異なる電話番号を通知する場合の制度上の要件や、事業者が守るべき運用条件を整理しています。
詳しくは電気通信事業者協会の運用ガイドライン第2版で確認できます。
したがって、実際の発信回線と表示番号が異なることだけで、すべてを犯罪と判断するのは正確ではありません。
問題となるのは、正当な権限や条件を満たさず、他人や組織の番号を装って相手を欺くような利用です。
個人情報の流出が原因で番号を偽装されるのか
番号スプーフィングそのものに、電話番号の持ち主の個人情報を盗み出すことが必須というわけではありません。
警察署や企業の代表番号のように、もともと一般に公開されている番号が偽装された事例もあります。
一方、氏名や電話番号、取引先などの情報が流出していた場合、それらを悪用することで、相手に信用されやすい電話をかけられる可能性はあります。
例えば、企業の情報漏洩がニュースになった直後に、その企業を名乗る人物が電話をかけてきたとしても、着信番号だけで正規の案内だと判断することはできません。
ただし、特定の情報漏洩事件と番号偽装の発生に直接の関係があるかは、個別に確認しなければ分かりません。情報漏洩の報道があったという理由だけで、その企業の番号を偽装した詐欺が発生していると断定することはできません。
iPhone・Androidで番号スプーフィングを防げる?
スマートフォンには迷惑電話を減らす機能がありますが、すべてが番号スプーフィングを直接検出する機能ではありません。
主な対策は、危険な電話番号を検知する機能、知らない番号からの着信を選別する機能、通話相手のなりすましや詐欺の疑いを検出する機能に分けられます。
| 対策 | できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 迷惑電話ブロック | 危険と判定された番号を警告・遮断 | 実在番号の偽装を必ず検出できるわけではない |
| 不明な発信者のスクリーニング | 未登録番号の着信を選別 | 登録済み番号の偽装には不十分 |
| 偽電話検出 | 対応環境で連絡先のなりすましを検出 | 対応アプリ・端末などに条件がある |
| 通話中の詐欺検知 | 会話から詐欺の疑いを判定 | 発信者番号そのものの本人認証とは別機能 |
iPhoneの不明な発信者のスクリーニング
AppleはiPhone向けに、保存されていない番号からの着信について、発信者に名前や用件を尋ねたり、着信を消音にしたりする機能を案内しています。
知らない番号からの不審な電話を減らすうえでは役立ちますが、連絡先に登録してある番号を偽装された場合には、この仕組みだけで対応できるとは限りません。
また、OSのバージョンや設定、利用環境によって使用できる機能や表示が異なる場合があります。
現在の設定方法や利用条件はApple公式の不明な発信者の管理方法で確認できます。
Androidの偽電話検出機能とは?
Googleは2026年6月2日、連絡先に登録された人物を装う電話への対策として、新たな「偽電話検出」機能を発表しました。
この機能は、対応する利用者同士がGoogleの電話アプリを使用している場合などに、実際に連絡先の持ち主の端末から電話がかかっているかを確認し、なりすましの疑いを検出するものです。
Googleの公式ヘルプでは、Android 12以降であることに加え、Googleの電話アプリ、連絡先アプリ、Googleメッセージアプリの導入、RCSの有効化などが必要条件として示されています。
ただし、すべてのAndroid端末や通話相手に対して利用できるわけではありません。対応する環境が必要で、すべての番号偽装を検出できると保証する機能でもありません。
詳細はGoogleの2026年6月2日付公式発表で説明されています。
Google Pixelの「詐欺検知」は別の機能
Google Pixelには、通話中の会話内容から詐欺の疑いを検出する「詐欺検知」という機能もあります。
こちらは番号の持ち主の端末を確認する「偽電話検出」とは異なり、通話中の会話から詐欺の兆候を判定するものです。
Googleの公式案内によると、日本ではPixel 9以降の対応機種などで利用でき、機能は初期状態では無効になっています。利用者が有効化する必要があり、検出精度も100%ではありません。
詳しい対応機種や利用条件はGoogle電話アプリの詐欺検知に関する公式ヘルプで確認できます。
警察庁が推奨する無料の詐欺電話対策アプリ
警察庁は、特殊詐欺などの電話を減らすため、一定の基準に適合するアプリを「警察庁推奨アプリ」として案内しています。
2026年11月8日時点で掲載されているのは、以下の2種類です。
- 詐欺対策 by NTTタウンページ:注意が必要な電話番号の判別や着信時の警告などを行う
- 詐欺バスター Lite:詐欺・迷惑電話番号の情報などを活用し、不審な電話の検知や警告を行う
どちらもAndroidとiPhoneに対応し、ダウンロード・利用料は無料です。
ただし、警察庁の案内では、国際電話番号の発着信を一括でブロック・警告する共通機能はAndroidのみとされています。また、OSのバージョンによって一部機能に制限があります。
いずれも被害を減らすための補助的な対策であり、実在する知人の番号を偽装した電話をすべて識別できるものではありません。
アプリの正式名称や対応OS、設定方法は警察庁推奨アプリの公式案内から確認できます。
実際に起きた番号スプーフィング事件と被害
番号スプーフィングは、技術的に可能というだけの話ではありません。国内では実際に詐欺へ悪用された事例が確認されています。
愛知県警察本部の実在番号を偽装した事件
警察庁は2025年3月25日、警察官を名乗る特殊詐欺の犯人が、実在する警察署などの電話番号を偽装して表示させる手口を確認したと公表しました。
公表された事例では、被害者の携帯電話に愛知県警察本部の代表番号が表示されました。
電話に出ると、警察官を名乗る人物から、本人名義の口座が不正に開設され、資金洗浄事件の容疑者になっているなどと告げられます。
その後、SNSのビデオ通話で警察手帳を示され、資金調査を名目に250万円を振り込んでしまいました。
被害者は後から愛知県警察本部の代表番号へ電話し、詐欺であることが判明しました。
この事件で分かるのは、実在する警察署の番号を表示させることが、犯人に対する信用を高める材料として利用されたということです。
警察官を名乗るLINEやビデオ通話、逮捕状の画像などを悪用する手口については、つぶログのニセ警察詐欺の仕組みと見分け方で詳しく整理しています。
実家の電話番号を偽装した詐欺も発生
番号スプーフィングの対象は警察署や企業だけではありません。
電気通信事業者協会は、実家の電話番号を偽装し、家族が危険な状況にあると思わせて金銭を要求した事例も紹介しています。
その事例では、実家からの電話だと思った人が、家族の安否に関する脅迫を受け、20万円を振り込んだ後に詐欺だと判明しました。
自宅や実家の番号が表示されていると、普段なら警戒するような内容でも信用してしまう可能性があります。
こうした事例は、電気通信事業者協会の番号偽装に関する注意喚起で確認できます。
2025年には約197万件の偽装発信が確認された
番号スプーフィングによる被害の規模を考えるうえで重要なのが、国家公安委員会が2025年11月27日に公表した調査結果です。
この資料によると、国内の特定の通信事業者のシステムを経由した偽装発信は約197万件に上っていました。
| 項目 | 公表された数値 |
|---|---|
| 偽装番号による総発信数 | 約197万件 |
| 使用された偽装番号数 | 約147万番号 |
| 末尾0110の番号による発信 | 約11万件 |
| 総務省代表番号による発信 | 約5万5,000件 |
| 新宿警察署代表番号による発信 | 約8,000件 |
| 警視庁代表番号による発信 | 約4,000件 |
| 確認された関連特殊詐欺被害 | 少なくとも11事件 |
| 確認された関連被害額 | 約2,800万円 |
出典:国家公安委員会「電話番号偽装への対策について」(2025年11月27日)
ここで注意したいのは、約197万件という数字は、197万人が詐欺被害に遭ったという意味ではないことです。
これは捜査によって判明した、特定の通信事業者のシステムを通過した偽装番号による発信数です。通話が成立した件数や全国の被害者数、2026年の発生件数とは異なります。
約2,800万円という被害額についても、当該事業者の経路を通じた番号偽装に関連する確認済みの被害です。国内すべての番号スプーフィングによる被害総額ではありません。
なぜ大量の番号偽装が可能になったのか
国家公安委員会の説明によると、一連の事案の主な原因は、通信元事業者のシステム設定の誤りにあったと考えられています。
本来は制御されるべき偽装電話番号が、適切に制御されないまま着信相手に通知されていました。
問題となった通信事業者は2025年3月14日に設定を修正し、その後、警察署などの番号を装った一連の事案は急減したとされています。
その後、通信事業者のアイ・ピー・エスは2026年1月13日、子会社アイ・ピー・エス・プロに関する再発防止策の報告書を警察庁と総務省に提出し、両省庁から求められた対応が終結したと公表しました。
この発表はアイ・ピー・エスの2026年1月13日付適時開示で確認できます。
ただし、これは当該事業者の問題に対する対応状況を示したものであり、日本国内ですべての番号偽装が不可能になったという意味ではありません。
2026年11月にも知人の番号偽装が話題に
2026年11月8日、TBS NEWS DIGは、知っている電話番号から不審な着信があった事例と番号スプーフィングの仕組みを紹介しました。
紹介された事例では、10月14日午前6時前、ある人物のスマートフォンに仕事関係者の名前が表示された着信がありました。
後から番号の持ち主へ確認したところ、本人は電話をかけておらず、同様の問い合わせを複数受けていたといいます。本人のスマートフォンにも、該当する発信履歴は残っていませんでした。
ただし、この個別の着信について、実際の通信経路や発信者の身元、詐欺目的だったかどうかまでは明らかになっていません。
そのため、番号偽装が疑われる事例として紹介するのが適切であり、詐欺被害が確定した事件と混同するべきではありません。
また、2026年11月4日には、広島県の高額特殊詐欺事件で、電話交換機の発送に関与した疑いのある人物が新たに逮捕されたとRCC中国放送などが報じています。
警察が関連を調べている一連の特殊詐欺被害は全国約90件、約7億3,000万円と報じられていますが、この数字は番号スプーフィングだけの全国被害統計ではありません。また、逮捕された人物については容疑段階であり、事件の全容が確定したわけではありません。
番号スプーフィングはいつから?20年以上続く対策の歴史
番号スプーフィングは、2025年や2026年になって突然現れた新しい手口ではありません。
日本では少なくとも2005年の時点で、発信者番号の偽装表示が社会問題となり、通信事業者が対策を進めていました。
電気通信事業者協会は2005年2月17日、警察や自宅などの番号を偽装表示する事件への苦情や問い合わせを受け、発信者番号偽装表示対策検討部会を設置しました。
同年7月1日には、通信事業者が協力して発信者番号の偽装を防止するためのガイドライン第1版を策定しています。
さらに、2008年には異なる電話番号の通知に関する運用ガイドラインが制定され、2025年10月24日に第2版へ改定されました。
これらは目的や対象範囲が異なるガイドラインですが、電話番号の表示に対する信頼を維持するという共通の課題に取り組んできたものです。
2005年当時の対応については電気通信事業者協会のガイドライン策定発表で確認できます。
20年以上対策しているのになぜ起こる?
電話の通信網は、一つの企業だけで完結しているわけではありません。複数の通信事業者が接続し、国内外の通信設備や電話サービスを経由する場合があります。
そのため、番号の通知や確認をどの事業者がどの段階で行うのか、複雑な管理が必要になります。
2025年の国内事案では、通信事業者の設定誤りによって不正な番号が通知されていました。このように、制度や対策が存在していても、実際の運用上の不備が問題につながる場合があります。
また、正当な代表番号通知や電話転送など、異なる電話番号を通知する必要があるサービスも存在します。
発信者番号を適切に利用できる仕組みを維持しながら、不正な番号通知を防ぐことが、通信事業者にとって継続的な課題になっています。
一方、利用者側でも、着信画面の情報だけに本人確認を任せないことが重要です。技術的な対策が改善されても、すべての不審な電話を完全に防止できるとは限りません。
番号スプーフィングに関するよくある疑問
070・080・090の携帯電話番号も偽装される?
番号スプーフィングは、警察署などの固定電話番号だけを対象とするものではありません。
通知される番号を偽装する手口であるため、携帯電話番号であることだけを理由に安全とは判断できません。ただし、すべての通信経路で任意の番号を偽装できるという意味ではありません。
050から始まるIP電話番号は危険?
050番号はIP電話サービスで利用される番号であり、050から始まるという理由だけで詐欺電話と判断することはできません。
IP電話には正当な利用が数多くあります。反対に、一般的な固定電話番号や携帯電話番号が表示されていても、発信者本人だと保証されるわけではありません。
末尾が0110なら本物の警察署?
警察署などでは末尾が0110の電話番号が使われていますが、それだけで本物の警察からの電話だと判断することはできません。
2025年の調査では、末尾0110の番号を使用した偽装発信が約11万件確認されています。
なお、本物の警察が市民へ電話連絡をすること自体はあります。問題なのは、突然捜査対象だと告げたり、SNSでの取り調べや送金を要求したりする不審な内容です。
非通知電話と番号スプーフィングは同じ?
異なります。
非通知電話は発信者番号を相手へ表示しない状態を指します。一方、番号スプーフィングは、本来とは異なる番号を発信者番号として表示させるものです。
非通知を拒否する設定だけでは、実在する電話番号を偽装表示させた着信への対策として十分とはいえません。
声が家族と同じなら信用できる?
声が似ていることも、本人であることの確実な証明にはなりません。
近年はAIによる音声合成など、本人らしい声を再現する技術も存在します。ただし、音声のなりすましと発信者番号の偽装は別の仕組みです。
家族を名乗る相手から突然の送金依頼や緊急の要求があった場合は、声や電話番号だけで判断せず、別の連絡手段で確認してください。
番号スプーフィングを完全に防ぐ方法はある?
2026年11月時点で、一般のスマートフォン利用者が設定するだけで、あらゆる番号スプーフィングを完全に防げる方法は確認できません。
迷惑電話対策アプリ、国際電話の着信規制、発信者のスクリーニング、対応端末による偽電話検出などは、それぞれ異なる条件で役立つ機能です。
これらを活用しながら、重要な連絡や金銭に関する話は正規の連絡先で確認することが、現実的な対策になります。
まとめ|知っている番号でも本人確認は必要
番号スプーフィングは、実在する家族や警察署、企業などの電話番号を着信画面に偽装表示させる手口です。
電話帳に登録した名前まで表示される場合がありますが、それは通知された電話番号を端末が連絡先などと照合しているためであり、電話をかけている人物の身元が確認されたわけではありません。
2025年には国内の特定の通信事業者のシステムを通じた偽装発信が約197万件確認されました。その問題については設定修正や再発防止策が講じられていますが、番号偽装全体の危険がなくなったわけではありません。
不審な電話があったときは、いったん通話を切り、着信履歴や相手が案内した番号だけを頼りにせず、自分で確認した正規の連絡先へ連絡することが重要です。
迷惑電話対策アプリやスマートフォンの新しい検出機能も役立ちますが、それぞれに利用条件と限界があります。
「知らない番号には出ない」という対策に加えて、「知っている番号でも、重要な話は別の方法で確認する」。この習慣が、番号スプーフィングを悪用した詐欺から自分や家族を守ることにつながります。